転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

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第八章 フェロー王国動乱編

第283話 迷宮変化①

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「悠斗様。お待ちしておりました」
「屋敷神?」

 邸宅に戻ると、普段は迷宮内か王都にいる筈の屋敷神が待っていた。
 何か問題でも発生したのだろうか?

「少々、お耳に挟みたい事が……現国王が王都行のフェリーの運航を停止致しました。その影響により食糧品は高騰し、食糧品を買えなくなった国民が王城に向かう等、王都では国民による大規模な暴動が発生しております」
「だ、大規模な暴動⁉」
「はい。大規模な暴動です」

 思った以上の事が発生していた。
 大規模な暴動って結構ヤバいんじゃ……。

「現在、国王は国民に配るはずの食糧品を抱え、籠城しております。いかが致しましょうか?」
「そうだね……。魔法学園には優先して食糧を卸しているんだよね?」
「はい。悠斗様の申し付け通り、魔法学園には優先して食糧品を届けております」
「そっか、ありがと。因みに、屋敷神はどうしたいの?」

 俺としては子供達に食糧さえ届いていれば何でもいい。
 屋敷神がどうしたいのか聞いてみると、屋敷神は笑みを浮かべた。

「そうですね。現国王には、悠斗様が手塩にかけて作り上げたユートピア商会の土地を接収されてしまいましたからね……。彼等にも、私達と同じ様に、突然、所有物を取り上げられる事の恐ろしさを教えて差し上げようと思っております」

 屋敷神の笑みが怖い。
 とはいえ、話自体に全くの異論はない。

「それじゃあ、王都の事は屋敷神に任せるよ。土地を接収した現国王に、存分に思い知らせてあげて!」
「はい。畏まりました」

 屋敷神はそう呟くと、迷宮内に戻っていく。
 おそらく、これから王都に戻り、現国王に突然、所有物を取り上げられる事の恐ろしさについて教えてあげるつもりなのだろう。
 それにしても、一体何をするつもりなのだろうか?
『存分に思い知らせてあげて』と言ったものの、なんだか不安になってきた。

 そういえば以前、ロキとカマエルに任せた時、後々、大変な目にあったような……。
 ああ言ってしまったけど、大丈夫だろうか?
 やり過ぎないよね?

 俺は王都の方向に視線を向けると、静かに目を閉じ合掌した。

 ◇◇◇

「さて、悠斗様の許可は得ました」

 迷宮を通して王都へ戻ってきた私は、暴徒と化した国民達に視線を向けた後、目を閉じると〔迷宮変化〕で王城の中を見ていく。

「現在、王城に向かって国民達が進攻中。そして国王は、文官達と共に籠城中ですか……」

 籠城中の国王に視線を向けると、暴徒と化した国民達が王城近くまで進行中だというのに、呑気に食事をしていた。
 耳を傾けるとこんな会話が聞こえてくる。

「ふん! 既に兵士に命じて門は閉じた。それにこの王城には国民達に配る予定だった食糧が蓄えられている。どうせこの騒ぎも二、三日すれば治まるだろう。まったく、馬鹿な奴らだ! おい! お前達は武器庫から剣を取り、門へ向かえ!」
「は、はいっ!」

「国民達が食料高騰に喘ぐ中、紅茶を飲みながら食事をするなんて良いご身分ですね。それではまず手始めに、鍵をかけ大切に保管しているその食糧を接収させて頂きましょう。〔迷宮変化チェンジ〕」

 私はそう呟くと〔迷宮変化〕スキルで、迷宮の構造を変化させ食糧庫から食糧のみを抜いていく。
 既に王都全域が迷宮の範囲内。
 屋敷神と土地神の持つスキル〔迷宮変化〕さえあれば、王都を好きな様に変化させる事ができる。

「さて、この食糧は後程、国民達に配布するとして、次はどうしましょうか?」

 取り敢えず、王城にある食糧庫から食糧は全て奪い取った。
 まだ料理場と国王の部屋に僅かながら食糧は残っている様だが、これについては取らないでおこう。
 その方が都合がいい。

 私は冷めた視線で王城を視ていると、兵士達がどこかに向かっていく姿を捉える。

「おや? 彼等は何処に向かっているのでしょうか?」

 〔迷宮変化〕で王城の部屋の配置を頭の中に思い浮かべる。

「ああ、そういう事ですか……。そういえば武器庫がどうとか言っていましたね。〔迷宮変化〕」

 兵士が向かう先にあるのは武器庫。
 おそらく、国民達の制圧に向う為、武器を取りに向かったのだろう。
 しかし、そんな事はさせない。

「お、おい! 大変だ! 剣が、剣がないぞ!」
「な、なんだと! どうするんだ! 武器なしで国民達の鎮圧をするなんて冗談じゃないぞ!」
「陛下に、すぐに陛下に報告しろっ!」

 〔迷宮変化〕スキルで、迷宮の構造を変化させ武器庫から武器と防具を抜いていく。

「悠斗様の土地を接収した時点で、あなた方の運命は既に決まっているのですよ。さて、最後に……〔迷宮変化〕」

 私がそう呟くと、王城を閉ざす外門が壁と同化し消えていく。
 外門が消えて聞く光景に、兵士達は慌ただしく動き出した。

「お、おい! 外門がっ! 外門が消えていく!」
「ど、どうなってるんだっ!」
「な、なんで? どうしてっ! 逃げろ! 国民達が押し寄せてくるぞっ!」
「へ、陛下はどうする。陛下に伝えなきゃ拙いんじゃ……」
「今はそれ所じゃねーだろっ! 俺達も逃げなきゃヤベーんだよ!」

 何せ、自分達を守ってくれる筈の外門が消えてしまったのだ。
 兵士として、その事を報告するのは当たり前。なのに彼等は職務を放棄して逃げてしまった。

 その光景を視ていた私は思わず呟いてしまう。

「これは予定外の行動ですね……。彼等に忠誠心はないのでしょうか? まあ、今日の所はこの位にして、少しだけ事の推移を見守る事に致しましょう」

 私は息を吐くと迷宮へと戻っていく。
 ふと振り向くと、国民達が王城の門に入っていく姿が見えた。
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