転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
351 / 486
悠斗の家出

(閑話) マデイラ王の凋落生活④

しおりを挟む
 ワシはセントヘレナ・マデイラ20世。
 悪い魔法使いにより緑色の悪鬼、ゴブリンへと姿を変えさせられてしまったワシは、紆余曲折を経て、今はキングゴブリンに仕える召使いジョンとして生きている。
 そして今、ワシはキングゴブリン達と共に、同じくゴブリンに変えさせられてしまった元部下達の興した集落へと向かっていた。

「ふむ、こんな所に同胞の集落があったとは気付きもしなかったな、ジョンよ。褒めて遣わす」

「ありがとうございます。しかし、お気をつけ下さい。奴等は鼻が効きます。既に我々の存在に気付いているかもしれません」

 ここにある集落をまとめているのは、元部下の暗部ゴブリン。警戒するに越した事はない。

 ワシがそう言うとキングゴブリンは鼻で笑った。

「ジョン、周りを見よ。高々、下位のゴブリンが興した集落。何を恐れる必要がある」

 周囲を見渡せば、ボブゴブリンが目を爛々と煌めかせ、集落襲撃の時を今か今かと待ち構えていた。

 流石の暗部ゴブリンも、キングゴブリン率いるボブゴブリンの群れに襲われてはたまったものではないだろう。

「確かに無用な心配でしたな……」

 暗部ゴブリンは強い。
 しかし、所詮はゴブリン。
 多少知恵の回るゴブリン風情では、ボブゴブリンに勝つ事はできない。
 それに、こちらにはゴブリンの王、キングゴブリンがいるのだ。
 力の差は歴然としている。
 負ける筈がない。

「王よ。敵に動きがありました」

 そんな事を考えている内に動きがあったようだ。

「うむ。ご苦労……」

 ワシがそう言うと、ボブゴブリンが、こいつ何を言っているんだ? といった表情を浮かべた。

 し、しまった……つ、つい癖で……。
 それに気付いた瞬間、冷や汗が浮いてきた。

 キングゴブリンもこっちを見ている。

 今のワシはゴブリン。
 マデイラ王ではあるが、ゴブリンの王ではない。

「……ご、ご苦労様でした。王もお喜びになる事でしょう」
「…………」

 ワシがそう取り繕うと、ホブゴブリンは頭を掻きながら襲撃に備え、所定の配置に戻っていく。

 の、乗り切ったか……。
 冷や汗を浮かべながら、暗部ゴブリンの築いた集落に視線を向ける。
 すると、目の前から矢が飛んできた。

 矢はワシの頬を浅く切り裂き、そのまま地面に突き刺さる。

「ふむ、気付かれた様だな……下位のゴブリン風情が生意気な……」

 キングゴブリンがそう言うと、ニヤリと笑う。

「さあ、蹂躙を始めよう」
「「「おおおおおおおっ!」」」

 キングゴブリンがそういうと、ホブゴブリンは雄叫びを上げ、暗部ゴブリンの集落に雪崩れ込んだ。
 前に視線を向けると、集落に火の手が上がっていく。

 あれでは暗部ゴブリン達もただでは済むまい……。
 そんな事を考えていると、どこからともなく恐ろしい程の威圧感が襲ってきた。

「な、なんだっ! 何が起こっているっ!?」
「ほう……。流石はキングゴブリン。このワシの威圧を受けてまだ動けるか……」

 背後に視線を向けると、目の前につばの広い帽子を被り、長い髭を生やした隻眼の老人が石に座っていた。

 な、何故、こんな所に老人が……。

 キングゴブリンに視線を向けると、キングゴブリンの首から上がなくなっている。
 な、何が起こっているんだ……あ、あの老人がやったのかっ!?

「ゴブリン共よ。キングゴブリンは死んだ。今日からこのワシがお前達の主人だ……」
「な、なんだと……」

 じ、冗談ではない。
 何故、このワシがお前みたいな爺に従わねばならぬのだっ!?
 というより、この爺。何故、言葉が通じる。

「返事はどうした……」

 ふんっ、何を言っているんだ……返事を寄越せだと?
 爺如きがふざけた事をっ!
 返すべき言葉は最初から決まっている。

「はい、ご主人様。なんなりと申し付け下さい」

 気付けばワシは、隻眼の老人の前に伏していた。

 キングゴブリンを一瞬にして倒す奴だ。
 逆らえば殺されてしまう。ワシはまだ死にたくない。

 ワシがそう言うと、ホブゴブリンも平伏し始めた。
 ホブゴブリンにも、危険を察知する位の知能はあったらしい。

「うむ。それでいい……」

 隻眼の老人はそう言うと、座っていた石からゆっくり立ち上がる。
 すると、隻眼の老人の背後に、今、殺されたばかりのキングゴブリンが姿を現した。
 しかし、その姿は透けていて、まるで幽霊の様に見えなくもない。

「本来であれば、この様に使ってやっても良いのだが、今のワシに力はない。お前達には働いて貰うぞ」

 隻眼の老人はそう言うと、キングゴブリンの霊体を操り、一人当たり十数本の瓶と、不思議な文字の刻まれた黄金の腕輪をワシらの目の前に置いていく。

「その腕輪を嵌め、その瓶をオーランド王国以外の隣国にばら撒くのだ。ふふっ、安心しろ。その国を守る兵士や冒険者に殺されては困るからな。お前達には力を与えてやる。数体のゴブリンに力を与えよう……」

 隻眼の老人がそう呟くと、ワシの身体が『ボコリ』と大きな音を立てる。

「へっ?」

 身体に視線を落とすと、身体がボコリ、ボコリと音を立て、肉体が勝手に蠢き出す。
 まるで身体を造り替えられているようだ。
 あまりの激痛に、声も出せず悶え苦しむ事しかできなかった。

 激痛に苦しむ事、数分。
 気付けばワシは、キングゴブリンに進化していた。
 周りのホブゴブリンも同様の進化を遂げている。

「さあ、ゴブリン共よ。瓶を持ち疫病を流行らせろ……人間共を死の淵に追いやるのだ」

 隻眼の老人はそう言うと、そのままどこかに姿を消したのだった。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。