転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

第八章 フェロー王国動乱編

第２５７話 その頃の王都

　私はフェロー王国の王都ストレイモイに住む内務大臣スカーリ。私は今窮地に追いやられている。

　フェロー王国の新国王ノルマン様の覚えを良くする為、最もらしい発言をし、楽そうなティンドホルマー魔法学園からのクレーム処理を請け負う事で、一番やりたく無い商業ギルドとの交渉は宰相に任せる事に成功した。

　しかし、いざティンドホルマー魔法学園の理事会と学園長を王城に呼び出すも来て貰えず、それではと魔法学園に足を運べば門前払い。
　致し方がなく、門番の隙をつき魔法学園の敷地内に入る事は成功するも、生徒に攻撃魔法を当てられ、フェロー王国の重鎮の一人である私に攻撃魔法を放った生徒に責任の重大性をわからせる為、正当性を主張したが、冷めた目をしたグレナ・ディーン学園長から魔法学園をエストゥロイ領に移転するという方針稟議が理事会に通った事を伝えられる。

　結局の所、魔法学園側との関係を著しく悪くし、魔法学園は王都からエストゥロイ領に移転する事がほぼ決定的になってしまった。

　正直、こんな事になる位ならティンドホルマー第二魔法学園の創立なんて陛下に上申するんじゃなかったと後悔している。

　もし未来が見えていたのなら、あの時の私を全力で殴ってでも止めていた。
　そして、未だ魔法学園との関係改善に失敗した事を陛下に打ち明けられずにいる。

「内務大臣、ティンドホルマー魔法学園の件はどうなっている。報告せよ」

「は、はい！」

　や、やばい……。
　考え事をしていた。

「えー、魔法学園につきましては、えー、なんといいますか……。えー、今現在全力で関係改善を目指している最中でありまして、えー……」

「内務大臣。えー、ばかりで聞き取りにくい。報告は簡潔に述べる様に」

　関係改善の目処が立っていないんだら仕方がないだろ！　こっちは考え事をしていたんだよ！
　内心吐き捨てる様にそう呟くと、陛下に向かい軽く頭を下げる。

「し、失礼致しました」

「うむ。次から気を付ける様に。それで魔法学園とはどの位関係改善に向けた話し合いが進んでいるのだ？　関係改善を目指している最中との事だが、具体的に何をやっているのかを報告してくれ」

　ぐっ……、一番はぐらかしたい所を……。
　こうなれば仕方がない……。

「げ、現在、魔法学園とは……。ぐっ！　お腹が、お腹が痛い！　誰か、誰か私を医務室に運んでくれ……」

　私は椅子から崩れ落ち、手を震わせて助けを求める演技をする。
　少々演技が過ぎただろうか……。
　しかし真実を話す訳にはいかない。
　もし関係改善に向けた話し合いが決裂されている事が知られれば、どうなるか……。
　考えただけで恐ろしい。

　倒れながらも片目をあけ陛下に視線を向けると、陛下自ら何やら瓶を持ってやってきた。
　一体何をするつもりだ？

「ふむ。腹痛か……。ほら、これを飲め」

「な、何を……。ぐ、ぶごぉっ！　ゲホッゲホッ！」

　陛下は私の口を強引に開くと、口に薬の様なモノを流し始める。
　私は咳き込みながらもそれを飲み干すと、それを見た陛下は真顔のまま、「よし」と呟いた。

「万能薬を飲ませた。これで腹痛も治まっただろう。内務大臣、報告を続けよ」

　ば、万能薬だと……。何故そんなものがここに……。
　い、いや、今はそんな事を言っている場合ではない。
　どうしたらいい。私はどうしたら……。

　私は椅子に手をかけ立ち上がると、陛下にお礼を言う。
　すると、王の間に扉をノックする音が響き渡る。

「ん？　なんだ。入れ」

　陛下がそう言うと、慌てた表情を浮かべ文官が王の間へと入ってきた。

「た、大変です。陛下！　こちらを……」

　一体何が起こっているのだ？
　い、いや、これはチャンスかもしれない。

　陛下は文官から手紙を受け取ると、表情を一変させた。

「領主会議だと？　何故今になって……。既に今年の領主会議は終わっているだろ」

　領主会議とは、王都ストレイモイを含む、十一の領地を治める領主が年に一度集まり、国王の施策に対する諮問や課税審議を行う会議の事だ。

　トースハウン前国王が存命の間に、今年の領主会議は終えている。
　今になって何故……？

「は、はい。そ、それがフェロー王国を治める十一の領主の内、過半数から要請がありまして、一週間後の午後一時より王都ストレイモイの王城で開催の運びとなりました」

「なんだと！　そんな事私は聞いていないぞ。私は忙しい。そんな事をしている余裕があるか！　それに何故、今になって領主会議が開かれる。議題は何だ！」

　陛下がお怒りになるのもわかる気がする。
　地方の事は知らないが、今王都は未曽有の危機に陥っていると言っても過言ではない。

　何せ、ティンドホルマー魔法学院が他領に場所を移す事がほぼ確定し、未だ、ユートピア商会が抜けた穴を塞ぎ切れていないのだ。ハッキリ言ってそんな事をやっている場合ではない。

「そ、それが……」

　文官が言いにくそうに口籠ると、陛下が怒りの声を上げた。

「なんだ！　ハッキリ言え！」

　すると文官は泣きそうな表情を浮かべながら領主会議の議題を口にする。

「ぎ、議題は……。こ、国王陛下の罷免です」

　その瞬間、王の間が静まり返った。