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1章
第9話 霊巣の体内時計の魔針がパージでエターナル
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注;第9話はこの世界における魔法の仕組みについて詳しく説明しています。
それに伴い専門用語もふんだんに盛り込まれているため、専門用語が苦手な方はスキップして第10話へ進んでください。
AM10:05 フレア・ロングコート
なんでこうなるのよ・・・・。
私は牢屋の鉄格子を掴みながらうんざりしてため息をつく。
グリーンガーデンの連中に捕まった私とアロウは屋敷の牢屋に閉じ込められている。
濡れ衣だといくら叫んでもあいつらは聞く耳を持たず(さりげなく私の身体を触りながら)無理やり連行した。
牢屋はベッドと便器が一つずつ置かれているだけだ。
もちろん仕切りもない。
あの豚どもはそんな密室に男女を一緒に閉じ込めている。
バカなの!?イカれてるの!?
いくら捕まったとは言え人権はあるでしょ!
ふざけんじゃないわよ!!
大体こっちは急いでるってのに!
私はホワイトベルのことを思い出す。
ここの領主もホワイトベルと同じセントラルギルドの人間だ。
このままじゃホワイトベルに引き渡されるわね。
夜が明ける前に・・・・というか便意を催す前にここから脱出しないと。
「おいフレア」
アロウが耳元で囁いてくる。
その声色は心なしか怯えているように感じる。
「なに?」
「いや、あいつのことなんだけどさ」
アロウはチラリと横を見る。
「・・・・分かってるわ。いい、目を合わせちゃダメよ」
アロウが小さく頷く。
私だって本当はずっと気になってる。
今この牢屋には私とアロウとそしてもう1人いる。
あの小屋に居たのは私とアロウとチンピラ2人の合計4人だったはずだ。
その内、私が懲らしめたチンピラ2人は闇魔法の解呪をしていてここにはいない。
つまりこの牢屋に入れられているのは私達2人だけのはず。
だけど・・・・
目を動かして横を見ると・・・・”そいつ”はいた。
カビだらけの壁に同化しそうな黒いフードを深く被り口元はバンダナで覆っていて顔を隠している。
その身なりは例えるなら謎のウイルスに侵されて凶暴化した村人が徘徊する村で”ウエルカム!!”と言いながら武器を売ってくれそうな闇商人みたいな風貌だ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
そんな風貌の男が無言でじっと立っている。
・・・・・・不気味すぎるわよ!
なんなのよコイツ!?
「ねえ、あいつっていつからいたのよ?」
「馬小屋の前で捕まった時にはもういたと思う。煙で見えなかったけど多分馬小屋が燃えたとき1階に居たんじゃないかな・・・・」
「じゃあ・・・・・」
状況をまとめて推理してみよう。
・・・・いや、考えるまでもないわね。
ぜっっっっっったいに、こいつが火を点けたんだわ!
大体この格好見ればこいつが犯人だってすぐ分かるわよ!
一体、なにが目的なのよ!?
思いっきり、ぶん殴ってなりたい!
・・・・だけど
改めて男を見る。
体格はアロウより頭一つ大きい。
・・・・強そうね・・・・。
この状況で襲われたら2対1でも勝てるかどうか分からないわ。
ムカツクけどこの密室でやりあうのは得策じゃない。
まあ向こうもさっきからこっちには興味がなさそうだし、ここはお互い不干渉といきましょう。
・・・・ていうか、もしかしてこいつ寝てない?
私は少し体勢を低くしておそるおそる男の目元を覗き込んでみた。
見ると案の定、男は目を閉じている。
どういう神経してんのよ!
ムカツクわね!
・・・・まあ、でも、せっかく寝てくれてるんならそれに越したことはないわね。
こいつが寝てる間に一刻も早くここから出ないと。
取りあえずこの男のことは放って置いてここから出る方法を考えよう。
まずはこの扉ね。
「ねえアロウ。あんたピッキングとかできない?」
「ただの猟師だぜ。できるわけないだろ」
だよね。
そうなると力づくでこじ開けるしかない。
古い鉄格子だし魔法が使えればわけないんだけど・・・・。
私は床を見る。
う~ん、これは・・・・。
多分無理だろうけど手のひらを突き出して魔法を発動させようとする。
だけど・・・・やっぱり出来ない。
「魔法は使えないぜ。床に魔法陣が張られてるからな」
「・・・・分かってる。試してみただけよ」
牢屋の床には境界魔法で作られた魔法陣が施されている。
この魔法陣の上にいる限り魔法は使えそうにない。
「どうやら体内時計の機能を妨害する魔法陣みたいね」
カギは開けられない、魔法も使えない。
ダメだ。万策尽きた。
私はため息をついてへたり込む。
・・・・となると、気は乗らないけどアレしかないか。
「体内時計か・・・・これで俺たちはエターナルを創り出してるんだよな?」
私が心のうちである決意を固めているとアロウが胸に手を当てながら聞いてきた。
「そうよ。私達人間は魔物から放出されてる”エターナル化光素”を吸収して霊巣の中でそれぞれの属性に応じたエターナルに変えてるの。それを可能にしてるのが霊巣に刻まれている魔法陣”体内時計”よ」
「何で体内時計って言うんだろうな?」
「時計みたいな形をしてるからよ」
「お前見たことあるのか?」
「資料でだけどね」
アロウが見たことないのも無理はない。
なぜなら体内時計は賢人魔法の分析を使わないと見ることが出来ない。
私も実際に本物を見ることは出来ないけど、学生時代に授業で模写されたものを見た事がある。
11時と12時が欠けている以外は確かに時計みたいな形をしていた。
「確か体内時計ってみんな同じ形なんだろ。じゃあ何で俺みたいなEランクの出来損ないが生まれるんだ?」
「なんでって、アロウ、あんたひょっとして”霊教育”受けたことないの?」
「ここには学校なんてないからな。さっきお前が説明したくらいのざっくりとした知識しかないよ」
そうか、こんな田舎の人間には「人間はエターナル化光素を吸ってエターナルを吐く」くらいのざっくりとした知識しか教えられていないのか。
グリーンガーデンのチンピラたちは流石に教わってるでしょうけど。
まあ普通に暮らす分には知っててどうなるって物でもないんだけど。
「なあ、フレア。よかったら魔法について詳しく教えてくれないか?」
「えっ、私が?」
「ああ。俺もこれから旅に出るんだ。魔法のことは詳しく知っておいて損はないだろ」
「う~ん、そうね。他にすることもなさそうだし。いいわよ」
人に教えるのは得意じゃないけど、まあそんな難しい話でもないし大丈夫かな。
「えっと、さっきのエターナル化光素をエターナルに変える話だけどね、もう少し仕組みを細かく言うと霊巣に送り込まれたエターナル化光素を体内時計の魔針で魔力反応を起こしてエターナルに変えてるのよ」
「魔針???魔力反応???なんだそれ?」
「魔針って言うのは体内時計についてる時計の針みたいなものよ。体内時計の形は皆同じだけど魔針は人それぞれ長さも、向きも、本数も違うわ。そしてこの魔針がそれぞれの属性とランクを決めてるの」
「どうやって?」
「簡単よ。魔針の長短でランクが決まるの。後は体内時計の何時の方角に向いているかで属性が変わるのよ」
エターナルには1時光魔法、2時闇魔法、3時大地魔法、4時大気魔法、5時境界魔法、6時変化魔法、7時賢人魔法、8時獣魔法、9時空魔法、10時星魔法の合計10属性がある。
そして私達の世界はこの10属性のエターナルで構成されている。
「私の場合だと2時闇魔法のAと4時大気魔法のCだから魔針が2本ついてる。それぞれ向きと長さは極太の魔針が2時の方角に向いていて、人並みの魔針が4時の方角に向いているの」
「・・・・・じゃあ俺は・・・・」
「あんたは9時空魔法のEランクだから、針は1本。短小の魔針が9時の方角に向いてるの」
「・・・・・・・・・・・」
「で、魔力反応って言うのはエターナル化光素をエターナルに変える霊理現象のことよ。この魔力反応の強さと性質は魔針の大きさと向きで変わるの」
「・・・・・・・・・・・」
「魔針が9時の方角を剥いていたら”空のエターナル”を魔力反応するの。魔針が大きければ大きいほど魔力反応も大きくなるの。この魔力反応の大きさで生み出せるエターナルの濃度が変わるのよ。そしてエターナルの濃度が濃いほど強い魔法を発動できるの。だから魔針の大きさで魔法ランクが決められてるのよ」
「・・・・・・・・・・・」
「つまり、あんたはファンタスティックが小さいからエクスプロージョンしても薄いエターナルしか出せないの。分かった?」
「・・・・・・・・・・・なるほど」
どうやら理解してもらえたようだ。
人にものを教えるなんてアルにしかしたことなかったから不安だったけど、上手く出来たみたいね。
こういった霊知識は本来、魔法体育の授業で学ぶものだけど。
「ファンタスティックの大きさって、変えられないのか?」
アロウがわずかな希望に縋るような目で聞いてくる。
答えは自分でもなんとなく分かっているんでしょうね。
「・・・・無理よ」
アロウは小さくそうかと呟く。
やっぱり落ち込んじゃったか。
でもファンタスティックはこの世界の”永遠”が決めているものだし、私にはアロウのファンタスティックを大きくしてあげることはできない。
かわいそうだけどアロウのファンタスティックは一生、小さいままだ。
こればかりはどうしようもない。
私達はただ与えられた針で時を刻むだけ。
ただそれだけの存在だ・・・・。
アロウは俯いたままだ。
ここから抜け出す方法は思いついてくれそうにないわね。
やっぱり気は乗らないけど私がやるしかない。
こういう時は色仕掛よ!
幸い、私は魅力的だ。
ここに連行される時も桃のようなお尻を豚どもに触られた。
あいつらが相手なら上手くいくはず。
「なあフレア。・・・・改めて聞きたいんだけど」
頭の中で作戦を練っているとアロウがまた聞いてきた。
「何?霊知識のこと?」
「いや、ホワイトベルの件だ。何でお前追われてるんだ?」
「・・・・・」
不意打ちとは卑怯ね。
完全に油断してたわ。
・・・・て、そうか、火事があったからまだ話してなかったわね。
「確かお前ブルーウォーターから来たんだよな。ブルーウォーターで何かやったのか?」
・・・・まあ普通は私のことを犯罪者だと思うわよね。
そんなのと一緒の牢屋に入れられているとなると不安か・・・・。
「・・・・私は別に犯罪を犯したワケじゃないのよ。ホワイトベルはただ上からの命令で私を連れ戻そうとしてるだけ」
「連れ戻す?ホワイトベルが?何で?」
「・・・・私が、嫁ぎ先から逃げてきたからよ」
それに伴い専門用語もふんだんに盛り込まれているため、専門用語が苦手な方はスキップして第10話へ進んでください。
AM10:05 フレア・ロングコート
なんでこうなるのよ・・・・。
私は牢屋の鉄格子を掴みながらうんざりしてため息をつく。
グリーンガーデンの連中に捕まった私とアロウは屋敷の牢屋に閉じ込められている。
濡れ衣だといくら叫んでもあいつらは聞く耳を持たず(さりげなく私の身体を触りながら)無理やり連行した。
牢屋はベッドと便器が一つずつ置かれているだけだ。
もちろん仕切りもない。
あの豚どもはそんな密室に男女を一緒に閉じ込めている。
バカなの!?イカれてるの!?
いくら捕まったとは言え人権はあるでしょ!
ふざけんじゃないわよ!!
大体こっちは急いでるってのに!
私はホワイトベルのことを思い出す。
ここの領主もホワイトベルと同じセントラルギルドの人間だ。
このままじゃホワイトベルに引き渡されるわね。
夜が明ける前に・・・・というか便意を催す前にここから脱出しないと。
「おいフレア」
アロウが耳元で囁いてくる。
その声色は心なしか怯えているように感じる。
「なに?」
「いや、あいつのことなんだけどさ」
アロウはチラリと横を見る。
「・・・・分かってるわ。いい、目を合わせちゃダメよ」
アロウが小さく頷く。
私だって本当はずっと気になってる。
今この牢屋には私とアロウとそしてもう1人いる。
あの小屋に居たのは私とアロウとチンピラ2人の合計4人だったはずだ。
その内、私が懲らしめたチンピラ2人は闇魔法の解呪をしていてここにはいない。
つまりこの牢屋に入れられているのは私達2人だけのはず。
だけど・・・・
目を動かして横を見ると・・・・”そいつ”はいた。
カビだらけの壁に同化しそうな黒いフードを深く被り口元はバンダナで覆っていて顔を隠している。
その身なりは例えるなら謎のウイルスに侵されて凶暴化した村人が徘徊する村で”ウエルカム!!”と言いながら武器を売ってくれそうな闇商人みたいな風貌だ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
そんな風貌の男が無言でじっと立っている。
・・・・・・不気味すぎるわよ!
なんなのよコイツ!?
「ねえ、あいつっていつからいたのよ?」
「馬小屋の前で捕まった時にはもういたと思う。煙で見えなかったけど多分馬小屋が燃えたとき1階に居たんじゃないかな・・・・」
「じゃあ・・・・・」
状況をまとめて推理してみよう。
・・・・いや、考えるまでもないわね。
ぜっっっっっったいに、こいつが火を点けたんだわ!
大体この格好見ればこいつが犯人だってすぐ分かるわよ!
一体、なにが目的なのよ!?
思いっきり、ぶん殴ってなりたい!
・・・・だけど
改めて男を見る。
体格はアロウより頭一つ大きい。
・・・・強そうね・・・・。
この状況で襲われたら2対1でも勝てるかどうか分からないわ。
ムカツクけどこの密室でやりあうのは得策じゃない。
まあ向こうもさっきからこっちには興味がなさそうだし、ここはお互い不干渉といきましょう。
・・・・ていうか、もしかしてこいつ寝てない?
私は少し体勢を低くしておそるおそる男の目元を覗き込んでみた。
見ると案の定、男は目を閉じている。
どういう神経してんのよ!
ムカツクわね!
・・・・まあ、でも、せっかく寝てくれてるんならそれに越したことはないわね。
こいつが寝てる間に一刻も早くここから出ないと。
取りあえずこの男のことは放って置いてここから出る方法を考えよう。
まずはこの扉ね。
「ねえアロウ。あんたピッキングとかできない?」
「ただの猟師だぜ。できるわけないだろ」
だよね。
そうなると力づくでこじ開けるしかない。
古い鉄格子だし魔法が使えればわけないんだけど・・・・。
私は床を見る。
う~ん、これは・・・・。
多分無理だろうけど手のひらを突き出して魔法を発動させようとする。
だけど・・・・やっぱり出来ない。
「魔法は使えないぜ。床に魔法陣が張られてるからな」
「・・・・分かってる。試してみただけよ」
牢屋の床には境界魔法で作られた魔法陣が施されている。
この魔法陣の上にいる限り魔法は使えそうにない。
「どうやら体内時計の機能を妨害する魔法陣みたいね」
カギは開けられない、魔法も使えない。
ダメだ。万策尽きた。
私はため息をついてへたり込む。
・・・・となると、気は乗らないけどアレしかないか。
「体内時計か・・・・これで俺たちはエターナルを創り出してるんだよな?」
私が心のうちである決意を固めているとアロウが胸に手を当てながら聞いてきた。
「そうよ。私達人間は魔物から放出されてる”エターナル化光素”を吸収して霊巣の中でそれぞれの属性に応じたエターナルに変えてるの。それを可能にしてるのが霊巣に刻まれている魔法陣”体内時計”よ」
「何で体内時計って言うんだろうな?」
「時計みたいな形をしてるからよ」
「お前見たことあるのか?」
「資料でだけどね」
アロウが見たことないのも無理はない。
なぜなら体内時計は賢人魔法の分析を使わないと見ることが出来ない。
私も実際に本物を見ることは出来ないけど、学生時代に授業で模写されたものを見た事がある。
11時と12時が欠けている以外は確かに時計みたいな形をしていた。
「確か体内時計ってみんな同じ形なんだろ。じゃあ何で俺みたいなEランクの出来損ないが生まれるんだ?」
「なんでって、アロウ、あんたひょっとして”霊教育”受けたことないの?」
「ここには学校なんてないからな。さっきお前が説明したくらいのざっくりとした知識しかないよ」
そうか、こんな田舎の人間には「人間はエターナル化光素を吸ってエターナルを吐く」くらいのざっくりとした知識しか教えられていないのか。
グリーンガーデンのチンピラたちは流石に教わってるでしょうけど。
まあ普通に暮らす分には知っててどうなるって物でもないんだけど。
「なあ、フレア。よかったら魔法について詳しく教えてくれないか?」
「えっ、私が?」
「ああ。俺もこれから旅に出るんだ。魔法のことは詳しく知っておいて損はないだろ」
「う~ん、そうね。他にすることもなさそうだし。いいわよ」
人に教えるのは得意じゃないけど、まあそんな難しい話でもないし大丈夫かな。
「えっと、さっきのエターナル化光素をエターナルに変える話だけどね、もう少し仕組みを細かく言うと霊巣に送り込まれたエターナル化光素を体内時計の魔針で魔力反応を起こしてエターナルに変えてるのよ」
「魔針???魔力反応???なんだそれ?」
「魔針って言うのは体内時計についてる時計の針みたいなものよ。体内時計の形は皆同じだけど魔針は人それぞれ長さも、向きも、本数も違うわ。そしてこの魔針がそれぞれの属性とランクを決めてるの」
「どうやって?」
「簡単よ。魔針の長短でランクが決まるの。後は体内時計の何時の方角に向いているかで属性が変わるのよ」
エターナルには1時光魔法、2時闇魔法、3時大地魔法、4時大気魔法、5時境界魔法、6時変化魔法、7時賢人魔法、8時獣魔法、9時空魔法、10時星魔法の合計10属性がある。
そして私達の世界はこの10属性のエターナルで構成されている。
「私の場合だと2時闇魔法のAと4時大気魔法のCだから魔針が2本ついてる。それぞれ向きと長さは極太の魔針が2時の方角に向いていて、人並みの魔針が4時の方角に向いているの」
「・・・・・じゃあ俺は・・・・」
「あんたは9時空魔法のEランクだから、針は1本。短小の魔針が9時の方角に向いてるの」
「・・・・・・・・・・・」
「で、魔力反応って言うのはエターナル化光素をエターナルに変える霊理現象のことよ。この魔力反応の強さと性質は魔針の大きさと向きで変わるの」
「・・・・・・・・・・・」
「魔針が9時の方角を剥いていたら”空のエターナル”を魔力反応するの。魔針が大きければ大きいほど魔力反応も大きくなるの。この魔力反応の大きさで生み出せるエターナルの濃度が変わるのよ。そしてエターナルの濃度が濃いほど強い魔法を発動できるの。だから魔針の大きさで魔法ランクが決められてるのよ」
「・・・・・・・・・・・」
「つまり、あんたはファンタスティックが小さいからエクスプロージョンしても薄いエターナルしか出せないの。分かった?」
「・・・・・・・・・・・なるほど」
どうやら理解してもらえたようだ。
人にものを教えるなんてアルにしかしたことなかったから不安だったけど、上手く出来たみたいね。
こういった霊知識は本来、魔法体育の授業で学ぶものだけど。
「ファンタスティックの大きさって、変えられないのか?」
アロウがわずかな希望に縋るような目で聞いてくる。
答えは自分でもなんとなく分かっているんでしょうね。
「・・・・無理よ」
アロウは小さくそうかと呟く。
やっぱり落ち込んじゃったか。
でもファンタスティックはこの世界の”永遠”が決めているものだし、私にはアロウのファンタスティックを大きくしてあげることはできない。
かわいそうだけどアロウのファンタスティックは一生、小さいままだ。
こればかりはどうしようもない。
私達はただ与えられた針で時を刻むだけ。
ただそれだけの存在だ・・・・。
アロウは俯いたままだ。
ここから抜け出す方法は思いついてくれそうにないわね。
やっぱり気は乗らないけど私がやるしかない。
こういう時は色仕掛よ!
幸い、私は魅力的だ。
ここに連行される時も桃のようなお尻を豚どもに触られた。
あいつらが相手なら上手くいくはず。
「なあフレア。・・・・改めて聞きたいんだけど」
頭の中で作戦を練っているとアロウがまた聞いてきた。
「何?霊知識のこと?」
「いや、ホワイトベルの件だ。何でお前追われてるんだ?」
「・・・・・」
不意打ちとは卑怯ね。
完全に油断してたわ。
・・・・て、そうか、火事があったからまだ話してなかったわね。
「確かお前ブルーウォーターから来たんだよな。ブルーウォーターで何かやったのか?」
・・・・まあ普通は私のことを犯罪者だと思うわよね。
そんなのと一緒の牢屋に入れられているとなると不安か・・・・。
「・・・・私は別に犯罪を犯したワケじゃないのよ。ホワイトベルはただ上からの命令で私を連れ戻そうとしてるだけ」
「連れ戻す?ホワイトベルが?何で?」
「・・・・私が、嫁ぎ先から逃げてきたからよ」
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