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悠斗の家出
(閑話) マデイラ王の凋落生活④
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ワシはセントヘレナ・マデイラ20世。
悪い魔法使いにより緑色の悪鬼、ゴブリンへと姿を変えさせられてしまったワシは、紆余曲折を経て、今はキングゴブリンに仕える召使いジョンとして生きている。
そして今、ワシはキングゴブリン達と共に、同じくゴブリンに変えさせられてしまった元部下達の興した集落へと向かっていた。
「ふむ、こんな所に同胞の集落があったとは気付きもしなかったな、ジョンよ。褒めて遣わす」
「ありがとうございます。しかし、お気をつけ下さい。奴等は鼻が効きます。既に我々の存在に気付いているかもしれません」
ここにある集落をまとめているのは、元部下の暗部ゴブリン。警戒するに越した事はない。
ワシがそう言うとキングゴブリンは鼻で笑った。
「ジョン、周りを見よ。高々、下位のゴブリンが興した集落。何を恐れる必要がある」
周囲を見渡せば、ボブゴブリンが目を爛々と煌めかせ、集落襲撃の時を今か今かと待ち構えていた。
流石の暗部ゴブリンも、キングゴブリン率いるボブゴブリンの群れに襲われてはたまったものではないだろう。
「確かに無用な心配でしたな……」
暗部ゴブリンは強い。
しかし、所詮はゴブリン。
多少知恵の回るゴブリン風情では、ボブゴブリンに勝つ事はできない。
それに、こちらにはゴブリンの王、キングゴブリンがいるのだ。
力の差は歴然としている。
負ける筈がない。
「王よ。敵に動きがありました」
そんな事を考えている内に動きがあったようだ。
「うむ。ご苦労……」
ワシがそう言うと、ボブゴブリンが、こいつ何を言っているんだ? といった表情を浮かべた。
し、しまった……つ、つい癖で……。
それに気付いた瞬間、冷や汗が浮いてきた。
キングゴブリンもこっちを見ている。
今のワシはゴブリン。
マデイラ王ではあるが、ゴブリンの王ではない。
「……ご、ご苦労様でした。王もお喜びになる事でしょう」
「…………」
ワシがそう取り繕うと、ホブゴブリンは頭を掻きながら襲撃に備え、所定の配置に戻っていく。
の、乗り切ったか……。
冷や汗を浮かべながら、暗部ゴブリンの築いた集落に視線を向ける。
すると、目の前から矢が飛んできた。
矢はワシの頬を浅く切り裂き、そのまま地面に突き刺さる。
「ふむ、気付かれた様だな……下位のゴブリン風情が生意気な……」
キングゴブリンがそう言うと、ニヤリと笑う。
「さあ、蹂躙を始めよう」
「「「おおおおおおおっ!」」」
キングゴブリンがそういうと、ホブゴブリンは雄叫びを上げ、暗部ゴブリンの集落に雪崩れ込んだ。
前に視線を向けると、集落に火の手が上がっていく。
あれでは暗部ゴブリン達もただでは済むまい……。
そんな事を考えていると、どこからともなく恐ろしい程の威圧感が襲ってきた。
「な、なんだっ! 何が起こっているっ!?」
「ほう……。流石はキングゴブリン。このワシの威圧を受けてまだ動けるか……」
背後に視線を向けると、目の前につばの広い帽子を被り、長い髭を生やした隻眼の老人が石に座っていた。
な、何故、こんな所に老人が……。
キングゴブリンに視線を向けると、キングゴブリンの首から上がなくなっている。
な、何が起こっているんだ……あ、あの老人がやったのかっ!?
「ゴブリン共よ。キングゴブリンは死んだ。今日からこのワシがお前達の主人だ……」
「な、なんだと……」
じ、冗談ではない。
何故、このワシがお前みたいな爺に従わねばならぬのだっ!?
というより、この爺。何故、言葉が通じる。
「返事はどうした……」
ふんっ、何を言っているんだ……返事を寄越せだと?
爺如きがふざけた事をっ!
返すべき言葉は最初から決まっている。
「はい、ご主人様。なんなりと申し付け下さい」
気付けばワシは、隻眼の老人の前に伏していた。
キングゴブリンを一瞬にして倒す奴だ。
逆らえば殺されてしまう。ワシはまだ死にたくない。
ワシがそう言うと、ホブゴブリンも平伏し始めた。
ホブゴブリンにも、危険を察知する位の知能はあったらしい。
「うむ。それでいい……」
隻眼の老人はそう言うと、座っていた石からゆっくり立ち上がる。
すると、隻眼の老人の背後に、今、殺されたばかりのキングゴブリンが姿を現した。
しかし、その姿は透けていて、まるで幽霊の様に見えなくもない。
「本来であれば、この様に使ってやっても良いのだが、今のワシに力はない。お前達には働いて貰うぞ」
隻眼の老人はそう言うと、キングゴブリンの霊体を操り、一人当たり十数本の瓶と、不思議な文字の刻まれた黄金の腕輪をワシらの目の前に置いていく。
「その腕輪を嵌め、その瓶をオーランド王国以外の隣国にばら撒くのだ。ふふっ、安心しろ。その国を守る兵士や冒険者に殺されては困るからな。お前達には力を与えてやる。数体のゴブリンに力を与えよう……」
隻眼の老人がそう呟くと、ワシの身体が『ボコリ』と大きな音を立てる。
「へっ?」
身体に視線を落とすと、身体がボコリ、ボコリと音を立て、肉体が勝手に蠢き出す。
まるで身体を造り替えられているようだ。
あまりの激痛に、声も出せず悶え苦しむ事しかできなかった。
激痛に苦しむ事、数分。
気付けばワシは、キングゴブリンに進化していた。
周りのホブゴブリンも同様の進化を遂げている。
「さあ、ゴブリン共よ。瓶を持ち疫病を流行らせろ……人間共を死の淵に追いやるのだ」
隻眼の老人はそう言うと、そのままどこかに姿を消したのだった。
悪い魔法使いにより緑色の悪鬼、ゴブリンへと姿を変えさせられてしまったワシは、紆余曲折を経て、今はキングゴブリンに仕える召使いジョンとして生きている。
そして今、ワシはキングゴブリン達と共に、同じくゴブリンに変えさせられてしまった元部下達の興した集落へと向かっていた。
「ふむ、こんな所に同胞の集落があったとは気付きもしなかったな、ジョンよ。褒めて遣わす」
「ありがとうございます。しかし、お気をつけ下さい。奴等は鼻が効きます。既に我々の存在に気付いているかもしれません」
ここにある集落をまとめているのは、元部下の暗部ゴブリン。警戒するに越した事はない。
ワシがそう言うとキングゴブリンは鼻で笑った。
「ジョン、周りを見よ。高々、下位のゴブリンが興した集落。何を恐れる必要がある」
周囲を見渡せば、ボブゴブリンが目を爛々と煌めかせ、集落襲撃の時を今か今かと待ち構えていた。
流石の暗部ゴブリンも、キングゴブリン率いるボブゴブリンの群れに襲われてはたまったものではないだろう。
「確かに無用な心配でしたな……」
暗部ゴブリンは強い。
しかし、所詮はゴブリン。
多少知恵の回るゴブリン風情では、ボブゴブリンに勝つ事はできない。
それに、こちらにはゴブリンの王、キングゴブリンがいるのだ。
力の差は歴然としている。
負ける筈がない。
「王よ。敵に動きがありました」
そんな事を考えている内に動きがあったようだ。
「うむ。ご苦労……」
ワシがそう言うと、ボブゴブリンが、こいつ何を言っているんだ? といった表情を浮かべた。
し、しまった……つ、つい癖で……。
それに気付いた瞬間、冷や汗が浮いてきた。
キングゴブリンもこっちを見ている。
今のワシはゴブリン。
マデイラ王ではあるが、ゴブリンの王ではない。
「……ご、ご苦労様でした。王もお喜びになる事でしょう」
「…………」
ワシがそう取り繕うと、ホブゴブリンは頭を掻きながら襲撃に備え、所定の配置に戻っていく。
の、乗り切ったか……。
冷や汗を浮かべながら、暗部ゴブリンの築いた集落に視線を向ける。
すると、目の前から矢が飛んできた。
矢はワシの頬を浅く切り裂き、そのまま地面に突き刺さる。
「ふむ、気付かれた様だな……下位のゴブリン風情が生意気な……」
キングゴブリンがそう言うと、ニヤリと笑う。
「さあ、蹂躙を始めよう」
「「「おおおおおおおっ!」」」
キングゴブリンがそういうと、ホブゴブリンは雄叫びを上げ、暗部ゴブリンの集落に雪崩れ込んだ。
前に視線を向けると、集落に火の手が上がっていく。
あれでは暗部ゴブリン達もただでは済むまい……。
そんな事を考えていると、どこからともなく恐ろしい程の威圧感が襲ってきた。
「な、なんだっ! 何が起こっているっ!?」
「ほう……。流石はキングゴブリン。このワシの威圧を受けてまだ動けるか……」
背後に視線を向けると、目の前につばの広い帽子を被り、長い髭を生やした隻眼の老人が石に座っていた。
な、何故、こんな所に老人が……。
キングゴブリンに視線を向けると、キングゴブリンの首から上がなくなっている。
な、何が起こっているんだ……あ、あの老人がやったのかっ!?
「ゴブリン共よ。キングゴブリンは死んだ。今日からこのワシがお前達の主人だ……」
「な、なんだと……」
じ、冗談ではない。
何故、このワシがお前みたいな爺に従わねばならぬのだっ!?
というより、この爺。何故、言葉が通じる。
「返事はどうした……」
ふんっ、何を言っているんだ……返事を寄越せだと?
爺如きがふざけた事をっ!
返すべき言葉は最初から決まっている。
「はい、ご主人様。なんなりと申し付け下さい」
気付けばワシは、隻眼の老人の前に伏していた。
キングゴブリンを一瞬にして倒す奴だ。
逆らえば殺されてしまう。ワシはまだ死にたくない。
ワシがそう言うと、ホブゴブリンも平伏し始めた。
ホブゴブリンにも、危険を察知する位の知能はあったらしい。
「うむ。それでいい……」
隻眼の老人はそう言うと、座っていた石からゆっくり立ち上がる。
すると、隻眼の老人の背後に、今、殺されたばかりのキングゴブリンが姿を現した。
しかし、その姿は透けていて、まるで幽霊の様に見えなくもない。
「本来であれば、この様に使ってやっても良いのだが、今のワシに力はない。お前達には働いて貰うぞ」
隻眼の老人はそう言うと、キングゴブリンの霊体を操り、一人当たり十数本の瓶と、不思議な文字の刻まれた黄金の腕輪をワシらの目の前に置いていく。
「その腕輪を嵌め、その瓶をオーランド王国以外の隣国にばら撒くのだ。ふふっ、安心しろ。その国を守る兵士や冒険者に殺されては困るからな。お前達には力を与えてやる。数体のゴブリンに力を与えよう……」
隻眼の老人がそう呟くと、ワシの身体が『ボコリ』と大きな音を立てる。
「へっ?」
身体に視線を落とすと、身体がボコリ、ボコリと音を立て、肉体が勝手に蠢き出す。
まるで身体を造り替えられているようだ。
あまりの激痛に、声も出せず悶え苦しむ事しかできなかった。
激痛に苦しむ事、数分。
気付けばワシは、キングゴブリンに進化していた。
周りのホブゴブリンも同様の進化を遂げている。
「さあ、ゴブリン共よ。瓶を持ち疫病を流行らせろ……人間共を死の淵に追いやるのだ」
隻眼の老人はそう言うと、そのままどこかに姿を消したのだった。
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