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第六章 商業ギルド対立編
第127話 子供たちの帰還
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悠斗が商業ギルドを脱退してから4日目、従業員たちはやる気に満ち満ちていた。
どうやら、昨日行った実技研修という名の迷宮攻略で大金を稼いだことや、1日2回、朝と昼に悠斗邸広場で振る舞われるウッチー特製の食事がその要因のようである。
いまも広場に集まり、今日はどんな研修をするのかとやる気を見せている。
しかし、折角やる気を見せて頂いているところ大変申し訳ないが、今日は休日である。
朝広場にこれだけ集まってしまったため、仕方がなくウッチーの手料理を振る舞ってはいるが、従業員たちには是が非でも休んでもらう予定だ。なお、店がオープンしたら、休日はシフト制でとってもらう予定である。
それに、今日はティンドホルマー魔法学園に行っている子供たちが帰ってくる日……俺はこんなところで従業員たちに食事の配膳をしている時間はないのだ。
確かに、従業員たちの笑顔や、子供たちの『ありがとう。』の一言には癒されるし、配膳のし甲斐があるというものだけれども、それとこれは別である。
悠斗は従業員たちの食事の配膳を終えると、悠斗邸のリビングに設置してあるソファーにグテッと横になる。
「悠斗様、お疲れ様です。」
横になっていると、ウッチーが労いの声をかけてきた。
「ああ、ウッチーか……ウッチーこそ疲れてない?」
「いえいえ、人々に食事を振る舞うこと位、どうということはありません。」
流石はウッチー、執事の鏡である。
「時に悠斗様、彼らに生活魔法を付与して頂くことは可能でしょうか?」
生活魔法? そういえば、従業員たちのステータスを【鑑定】した際、スキル欄に【生活魔法】がなかったような……。
まあ、ウッチーに造って貰った店舗付きアパートはトイレやシャワールーム完備であるため、衛生面に問題ないと思うけど、確かに、【生活魔法】は従業員たちの衛生面を整えるためにも必要かもしれない。なんでこんなことに気付かなかったんだろう。
「でも、【生活魔法】って教会で喜捨するだけで簡単に授けて貰うことができたような気がするけど?」
「もちろんそうなのですが、教会でも元スラム出身というだけで差別的に扱われてしまうことがあるようでして……。」
昨日の研修で従業員たちになにかを聞いたのかな? もしかしたら、スラム出身というだけで喜捨を断られた人がいたのかもしれない。
「そうなんだ……。わかった。彼らには俺の方から【生活魔法】を付与しておくよ!」
「ありがとうございます。」
悠斗がソファーから上半身を起こすと、『カラーンコローン♪』と客人の来訪を告げる鈴が鳴る。
どうやら、子供たちがティンドホルマー魔法学園から戻ってきたようだ。
ソワソワしながら待っていると、トッチーに連れられ子供たちがトタトタと足音を立てながらリビングに入ってくる。
「ケイ、フェイ、レイン!」
「「「悠斗にい!!」」」
そういうと、子供たちが悠斗の胸に飛び込んでくる。
あれ? なんか呼び方のアクセントが変わったような……? 気のせいか??
まあいいか、いや、なんか子供たち少しだけ身長伸びてない!? たった5日間のうちに何があったのっ!?
悠斗は子供たちの頭を撫でながら話しかける。
「久しぶりだね! 元気にしてた?」
「「「うん! 元気にしてたよ! 学園長先生に迷宮に連れてって貰ったんだっ!」」」
「えっ、なんで迷宮に? 学園の授業の一環かなにかかな?」
「違うよ~。なんか僕たちの無詠唱魔法が見たかったんだって! でも毎日迷宮に行ってるよっ!」
「そういえば、悠斗にいには内緒とか言われたような?」
「でも、悠斗にいには報告しないとね。」
あのババアッ……。どうやら、学園長とは一度、腹を割ったお話し合いをする必要がありそうだな……。
自分が従業員たちに行った事は棚に上げ、心の中で学園長をそう罵る。
「他にも、冒険者ギルドってところからきたAランク冒険者って人に授業中稽古をつけて貰ったよ!」
「Aランク冒険者の先生強かったね~。」
「Aランク冒険者ってカッコよかったねっ!」
すごいな。魔法学園って、そんな人も講師として来てくれるのか。
というか、まだ5日間しか経ってないよね? どんだけ濃密なカリキュラムを組んでるの!?
いや、そういえば子供たちは全員、特別枠だったような……。もしかしたら、特別枠だから最初からイカレたカリキュラムを組まれているのかもしれない。
子供たちに聞いてみると、次のような時間割で授業を行っているそうだ。
--------------------------------------
7:00 :起床
7:30~7:59 :朝食
8:00~11:59 :講義(一般教養、魔法学)
12:00~12:59 :昼食
13:00~15:59 :実技(魔法、武術)
16:00~16:59 :夕食
16:30~18:59 :学園長と迷宮
19:00~20:59 :自由時間
21:00 :消灯
--------------------------------------
結構きつくないだろうか。というより、学園長と迷宮に行く時間が必要ない気がする。
「ケイたちが学園長といった迷宮ってヴォーアル迷宮のこと?」
「うん、そうだよ~!」
「最初の2日くらいはモンスターをいっぱい倒すことができたんだけど、3日目から全然だったね~。」
「そういえば、黒い人型モンスターが出るんだって! 悠斗にいも迷宮に行くなら気を付けてたほうがいいよっ!」
それ多分俺たちです。子供たちには言わないけど……。
「そういえば、悠斗にいの冒険者のランクを教えて!」
「悠斗にいも冒険者だよって教えてあげたら、先生に悠斗にいのランクを聞かれたの~。」
「そうそう、君たちを育ててくれた方のランクは何だい? って。」
言えない、『俺のランクはEランクだよ。』とは口が裂けても言えない……。
面倒事が嫌で、冒険者ギルドのランクを上げていませんでしたなんて言い訳はこの年頃の子供たちには通用しないだろう。いまも3人揃って期待の視線をこちらに向けてきている。
とはいえ、子供の前で格好つけたい自分もいる。どうしたものか……。
仕方がない、明日子供たちをウッチーたちに預け、迷宮に一狩り行ってくるか。
冒険者ギルドのランクを上げるのは、面倒事が増えそうなため、嫌で嫌で仕方がないけど、子供たちの前でEランクと宣言するよりかはマシだ。それに、ランクを上げたとしても、冒険者ギルドに足を運ばなければ問題ない。なにせ、ギルドカードに住所登録なんてしていないのだから、俺の居場所が分かるはずもない。そう、指名依頼や面倒事などのイベントも冒険者ギルドに行かなければ発生しないのだ。
それに、まだ収納指輪にはマデイラ王国やアゾレス王国で狩ったモンスターが山のように残っている。
明日中にヴォーアル迷宮でモンスターを狩り倒し、最低でもBランクに上げてこよう。盗賊も狩った事あるし、たぶん大丈夫なはずだ。
DランクからCランクに上がる際の、審査とやらも問題ないだろう。
何しろ、従業員たちがDランクからBランクに上がった時は大丈夫だったし……。
「冒険者ギルドのランクか、何だったかな? ギルドカード落としちゃったから分からないや。明日ギルドで再発行してくるよ。その時に教えてあげるね。」
悠斗がそう言うと、子供たちは顔に喜色を浮かばせる。
子供たちの笑顔を見るに、当然、冒険者の先生よりも上のランクだよね? みたいな顔をしている。
まあ、俺にもそんな時があったし、なんとなく子供の気持ちがわかるんだけどね。
『俺の父ちゃんパイロット!』的な……。
かくして悠斗は、冒険者ギルドのランクを上げるため、ヴォーアル迷宮に潜ることになったのであった。
どうやら、昨日行った実技研修という名の迷宮攻略で大金を稼いだことや、1日2回、朝と昼に悠斗邸広場で振る舞われるウッチー特製の食事がその要因のようである。
いまも広場に集まり、今日はどんな研修をするのかとやる気を見せている。
しかし、折角やる気を見せて頂いているところ大変申し訳ないが、今日は休日である。
朝広場にこれだけ集まってしまったため、仕方がなくウッチーの手料理を振る舞ってはいるが、従業員たちには是が非でも休んでもらう予定だ。なお、店がオープンしたら、休日はシフト制でとってもらう予定である。
それに、今日はティンドホルマー魔法学園に行っている子供たちが帰ってくる日……俺はこんなところで従業員たちに食事の配膳をしている時間はないのだ。
確かに、従業員たちの笑顔や、子供たちの『ありがとう。』の一言には癒されるし、配膳のし甲斐があるというものだけれども、それとこれは別である。
悠斗は従業員たちの食事の配膳を終えると、悠斗邸のリビングに設置してあるソファーにグテッと横になる。
「悠斗様、お疲れ様です。」
横になっていると、ウッチーが労いの声をかけてきた。
「ああ、ウッチーか……ウッチーこそ疲れてない?」
「いえいえ、人々に食事を振る舞うこと位、どうということはありません。」
流石はウッチー、執事の鏡である。
「時に悠斗様、彼らに生活魔法を付与して頂くことは可能でしょうか?」
生活魔法? そういえば、従業員たちのステータスを【鑑定】した際、スキル欄に【生活魔法】がなかったような……。
まあ、ウッチーに造って貰った店舗付きアパートはトイレやシャワールーム完備であるため、衛生面に問題ないと思うけど、確かに、【生活魔法】は従業員たちの衛生面を整えるためにも必要かもしれない。なんでこんなことに気付かなかったんだろう。
「でも、【生活魔法】って教会で喜捨するだけで簡単に授けて貰うことができたような気がするけど?」
「もちろんそうなのですが、教会でも元スラム出身というだけで差別的に扱われてしまうことがあるようでして……。」
昨日の研修で従業員たちになにかを聞いたのかな? もしかしたら、スラム出身というだけで喜捨を断られた人がいたのかもしれない。
「そうなんだ……。わかった。彼らには俺の方から【生活魔法】を付与しておくよ!」
「ありがとうございます。」
悠斗がソファーから上半身を起こすと、『カラーンコローン♪』と客人の来訪を告げる鈴が鳴る。
どうやら、子供たちがティンドホルマー魔法学園から戻ってきたようだ。
ソワソワしながら待っていると、トッチーに連れられ子供たちがトタトタと足音を立てながらリビングに入ってくる。
「ケイ、フェイ、レイン!」
「「「悠斗にい!!」」」
そういうと、子供たちが悠斗の胸に飛び込んでくる。
あれ? なんか呼び方のアクセントが変わったような……? 気のせいか??
まあいいか、いや、なんか子供たち少しだけ身長伸びてない!? たった5日間のうちに何があったのっ!?
悠斗は子供たちの頭を撫でながら話しかける。
「久しぶりだね! 元気にしてた?」
「「「うん! 元気にしてたよ! 学園長先生に迷宮に連れてって貰ったんだっ!」」」
「えっ、なんで迷宮に? 学園の授業の一環かなにかかな?」
「違うよ~。なんか僕たちの無詠唱魔法が見たかったんだって! でも毎日迷宮に行ってるよっ!」
「そういえば、悠斗にいには内緒とか言われたような?」
「でも、悠斗にいには報告しないとね。」
あのババアッ……。どうやら、学園長とは一度、腹を割ったお話し合いをする必要がありそうだな……。
自分が従業員たちに行った事は棚に上げ、心の中で学園長をそう罵る。
「他にも、冒険者ギルドってところからきたAランク冒険者って人に授業中稽古をつけて貰ったよ!」
「Aランク冒険者の先生強かったね~。」
「Aランク冒険者ってカッコよかったねっ!」
すごいな。魔法学園って、そんな人も講師として来てくれるのか。
というか、まだ5日間しか経ってないよね? どんだけ濃密なカリキュラムを組んでるの!?
いや、そういえば子供たちは全員、特別枠だったような……。もしかしたら、特別枠だから最初からイカレたカリキュラムを組まれているのかもしれない。
子供たちに聞いてみると、次のような時間割で授業を行っているそうだ。
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7:00 :起床
7:30~7:59 :朝食
8:00~11:59 :講義(一般教養、魔法学)
12:00~12:59 :昼食
13:00~15:59 :実技(魔法、武術)
16:00~16:59 :夕食
16:30~18:59 :学園長と迷宮
19:00~20:59 :自由時間
21:00 :消灯
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結構きつくないだろうか。というより、学園長と迷宮に行く時間が必要ない気がする。
「ケイたちが学園長といった迷宮ってヴォーアル迷宮のこと?」
「うん、そうだよ~!」
「最初の2日くらいはモンスターをいっぱい倒すことができたんだけど、3日目から全然だったね~。」
「そういえば、黒い人型モンスターが出るんだって! 悠斗にいも迷宮に行くなら気を付けてたほうがいいよっ!」
それ多分俺たちです。子供たちには言わないけど……。
「そういえば、悠斗にいの冒険者のランクを教えて!」
「悠斗にいも冒険者だよって教えてあげたら、先生に悠斗にいのランクを聞かれたの~。」
「そうそう、君たちを育ててくれた方のランクは何だい? って。」
言えない、『俺のランクはEランクだよ。』とは口が裂けても言えない……。
面倒事が嫌で、冒険者ギルドのランクを上げていませんでしたなんて言い訳はこの年頃の子供たちには通用しないだろう。いまも3人揃って期待の視線をこちらに向けてきている。
とはいえ、子供の前で格好つけたい自分もいる。どうしたものか……。
仕方がない、明日子供たちをウッチーたちに預け、迷宮に一狩り行ってくるか。
冒険者ギルドのランクを上げるのは、面倒事が増えそうなため、嫌で嫌で仕方がないけど、子供たちの前でEランクと宣言するよりかはマシだ。それに、ランクを上げたとしても、冒険者ギルドに足を運ばなければ問題ない。なにせ、ギルドカードに住所登録なんてしていないのだから、俺の居場所が分かるはずもない。そう、指名依頼や面倒事などのイベントも冒険者ギルドに行かなければ発生しないのだ。
それに、まだ収納指輪にはマデイラ王国やアゾレス王国で狩ったモンスターが山のように残っている。
明日中にヴォーアル迷宮でモンスターを狩り倒し、最低でもBランクに上げてこよう。盗賊も狩った事あるし、たぶん大丈夫なはずだ。
DランクからCランクに上がる際の、審査とやらも問題ないだろう。
何しろ、従業員たちがDランクからBランクに上がった時は大丈夫だったし……。
「冒険者ギルドのランクか、何だったかな? ギルドカード落としちゃったから分からないや。明日ギルドで再発行してくるよ。その時に教えてあげるね。」
悠斗がそう言うと、子供たちは顔に喜色を浮かばせる。
子供たちの笑顔を見るに、当然、冒険者の先生よりも上のランクだよね? みたいな顔をしている。
まあ、俺にもそんな時があったし、なんとなく子供の気持ちがわかるんだけどね。
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