147 / 411
第147話 リージョン帝国への出立③
しおりを挟む
「ぶ、無礼な発言をお許し下さい」
顔を上げ、泣きそうな表情で謝罪する転移組のリーダー、フィアに俺は少し笑ってしまう。
――と、いうより本当にいいの? 謝罪しちゃって?
その場合、転移組のリーダーがセントラル王国の王太子殿下を相手に無礼な発言をしていたという事を王太子殿下本人の前で認める事になっちゃうんだけど?
さっきの言葉は、多分、キャンピングカーを保有している俺に対して言ったんだよね?
もしかして、本当は王太子殿下がキャンピングカーに乗っている事を知っていて、王太子殿下の事を『お前』呼ばわりしたの?
そういえば、『おい。俺の話を聞いているのかっ! 俺もその乗り物に乗せろっ! 俺は転移組のリーダー、フィア様だぞっ!』とか言っていたっけ?
もしかして、あれも王太子殿下に言っていたの?
王太子殿下にマウント取りに行ったの??
これって不敬罪?
不敬罪で処刑されちゃう奴??
いやーそれだと非常に困るな。非常に困る。
俺はただ王太子殿下に『この人がこれに乗せろと言っていますが、いかが致しますか?』と聞いただけなのに大事《おおごと》になってきた。
本気で首チョンパされそうな勢いだ。
御付きの騎士達が冷めた視線を転移組のリーダーであるフィアに向けている。
「困りますね。これから上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』を攻略しに向かおうという時にこの様な騒ぎを起こされては……」
王太子殿下の言葉にぐうの音も出ないフィアとルート。
ため息交じりに王太子殿下が「不敬罪……どうしましょう?」と呟くと、フィアとルートは頭を地面に擦り付け土下座した。
「「何卒……何卒、お許し下さい……」」
綺麗な土下座だ。
流石は、座礼の最敬礼と呼ばれているだけの事はある。
しかし、それが伝わるのは日本を含むアジアでのお話だ。
ここはアジアではない。ゲーム世界にあるセントラル王国。
土下座文化のない国の人に対して、急に地面に頭を着けて平伏されても困るだろう。
正直、ビビるか困惑するだけだ。何やってんのこの人……見たいな。
現に王太子殿下は混乱している。
「彼等は一体……何をしているのですか?」
仕方ないので、俺がフォローして上げる事にしよう。
矮小なプライドをかなぐり捨てて土下座したというのに『彼等は一体、何をしているのですか?』と謝罪をしているのに謝罪が伝わらないのは流石に可哀想だ。
確か、武家社会において土下座は『そのまま斬首されても異存はない』という意味合いがあった筈。なので俺は、それをそのまま伝えて上げる事にした。
「彼等が行っているのは、土下座という『斬首されても異存はない』という意味合いにある礼式の一つです。彼等は斬首されても構わないから許してほしいと、そう願っているのでしょう」
俺がそう言った瞬間、フィアとルートが顔を上げ、土下座を止めた。
斬首されたくなかった様だ。土下座を止めてしまったという事は深い謝罪や請願の意を表していた訳でもないらしい。
王太子殿下評価は下がる一方である。
そんな事よりも……。
「殿下。冒険者協会の馬車が出ます。我々もそろそろ行かなくては……」
「そうですね……」
付き添いの騎士の言葉に王太子殿下が頷く。
そして、フィアとルートに視線を向けると、ただ一言こう告げた。
「先ほどの無礼な発言は聞かなかった事にします。しかし、次はないと思いなさい」
王太子殿下に対し、直接『お前』呼ばわりして、この程度のお咎めで済むとは中々、運の良い奴等だ。まあでも、『御前《おんまえ》』と言った場合は、丁寧語に当たるから微妙な所である。
まあすぐに地獄を見る事になるだろうから、俺としてもこの件に関しては関心が薄い。というより、どうでもいいというのが本心である。
「……それでは、私はこれで。数日後の上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』の攻略、楽しみにしていますよ。失敗した……等という事は無いようにお願いしますね?」
「「…………っ!?」」
流石は王太子殿下だ。
デカい釘を転移組のリーダーと副リーダーであるフィアとルートに打ち込んだ。
これで奴等は背水の陣に勝手に置かれた。
攻略できなかったらどうなるか、今から楽しみだ。
俺が笑いを堪えていると、王太子殿下はフィアとルートに背を向け話しかけてくる。
「それでは、操縦をお願いします」
「はい。お任せ下さい」
そして、王太子殿下は俺にキャンピングカーの運転を依頼すると、騎士二人を連れてキャンピングカーの中に入っていく。
ちなみに、この大型キャンピングカーを運転するのは普通免許を持っている俺だ。
なお、普通免許はこの国では通用しないし、許可も要らない。
何故なら、この大型キャンピングカーを持っているのはこの国で俺だけなのだから。
ポカンとした表情を浮かべながら、俺達が出発するのを見ているフィアとルートを残し、大型キャンピングカーに乗り込むと、俺はエンジンをかける。
ちなみにこの大型キャンピングカーは、一台当たり五千万円の特注品だ。
キャンピングカーと言ってはいるが、これはアメリカでいう所のモーターホーム。
つまり、長期に渡って快適な生活ができる車両という事である。
当然の事ながらキッチン、シャワー室、トイレは当然の如く完備。
トイレはウォッシュレットだし、キッチンのコンロはIH。テレビもソファーもテーブルも揃えてある上、車外にある梯子を上ってバスの上に出れば、夜、満天の星空を楽しむ事もできる。
更に冷蔵庫には元の世界で販売されている酒やレトルト食品。棚にはボードゲームやゲームなどもある。尚、テレビは電波が通じない上、言語が違うので、とりあえず、自分の好きなアニソンやら最新の曲なんかをBGM代わりに流している。
本来、『ああああ』達の中から一人運転手を選ぼうと思ってこれを購入したのだが、奴等は揃いも揃って普通免許を取得していなかった。
その理由を聞いて見た所、引き籠っていたから取得すら考えていなかった様だ。
しかも、馬車は退屈なのでこのキャンピングカーでリージョン帝国に向かおうとした所、王太子殿下にバレてしまい護衛を兼ねて乗せていく事になってしまった。
馬車の速度は精々、時速十キロメートル位なので、殆ど、徐行でリージョン帝国に向かう様なものだ。あまりに遅くて先が思いやられる。
元の世界で、そんな速度で走れば即クラクションを鳴らされるレベルだ。
王太子殿下には、一応、シャワー室やトイレ、ボードゲームの使い方等は教えておいたが、超心配である。
騎士達も、武装を解かなければ窮屈なのか、最低限の武装に留め、キャンピングカーの運転をする俺をよそにボードゲームを楽しんでいる。
何故か一緒に着いてきた協会長に至っては、冷蔵庫に入っている日本酒やワインを飲み始めた。フロントミラーに奴が浮かべる愉悦の表情が目に焼き付く。
一応、転移組と冷蔵庫組への報復を兼ねた仕事だから受けてやったが、今、激しく後悔している。
正直、お前等の接待する為に……運転手をする為にこの大型キャンピングカーを買った訳じゃねーぞと言った気分だ。夜になったら絶対飲み明かしてやる。
次の日、飲酒運転扱いされない程度に……。
「しかし、暇だ……」
まさか、大型キャンピングカーを徐行運転で運転する事になろうとは思いもしなかった。遅いな馬車……あともう十キロ位早く走れよという理不尽な気持ちが湧いてくる。
だが、これも中々する事のできない体験だ。
前後を馬車に挟まれリージョン帝国に大型キャンピングカーで向かうなんて機会は絶対ない。
とはいえ、以前、リージョン帝国に行った時は、エレメンタルの背に乗って尋常じゃないスピードで行った為、数時間で到着できたが、このスピードでは無理そうだ。
こうなったら、これも経費に付けよう。
この大型キャンピングカーに掛った費用もすべて必要経費として計上しよう。
まったく問題無い筈だ。
だって、あいつ等、俺が運転する大型キャンピングカーの中で酒飲みながらゲームに興じているんだから……。
俺の酒を飲み、食い散らかし、ゲームに興じているんだ。
当然、経費だ。もはや護衛云々の話じゃない。
もし経費だと認められなかったら国を滅ぼしてやる。
冗談じゃないぞ?
エレメンタル達が付いている俺ならできるからな?
国の中心で上級エレメンタルを数体放てば、国は大混乱だ。
冒険者や騎士にエレメンタルを討伐する事ができるかも怪しいものである。
まあ、その分、転移組と冷蔵庫組の借金が増えると思えばマシなのか?
そもそも俺は、転移組と冷蔵庫組をぶっ潰す為にここにいる。
うん。そう考えれば、万々歳じゃないか。
何ならこの大型キャンピングカーが壊れてくれれば、更なる絶望を奴等に与える事ができる。まあ、その場合、俺も絶望しそうだが、まだあと七台持っているからその辺りは大丈夫だ。保存用、観賞用、実用用、布教用に二台ずつ買ってある。
ついでにだ。この大型キャンピングカーの後ろには、騎士専用のキャンピングトレーラーを引いている。
これは、王太子殿下が他の騎士にもこの体験をさせて上げたいという我儘を言ったから仕方がなく実現して差し上げたものだ。
もし、それを言ったのが王太子殿下でなかったらぶっ飛ばしている所である。
まあ、これも悪い意味で、冷蔵庫組と冷蔵庫組に付ける事ができる経費という事だ。とはいえ、いきなりそんな場所に放り込まれた騎士達は何をどうしたらいいかわからないだろう。
折角、恵まれた空間に居るというのに可哀相なものだ。
でも、馬車よりかはマシなのでその辺りは我慢して欲しい。
そんな事を考えながら徐行していると、急に行進が止まった。
ゆっくりブレーキを踏みながら何があったのかを車越しに双眼鏡で確認すると、どうやら、前方にドラゴンが現れたらしい事がわかる。
「ドラゴンですか……。カケル殿はあれ等を倒す事はできますか?」
とんでもない無茶振りだ
もはや冷蔵庫に入っていたサワーをチェイサー代わりにワインを飲みながらいう酔っ払いの戯言と言ってもいい。
頬をアルコールで赤くさせながら無茶ぶりを言う王太子殿下。
しかし、ここで断る訳にはいかない。
俺には、あの馬鹿共に天罰を喰らわせるという使命があるのだ。
仕方がなく大型キャンピングカーのサイドブレーキを引くと、エンジンをかけたままドラゴンの前に降り立った。
---------------------------------------------------------------
2022年9月14日AM7時更新となります。
顔を上げ、泣きそうな表情で謝罪する転移組のリーダー、フィアに俺は少し笑ってしまう。
――と、いうより本当にいいの? 謝罪しちゃって?
その場合、転移組のリーダーがセントラル王国の王太子殿下を相手に無礼な発言をしていたという事を王太子殿下本人の前で認める事になっちゃうんだけど?
さっきの言葉は、多分、キャンピングカーを保有している俺に対して言ったんだよね?
もしかして、本当は王太子殿下がキャンピングカーに乗っている事を知っていて、王太子殿下の事を『お前』呼ばわりしたの?
そういえば、『おい。俺の話を聞いているのかっ! 俺もその乗り物に乗せろっ! 俺は転移組のリーダー、フィア様だぞっ!』とか言っていたっけ?
もしかして、あれも王太子殿下に言っていたの?
王太子殿下にマウント取りに行ったの??
これって不敬罪?
不敬罪で処刑されちゃう奴??
いやーそれだと非常に困るな。非常に困る。
俺はただ王太子殿下に『この人がこれに乗せろと言っていますが、いかが致しますか?』と聞いただけなのに大事《おおごと》になってきた。
本気で首チョンパされそうな勢いだ。
御付きの騎士達が冷めた視線を転移組のリーダーであるフィアに向けている。
「困りますね。これから上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』を攻略しに向かおうという時にこの様な騒ぎを起こされては……」
王太子殿下の言葉にぐうの音も出ないフィアとルート。
ため息交じりに王太子殿下が「不敬罪……どうしましょう?」と呟くと、フィアとルートは頭を地面に擦り付け土下座した。
「「何卒……何卒、お許し下さい……」」
綺麗な土下座だ。
流石は、座礼の最敬礼と呼ばれているだけの事はある。
しかし、それが伝わるのは日本を含むアジアでのお話だ。
ここはアジアではない。ゲーム世界にあるセントラル王国。
土下座文化のない国の人に対して、急に地面に頭を着けて平伏されても困るだろう。
正直、ビビるか困惑するだけだ。何やってんのこの人……見たいな。
現に王太子殿下は混乱している。
「彼等は一体……何をしているのですか?」
仕方ないので、俺がフォローして上げる事にしよう。
矮小なプライドをかなぐり捨てて土下座したというのに『彼等は一体、何をしているのですか?』と謝罪をしているのに謝罪が伝わらないのは流石に可哀想だ。
確か、武家社会において土下座は『そのまま斬首されても異存はない』という意味合いがあった筈。なので俺は、それをそのまま伝えて上げる事にした。
「彼等が行っているのは、土下座という『斬首されても異存はない』という意味合いにある礼式の一つです。彼等は斬首されても構わないから許してほしいと、そう願っているのでしょう」
俺がそう言った瞬間、フィアとルートが顔を上げ、土下座を止めた。
斬首されたくなかった様だ。土下座を止めてしまったという事は深い謝罪や請願の意を表していた訳でもないらしい。
王太子殿下評価は下がる一方である。
そんな事よりも……。
「殿下。冒険者協会の馬車が出ます。我々もそろそろ行かなくては……」
「そうですね……」
付き添いの騎士の言葉に王太子殿下が頷く。
そして、フィアとルートに視線を向けると、ただ一言こう告げた。
「先ほどの無礼な発言は聞かなかった事にします。しかし、次はないと思いなさい」
王太子殿下に対し、直接『お前』呼ばわりして、この程度のお咎めで済むとは中々、運の良い奴等だ。まあでも、『御前《おんまえ》』と言った場合は、丁寧語に当たるから微妙な所である。
まあすぐに地獄を見る事になるだろうから、俺としてもこの件に関しては関心が薄い。というより、どうでもいいというのが本心である。
「……それでは、私はこれで。数日後の上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』の攻略、楽しみにしていますよ。失敗した……等という事は無いようにお願いしますね?」
「「…………っ!?」」
流石は王太子殿下だ。
デカい釘を転移組のリーダーと副リーダーであるフィアとルートに打ち込んだ。
これで奴等は背水の陣に勝手に置かれた。
攻略できなかったらどうなるか、今から楽しみだ。
俺が笑いを堪えていると、王太子殿下はフィアとルートに背を向け話しかけてくる。
「それでは、操縦をお願いします」
「はい。お任せ下さい」
そして、王太子殿下は俺にキャンピングカーの運転を依頼すると、騎士二人を連れてキャンピングカーの中に入っていく。
ちなみに、この大型キャンピングカーを運転するのは普通免許を持っている俺だ。
なお、普通免許はこの国では通用しないし、許可も要らない。
何故なら、この大型キャンピングカーを持っているのはこの国で俺だけなのだから。
ポカンとした表情を浮かべながら、俺達が出発するのを見ているフィアとルートを残し、大型キャンピングカーに乗り込むと、俺はエンジンをかける。
ちなみにこの大型キャンピングカーは、一台当たり五千万円の特注品だ。
キャンピングカーと言ってはいるが、これはアメリカでいう所のモーターホーム。
つまり、長期に渡って快適な生活ができる車両という事である。
当然の事ながらキッチン、シャワー室、トイレは当然の如く完備。
トイレはウォッシュレットだし、キッチンのコンロはIH。テレビもソファーもテーブルも揃えてある上、車外にある梯子を上ってバスの上に出れば、夜、満天の星空を楽しむ事もできる。
更に冷蔵庫には元の世界で販売されている酒やレトルト食品。棚にはボードゲームやゲームなどもある。尚、テレビは電波が通じない上、言語が違うので、とりあえず、自分の好きなアニソンやら最新の曲なんかをBGM代わりに流している。
本来、『ああああ』達の中から一人運転手を選ぼうと思ってこれを購入したのだが、奴等は揃いも揃って普通免許を取得していなかった。
その理由を聞いて見た所、引き籠っていたから取得すら考えていなかった様だ。
しかも、馬車は退屈なのでこのキャンピングカーでリージョン帝国に向かおうとした所、王太子殿下にバレてしまい護衛を兼ねて乗せていく事になってしまった。
馬車の速度は精々、時速十キロメートル位なので、殆ど、徐行でリージョン帝国に向かう様なものだ。あまりに遅くて先が思いやられる。
元の世界で、そんな速度で走れば即クラクションを鳴らされるレベルだ。
王太子殿下には、一応、シャワー室やトイレ、ボードゲームの使い方等は教えておいたが、超心配である。
騎士達も、武装を解かなければ窮屈なのか、最低限の武装に留め、キャンピングカーの運転をする俺をよそにボードゲームを楽しんでいる。
何故か一緒に着いてきた協会長に至っては、冷蔵庫に入っている日本酒やワインを飲み始めた。フロントミラーに奴が浮かべる愉悦の表情が目に焼き付く。
一応、転移組と冷蔵庫組への報復を兼ねた仕事だから受けてやったが、今、激しく後悔している。
正直、お前等の接待する為に……運転手をする為にこの大型キャンピングカーを買った訳じゃねーぞと言った気分だ。夜になったら絶対飲み明かしてやる。
次の日、飲酒運転扱いされない程度に……。
「しかし、暇だ……」
まさか、大型キャンピングカーを徐行運転で運転する事になろうとは思いもしなかった。遅いな馬車……あともう十キロ位早く走れよという理不尽な気持ちが湧いてくる。
だが、これも中々する事のできない体験だ。
前後を馬車に挟まれリージョン帝国に大型キャンピングカーで向かうなんて機会は絶対ない。
とはいえ、以前、リージョン帝国に行った時は、エレメンタルの背に乗って尋常じゃないスピードで行った為、数時間で到着できたが、このスピードでは無理そうだ。
こうなったら、これも経費に付けよう。
この大型キャンピングカーに掛った費用もすべて必要経費として計上しよう。
まったく問題無い筈だ。
だって、あいつ等、俺が運転する大型キャンピングカーの中で酒飲みながらゲームに興じているんだから……。
俺の酒を飲み、食い散らかし、ゲームに興じているんだ。
当然、経費だ。もはや護衛云々の話じゃない。
もし経費だと認められなかったら国を滅ぼしてやる。
冗談じゃないぞ?
エレメンタル達が付いている俺ならできるからな?
国の中心で上級エレメンタルを数体放てば、国は大混乱だ。
冒険者や騎士にエレメンタルを討伐する事ができるかも怪しいものである。
まあ、その分、転移組と冷蔵庫組の借金が増えると思えばマシなのか?
そもそも俺は、転移組と冷蔵庫組をぶっ潰す為にここにいる。
うん。そう考えれば、万々歳じゃないか。
何ならこの大型キャンピングカーが壊れてくれれば、更なる絶望を奴等に与える事ができる。まあ、その場合、俺も絶望しそうだが、まだあと七台持っているからその辺りは大丈夫だ。保存用、観賞用、実用用、布教用に二台ずつ買ってある。
ついでにだ。この大型キャンピングカーの後ろには、騎士専用のキャンピングトレーラーを引いている。
これは、王太子殿下が他の騎士にもこの体験をさせて上げたいという我儘を言ったから仕方がなく実現して差し上げたものだ。
もし、それを言ったのが王太子殿下でなかったらぶっ飛ばしている所である。
まあ、これも悪い意味で、冷蔵庫組と冷蔵庫組に付ける事ができる経費という事だ。とはいえ、いきなりそんな場所に放り込まれた騎士達は何をどうしたらいいかわからないだろう。
折角、恵まれた空間に居るというのに可哀相なものだ。
でも、馬車よりかはマシなのでその辺りは我慢して欲しい。
そんな事を考えながら徐行していると、急に行進が止まった。
ゆっくりブレーキを踏みながら何があったのかを車越しに双眼鏡で確認すると、どうやら、前方にドラゴンが現れたらしい事がわかる。
「ドラゴンですか……。カケル殿はあれ等を倒す事はできますか?」
とんでもない無茶振りだ
もはや冷蔵庫に入っていたサワーをチェイサー代わりにワインを飲みながらいう酔っ払いの戯言と言ってもいい。
頬をアルコールで赤くさせながら無茶ぶりを言う王太子殿下。
しかし、ここで断る訳にはいかない。
俺には、あの馬鹿共に天罰を喰らわせるという使命があるのだ。
仕方がなく大型キャンピングカーのサイドブレーキを引くと、エンジンをかけたままドラゴンの前に降り立った。
---------------------------------------------------------------
2022年9月14日AM7時更新となります。
58
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる