シンデレラになりたい私 × 王子様になりたくないあなた(連載中)

音央とお

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放課後になっても、凛ちゃんの様子は変わらずで。
教室では前後の席なので振り向いてみるけど、微動だにしない。
艶やかな髪の毛は太く、しなやかで、触り心地が違いそう。
凛ちゃんはヘアアレンジしてくれるけど、私は触ることがないもんね。どんな感触なのかな?

「……」

好奇心に負けて指を伸ばした。
そっと触れただけで、凛ちゃんは驚いたように顔を上げた。

「あ、ごめん。あの、ちょっと触ってみたくなって。勝手にごめんなさい」
「びっくりした。……どーぞ。莉央なら触ってもいいから」

再び机に突っ伏した、その髪に指を通してみる。
ハリが全然違う! 綺麗な髪だ。

「気に入ったなら、もっと触っていていいよ」

撫でる手を止めようとしたら、タイミングよくお許しが出た。そう? じゃあ、もう少しだけ……。
こうしていると、凛ちゃんから緊迫したオーラが消えた気がする。

今なら聞いても大丈夫かな?
一呼吸してから口を開く。

「いつもと違ったけど、どうかした?」
「……っ」

身動ぎしたのを見逃さなかった。
撫でていた手を引っ込めると、凛ちゃんがゆっくりと起き上がった。乱れた髪の房が落ちていく。

「えっと、……莉央に聞きたいんだけど」

言いづらいことなのか、いつもより声のボリュームが小さい。

「保健室にお見舞いに来てくれたり、した……?」
「うん、行ったよ?」

「へ、へぇ……そっかぁ……」と呟いたかと思えば、ガンッ!という衝撃音で勢いよく机に突っ伏した。

「凛ちゃん!?」
「……マジか……」

よく見れば、耳が真っ赤になっている。なんで?

「夢だと思ったのに……」
「目がとろんとしてたもんね」
「俺、変なこと、口走ってなかった?」

なるほど。
あの日の凛ちゃんは明らかに弱っていて、体調が悪い時なんてみんなそうなのに、弱気な姿を見せたことが恥ずかしかった。
我ながら、今の推理は冴えてる気がする。

「大丈夫だよ。何も無かったよ」
「そうなのか?……どこまでが夢だったんだ……」

ブツブツと何か喋っているけど聞き取れない。
凛ちゃんは大きな手で顔を隠しながら、「ごめん」と言った。

「この間のことが、どこまで夢か分からなくて。ちょっとイライラしてた」
「そうなんだ。聞いてくれれば良かったのに」
「いや、聞けないでしょ」

うーん、まあ、そうなのかな?

「凛ちゃんが何か落ち込んでるのかと思って、心配だったよ。解決したのなら良かった。へへっ」

ホッとしたら頬がニヤけているのが自分でも分かる。
友達が落ち込んでいたら、嫌だもんね。

締まりのない顔をしていたら、凛ちゃんがそっと手を伸ばしてきた。やさしく髪を撫でられる。

「ん? さっきのお返し?」
「そう」

口角が上がっていて楽しそう。
分かる、凛ちゃんの髪を撫でている時に、私も同じ気持ちだったよ。でも、撫でるより撫でられる方が気持ちいいかも。心がぽかぽかする。


*   *   *


スキンケアとブローを済ませ、日課が全て終わった自由時間。スマホを前に正座をしているところです。

「……よしっ!」

大丈夫、大丈夫。そう呟いて気合を入れた。
ドキドキしながら、慎重にメッセージアプリを操作する。リストから見つけた名前に、思わず頬がゆるむ。

「あー、あー」と、喉の調子を確かめる。
いつもどおりかな? 裏返ったりしないかな。
深呼吸をして、通話ボタンを押した。

「こんばんは、凪くん」

数コール後に出てくれた相手に挨拶をする。

『こんばんは。電話ありがとう』

この落ち着いた声を聞くだけで、心地良い。
私の声って変じゃないかな? 声だけだと不安になっちゃうよ……。

『何をしてたのかな?』
「お風呂入ってた。だんだんと気温が下がってきたね。ついつい長湯しちゃうんだ」
『風邪をひかないようにね』
「ありがとう。凪くんは何してた?」
『俺は明日の予習。うちのクラスは漢字の小テストがあるんだって』
「それならうちは一昨日終わったよ。結構難しかった」
『あの先生って意地悪な問題出したりするもんね』
「そうそう!」

先生の顔を思い出して、笑ってしまう。

「クラスは離れてるけど、同じ先生に教わってるとか嬉しいな。凪くんもこの問題解いたのかな?って思い出しそう」
『……うん、俺も思い出しながら解くね。莉央ちゃんと同じクラスの人が羨ましかったんだ』

こうやって初めて通話しているのは、騒ぎが落ち着くまでなかなか会えないだろうから、電話でお喋りしないかと提案されたからだ。たしかに、これならゆっくり会話ができる。
……出来るけど、凪くんに耳元で囁かれてるみたいで心臓の動きが忙しい。面白い話題が浮かばないよ~!

少しの沈黙が続いた。
電話の向こうから、椅子の軋みのような音が聞こえてきた。それにすら、私の胸は跳ねる。

『もし良かったらなんだけど、次はビデオ通話にしてみない? ……声を聞いていたら、莉央ちゃんの顔が見たくなる』

ちょっと甘えたような言い方で、それを口にした凪くんの表情を想像して、顔に熱が集まる。
その顔は、ずるい。いや、あくまで想像なんだけど。

「うん、次はビデオ通話にしようね」

顔を見ていたら、もっと平常心で通話できる気がしないんです。凪くんって罪深い。

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