10 / 25
10
しおりを挟む
昼食は各教室で食べることになっていて、教室の中はいくつかのグループに分かれている。
自然と凛ちゃんと仲の良い男子たちに囲まれて食べることになった。
「そういえば、騎馬戦で転落していなかった? 大丈夫?」
左隣にいた原田くんに声をかける。
あまり話したことがないけど、あの激しいぶつかり合いは思い出しただけで怖いし、怪我をしなかったか心配してしまう。
「え? 天使? 天使が目の前にいる?」
「え?」
「俺は今日死ぬのか? ……いろんな意味で」
もしかして頭をぶつけちゃった?
原田くんの目が瞳孔を開いているし、息も速くなっているから、体調が悪そう。
「凛ちゃん! 原田くんの体調が悪そう!」
オロオロしながら右隣に振り向くと、凛ちゃんは目を細めていた。その鋭さはちょっと怖い。
「大丈夫だ。原田はそれが正常だから。一切心配するな」
「心配するよ。どこも怪我してない?」
「……」
原田くんは胸を抑え「苦しい……」と呟いた。
立ち上がるけど、踏ん張れずによろけている。
体を支えようとしたら、それよりも早く周りの男子たちが飛び出してきた。
……なぜか凛ちゃんは私の腕を掴んでいるけど。普段は感じない力の強さに、咄嗟であったことが分かる。
「大丈夫……保健室とかそういうんじゃないから……。落ちた時は足が痛かったけど、普通に歩けてるよ。それよりも胸が……」
「莉央ちゃんは心配しなくていいよ。あとは男子で何とかするから」
原田くんは教室の外へと連れ出された。
一刻も早くって感じだし、やっぱり大怪我だったんじゃ……。
一緒に行ったほうが良かったかな? 迷っていると肩をちょん、ちょんっと叩かれた。
「りーお。時間ないから早く食べて?」
「あ、うん」
心配だけど、時間に余裕がないのは言うとおりだった。
急いで食べないと!凛ちゃんの真似をして、黙々と箸を動かす。
「……腕、強く掴んでごめん」
ぼそっと言われたので聞き逃すところだったよ。
目を逸らし、「莉央が支えても怪我するだけだろう」と付け加えられた。そういうことか……!
咄嗟の判断がさすがだね、凛ちゃん!
「……莉央が素直で良かった」
「ごめん、聞こえなかった。なーに?」
「なんでもない」
「そう? あれ? なんか耳赤くない?」
「日焼けだろ」
* * *
「玉入れ、2つしか入らなかった……」
凛ちゃんと特訓したのに、成果を出せず。
肩を落としていたら舞ちゃんに頭を撫でられた。優しい手つきが余計に泣ける。
「大丈夫よ、ぴょんぴょん跳ねる莉央の可愛さは際立ってた。それよりも、後ろで莉央に玉を集めていた凛にウケる。あの人、面白すぎるんだけどっ」
「凛ちゃんが頑張ってくれたら、絶対もっと入ってたよ……」
「しょうがない。アイツは習性が犬だから」
例えが独特だけど、昔飼っていたワンちゃんみたいだったので納得しちゃう。
「そんなことよりさ、そろそろ移動するよー」
「え? どこに?」
「もちろん、リレーがよく見えるところに決まってんじゃん! 今回のリレーはイケメン揃いって評判だから、女子の応援に熱が入るね~。間違いない!」
肩を抱かれたまま、応援席の最前列へと連れて行かれる。
私ひとりなら怖気づいちゃうけど、舞ちゃんはギャルなので強い。
「うーん、イケメンが選り取り見取りだけど、やっぱり注目は最終レースかな~?」
これ以上ないくらい楽しそう。
待機列のメンバーを見ると、紫チームは第三走者に原田くんがいる。もう体調は大丈夫なのかな?
「うわっ! 王子と凛が横並びじゃん」
「本当だ」
「なんかあそこだけピリピリしてない? 絶対にお互いに目を合わせない感じ、面白いんだけどっ」
“箸が転んでもおかしい年頃”なのか、舞ちゃんの笑いのツボはよく分からない。
「凛ーーっ!頑張れよー!」
やっぱりよく通る、舞ちゃんの声援。凛ちゃんもすぐに気付いた。
「おやおや、王子と何か話してるねー? あの感じはただの世間話じゃないよ。あれは龍と虎が背後にいるでしょ」
「何も見えない……」
「いや、例えだから」
舞ちゃんはそのまま、アテレコをして遊び始めた。
ニ人の口の動きに合わせている。
「“ここで会ったが百年目、今日こそ決着をつける”」
「“姫をかけた戦いだ”」
「“負けたほうが身を引くのじゃ”」
「“男に二言はないでござる。いざ、勝負!”」
「どう?」と聞かれたけど、その設定はどこから来たの?
周りの女子たちも騒がしい。
友達同士で会話が盛り上がっている。
「凪くんってやっぱり格好良いね」
「うんうん、あんなに王子様って言われても違和感ない人はいないよね」
「本当に存在が王子」
「あれは王子になるべくして産まれた人だよ」
激しく首を縦に振りたい。
同じ高校生とは思えない気品、所作の美しさ。初めて会った時は“王子様って本当にいるんだ”って思ったよ。
会話は続く。
「凪くんのお父さんって会社の社長って聞いたんだけど」
「その噂本当だよ。小学校が同じだった子が言うには、お家にお手伝いさんがいるんだって」
「お金持ちじゃん」
「お母さんはテニスプレイヤーで、教育熱心な人らしいよ。厳しく育てられていたけど、全然嫌な顔せずこなしていたって」
「さすが王子~」
初耳なことばかり。
凪くんのお家って凄いんだな。
自然と凛ちゃんと仲の良い男子たちに囲まれて食べることになった。
「そういえば、騎馬戦で転落していなかった? 大丈夫?」
左隣にいた原田くんに声をかける。
あまり話したことがないけど、あの激しいぶつかり合いは思い出しただけで怖いし、怪我をしなかったか心配してしまう。
「え? 天使? 天使が目の前にいる?」
「え?」
「俺は今日死ぬのか? ……いろんな意味で」
もしかして頭をぶつけちゃった?
原田くんの目が瞳孔を開いているし、息も速くなっているから、体調が悪そう。
「凛ちゃん! 原田くんの体調が悪そう!」
オロオロしながら右隣に振り向くと、凛ちゃんは目を細めていた。その鋭さはちょっと怖い。
「大丈夫だ。原田はそれが正常だから。一切心配するな」
「心配するよ。どこも怪我してない?」
「……」
原田くんは胸を抑え「苦しい……」と呟いた。
立ち上がるけど、踏ん張れずによろけている。
体を支えようとしたら、それよりも早く周りの男子たちが飛び出してきた。
……なぜか凛ちゃんは私の腕を掴んでいるけど。普段は感じない力の強さに、咄嗟であったことが分かる。
「大丈夫……保健室とかそういうんじゃないから……。落ちた時は足が痛かったけど、普通に歩けてるよ。それよりも胸が……」
「莉央ちゃんは心配しなくていいよ。あとは男子で何とかするから」
原田くんは教室の外へと連れ出された。
一刻も早くって感じだし、やっぱり大怪我だったんじゃ……。
一緒に行ったほうが良かったかな? 迷っていると肩をちょん、ちょんっと叩かれた。
「りーお。時間ないから早く食べて?」
「あ、うん」
心配だけど、時間に余裕がないのは言うとおりだった。
急いで食べないと!凛ちゃんの真似をして、黙々と箸を動かす。
「……腕、強く掴んでごめん」
ぼそっと言われたので聞き逃すところだったよ。
目を逸らし、「莉央が支えても怪我するだけだろう」と付け加えられた。そういうことか……!
咄嗟の判断がさすがだね、凛ちゃん!
「……莉央が素直で良かった」
「ごめん、聞こえなかった。なーに?」
「なんでもない」
「そう? あれ? なんか耳赤くない?」
「日焼けだろ」
* * *
「玉入れ、2つしか入らなかった……」
凛ちゃんと特訓したのに、成果を出せず。
肩を落としていたら舞ちゃんに頭を撫でられた。優しい手つきが余計に泣ける。
「大丈夫よ、ぴょんぴょん跳ねる莉央の可愛さは際立ってた。それよりも、後ろで莉央に玉を集めていた凛にウケる。あの人、面白すぎるんだけどっ」
「凛ちゃんが頑張ってくれたら、絶対もっと入ってたよ……」
「しょうがない。アイツは習性が犬だから」
例えが独特だけど、昔飼っていたワンちゃんみたいだったので納得しちゃう。
「そんなことよりさ、そろそろ移動するよー」
「え? どこに?」
「もちろん、リレーがよく見えるところに決まってんじゃん! 今回のリレーはイケメン揃いって評判だから、女子の応援に熱が入るね~。間違いない!」
肩を抱かれたまま、応援席の最前列へと連れて行かれる。
私ひとりなら怖気づいちゃうけど、舞ちゃんはギャルなので強い。
「うーん、イケメンが選り取り見取りだけど、やっぱり注目は最終レースかな~?」
これ以上ないくらい楽しそう。
待機列のメンバーを見ると、紫チームは第三走者に原田くんがいる。もう体調は大丈夫なのかな?
「うわっ! 王子と凛が横並びじゃん」
「本当だ」
「なんかあそこだけピリピリしてない? 絶対にお互いに目を合わせない感じ、面白いんだけどっ」
“箸が転んでもおかしい年頃”なのか、舞ちゃんの笑いのツボはよく分からない。
「凛ーーっ!頑張れよー!」
やっぱりよく通る、舞ちゃんの声援。凛ちゃんもすぐに気付いた。
「おやおや、王子と何か話してるねー? あの感じはただの世間話じゃないよ。あれは龍と虎が背後にいるでしょ」
「何も見えない……」
「いや、例えだから」
舞ちゃんはそのまま、アテレコをして遊び始めた。
ニ人の口の動きに合わせている。
「“ここで会ったが百年目、今日こそ決着をつける”」
「“姫をかけた戦いだ”」
「“負けたほうが身を引くのじゃ”」
「“男に二言はないでござる。いざ、勝負!”」
「どう?」と聞かれたけど、その設定はどこから来たの?
周りの女子たちも騒がしい。
友達同士で会話が盛り上がっている。
「凪くんってやっぱり格好良いね」
「うんうん、あんなに王子様って言われても違和感ない人はいないよね」
「本当に存在が王子」
「あれは王子になるべくして産まれた人だよ」
激しく首を縦に振りたい。
同じ高校生とは思えない気品、所作の美しさ。初めて会った時は“王子様って本当にいるんだ”って思ったよ。
会話は続く。
「凪くんのお父さんって会社の社長って聞いたんだけど」
「その噂本当だよ。小学校が同じだった子が言うには、お家にお手伝いさんがいるんだって」
「お金持ちじゃん」
「お母さんはテニスプレイヤーで、教育熱心な人らしいよ。厳しく育てられていたけど、全然嫌な顔せずこなしていたって」
「さすが王子~」
初耳なことばかり。
凪くんのお家って凄いんだな。
0
あなたにおすすめの小説
「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない
橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。
そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。
1~2万文字の短編予定→中編に変更します。
いつもながらの溺愛執着ものです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
【完結】言いつけ通り、夫となる人を自力で見つけました!
まりぃべる
恋愛
エーファ=バルヒェットは、父から十七歳になったからお見合い話を持ってこようかと提案された。
人に決められた人とより、自分が見定めた人と結婚したい!
そう思ったエーファは考え抜いた結果、引き籠もっていた侯爵領から人の行き交いが多い王都へと出向く事とした。
そして、思わぬ形で友人が出来、様々な人と出会い結婚相手も無事に見つかって新しい生活をしていくエーファのお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ているもの、違うものもあります。
☆現実世界で似たもしくは同じ人名、地名があるかもしれませんが、全く関係ありません。
☆現実世界とは似ているようで違う世界です。常識も現実世界と似ているようで違います。それをご理解いただいた上で、楽しんでいただけると幸いです。
☆この世界でも季節はありますが、現実世界と似ているところと少し違うところもあります。まりぃべるの世界だと思って楽しんでいただけると幸いです。
☆書き上げています。
その途中間違えて投稿してしまいました…すぐ取り下げたのですがお気に入り入れてくれた方、ありがとうございます。ずいぶんとお待たせいたしました。
愛が重いだけじゃ信用できませんか?
歩く魚
恋愛
【ヤンデレと戦えるのは遊び人である】
古庵瑠凪は、大学内における、いわゆる「何でも屋」に相当するサークルに所属している。
生徒を助け、浮かれたように遊び、大学生の青春を謳歌する、そんな毎日。
しかし、ある日「お見舞い」が自宅のドアにかけられていたことを皮切りに、彼の平穏な日々に変化が訪れる。
「好きだからです。世界中の誰よりも好きで好きでたまらないからです」
突然の告白。ストーカーの正体。
過去の一件から恋人を作らないと決意した瑠凪は、さまざまな方向に「重い」ヒロインたちのアプローチから逃れることができるのか?
鏡の中の他人
北大路京介
恋愛
美容師として働くシングルマザー。顧客の一人が、実は自分の元夫を訴えている原告側の弁護士。複雑な立場ながらも、彼の髪を切る親密な時間の中で、プロとしての境界が曖昧になっていく。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる