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思ってもみなかった反応に小首を傾げる。
凛ちゃんはドアを押さえ、話を続けようとする。必然的に距離が近い。
「今までの莉央なら、何でも話してくれたのに。……なんで?」
感情の消えた顔で見下ろされると、固唾を呑むほどの迫力がある。
喉の奥から「どうしたの?」の一言が出てこない。
怖いとかではないの。ただ、吸い寄せられるように見てしまう。
「いつから? 教えて? ねぇ、莉央」
「……凛ちゃんが、2日ぶりに登校した日? たぶんだけど」
「……」
ぴくりと頬が動いた。
凛ちゃんの意識は数日前に戻ったようで、目の焦点が合っていない。
「そう、あの日」
「凛ちゃんはまだ体調も良くなかったみたいだし、また今度でいいかなって」
「ハッ」と息を吐いてから、「隠そうと思った訳ではないんだ?」と問いかけてくる。
うーんっと……
「うん、忘れてただけ」
恥ずかしくて頭を掻いてしまう。
いや、でも、凪くんと頻繁に連絡を取っているとか、どこから話せばいいのか分からないよね。
内容も凛ちゃんに話すようなものじゃないから。
「……隠されてたわけじゃないなら、いい」
一歩後ろに下がり、ドアから離れた。
「凛ちゃんがそんなに凪くんのことを気にしてくれていたなんて思わなかった」
いつでも優しいんだなって笑みが溢れてしまう。
友達として嬉しいなって思っちゃう。
「気にするよ。莉央のことだもん」
「そっかぁ」
キュッと眉間に皺を寄せ、凛ちゃんは微笑んだ。
「ずるい」と囁かれたけど意味が分からない。
……寂しくなったとか?
「凛ちゃんともお話する?」
「ちがう、そういうことじゃない!……いや、話したいっ。そう、話したいんだよ……」
慌てた様子は図星ということかな?
表情も忙しなくて、眉が垂れ下がっちゃってる。
「俺にも莉央の時間をちょうだいよ」なんて言われたら、拗ねてるのが丸わかりだよ?
「ちょっとでいいから、何時になってもいいから、1日の最後に莉央の“おやすみ”を聞かせて」
胸の奥がじんじんする。
こんなにも望まれているなんて、意外だった。
「いいよ。今日、電話するね」
そう返事をすれば、どこかホッとしたような顔をしていた。それを見ると口角が自然と上がる。
「凛ちゃんに甘えられるの、結構好きみたいだ」
素直に伝えると、なぜか凛ちゃんはよろめいて、ドアに頭をぶつけていた。
それに中にいたクラスメイトも気付いて、原田くんが飛び出してきた。
「え? 凛太郎!? どうした? そんなところに蹲って」
「……なんでもない」
顔面を押さえた凛ちゃんは「先に入っていて」と促した。
「莉央ちゃん、唐揚げとポテト頼んだから、食べなよ! どっちが好きー?」と原田くんは元気だ。本当にムードメイカーだと思う。
「莉央、帰ってきたー? 遅いから何かあったのかと思ったよー」
舞ちゃんがなぜかニヤニヤしている。見られている凛ちゃんは、追い払うような仕草をする。
「ねえねえ、何か一緒に歌おうしよ? うーんとね、古い曲だけど“CHE.R.RY”とかいけるー?」
「どんなサビだっけ?」
歌ってくれたサビに聞き覚えはある。これもママが好きなやつだ。
「サビだけなら歌えるかも」
「うん、じゃあ一緒に歌おうー」
“CHE.R.RY”は舞ちゃんがリードしてくれたから、歌っていて楽しかった。この歌詞の気持ち、ちょっと分かるかも。
凪くんとのやり取りを思い出す。
そんなことを考えていたからかな。
歌い終わると、テーブルの上に置いていたスマホが震えた。凪くんのアイコンと“ちょっと相談”の文字が通知されている。なんだろう?
【良かったら、抜け出さない? 一緒に帰りたい】
みんなから見えないように画面を咄嗟に隠した。
頭で考えるよりも、そう身体が動いてしまった。秘密の相談みたいでドキドキしちゃうよ……!
「あの、舞ちゃん」
「ん?どうしたー?」
「ちょっと用事が出来たの。先に帰ってもいいかな?」
「いいよ、いいよー。気をつけて帰りなね」
理由を聞かれなくて、良かった。
途中で帰っちゃってごめんね。
鞄を持って部屋の外に出ると、まだそこに凛ちゃんは座っていた。ぼんやりしていて、どうしたんだろう?
「凛ちゃん?」
「うん」
「先に帰るね」
「うん」
「大丈夫?」
「うん」
あれ? 心ここにあらず?
「……約束」とぽつり。
何だろうと考えて、すぐに思い出した。
「うん、夜に連絡するね」
「うん……、絶対だからね」
視線だけがこちらに向けられて、凛ちゃんは床に張り付けられているかのように動かない。
その様子が気にならない訳ではないけど、凪くんを待たせているから行かなきゃ。
「ばいばい、またね」
足早に帰った私は、凛ちゃんの呟きを拾うことはなかった。
「ずるいよ、ほんと……」
凛ちゃんはドアを押さえ、話を続けようとする。必然的に距離が近い。
「今までの莉央なら、何でも話してくれたのに。……なんで?」
感情の消えた顔で見下ろされると、固唾を呑むほどの迫力がある。
喉の奥から「どうしたの?」の一言が出てこない。
怖いとかではないの。ただ、吸い寄せられるように見てしまう。
「いつから? 教えて? ねぇ、莉央」
「……凛ちゃんが、2日ぶりに登校した日? たぶんだけど」
「……」
ぴくりと頬が動いた。
凛ちゃんの意識は数日前に戻ったようで、目の焦点が合っていない。
「そう、あの日」
「凛ちゃんはまだ体調も良くなかったみたいだし、また今度でいいかなって」
「ハッ」と息を吐いてから、「隠そうと思った訳ではないんだ?」と問いかけてくる。
うーんっと……
「うん、忘れてただけ」
恥ずかしくて頭を掻いてしまう。
いや、でも、凪くんと頻繁に連絡を取っているとか、どこから話せばいいのか分からないよね。
内容も凛ちゃんに話すようなものじゃないから。
「……隠されてたわけじゃないなら、いい」
一歩後ろに下がり、ドアから離れた。
「凛ちゃんがそんなに凪くんのことを気にしてくれていたなんて思わなかった」
いつでも優しいんだなって笑みが溢れてしまう。
友達として嬉しいなって思っちゃう。
「気にするよ。莉央のことだもん」
「そっかぁ」
キュッと眉間に皺を寄せ、凛ちゃんは微笑んだ。
「ずるい」と囁かれたけど意味が分からない。
……寂しくなったとか?
「凛ちゃんともお話する?」
「ちがう、そういうことじゃない!……いや、話したいっ。そう、話したいんだよ……」
慌てた様子は図星ということかな?
表情も忙しなくて、眉が垂れ下がっちゃってる。
「俺にも莉央の時間をちょうだいよ」なんて言われたら、拗ねてるのが丸わかりだよ?
「ちょっとでいいから、何時になってもいいから、1日の最後に莉央の“おやすみ”を聞かせて」
胸の奥がじんじんする。
こんなにも望まれているなんて、意外だった。
「いいよ。今日、電話するね」
そう返事をすれば、どこかホッとしたような顔をしていた。それを見ると口角が自然と上がる。
「凛ちゃんに甘えられるの、結構好きみたいだ」
素直に伝えると、なぜか凛ちゃんはよろめいて、ドアに頭をぶつけていた。
それに中にいたクラスメイトも気付いて、原田くんが飛び出してきた。
「え? 凛太郎!? どうした? そんなところに蹲って」
「……なんでもない」
顔面を押さえた凛ちゃんは「先に入っていて」と促した。
「莉央ちゃん、唐揚げとポテト頼んだから、食べなよ! どっちが好きー?」と原田くんは元気だ。本当にムードメイカーだと思う。
「莉央、帰ってきたー? 遅いから何かあったのかと思ったよー」
舞ちゃんがなぜかニヤニヤしている。見られている凛ちゃんは、追い払うような仕草をする。
「ねえねえ、何か一緒に歌おうしよ? うーんとね、古い曲だけど“CHE.R.RY”とかいけるー?」
「どんなサビだっけ?」
歌ってくれたサビに聞き覚えはある。これもママが好きなやつだ。
「サビだけなら歌えるかも」
「うん、じゃあ一緒に歌おうー」
“CHE.R.RY”は舞ちゃんがリードしてくれたから、歌っていて楽しかった。この歌詞の気持ち、ちょっと分かるかも。
凪くんとのやり取りを思い出す。
そんなことを考えていたからかな。
歌い終わると、テーブルの上に置いていたスマホが震えた。凪くんのアイコンと“ちょっと相談”の文字が通知されている。なんだろう?
【良かったら、抜け出さない? 一緒に帰りたい】
みんなから見えないように画面を咄嗟に隠した。
頭で考えるよりも、そう身体が動いてしまった。秘密の相談みたいでドキドキしちゃうよ……!
「あの、舞ちゃん」
「ん?どうしたー?」
「ちょっと用事が出来たの。先に帰ってもいいかな?」
「いいよ、いいよー。気をつけて帰りなね」
理由を聞かれなくて、良かった。
途中で帰っちゃってごめんね。
鞄を持って部屋の外に出ると、まだそこに凛ちゃんは座っていた。ぼんやりしていて、どうしたんだろう?
「凛ちゃん?」
「うん」
「先に帰るね」
「うん」
「大丈夫?」
「うん」
あれ? 心ここにあらず?
「……約束」とぽつり。
何だろうと考えて、すぐに思い出した。
「うん、夜に連絡するね」
「うん……、絶対だからね」
視線だけがこちらに向けられて、凛ちゃんは床に張り付けられているかのように動かない。
その様子が気にならない訳ではないけど、凪くんを待たせているから行かなきゃ。
「ばいばい、またね」
足早に帰った私は、凛ちゃんの呟きを拾うことはなかった。
「ずるいよ、ほんと……」
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