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舞ちゃんに誘われて、今日はクラスの8人でカラオケに行くことになった。
割り引きチケットを貰ったそうで、顔の広い舞ちゃんは暇そうな人に声を掛けていったそう。
「莉央はここ」
ドリンクバーから戻ると、凛ちゃんの横に空席が出来ていた。じゃあ、そこにお邪魔しよう。
「何歌う?」
曲を入れてくれるつもりらしい。
人前で歌う自信はあんまりない。ノリが良さそうなのは……。
「“さくらんぼ”にしようかな。ママがよく車で流していたの」
あの曲は恋人同士の可愛い曲だよね。ちょっと羨ましい。
「ふーん、そういうの歌うんだ」
凛ちゃんに微笑まれると、こっちまで温かい気持ちになって微笑んじゃう。見つめ合っていたら、歌い終わった舞ちゃんがマイクを差し出してきた。
「はい、凛の番」
「うん」
凛ちゃんの選曲はBack numberの“瞬き”だった。
こういう曲を選ぶんだ。でも、凛ちゃんの優しさに合ってるかも。
低い声で囁くように歌うから、みんなしんみりと聞き入ってしまう。正直、かなり上手い。
「危うく、凛太郎に落ちかけた……」と原田くんが真面目な顔で言うものだから、笑いが起きた。
当の本人は「そんなに真面目に聞かれると恥ずい」と照れていた。
ふふ、凛ちゃん。君は照れたら耳が赤くなるのが癖なんだと気付いたよ。
「凛があんなに上手いと思わなかったー。その顔で攻撃力あるとかずるくない? もっと何か歌え!」
舞ちゃんの言葉に凛ちゃんは瞬きをして、こちらに目線を向けた。
「何を歌えばいい?」
「わたし?」
「うん、莉央が決めて」
「ええ?! ちょっと待ってね」
選曲パネルを手渡されるけど、何も思いつかない。
焦って、たまたま目に入った曲を口走る。
「アイネクライネ」
「いいよ、それ歌う」
快諾してくれて良かった。
「……アイネクライネか」と呟いていたのは聞こえなかった。
舞ちゃんがAdoを歌ったり、原田くんがアニソンを歌ったり、音楽の趣味が見えてきて面白かった。
「ちょっと飲み物をおかわりしてくるね」
グラスを持って部屋を出ようとすると、「俺も行く」と凛ちゃんが付いてきた。
みんなのリクエストでたくさん歌ったから、喉も渇いたよね。
「莉央ももっと歌えばいいのに」
「えー、上手じゃないから恥ずかしいよ」
「……もっと聞きたい」
そんなふうに言ってくれるの嬉しいな。
ドリンクバーで飲み物を選んでいると、うちの学校のジャージを着た男子たちがやって来た。会話の内容から部活帰りだと思う。
私たちのほうをじろじろと見てくるけど、見知った顔はいないので先輩かも。
「莉央、早く戻ろう」
遠慮のない視線が不快なのか、凛ちゃんは私を急かした。
そうだね、早く戻ったほうがいいかも。
凛ちゃんと並んで歩き始めた時だった。嫌だなって思っていた空気に春風が吹き込んだような、
「莉央ちゃん?」
と呼びかける声。
久しぶりに電話じゃない、凪くんの声を聞いた。
「偶然だね」
にこっと笑われて心臓が跳ねる。
何度か通話を重ねているのに、全然この胸の動悸は慣れてくれないようだ。今日もかっこいい。
「先輩たち、道を塞いでしまうので、早く部屋に戻ってください」
凪くんが上級生たちを部屋へと誘導する。なるほど、テニス部の人たちなんだね。
「どうも」
凛ちゃんがにっこりと笑って、お礼を言った。
「二人は今日も一緒なんだね」
凪くんもにこにこしている。
二人ともいつもより笑っていて楽しそうだな。
「クラスの子たちと来てるんだ。凛ちゃんが凄く上手なんだよ」
「へぇ。それは聞いてみたいな」
「凪くんは何を歌うのかな?」
音楽の話は聞いたことがないから、次の電話はその話にしようかな。恒例になりつつある通話を思い出して、頬がゆるむ。
教えてくれたアーティストが実に凪くんらしくて、自然と想像が膨らんだ。暫く立ち話をしてしまったけど、凛ちゃんは黙って隣で待っていてくれた。
「ごめん、先輩たち待ってるよね。またね」
「気にしなくていいのに。うん、また夜にね」
小さく手を振って別れる。
部屋へと戻っていると、ドアを開く前に凛ちゃんに呼び止められた。振り向いて見上げる。
「ん? どうしたの?」
なんだか表情が浮かない。まつ毛が影を落としていた。
さっきまで、にこにこしてたよね?
「……“また夜に”って何?」
一瞬、何のことか分からなかった。
そういえば、凛ちゃんに通話のことは話していなかったかな。
「最近、よく電話してるんだ」
ちょっと照れながら話したら、凛ちゃんは目を見開いた。
凄く驚いているのが伝わる。だって、
「……いつの間に、そんなに仲良くなったの」
呟きの声は震えていた。
割り引きチケットを貰ったそうで、顔の広い舞ちゃんは暇そうな人に声を掛けていったそう。
「莉央はここ」
ドリンクバーから戻ると、凛ちゃんの横に空席が出来ていた。じゃあ、そこにお邪魔しよう。
「何歌う?」
曲を入れてくれるつもりらしい。
人前で歌う自信はあんまりない。ノリが良さそうなのは……。
「“さくらんぼ”にしようかな。ママがよく車で流していたの」
あの曲は恋人同士の可愛い曲だよね。ちょっと羨ましい。
「ふーん、そういうの歌うんだ」
凛ちゃんに微笑まれると、こっちまで温かい気持ちになって微笑んじゃう。見つめ合っていたら、歌い終わった舞ちゃんがマイクを差し出してきた。
「はい、凛の番」
「うん」
凛ちゃんの選曲はBack numberの“瞬き”だった。
こういう曲を選ぶんだ。でも、凛ちゃんの優しさに合ってるかも。
低い声で囁くように歌うから、みんなしんみりと聞き入ってしまう。正直、かなり上手い。
「危うく、凛太郎に落ちかけた……」と原田くんが真面目な顔で言うものだから、笑いが起きた。
当の本人は「そんなに真面目に聞かれると恥ずい」と照れていた。
ふふ、凛ちゃん。君は照れたら耳が赤くなるのが癖なんだと気付いたよ。
「凛があんなに上手いと思わなかったー。その顔で攻撃力あるとかずるくない? もっと何か歌え!」
舞ちゃんの言葉に凛ちゃんは瞬きをして、こちらに目線を向けた。
「何を歌えばいい?」
「わたし?」
「うん、莉央が決めて」
「ええ?! ちょっと待ってね」
選曲パネルを手渡されるけど、何も思いつかない。
焦って、たまたま目に入った曲を口走る。
「アイネクライネ」
「いいよ、それ歌う」
快諾してくれて良かった。
「……アイネクライネか」と呟いていたのは聞こえなかった。
舞ちゃんがAdoを歌ったり、原田くんがアニソンを歌ったり、音楽の趣味が見えてきて面白かった。
「ちょっと飲み物をおかわりしてくるね」
グラスを持って部屋を出ようとすると、「俺も行く」と凛ちゃんが付いてきた。
みんなのリクエストでたくさん歌ったから、喉も渇いたよね。
「莉央ももっと歌えばいいのに」
「えー、上手じゃないから恥ずかしいよ」
「……もっと聞きたい」
そんなふうに言ってくれるの嬉しいな。
ドリンクバーで飲み物を選んでいると、うちの学校のジャージを着た男子たちがやって来た。会話の内容から部活帰りだと思う。
私たちのほうをじろじろと見てくるけど、見知った顔はいないので先輩かも。
「莉央、早く戻ろう」
遠慮のない視線が不快なのか、凛ちゃんは私を急かした。
そうだね、早く戻ったほうがいいかも。
凛ちゃんと並んで歩き始めた時だった。嫌だなって思っていた空気に春風が吹き込んだような、
「莉央ちゃん?」
と呼びかける声。
久しぶりに電話じゃない、凪くんの声を聞いた。
「偶然だね」
にこっと笑われて心臓が跳ねる。
何度か通話を重ねているのに、全然この胸の動悸は慣れてくれないようだ。今日もかっこいい。
「先輩たち、道を塞いでしまうので、早く部屋に戻ってください」
凪くんが上級生たちを部屋へと誘導する。なるほど、テニス部の人たちなんだね。
「どうも」
凛ちゃんがにっこりと笑って、お礼を言った。
「二人は今日も一緒なんだね」
凪くんもにこにこしている。
二人ともいつもより笑っていて楽しそうだな。
「クラスの子たちと来てるんだ。凛ちゃんが凄く上手なんだよ」
「へぇ。それは聞いてみたいな」
「凪くんは何を歌うのかな?」
音楽の話は聞いたことがないから、次の電話はその話にしようかな。恒例になりつつある通話を思い出して、頬がゆるむ。
教えてくれたアーティストが実に凪くんらしくて、自然と想像が膨らんだ。暫く立ち話をしてしまったけど、凛ちゃんは黙って隣で待っていてくれた。
「ごめん、先輩たち待ってるよね。またね」
「気にしなくていいのに。うん、また夜にね」
小さく手を振って別れる。
部屋へと戻っていると、ドアを開く前に凛ちゃんに呼び止められた。振り向いて見上げる。
「ん? どうしたの?」
なんだか表情が浮かない。まつ毛が影を落としていた。
さっきまで、にこにこしてたよね?
「……“また夜に”って何?」
一瞬、何のことか分からなかった。
そういえば、凛ちゃんに通話のことは話していなかったかな。
「最近、よく電話してるんだ」
ちょっと照れながら話したら、凛ちゃんは目を見開いた。
凄く驚いているのが伝わる。だって、
「……いつの間に、そんなに仲良くなったの」
呟きの声は震えていた。
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