126 / 486
第七章 教会編
第186話 異端審問官⑦
しおりを挟む
異端審問官長ドミニカは、異端な考えをする悠斗に視線を向け口を開く。
「どうやら誤解があるようだ。まずはそこを訂正したい。」
王国民の白い視線が突き刺さる。
「聖属性魔法の付与された魔道具は、教会が買い上げている訳ではない。結果として、そう見えるだけだ。教会は教会員の献金によって支えられている。国が善意の献金をお送りくださる事はあるが、献金は会費や負担金、参加費などとは違う。神の恵みに対する感謝の表れとして自主的に捧げるものだ。
その内、聖属性魔法の付与されている魔法具の買取費用は、国からの善意の献金の中から拠出されている。いわば、国が教会に喜捨をしている事と同義。喜捨して下さった方を異端信仰者扱いする等、それこそ異端の考えではないか。」
なるほど、パチスロが賭博法に違反しない様に、必要なのは建前。
そう言う事か……。
ん? じゃあ、教会に聖属性魔法が付与された魔道具を売り捌く事自体に問題ないって事?
悠斗は質問したい気持ちを抑え、ドミニカの話を聞く。
「また、ただの水に聖属性魔法を込める事で万能薬を作成する事ができる等というレシピを聖属性魔法が付与された魔道具と一緒に配る事は、教皇様、枢機卿にのみ造る事を赦された神の奇跡たる万能薬の信頼と名誉を貶める行為だ。ただの水に聖属性魔法を込めただけの物を万能薬だと偽り大量に売買する事は許されざる行いだ。恥を知りなさい。」
こいつ、聖属性魔法が付与された魔道具に同封されている万能薬のレシピを暴露しやがった。
あなたには常識というものを知ってほしい。
「さらに、万能薬について、確かに喜捨により万能薬を与える者の選別は行っている。しかし、教会では多額の喜捨を下さった方以外にも万能薬の配布を行っている。無論、少なくはない喜捨を頂いてはいるが、それを非難される謂れはない。以上だ。」
いや、非難するよ!
教会にできない事(教会の喜捨より断然低い金額で万能薬を買えるようにする)をしてるんだから、こちらこそ異端だなんだと非難される謂れはない。
「えーっと、まず聖属性魔法の付与されている魔法具の買取費用は、国からの善意の献金の中から拠出されているとの事ですが、もしかして、教会が買い取る事のできないほどの量を販売しているから異端だなんだと言っている訳ではありませんよね? まさかそんな訳ないですよね? この魔道具の値段は過去に教会が買い取った金額を参考にして設定しています。それをこんな量買い取ることが出来ないから異端だ! って暴論過ぎじゃありませんか? あ、もしかして教会と王国の常識があまりにかけ離れて過ぎていてそれすら気付けないんですか? それなら何だか分かる気がします。こちらもあなたの言っている事が微塵も理解できませんから……。」
あまりの物言いに、ドミニカの額に青筋が浮かぶ。
「それに万能薬についてもそうです。あなたは新技術によって新しく物を作る事ができたとして、それをそんな方法で作れる訳がない! 異端だ! 罰を受けろって、そんな常識外れな事を言うんですか? 常識のないあなたが万能薬の作り方を暴露した様に、万能薬は水に聖属性魔法を込める事で作る事ができます。」
そう言うと、俺は収納指輪からコップを取り出すと、生活魔法でコップに水を注ぎ、水に聖属性魔法を込めていく。すると、ただの水が万能薬に変化した。
そして、それをコホンコホンと咳込みながらも、杖をつきこのやり取りを傍聴している一人のご老人の元に持っていく。
「お婆さん。こちらの万能薬をお飲み下さい。飲むとすぐに元気になれますよ?」
俺がコップを差し出すと、傍聴人たちの視線が一気にお婆さんの元に向かう。
いきなり傍聴人たちから視線を向けられたお婆さんは、「ひぇっ!」と驚きながらも、コップを受け取ると恐る恐る万能薬を口にする。
俺はお婆さんからコップを受け取ると、急にお婆さんの目が開眼。
折れ曲がった腰を勢いよく上げると、俺の手を握り俺に感謝の言葉を述べてきた。
「こ、これは凄い! 風邪だけではなく長年患ってきた腰痛まで治りおった!」
骨格まで変わってまるで別人のようである。
万能薬にここまでの効果があった事を俺自身も初めて知った。
「い、いえ……。こちらこそ万能薬の検証に付き合って頂きありがとうございます。」
「ありがとう。本当にありがとう。毎日毎日、歩くだけでも一苦労だったのじゃ。」
そう言うと、杖を放りだしどこかに行ってしまう。
俺は気を取り直して、ドミニカに視線を向け口を開く。
「っといった様にただの水に聖属性魔法を込める事で万能薬を造る事ができます。効果の程は、あのお婆さんを見て頂ければ分かると思います。というより、一生懸命試行錯誤して作った万能薬のレシピを暴露するとかどういう神経しているんですか? 例え教会と王国の常識に違いがあるとしても、本当に迷惑です。あなたも大人なら常識を知って下さい。」
俺がやれやれ、本当に困った人だ。といった事を表情と行動で表すと、ドミニカが怒り出す。
「き、貴様ぁぁぁぁ! 教会だけではなく私まで侮辱するかぁぁぁぁ!」
「どうやら誤解があるようだ。まずはそこを訂正したい。」
王国民の白い視線が突き刺さる。
「聖属性魔法の付与された魔道具は、教会が買い上げている訳ではない。結果として、そう見えるだけだ。教会は教会員の献金によって支えられている。国が善意の献金をお送りくださる事はあるが、献金は会費や負担金、参加費などとは違う。神の恵みに対する感謝の表れとして自主的に捧げるものだ。
その内、聖属性魔法の付与されている魔法具の買取費用は、国からの善意の献金の中から拠出されている。いわば、国が教会に喜捨をしている事と同義。喜捨して下さった方を異端信仰者扱いする等、それこそ異端の考えではないか。」
なるほど、パチスロが賭博法に違反しない様に、必要なのは建前。
そう言う事か……。
ん? じゃあ、教会に聖属性魔法が付与された魔道具を売り捌く事自体に問題ないって事?
悠斗は質問したい気持ちを抑え、ドミニカの話を聞く。
「また、ただの水に聖属性魔法を込める事で万能薬を作成する事ができる等というレシピを聖属性魔法が付与された魔道具と一緒に配る事は、教皇様、枢機卿にのみ造る事を赦された神の奇跡たる万能薬の信頼と名誉を貶める行為だ。ただの水に聖属性魔法を込めただけの物を万能薬だと偽り大量に売買する事は許されざる行いだ。恥を知りなさい。」
こいつ、聖属性魔法が付与された魔道具に同封されている万能薬のレシピを暴露しやがった。
あなたには常識というものを知ってほしい。
「さらに、万能薬について、確かに喜捨により万能薬を与える者の選別は行っている。しかし、教会では多額の喜捨を下さった方以外にも万能薬の配布を行っている。無論、少なくはない喜捨を頂いてはいるが、それを非難される謂れはない。以上だ。」
いや、非難するよ!
教会にできない事(教会の喜捨より断然低い金額で万能薬を買えるようにする)をしてるんだから、こちらこそ異端だなんだと非難される謂れはない。
「えーっと、まず聖属性魔法の付与されている魔法具の買取費用は、国からの善意の献金の中から拠出されているとの事ですが、もしかして、教会が買い取る事のできないほどの量を販売しているから異端だなんだと言っている訳ではありませんよね? まさかそんな訳ないですよね? この魔道具の値段は過去に教会が買い取った金額を参考にして設定しています。それをこんな量買い取ることが出来ないから異端だ! って暴論過ぎじゃありませんか? あ、もしかして教会と王国の常識があまりにかけ離れて過ぎていてそれすら気付けないんですか? それなら何だか分かる気がします。こちらもあなたの言っている事が微塵も理解できませんから……。」
あまりの物言いに、ドミニカの額に青筋が浮かぶ。
「それに万能薬についてもそうです。あなたは新技術によって新しく物を作る事ができたとして、それをそんな方法で作れる訳がない! 異端だ! 罰を受けろって、そんな常識外れな事を言うんですか? 常識のないあなたが万能薬の作り方を暴露した様に、万能薬は水に聖属性魔法を込める事で作る事ができます。」
そう言うと、俺は収納指輪からコップを取り出すと、生活魔法でコップに水を注ぎ、水に聖属性魔法を込めていく。すると、ただの水が万能薬に変化した。
そして、それをコホンコホンと咳込みながらも、杖をつきこのやり取りを傍聴している一人のご老人の元に持っていく。
「お婆さん。こちらの万能薬をお飲み下さい。飲むとすぐに元気になれますよ?」
俺がコップを差し出すと、傍聴人たちの視線が一気にお婆さんの元に向かう。
いきなり傍聴人たちから視線を向けられたお婆さんは、「ひぇっ!」と驚きながらも、コップを受け取ると恐る恐る万能薬を口にする。
俺はお婆さんからコップを受け取ると、急にお婆さんの目が開眼。
折れ曲がった腰を勢いよく上げると、俺の手を握り俺に感謝の言葉を述べてきた。
「こ、これは凄い! 風邪だけではなく長年患ってきた腰痛まで治りおった!」
骨格まで変わってまるで別人のようである。
万能薬にここまでの効果があった事を俺自身も初めて知った。
「い、いえ……。こちらこそ万能薬の検証に付き合って頂きありがとうございます。」
「ありがとう。本当にありがとう。毎日毎日、歩くだけでも一苦労だったのじゃ。」
そう言うと、杖を放りだしどこかに行ってしまう。
俺は気を取り直して、ドミニカに視線を向け口を開く。
「っといった様にただの水に聖属性魔法を込める事で万能薬を造る事ができます。効果の程は、あのお婆さんを見て頂ければ分かると思います。というより、一生懸命試行錯誤して作った万能薬のレシピを暴露するとかどういう神経しているんですか? 例え教会と王国の常識に違いがあるとしても、本当に迷惑です。あなたも大人なら常識を知って下さい。」
俺がやれやれ、本当に困った人だ。といった事を表情と行動で表すと、ドミニカが怒り出す。
「き、貴様ぁぁぁぁ! 教会だけではなく私まで侮辱するかぁぁぁぁ!」
18
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。