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昼食は各教室で食べることになっていて、教室の中はいくつかのグループに分かれている。
自然と凛ちゃんと仲の良い男子たちに囲まれて食べることになった。
「そういえば、騎馬戦で転落していなかった? 大丈夫?」
左隣にいた原田くんに声をかける。
あまり話したことがないけど、あの激しいぶつかり合いは思い出しただけで怖いし、怪我をしなかったか心配してしまう。
「え? 天使? 天使が目の前にいる?」
「え?」
「俺は今日死ぬのか? ……いろんな意味で」
もしかして頭をぶつけちゃった?
原田くんの目が瞳孔を開いているし、息も速くなっているから、体調が悪そう。
「凛ちゃん! 原田くんの体調が悪そう!」
オロオロしながら右隣に振り向くと、凛ちゃんは目を細めていた。その鋭さはちょっと怖い。
「大丈夫だ。原田はそれが正常だから。一切心配するな」
「心配するよ。どこも怪我してない?」
「……」
原田くんは胸を抑え「苦しい……」と呟いた。
立ち上がるけど、踏ん張れずによろけている。
体を支えようとしたら、それよりも早く周りの男子たちが飛び出してきた。
……なぜか凛ちゃんは私の腕を掴んでいるけど。普段は感じない力の強さに、咄嗟であったことが分かる。
「大丈夫……保健室とかそういうんじゃないから……。落ちた時は足が痛かったけど、普通に歩けてるよ。それよりも胸が……」
「莉央ちゃんは心配しなくていいよ。あとは男子で何とかするから」
原田くんは教室の外へと連れ出された。
一刻も早くって感じだし、やっぱり大怪我だったんじゃ……。
一緒に行ったほうが良かったかな? 迷っていると肩をちょん、ちょんっと叩かれた。
「りーお。時間ないから早く食べて?」
「あ、うん」
心配だけど、時間に余裕がないのは言うとおりだった。
急いで食べないと!凛ちゃんの真似をして、黙々と箸を動かす。
「……腕、強く掴んでごめん」
ぼそっと言われたので聞き逃すところだったよ。
目を逸らし、「莉央が支えても怪我するだけだろう」と付け加えられた。そういうことか……!
咄嗟の判断がさすがだね、凛ちゃん!
「……莉央が素直で良かった」
「ごめん、聞こえなかった。なーに?」
「なんでもない」
「そう? あれ? なんか耳赤くない?」
「日焼けだろ」
* * *
「玉入れ、2つしか入らなかった……」
凛ちゃんと特訓したのに、成果を出せず。
肩を落としていたら舞ちゃんに頭を撫でられた。優しい手つきが余計に泣ける。
「大丈夫よ、ぴょんぴょん跳ねる莉央の可愛さは際立ってた。それよりも、後ろで莉央に玉を集めていた凛にウケる。あの人、面白すぎるんだけどっ」
「凛ちゃんが頑張ってくれたら、絶対もっと入ってたよ……」
「しょうがない。アイツは習性が犬だから」
例えが独特だけど、昔飼っていたワンちゃんみたいだったので納得しちゃう。
「そんなことよりさ、そろそろ移動するよー」
「え? どこに?」
「もちろん、リレーがよく見えるところに決まってんじゃん! 今回のリレーはイケメン揃いって評判だから、女子の応援に熱が入るね~。間違いない!」
肩を抱かれたまま、応援席の最前列へと連れて行かれる。
私ひとりなら怖気づいちゃうけど、舞ちゃんはギャルなので強い。
「うーん、イケメンが選り取り見取りだけど、やっぱり注目は最終レースかな~?」
これ以上ないくらい楽しそう。
待機列のメンバーを見ると、紫チームは第三走者に原田くんがいる。もう体調は大丈夫なのかな?
「うわっ! 王子と凛が横並びじゃん」
「本当だ」
「なんかあそこだけピリピリしてない? 絶対にお互いに目を合わせない感じ、面白いんだけどっ」
“箸が転んでもおかしい年頃”なのか、舞ちゃんの笑いのツボはよく分からない。
「凛ーーっ!頑張れよー!」
やっぱりよく通る、舞ちゃんの声援。凛ちゃんもすぐに気付いた。
「おやおや、王子と何か話してるねー? あの感じはただの世間話じゃないよ。あれは龍と虎が背後にいるでしょ」
「何も見えない……」
「いや、例えだから」
舞ちゃんはそのまま、アテレコをして遊び始めた。
ニ人の口の動きに合わせている。
「“ここで会ったが百年目、今日こそ決着をつける”」
「“姫をかけた戦いだ”」
「“負けたほうが身を引くのじゃ”」
「“男に二言はないでござる。いざ、勝負!”」
「どう?」と聞かれたけど、その設定はどこから来たの?
周りの女子たちも騒がしい。
友達同士で会話が盛り上がっている。
「凪くんってやっぱり格好良いね」
「うんうん、あんなに王子様って言われても違和感ない人はいないよね」
「本当に存在が王子」
「あれは王子になるべくして産まれた人だよ」
激しく首を縦に振りたい。
同じ高校生とは思えない気品、所作の美しさ。初めて会った時は“王子様って本当にいるんだ”って思ったよ。
会話は続く。
「凪くんのお父さんって会社の社長って聞いたんだけど」
「その噂本当だよ。小学校が同じだった子が言うには、お家にお手伝いさんがいるんだって」
「お金持ちじゃん」
「お母さんはテニスプレイヤーで、教育熱心な人らしいよ。厳しく育てられていたけど、全然嫌な顔せずこなしていたって」
「さすが王子~」
初耳なことばかり。
凪くんのお家って凄いんだな。
自然と凛ちゃんと仲の良い男子たちに囲まれて食べることになった。
「そういえば、騎馬戦で転落していなかった? 大丈夫?」
左隣にいた原田くんに声をかける。
あまり話したことがないけど、あの激しいぶつかり合いは思い出しただけで怖いし、怪我をしなかったか心配してしまう。
「え? 天使? 天使が目の前にいる?」
「え?」
「俺は今日死ぬのか? ……いろんな意味で」
もしかして頭をぶつけちゃった?
原田くんの目が瞳孔を開いているし、息も速くなっているから、体調が悪そう。
「凛ちゃん! 原田くんの体調が悪そう!」
オロオロしながら右隣に振り向くと、凛ちゃんは目を細めていた。その鋭さはちょっと怖い。
「大丈夫だ。原田はそれが正常だから。一切心配するな」
「心配するよ。どこも怪我してない?」
「……」
原田くんは胸を抑え「苦しい……」と呟いた。
立ち上がるけど、踏ん張れずによろけている。
体を支えようとしたら、それよりも早く周りの男子たちが飛び出してきた。
……なぜか凛ちゃんは私の腕を掴んでいるけど。普段は感じない力の強さに、咄嗟であったことが分かる。
「大丈夫……保健室とかそういうんじゃないから……。落ちた時は足が痛かったけど、普通に歩けてるよ。それよりも胸が……」
「莉央ちゃんは心配しなくていいよ。あとは男子で何とかするから」
原田くんは教室の外へと連れ出された。
一刻も早くって感じだし、やっぱり大怪我だったんじゃ……。
一緒に行ったほうが良かったかな? 迷っていると肩をちょん、ちょんっと叩かれた。
「りーお。時間ないから早く食べて?」
「あ、うん」
心配だけど、時間に余裕がないのは言うとおりだった。
急いで食べないと!凛ちゃんの真似をして、黙々と箸を動かす。
「……腕、強く掴んでごめん」
ぼそっと言われたので聞き逃すところだったよ。
目を逸らし、「莉央が支えても怪我するだけだろう」と付け加えられた。そういうことか……!
咄嗟の判断がさすがだね、凛ちゃん!
「……莉央が素直で良かった」
「ごめん、聞こえなかった。なーに?」
「なんでもない」
「そう? あれ? なんか耳赤くない?」
「日焼けだろ」
* * *
「玉入れ、2つしか入らなかった……」
凛ちゃんと特訓したのに、成果を出せず。
肩を落としていたら舞ちゃんに頭を撫でられた。優しい手つきが余計に泣ける。
「大丈夫よ、ぴょんぴょん跳ねる莉央の可愛さは際立ってた。それよりも、後ろで莉央に玉を集めていた凛にウケる。あの人、面白すぎるんだけどっ」
「凛ちゃんが頑張ってくれたら、絶対もっと入ってたよ……」
「しょうがない。アイツは習性が犬だから」
例えが独特だけど、昔飼っていたワンちゃんみたいだったので納得しちゃう。
「そんなことよりさ、そろそろ移動するよー」
「え? どこに?」
「もちろん、リレーがよく見えるところに決まってんじゃん! 今回のリレーはイケメン揃いって評判だから、女子の応援に熱が入るね~。間違いない!」
肩を抱かれたまま、応援席の最前列へと連れて行かれる。
私ひとりなら怖気づいちゃうけど、舞ちゃんはギャルなので強い。
「うーん、イケメンが選り取り見取りだけど、やっぱり注目は最終レースかな~?」
これ以上ないくらい楽しそう。
待機列のメンバーを見ると、紫チームは第三走者に原田くんがいる。もう体調は大丈夫なのかな?
「うわっ! 王子と凛が横並びじゃん」
「本当だ」
「なんかあそこだけピリピリしてない? 絶対にお互いに目を合わせない感じ、面白いんだけどっ」
“箸が転んでもおかしい年頃”なのか、舞ちゃんの笑いのツボはよく分からない。
「凛ーーっ!頑張れよー!」
やっぱりよく通る、舞ちゃんの声援。凛ちゃんもすぐに気付いた。
「おやおや、王子と何か話してるねー? あの感じはただの世間話じゃないよ。あれは龍と虎が背後にいるでしょ」
「何も見えない……」
「いや、例えだから」
舞ちゃんはそのまま、アテレコをして遊び始めた。
ニ人の口の動きに合わせている。
「“ここで会ったが百年目、今日こそ決着をつける”」
「“姫をかけた戦いだ”」
「“負けたほうが身を引くのじゃ”」
「“男に二言はないでござる。いざ、勝負!”」
「どう?」と聞かれたけど、その設定はどこから来たの?
周りの女子たちも騒がしい。
友達同士で会話が盛り上がっている。
「凪くんってやっぱり格好良いね」
「うんうん、あんなに王子様って言われても違和感ない人はいないよね」
「本当に存在が王子」
「あれは王子になるべくして産まれた人だよ」
激しく首を縦に振りたい。
同じ高校生とは思えない気品、所作の美しさ。初めて会った時は“王子様って本当にいるんだ”って思ったよ。
会話は続く。
「凪くんのお父さんって会社の社長って聞いたんだけど」
「その噂本当だよ。小学校が同じだった子が言うには、お家にお手伝いさんがいるんだって」
「お金持ちじゃん」
「お母さんはテニスプレイヤーで、教育熱心な人らしいよ。厳しく育てられていたけど、全然嫌な顔せずこなしていたって」
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