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第八章 フェロー王国動乱編
第282話 ドレーク人形のグッズ開発
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ロキさんが嬉しそうに自分の階層に去っていくのを見届けた俺は不安げな表情を浮かべ呟く。
「これで大丈夫かな?」
「前科のある方々ではありますが、問題ないでしょう。それより悠斗様、この人形はいかが致しますか?」
俺は鎮守神の足元にいる人形に視線を向ける。
するとそこには、既にドレークメイクを施された人形が立っていた。
「あれ? いつの間に……?」
いつの間にかドレークメイクを施された人形に視線を向けると、鎮守神が話しかけてくる。
「この人形は悠斗様がドレーク人形と呼ぶ人形ほどの力を持ち合わせてはいません。そこで悠斗様にお願いがあるのですが、この人形に魔法を付与して頂けませんか?」
「えっ? 人形に魔法を?」
鎮守神の作り出す人形はどれも、その見た目からは想像もできない様な力を持っている。
それ、必要だろうか?
俺がそんな疑問を抱いていると、鎮守神は人形の頭を撫でながら呟いた。
「折角、この領を治める領主の下に諜報要員を送り込む事ができるのです。できれば、聖属性魔法と闇属性魔法、空間属性魔法辺りを付与して頂けるとありがたいのですが……」
そういう事なら仕方がない。
「わかったよ」
俺が人形に魔法を付与すると、人形がカタカタと口を歪め、顔をこちらに向けてきた。
うん。なんていうか……。普通にキモい。
多分、お礼的な何かを伝えようとしているんだろうけど、キモいものはキモい。
こんな人形を欲しがるなんて、領主様のお嬢様は頭の螺子が二、三本抜けているのかもしれない。
……いや、そんな事を思うのはやめておこう。
感性は人それぞれ、俺の感性と領主様のお嬢様の感性が偶々合わないだけだ。
それになんだか見慣れてくると、見た目の印象が気持ち悪いだけで、どことなく愛嬌があって可愛らしく思えてきた。
きっとこれはアレだ。キモ可愛いという奴だ。
折角なので、グッズ展開してみよう。
領主様に媚を売るいいチャンスだ。位の高い人と懇意にしていれば、何かあった時頼りになる。
それに領主様のお嬢様愛用とか何とか言って売りに出せば、このキモ可愛いドレーク人形も売れるかもしれない。(いや、勿論売るのは普通の人形だけれども……)
「鎮守神。申し訳ないんだけど、明後日の朝九時、領主様に面会の予約を取って貰ってもいいかな?」
「畏まりました」
鎮守神に領主様との面会予約をお願いすると、俺はユートピア商会エストゥロイ支部に向かう事にした。
現在のユートピア商会には、従業員達の能力適性を活かす為、様々な部署が立ちあげられている。
俺はその部署の中の一つ。商品開発部に足を運ぶ。
この商品開発部は、ユートピア商会で販売している商品のデザインや開発を主業務としている。
俺が商品開発部の扉を潜ると、今も黙々と新商品のデザインをしている商品開発部の部長ジュリアさんに声をかけた。
「ジュリアさん。忙しい所、すいません。少しだけよろしいですか?」
「えっ? ゆ、悠斗様⁉︎ 何でこんな所に?」
何故って?
当然、領主様に媚を売る為に決まっている。
それにもしかしたら、このキモ可愛いドレーク人形が売れ筋商品に化けるかもしれない。
「実はジュリアさんにお願いしたい事がありまして……」
俺は収納指輪からドレーク人形を取り出すと、机の上に置く。
「な、なんですか? この気味悪い人形は……」
俺はジュリアさんと向き合うと、ドレーク人形の頭を撫でながら話を続ける。
「これはドレーク人形という元Sランク冒険者のドレークさんを模した人形です」
「そ、それで……。悠斗様はこのドレーク人形を私に見せてどうしろと言うのですか?」
俺は満面の笑顔を浮かべながら、ジュリアさんに向かって口にした。
「このドレーク人形の事を領主様のお嬢様が偉く気に入ったみたいで、ジュリアさんには、このドレーク人形を元にした商品開発をお願いしたいんですよ」
「こ、この人形を元に商品開発をですか⁉︎」
「そうなんですよ。明後日、ドレーク人形を領主様に持っていく予定なんですけど、お願いできませんか?」
俺が少しだけ弱めの口調でお願いすると、ジュリアさんは「ううっ⁉︎」と声を上げ、ため息を吐きながら頷いた。
「……わかりました。悠斗様の直接依頼であれば仕方がありません」
「そう。ありがとう!」
流石はジュリアさんだ。俺からの急な依頼にも対応してくれるなんてとても優しい。
俺がお礼を言うと、ジュリアさんは自分の席に戻り、ドレーク人形弐号を見ながら唸り出した。
それにしても、王都のユートピア商会で働いていた従業員達は勤労意欲が異常に高い気がする。
王都の商業ギルドからユートピア商会に転職してきたジュリアさんもそうだけど、折角の休暇だというのに、既にその大半がユートピア商会エストゥロイ支部で働いている。
「(ユートピア商会の)エストゥロイ支部も広いけど、少し手狭になってきたな……」
ユートピア商会エストゥロイ支部で働く従業員は三百人を超えている。
しかも、鎮守神がどこからスカウトしてきているのか分からないが、今も従業員は増加中。
鑑定スキルを持つ従業員が増えるのは嬉しいし、商会で売る商品は殆ど迷宮産の為、原価はかからない。
売ったら売っただけ利益が出るから従業員達をどれだけ雇用しても問題ない。
それに俺に何かがあっても、従業員達がこれまでの生活を維持する事ができる位には対処してきた。
とはいえ、エストゥロイ領にいる住民の数は限られているし、従業員達が毎日狩ってくるモンスターの素材もエストゥロイ領で売るには、少し飽和気味。
早目に対処しなければ……。
俺はジュリアさんにドレーク人形弐号を託すと、邸宅に戻る事にした。
「これで大丈夫かな?」
「前科のある方々ではありますが、問題ないでしょう。それより悠斗様、この人形はいかが致しますか?」
俺は鎮守神の足元にいる人形に視線を向ける。
するとそこには、既にドレークメイクを施された人形が立っていた。
「あれ? いつの間に……?」
いつの間にかドレークメイクを施された人形に視線を向けると、鎮守神が話しかけてくる。
「この人形は悠斗様がドレーク人形と呼ぶ人形ほどの力を持ち合わせてはいません。そこで悠斗様にお願いがあるのですが、この人形に魔法を付与して頂けませんか?」
「えっ? 人形に魔法を?」
鎮守神の作り出す人形はどれも、その見た目からは想像もできない様な力を持っている。
それ、必要だろうか?
俺がそんな疑問を抱いていると、鎮守神は人形の頭を撫でながら呟いた。
「折角、この領を治める領主の下に諜報要員を送り込む事ができるのです。できれば、聖属性魔法と闇属性魔法、空間属性魔法辺りを付与して頂けるとありがたいのですが……」
そういう事なら仕方がない。
「わかったよ」
俺が人形に魔法を付与すると、人形がカタカタと口を歪め、顔をこちらに向けてきた。
うん。なんていうか……。普通にキモい。
多分、お礼的な何かを伝えようとしているんだろうけど、キモいものはキモい。
こんな人形を欲しがるなんて、領主様のお嬢様は頭の螺子が二、三本抜けているのかもしれない。
……いや、そんな事を思うのはやめておこう。
感性は人それぞれ、俺の感性と領主様のお嬢様の感性が偶々合わないだけだ。
それになんだか見慣れてくると、見た目の印象が気持ち悪いだけで、どことなく愛嬌があって可愛らしく思えてきた。
きっとこれはアレだ。キモ可愛いという奴だ。
折角なので、グッズ展開してみよう。
領主様に媚を売るいいチャンスだ。位の高い人と懇意にしていれば、何かあった時頼りになる。
それに領主様のお嬢様愛用とか何とか言って売りに出せば、このキモ可愛いドレーク人形も売れるかもしれない。(いや、勿論売るのは普通の人形だけれども……)
「鎮守神。申し訳ないんだけど、明後日の朝九時、領主様に面会の予約を取って貰ってもいいかな?」
「畏まりました」
鎮守神に領主様との面会予約をお願いすると、俺はユートピア商会エストゥロイ支部に向かう事にした。
現在のユートピア商会には、従業員達の能力適性を活かす為、様々な部署が立ちあげられている。
俺はその部署の中の一つ。商品開発部に足を運ぶ。
この商品開発部は、ユートピア商会で販売している商品のデザインや開発を主業務としている。
俺が商品開発部の扉を潜ると、今も黙々と新商品のデザインをしている商品開発部の部長ジュリアさんに声をかけた。
「ジュリアさん。忙しい所、すいません。少しだけよろしいですか?」
「えっ? ゆ、悠斗様⁉︎ 何でこんな所に?」
何故って?
当然、領主様に媚を売る為に決まっている。
それにもしかしたら、このキモ可愛いドレーク人形が売れ筋商品に化けるかもしれない。
「実はジュリアさんにお願いしたい事がありまして……」
俺は収納指輪からドレーク人形を取り出すと、机の上に置く。
「な、なんですか? この気味悪い人形は……」
俺はジュリアさんと向き合うと、ドレーク人形の頭を撫でながら話を続ける。
「これはドレーク人形という元Sランク冒険者のドレークさんを模した人形です」
「そ、それで……。悠斗様はこのドレーク人形を私に見せてどうしろと言うのですか?」
俺は満面の笑顔を浮かべながら、ジュリアさんに向かって口にした。
「このドレーク人形の事を領主様のお嬢様が偉く気に入ったみたいで、ジュリアさんには、このドレーク人形を元にした商品開発をお願いしたいんですよ」
「こ、この人形を元に商品開発をですか⁉︎」
「そうなんですよ。明後日、ドレーク人形を領主様に持っていく予定なんですけど、お願いできませんか?」
俺が少しだけ弱めの口調でお願いすると、ジュリアさんは「ううっ⁉︎」と声を上げ、ため息を吐きながら頷いた。
「……わかりました。悠斗様の直接依頼であれば仕方がありません」
「そう。ありがとう!」
流石はジュリアさんだ。俺からの急な依頼にも対応してくれるなんてとても優しい。
俺がお礼を言うと、ジュリアさんは自分の席に戻り、ドレーク人形弐号を見ながら唸り出した。
それにしても、王都のユートピア商会で働いていた従業員達は勤労意欲が異常に高い気がする。
王都の商業ギルドからユートピア商会に転職してきたジュリアさんもそうだけど、折角の休暇だというのに、既にその大半がユートピア商会エストゥロイ支部で働いている。
「(ユートピア商会の)エストゥロイ支部も広いけど、少し手狭になってきたな……」
ユートピア商会エストゥロイ支部で働く従業員は三百人を超えている。
しかも、鎮守神がどこからスカウトしてきているのか分からないが、今も従業員は増加中。
鑑定スキルを持つ従業員が増えるのは嬉しいし、商会で売る商品は殆ど迷宮産の為、原価はかからない。
売ったら売っただけ利益が出るから従業員達をどれだけ雇用しても問題ない。
それに俺に何かがあっても、従業員達がこれまでの生活を維持する事ができる位には対処してきた。
とはいえ、エストゥロイ領にいる住民の数は限られているし、従業員達が毎日狩ってくるモンスターの素材もエストゥロイ領で売るには、少し飽和気味。
早目に対処しなければ……。
俺はジュリアさんにドレーク人形弐号を託すと、邸宅に戻る事にした。
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