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第九章 商人連合国アキンド編

第367話 悠斗VSツカサ③

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「うっ!?」

 影の中で攻撃を受けた俺は、複数の『影刃』により刺し貫かれ声を上げる。
 まさか影の中で攻撃を受けるとは思わず完全に油断していた。
 俺が『影刃』から抜けようとすると、ツカサさんが話しかけてくる。

「全く転移者って本当に厄介だね~でも、漸く君のユニークスキルの事が分かったよ」
「……ツ、ツカサさん?」

 俺がそう返事をすると、ツカサさんは驚いた表情を浮かべた。

「へえ~まだ生きているんだ? てっきり殺しちゃったかと思ったけど、流石は転移者。丈夫だねぇ」

 いや、マジかこの人。
 敵を殺す事に慣れすぎだろ。

 複数の『影刃』で刺し貫かれた俺の姿は中々、ショッキングな姿となっている。
 今の攻撃、俺が『影纏』を纏っていなければ、本当に死んでいた所だ。
 俺を奴隷にすると言っていたあの話はどこにいってしまったのだろうか?

 いや、それよりも……。
 俺は自身の身体に突き刺さる『影刃』に視線を移す。

「な、なんで……」
「なんで私が君のユニークスキル『影魔法』を使う事ができたのかを聞きたいのかな?」
「……!?」

 正直言って驚いた。
『鑑定』スキルを持っていないツカサさんが、俺の持っているユニークスキルを言い当てるなんて。

「ふふふっ、驚いている様だね~君は知っているかい? この世界はね、精霊により管理されているんだよ?」
「せ、精霊に?」
「そう、精霊はこの世界で起こる全ての事象に関与している。君のユニークスキル『影魔法』もそれは同じ、君が『影魔法』で何かをする時、その裏で影精霊が君が使う魔法のサポートをしてくれているのさ」
「影精霊が魔法のサポートを……」

 知らなかった。
 流石は『精霊魔法』の使い手。
 精霊について博識だ。

「そう。そして、私のユニークスキル『精霊魔法』はこの世界の精霊全てを統べるスキル。私を相手にすると言う事は、この世界の自然や災害の全てを相手にする事。つまり元から君に勝ち目はなかったっ訳さ。それにしても君、凄いね。まだ意識があるんだ~」

 そう言うと、ツカサさんが近付いてくる。

「まあ好都合かな? さて、悠斗君。君には今、二つの選択肢がある。一つは、君の全てを私に差し出し奴隷となる選択肢が、もう一つはこのまま影の中で人知れず朽ち果てる選択肢が、君はどちらの選択肢を選ぶのか聞かせてくれるかな?」

 随分と傲慢な選択肢だ。
 どちらの選択肢を選んでも地獄が待っている。

 とはいえ、『影刃』で身体を縫い付けられているのが現状だ。普通の人であれば、痛みと助かりたいその一心から奴隷になる事を了承してしまうかもしれない。

 いや、おそらく、ツカサさんは俺の口から直接、『奴隷にして下さい』という言葉を引き出したいのだろう。随分とサディスティックな性格をしている。

 まあ、俺には関係ないけど。

「よっと……」

 俺は、俺の身体に深々と刺さった影刃から抜けると、何事もなかったかの様にゆっくりした動作で立ち上がる。
 すると、それを見ていたツカサさんは驚愕の表情を浮かべた。

「えっ? な、なんでっ?」

 俺が立ち上がるのを見て、随分と混乱している様だ。
 別に俺はツカサさんを驚かせたくて、じっとしていた訳ではない。
 俺が『影刃』から抜けようとしたら、話しかけてきたからそのままの姿でじっとしていただけだ。

 物理・魔法を無効化する『影纏』を纏っている以上、俺に怪我を負わせる事はできない。
 それは『影刃』であっても同じ事。

 ただ、突然影の中から攻撃されビックリした事は確かだ。
 あれには驚かされた。
 影魔法を使えるのは俺だけだと思い、完全に油断していた。

「なんでと言われましても……俺、『影纏』を纏っていますし……」
「か、影纏? あ、あなたは一体何を言っているの!?」

 どうやらツカサさん、『影纏』の事は知らないらしい。影精霊の力を借りて、影魔法を使う事はできるみたいだけど、影魔法を十全に使いこなす事ができる訳ではないらしい。

 それにツカサさんのユニークスキル『精霊魔法』は、精霊に呼びかける事で、魔力を対価に精霊から力を貸して貰うことができるスキル。

 その説明文からして、この世界の精霊全てを統べるスキルとは思えない。

 ツカサさんはこの世界に召喚されて十年間、このユニークスキルを使い生きてきた筈だ。
 これまでの自信と経験が過信となりそんな事を言ってしまったのだろう。俺も自分のスキルに過信しない様に気をつけなければ……。

 その点、ツカサさんはいい反面教師になってくれそうだ。

「そうですか、知らないならいいです。それじゃあ、続きを始めましょうか」

 そう言うと俺は、ツカサさんから距離を取り数十体の『影精霊』を召喚していく。

『影精霊』から力を借りる事のできるツカサさんに『影縛』が効かない事はよく分かった。それなら俺は『影精霊』の力を借りて捕らえるまで……。

「さあ『影精霊』。ツカサさんを捕らえて!」

 俺がそう『影精霊』に指示を出すと、『影精霊』がツカサさんに殺到していく。
 すると、少し間を置き、落ち着きを取り戻したツカサさんが『影精霊』達に視線を向ける。

「ふう、全く分かっていないみたいですね」

 そして、ツカサさんはそう言うと、あろう事か俺の召喚した『影精霊』に向かって話しかけた。

「『影精霊』達よ。止まりなさい」

 ツカサさんがそういうと『影精霊』は攻撃を止めピタリと動作を止めた。
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