212 / 486
第八章 フェロー王国動乱編
第265話 領主からの依頼①
しおりを挟む
「はい。これはヨルズルが捕まった事により発覚した事ですが、廃坑近く、正確には、崩れてしまった廃坑の真上にヨルズルの別荘があったそうです。なんでも、その別荘は盗賊との話し合いや、略奪品の保管場所となっていた様でして……」
あ、あの別荘、休憩場が何かではなく、盗賊達の密会所だったのか……。
ヨルズルさんが盗賊だった事を聞き、背筋に冷たいものが走る。
もしかして、ヨルズルさんが振る舞ってくれたハーブティーに何がよからぬものが入っていたんじゃ……。
思い返せばあの時、ヨルズルさん達はハーブティーに口を付けていなかった様な気がする。
いや、でも体調に問題ないし考え過ぎか?
俺は首を横に振ると、ゴタさんに顔を向ける。
「それで、なんで金庫の回収依頼を俺に?」
正直言って、やりたくない。
廃坑内にまた入るとか危険だし、その中から金庫だけを回収するなんて無茶もいい所だ。
そういった事は、冒険者ではなく専門業者に依頼して欲しい。
「それが、その金庫の中にはヨルズルが盗賊から受け取った金品や様々な重要書類が収められている様です。報酬は金庫に入っている金品の半分では如何でしょうか?」
ユートピア商会の従業員達のお陰でお金には困っていない。それに今の俺はバカンス中。何で周囲の皆は俺を働かせようとするのだろうか?
すると、後ろに控えていた鎮守神が耳打ちをしてきた。
『悠斗様。この依頼、お引き受けください。この依頼をさせるに丁度良い人形があります』
『人形?』
もしかしてそれは、俺が密かにドレーク人形と呼んでいるユニークスキル収納魔法を使う目と口にメイクを施した人形の事を言っているのだろうか?
『はい。最近、捕獲し作成した人形なのですが、収納魔法のユニークスキルに、悪魔召喚スキルを持っております。ここ最近、作成した人形の中でも最高傑作と自負しており、あの人形であれば問題なく依頼をこなす事ができる事でしょう』
やっぱりそうか……。
頭の中でドレーク人形が陥没した別荘跡地から飛び込み、金庫を探し当てると収納魔法に収め、穴の中を這い上がってくる様子を思い浮かべる。
確かにあの人形なら最適かもしれない。
『わかった。ありがと』
俺は鎮守神にお礼を言うと、ゴタさんに視線を向ける。
「わかりました。その依頼受けさせて頂きます」
「そうですか! それはそれはありがとうございます! ロイ様もお喜びになるでしょう」
ゴタさんが笑顔を浮かべると、鞄から書類を取り出し渡してくる。
「こちらが依頼書になります。廃坑より金庫を回収したらこちらの依頼書を持って冒険者ギルドに提出ください。回収方法についてはお任せ致します」
よかった。回収方法を指定されては鎮守神の人形を動かす事ができないところだ。
「わかりました。金庫を回収次第、冒険者ギルドに提出致します」
「ありがとうございます。そして、あと一つお願いがあるのですが……」
「お願いですか……」
ゴタさんは襟を整えると真剣な表情を浮かべ話し始めた。どうやらこちらが本題のようだ。
「近々、王都ストレイモイで領主会議という。フェロー王国の全ての領主が集まる会議がございます。その間、悠斗様には、ロイ様の護衛をお願いしたいのですが、受けて頂けないでしょうか?」
「領主会議ですか……」
領主会議か……。
言ってあまり乗り気ではない。
領主会議には現国王や内務大臣も出席するだろうし、そんな中に護衛として付いていって勘繰られても困る。
俺が乗り気じゃない事を察したのだろうか。
ゴタさんは懇願するような視線を向けてくる。
しかし、これはエストゥロイ領の領主ロイ様からの依頼。断るのは簡単だけど、折角、ユートピア商会エストゥロイ支部の営業を始めたばかりだ。
下手に拗れて王都を出た時の二の舞になるのは避けたい。まあ考え過ぎかも知れないけど……。
それに俺に護衛という依頼をこなせるとも思えない。むしろ、口の聞き方を間違い。領主のロイ様に不快な思いをさせてしまう可能性が非常に高い。
うーん。どうしたものか……。
「例えば、護衛に最適な精霊が宿ったアクセサリーを贈るというのではどうでしょうか?」
「精霊の宿ったアクセサリーですか……。その精霊はどれ程の力を有しているのですか?」
意外と食い付きがいい?
ならこの線で話を進めよう。
「そうですね。ちょっと外に着いてきて頂けますか?」
俺が立ち上がると、ゴタさんもソファーから立ち上がる。
客間を抜けて広場に出ると、鎮守神が人型の的を置いた。俺は人型の的に収納指輪から出したアクセサリーをかけると、的から離れゴタさんのいる場所に戻る。
「あのアクセサリーには、二十体の影精霊が宿っています。今からあの的に向かって魔法を放ちますので見ていてください」
俺は的に視線を向けると、手の平をあげる。
「それじゃあ行きますよ。【火弾】【風弾】【土弾】」
俺は周囲に大小様々な大きさの【火弾】【風弾】【土弾】を浮かべると、的に向かって一斉に放った。
あ、あの別荘、休憩場が何かではなく、盗賊達の密会所だったのか……。
ヨルズルさんが盗賊だった事を聞き、背筋に冷たいものが走る。
もしかして、ヨルズルさんが振る舞ってくれたハーブティーに何がよからぬものが入っていたんじゃ……。
思い返せばあの時、ヨルズルさん達はハーブティーに口を付けていなかった様な気がする。
いや、でも体調に問題ないし考え過ぎか?
俺は首を横に振ると、ゴタさんに顔を向ける。
「それで、なんで金庫の回収依頼を俺に?」
正直言って、やりたくない。
廃坑内にまた入るとか危険だし、その中から金庫だけを回収するなんて無茶もいい所だ。
そういった事は、冒険者ではなく専門業者に依頼して欲しい。
「それが、その金庫の中にはヨルズルが盗賊から受け取った金品や様々な重要書類が収められている様です。報酬は金庫に入っている金品の半分では如何でしょうか?」
ユートピア商会の従業員達のお陰でお金には困っていない。それに今の俺はバカンス中。何で周囲の皆は俺を働かせようとするのだろうか?
すると、後ろに控えていた鎮守神が耳打ちをしてきた。
『悠斗様。この依頼、お引き受けください。この依頼をさせるに丁度良い人形があります』
『人形?』
もしかしてそれは、俺が密かにドレーク人形と呼んでいるユニークスキル収納魔法を使う目と口にメイクを施した人形の事を言っているのだろうか?
『はい。最近、捕獲し作成した人形なのですが、収納魔法のユニークスキルに、悪魔召喚スキルを持っております。ここ最近、作成した人形の中でも最高傑作と自負しており、あの人形であれば問題なく依頼をこなす事ができる事でしょう』
やっぱりそうか……。
頭の中でドレーク人形が陥没した別荘跡地から飛び込み、金庫を探し当てると収納魔法に収め、穴の中を這い上がってくる様子を思い浮かべる。
確かにあの人形なら最適かもしれない。
『わかった。ありがと』
俺は鎮守神にお礼を言うと、ゴタさんに視線を向ける。
「わかりました。その依頼受けさせて頂きます」
「そうですか! それはそれはありがとうございます! ロイ様もお喜びになるでしょう」
ゴタさんが笑顔を浮かべると、鞄から書類を取り出し渡してくる。
「こちらが依頼書になります。廃坑より金庫を回収したらこちらの依頼書を持って冒険者ギルドに提出ください。回収方法についてはお任せ致します」
よかった。回収方法を指定されては鎮守神の人形を動かす事ができないところだ。
「わかりました。金庫を回収次第、冒険者ギルドに提出致します」
「ありがとうございます。そして、あと一つお願いがあるのですが……」
「お願いですか……」
ゴタさんは襟を整えると真剣な表情を浮かべ話し始めた。どうやらこちらが本題のようだ。
「近々、王都ストレイモイで領主会議という。フェロー王国の全ての領主が集まる会議がございます。その間、悠斗様には、ロイ様の護衛をお願いしたいのですが、受けて頂けないでしょうか?」
「領主会議ですか……」
領主会議か……。
言ってあまり乗り気ではない。
領主会議には現国王や内務大臣も出席するだろうし、そんな中に護衛として付いていって勘繰られても困る。
俺が乗り気じゃない事を察したのだろうか。
ゴタさんは懇願するような視線を向けてくる。
しかし、これはエストゥロイ領の領主ロイ様からの依頼。断るのは簡単だけど、折角、ユートピア商会エストゥロイ支部の営業を始めたばかりだ。
下手に拗れて王都を出た時の二の舞になるのは避けたい。まあ考え過ぎかも知れないけど……。
それに俺に護衛という依頼をこなせるとも思えない。むしろ、口の聞き方を間違い。領主のロイ様に不快な思いをさせてしまう可能性が非常に高い。
うーん。どうしたものか……。
「例えば、護衛に最適な精霊が宿ったアクセサリーを贈るというのではどうでしょうか?」
「精霊の宿ったアクセサリーですか……。その精霊はどれ程の力を有しているのですか?」
意外と食い付きがいい?
ならこの線で話を進めよう。
「そうですね。ちょっと外に着いてきて頂けますか?」
俺が立ち上がると、ゴタさんもソファーから立ち上がる。
客間を抜けて広場に出ると、鎮守神が人型の的を置いた。俺は人型の的に収納指輪から出したアクセサリーをかけると、的から離れゴタさんのいる場所に戻る。
「あのアクセサリーには、二十体の影精霊が宿っています。今からあの的に向かって魔法を放ちますので見ていてください」
俺は的に視線を向けると、手の平をあげる。
「それじゃあ行きますよ。【火弾】【風弾】【土弾】」
俺は周囲に大小様々な大きさの【火弾】【風弾】【土弾】を浮かべると、的に向かって一斉に放った。
17
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。