転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
102 / 486
第六章 商業ギルド対立編

(閑話) 愚者たちの今(チャゴスの場合)

しおりを挟む
「チャゴス! 今日は大事なお客様が来ると言ってあっただろうがッ! 『粗茶ですが……。』といって本当に粗茶二番煎じの茶をだす馬鹿がどこにいるッ!!」

「も、申し訳ございません、キト主任。……で、ですがキト主任は言ったではありませんか、『俺にも茶を頼む。』と……。私はキト主任に一番いいお茶を飲んでほしくて――。」

 キトはチャゴスの言うことに頭を抱える。

「そんな忖度そんたくはしなくていいんだよッ! じゃあなにか!? お前は、俺がギルドマスターと話をする際、『俺にも茶を頼む。』と頼んだら、二番煎じの茶をギルドマスターにお出しするのか?」

 チャゴスはなにを言っているんだコイツは意味が分からない。と言わんばかりの表情を浮かべると自分の見解を述べる

「その場合でしたらキト主任に二番煎じの茶をお出しするに決まっているじゃないですか。」

 キト主任よりもギルドマスターの立場の方が上なのだ。
 主任如きが俺の二番煎じでない煎茶を飲もうなんて思い上がりも甚だしい。

「――ッ! もういいッ! 反省してろッ!」

「はい。申し訳ございませんでした。」

 チャゴスはキトに頭を下げると自分に割り当てられた机に戻る。
 チャゴスの座っている席は、日当たりも良く風通しのいい窓際の席だ。

 佐藤悠斗とかいう冒険者の決闘が終わり、20名もの冒険者が借金奴隷に落とされたその日、減給処分と降格処分の2つが科されてしまった。まったくいい迷惑である。

 何度となく、『いくら嗜めても悠斗が謝罪しなかった。』と言っているにも関わらずこの扱いだ。
 今度、グランドマスターが見回りに来た際には直訴してやる。

 それにしても、キトの奴め……なんて陰湿な野郎だ。
 ちょっと前まで俺の部下だった癖にあの口の利き方……まったくなっていない。

 折角、私が気を利かせて煎茶を出してやったというのに、皆の目の前で叱ることはないではないか。
 あれではまるで私が使えない社員のように、皆の目に映ってしまう。

 この怒りどうしてくれようか……そうだッ! 今度お茶を出す際に、奴のお茶だけ雑巾の搾り汁で作ってやろう。

「チャゴス~。3日前に頼んでおいた書類持ってきてくれ、今日が締切なんだよ。」

 いま私を呼び捨てにしたのも、つい先日まで部下の一人だったマーケサス主任だ。
 いつも仕事を押し付けては、誰より先に帰っていく嫌な奴である。

 それにしても3日前の書類? なんのことだ??
 そういえば、3日前の帰り際になんか頼まれていたような……。

 頼まれた書類を探していると、ギルド誌に挟まれている真っ新まっさらな書類を見つける。
 チャゴスは顔を青くすると、汗をだらだらと垂らしながらマーケサス主任の元へ行き、頭を下げる。

「も、申し訳ございませんッ! まだやっていませんでした!!」

「な、なにぃ! 3日前に頼んでおいたことが何でできていないんだッ! 今日が締切なんだぞ!」

「す、すぐに対応します! 申し訳ございません!!」

「もういい! その書類を貸したまえ、君にはガッカリだよ。」

「も、申し訳ございませんでしたッ!」

 屈辱だ……ちょっと前まで部下だった奴に頭を下げることほど屈辱的なことはない。

 クソがッ!!

「チャゴス君。ちょっと来てくれ。」

 今度はなんだッ!!
 チャゴスはイライラしながら人事部長の元へ足を運ぶ。ちなみにこいつも先日まで俺の部下だった奴だ。

「お呼びでしょうか。ニウエ人事部長。」

「ああ、ちょっとここでは話しにくいことがあってな。ちょっと個室に行こう。」

 そういうと、チャゴスはニウエ人事部長と共に個室に入り、扉を閉める。

「ここだけの話にしてくれたまえ実はな、マデイラ大迷宮が踏破されてしまったようなんだ。」

 ほう、あのマデイラ大迷宮が……ん? 踏破? いま踏破とか言わなかったか??
 それって結構大変なことなんじゃ……。

「えっ? あのマデイラ大迷宮が踏破されてしまったんですか??」

「ああ、その通りだ。これから大変なことになるぞ……おそらくマデイラ王国から冒険者がいなくなる可能性がある。」

 ゲェッ! それはまずい。冒険者が国からいなくなってしまっては、冒険者ギルドの仕事が無くなってしまう。も、もしかして人事部長に呼ばれたのって……。

「そ、それは大変なことになりましたね。」

「なにを他人事のように言っている。この話は君にも関係があるんだぞ?」

 や、やはりかぁ~っ!! 嫌だッ! クビになんてなりたくない!!
 50歳を超えての再就職がどれだけ難しいと思っているんだコイツはッ!
 自慢じゃないが、私はコネを使って冒険者ギルドに就職しているんだぞッ!

「えっ、私に何か関係がある話なんですか?」

「ああ、マデイラ大迷宮が踏破されてしまったことにより、冒険者ギルドとしては、マデイラ王国内におけるギルド業務を縮小しようと考えている。君には大変申し訳ないが、職を辞して貰いたい。もちろん、再就職支援はするし、まだ1件ではあるが、確実に入隊……いや就職することができるところを紹介することも可能だ。」

 いや、これはもうほぼ決定事項だろう。
 俺に話を聞いている体をとっているが、その実、決定事項を報告しているだけだ。

「わかりました。それでは、その確実に就職できるところに就職させてください。もちろん、今の待遇はキープしてくれるよう交渉してくださいよ?」

 今の待遇のまま確実に就職できるならそれでいい。
 今の冒険者ギルドは居心地が悪いからな。丁度いい機会だ。

「わかった。それでは、再就職先についてだが――。」

「ああ、説明とか大丈夫です。取りあえず、この書類にサインすればいいんですよね?」

「ああ、だが一度それにサインしてしまうと二度と――。」

「だから大丈夫ですって、ギルドが紹介するところなんですから信頼してますよ。」

 ふふふっ、先ほどチラッとではあったが、マデイラ王国という文字が見えた。
 きっとマデイラ王国で文官の募集をしているんだろう。私にピッタリの職業ではないか。
 こんないい職場を他に持って行かれてたまるかッ! さっさと成立させるに限る。

「――はい。サインしました。これでよろしいでしょうか?」

「ああ……それにしてもよく決断したな……サインしてから拒否することはできないというのに……。」

「当然のことです。お国のため働けることを一国民として誇りに思います。」

「そ、そうか……そんなに国のことを想って……。わかった。君のことは忘れない。次の職場でも頑張ってくれたまえ。」

「はい、ありがとうございます。それでは失礼いたします。」

 こうしてチャゴスの強い熱望により次の就職先が『マデイラ王国軍の兵士』へと決定した。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。