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びーぜろ

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第七章 教会編

第186話 異端審問官⑦

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 異端審問官長ドミニカは、異端な考えをする悠斗に視線を向け口を開く。

「どうやら誤解があるようだ。まずはそこを訂正したい。」

 王国民の白い視線が突き刺さる。

「聖属性魔法の付与された魔道具は、教会が買い上げている訳ではない。結果として、そう見えるだけだ。教会は教会員の献金によって支えられている。国が善意の献金をお送りくださる事はあるが、献金は会費や負担金、参加費などとは違う。神の恵みに対する感謝の表れとして自主的に捧げるものだ。

 その内、聖属性魔法の付与されている魔法具の買取費用は、国からの善意の献金の中から拠出されている。いわば、国が教会に喜捨をしている事と同義。喜捨して下さった方を異端信仰者扱いする等、それこそ異端の考えではないか。」

 なるほど、パチスロが賭博法に違反しない様に、必要なのは建前。
 そう言う事か……。
 ん? じゃあ、教会に聖属性魔法が付与された魔道具を売り捌く事自体に問題ないって事?

 悠斗は質問したい気持ちを抑え、ドミニカの話を聞く。

「また、に聖属性魔法を込める事で万能薬を作成する事ができる等というレシピを聖属性魔法が付与された魔道具と一緒に配る事は、教皇様、枢機卿にのみ造る事を赦された神の奇跡たる万能薬の信頼と名誉を貶める行為だ。ただの水に聖属性魔法を込めただけの物を万能薬だと偽り大量に売買する事は許されざる行いだ。恥を知りなさい。」

 こいつ、聖属性魔法が付与された魔道具に同封されている万能薬のレシピを暴露しやがった。
 あなたには常識というものを知ってほしい。

「さらに、万能薬について、確かに喜捨により万能薬を与える者の選別は行っている。しかし、教会では多額の喜捨を下さった方以外にも万能薬の配布を行っている。無論、少なくはない喜捨を頂いてはいるが、それを非難される謂れはない。以上だ。」

 いや、非難するよ!
 教会にできない事(教会の喜捨より断然低い金額で万能薬を買えるようにする)をしてるんだから、こちらこそ異端だなんだと非難される謂れはない。

「えーっと、まず聖属性魔法の付与されている魔法具の買取費用は、国からの善意の献金の中から拠出されているとの事ですが、もしかして、教会が買い取る事のできないほどの量を販売しているから異端だなんだと言っている訳ではありませんよね? まさかそんな訳ないですよね? この魔道具の値段は過去に教会が買い取った金額を参考にして設定しています。それをこんな量買い取ることが出来ないから異端だ! って暴論過ぎじゃありませんか? あ、もしかして教会と王国の常識があまりにかけ離れて過ぎていてそれすら気付けないんですか? それなら何だか分かる気がします。こちらもあなたの言っている事が微塵も理解できませんから……。」

 あまりの物言いに、ドミニカの額に青筋が浮かぶ。

「それに万能薬についてもそうです。あなたは新技術によって新しく物を作る事ができたとして、それをそんな方法で作れる訳がない! 異端だ! 罰を受けろって、そんな常識外れな事を言うんですか? 常識のないあなたが万能薬の作り方を暴露した様に、万能薬は水に聖属性魔法を込める事で作る事ができます。」

 そう言うと、俺は収納指輪からコップを取り出すと、生活魔法でコップに水を注ぎ、水に聖属性魔法を込めていく。すると、ただの水が万能薬に変化した。
 そして、それをコホンコホンと咳込みながらも、杖をつきこのやり取りを傍聴している一人のご老人の元に持っていく。

「お婆さん。こちらの万能薬をお飲み下さい。飲むとすぐに元気になれますよ?」

 俺がコップを差し出すと、傍聴人たちの視線が一気にお婆さんの元に向かう。
 いきなり傍聴人たちから視線を向けられたお婆さんは、「ひぇっ!」と驚きながらも、コップを受け取ると恐る恐る万能薬を口にする。

 俺はお婆さんからコップを受け取ると、急にお婆さんの目が開眼。
 折れ曲がった腰を勢いよく上げると、俺の手を握り俺に感謝の言葉を述べてきた。

「こ、これは凄い! 風邪だけではなく長年患ってきた腰痛まで治りおった!」

 骨格まで変わってまるで別人のようである。
 万能薬にここまでの効果があった事を俺自身も初めて知った。

「い、いえ……。こちらこそ万能薬の検証に付き合って頂きありがとうございます。」

「ありがとう。本当にありがとう。毎日毎日、歩くだけでも一苦労だったのじゃ。」

 そう言うと、杖を放りだしどこかに行ってしまう。
 俺は気を取り直して、ドミニカに視線を向け口を開く。

「っといった様にただの水に聖属性魔法を込める事で万能薬を造る事ができます。効果の程は、あのお婆さんを見て頂ければ分かると思います。というより、一生懸命試行錯誤して作った万能薬のレシピを暴露するとかどういう神経しているんですか? 例え教会と王国の常識に違いがあるとしても、本当に迷惑です。あなたも大人なら常識を知って下さい。」

 俺がやれやれ、本当に困った人だ。といった事を表情と行動で表すと、ドミニカが怒り出す。

「き、貴様ぁぁぁぁ! 教会だけではなく侮辱するかぁぁぁぁ!」
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