飯が出る。ただそれだけのスキルが強すぎる件

びーぜろ

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第1章 城塞都市マカロン

第5話 冒険者ではなく商人になりました

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「えーっと、冒険者ギルドはここかな?」

 モーリーとコリーの指差した方向へ道なりにまっすぐ歩くと、剣や弓などの武器を携帯した男たちが集う建物を見つけた。
 看板に冒険者ギルド、マカロン支部と書いてあるので、まず、間違いはないだろう。
 ドアノブに手をかけ中に入ると、男たちの視線が突き刺さる。

「……子供? ここは冒険者ギルドだぞ? 建物を間違えたのか?」と反応を示す者や、「ほう。珍しい髪の色だ。あれは確か……」と興味を示す者等様々。
 冒険者とあって、皆、顔が怖い。
 入った瞬間、ヤクザの事務所にでも入ってしまったのではないかと錯覚しそうになった。
 しかし、冒険者登録しないと東門に預けたままの鉈を返してもらえない。

(――あれ、結構、高かったんだよなぁ……。絶対に返してもらわないと……)

「すいません。冒険者登録したいのですが、どの列に並べば、登録できるのでしょうか?」

 勇気を振り絞って近くの冒険者に話しかけると、男は『なんだこいつ』と言わんばかりの視線を向けてくる。

「……坊主。年は幾つだ?」
「に、20歳ですけど……」

 少し強面の男に対し、敬語でそう告げると、男はヒナタを凝視する。

「――20歳? その形で?」
「はい。一応……」

 そう告げると、男は俺の髪と目をマジマジと眺め、納得したように呟いた。

「……黒い髪に、黒い瞳。なるほど、森を愛するドライアード族の末裔か……。これは失礼した」
「――いえ、違います。俺は純然たる人族です」

 しかし、男はヒナタの言葉を信じない。

「出自を隠すとは……。なにか訳ありか? 俺で良ければ相談に乗るぞ?」

 話が進みそうにないので、これ以上の訂正せず、回答を求める。
 
「いえ、大丈夫です。それで、冒険者登録はどこですれば……」
「うん? ああ、一番右端の受付で登録することができる。しかし、いいのか? ドライアード族は戦いを好まぬ者が多いと聞くが……」

 言葉使いは粗雑だが、心配してくれているのだろう。ヒナタは、そのまま肯定の意を示す。

「――はい。戦うだけが冒険者の仕事ではありません。今の自分にできることをさせて頂ければと考えています」

『真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である』とは、故・ナポレオンの有名な言葉である。
 自分の実力は自分が一番わかっている。
 冒険者の戦いの邪魔をしないように、一日中、宿の中に篭るという選択も支援といえば支援。足を引っ張らない。それが今のヒナタにできる唯一のこと。

「――戦うだけが冒険者の仕事ではない……。か、なるほどな。とはいえ、ここ城塞都市マカロンはゴブリン戦場の最前線……。最低限の力は求められる。まあ、植物を操るドライアード族にとって無用の心配か……。それじゃあな。試験、頑張れよ」
「は、はい。こちらこそありがとうございますって……(――えっ? ちょっと待って? 試験があるの? 冒険者登録するのに試験があるの⁇ というか、植物を操るドライアード族ってなに? 現状、バナナしか出すことができないんですけど……。バナナでどう戦えと?)」

 冒険者登録を行う列に並び、そんなことを考えていると、数分でヒナタの順番がやってくる。

「お待たせ致しました。私は冒険者ギルド、マカロン支部冒険者登録専用受付のユニです。この受付では、冒険者登録をする前に、冒険者として最低限の力を持ち合わせているかどうかを確認させて頂いております。こちらの札を持ち、地下1階の訓練場までお越しください」
「えっ? 訓練場……ですか?」
「はい。訓練場です。あちらの階段を降りた先に訓練場がありますので、試験官にこの札を渡し、メインスキルを一つ発動してください」
「メ、メインスキルですか? それはいったい……」

 そう尋ねると、ユニーはポカンとした表情を浮かべる。
 そして、ヒナタの髪と目に視線を向け、ポンと手をついた。

「――えっと……。ああ、あなたの種族はドライアードでしたか。それでは、知らないのも無理はありません。この世界に生まれし者は誰もが、二つのスキルを授かります。一つ目のスキルをメインスキル。二つ目のスキルをサブスキルと言い、この世界、エデンの主神が戦神であることから、メインスキルには必ず、戦いに向いたスキルが付与されます」
「た、戦いに向いたスキル……。ですか?」
「はい。ドライアードですと、植物に関連するスキルがメインスキルとして付与されているはずです」

(――知らなかった。『食料創造』って、戦いに向いたメインスキルだったんだ……)

 驚愕の事実である。

(――と、いうことは使い方次第で戦いに使えると、そういうことだろうか? 確か、『食料創造』の発動方法は、想像すること……。なにをどこに出すのか指定することで想像した食料を任意の場所に創造することだったはず……)

 なるほど、言われて見れば、戦いに流用できるような気がしてきた。

「その植物を操るメインスキルを訓練場にいる試験官に見せてください。その場で可否とランクをお伝え致します」
「わかりました。行ってみます」

 そう言うと、ヒナタはユニから札を受け取り、地下一階にある訓練場へと向かった。

 ◇◆◇

「――冒険者としての、適性ランクを伝える。ヒナタ君。君の適性ランクはG……。残念だったな。冒険者不適格だ。まあ、気を落とすな」
「て、適性ランクG……」

 訓練場に来て早々、近くにいた試験官に札を渡しメインスキル『食料創造』でバナナを創造した結果、適性ランクG……。つまりは、冒険者不適格を言い渡された。また、メインスキル発動時、その波長から身体能力を計る魔道具が使われていたようで、身体能力もこの世界の平均を著しく下回っていたことも、この結果につながったようだ。

「適性ランクGでも、刃渡り20センチメートル以下であれば、護身用の刃物位の携帯は許される。しかし、その……。なんだ。ドライアードは植物を操るメインスキルを持つと聞いていたが……。バナナと言ったか? 食料を創り出すスキルは有用だ。生計を立てるならば冒険者ギルドではなく商業ギルドに登録した方がいい……と、私は思う。冒険者には危険が伴う。身体能力も平均以下ともなれば尚更だ」
「……そうですか」

 ごもっともな話である。聞けば、刃渡り20センチメートル以下の武器の携帯は商業ギルドに登録するだけでも許可されるらしい。登録さえちゃんとしていれば、その程度の刃物を護身用に持つことは許されているようだ。

「……気を落とすな。人には適性というものがある。まあ、君の場合、ドライアードだが、活躍する場が戦いの場ではなく商いの場であっただけのこと。商業ギルドは、冒険者ギルドの真正面にある。登録料は金貨1枚と少々高いが、冒険者として成り上がるよりかは遥かに可能性があるはずだ」
「そうですね。とりあえず、商業ギルドに行ってみます」
「ああ、その方がいいだろう。それでは、達者でな。次、前に出てメインスキルを使ってみろ――」

 ヒナタはため息をつくと、階段を上がっていく。

「――はあっ、まさか冒険者不適格とまで言われるとは(――折角、スキルの使い方で思い付いたことがあったのに……)」

 試す前にGランク判定されてしまった。

(まあ、バナナで生計が立てれるならそれでいいや……。その内、試してみるとしよう。俺の考えが正しければモンスターを倒すことができるはずだ……)

 冒険者ギルドを出て、向かいにある商業ギルドの扉を開く。
 すると、そこには、札の番号を呼ばれるのを待つ商人たちの姿があった。

(すげー、まるで役所みたいだ……)

 そんなことを考えながら、商業ギルドの建物の中に入ると端の方に商業ギルド登録のための受付が設置されていることに気付く。

「すいません。商業ギルドに登録したいのですが……」
「はい。登録ですね。それでは、こちらの用紙に必要事項の記入をお願いします」
「あ、はい……」

 言われるがまま、渡された用紙に必要事項を記入すると、登録料の金貨1枚と共に受付に提出する。

「必要事項は……。記入されていますね。こちらが商業ギルドの利用規則。そして、ギルド証となります。あと10分ほどで、初心者講習が開かれますが、参加致しますか?」
「初心者講習……。ですか?」
「はい。参加は任意ですが、商業ギルドの利用規則や営業許可の取り方。物の販売の仕方、冒険者ギルドとの関わり等、様々な指導を無料で受けることができます」

(――なるほど、参加した方が良さそうだ)

 無料なら尚更である。

「はい。ぜひ、参加させてください」
「それでは、講義室まで案内させて頂きます」

 講義室は2階にあるようだ。
 案内されるがまま2階に上がると、初心者講習が行われる部屋に案内される。

「それでは、こちらでお待ちください。あと、数分で講習が始まります」
「はい。ありがとうございます」

 まるで大学の講義室のような場所に案内されたヒナタは指定された席に座ると、先ほど受け取った利用規則を読みながら、初心者講習が始まるのをジッと待つ。
 利用規則をパラ読みしながら初心者講習が開催されるのを待っていると、赤い帽子に青い髭をたくわえた、恰幅のいい中年男性が講義台に着いた。

「これより初心者講習を始めます。私は商業ギルド、マカロン支部のギルドマスター、トルネオです。よろしくお願いします。それでは、まず、商業ギルドの役割について――」

 ◇◆◇

「もしもーし、起きてくださーい。初心者講習が終わりましたよー」
「――はっ!?」

 開始5分。商業ギルドの役割から始まった初心者講習は、寝落ちという最悪な形で終わりを迎えた。

「講習は? 初心者講習はどうなったの!?」

 商業ギルドの役割という話が余りにも長過ぎて寝落ちしてしまった。
 いつまで経っても夢から覚めないヒナタを起こしにきた受付の女性は冷ややかな視線をヒナタに送る。

「ギルドマスターを目の前にして寝落ちするなんて、中々、度胸がありますねー。将来、大物になるかもしれません」
「あ、あはははっ……」

 苦笑いだ。もう苦笑いを浮かべるしかない。

「ちなみに、ギルドマスターも同じことを言っていました。『彼が起きたら伝えておいてほしい。君は将来、大物になるな』だそうです」

 それを聞き、冷や汗を流すヒナタ。
 そんなヒナタに、受付の女性は1枚の紙を差し出した。

「えっ? これは……」

 見ると、営業許可の取り方。物の販売の仕方、冒険者ギルドとの関わり等、初心者講習の内容が簡潔にまとめられている。

「初心者講習のポイントとなる所を書き込んでおきました。わからないことがあれば、遠慮なくご相談ください。ただし、相談にくる以上、寝落ちしないように気を付けてくださいね?」

「(――東門の門番さんや冒険者ギルドの人たちといい、なんて心が広いんだ……)――あ、ありがとうございます!」

 紙を握り締めそう言うと、ヒナタは床に両手両膝をつき頭を垂れた。
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