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第十章 冒険者ギルド編
第435話 トゥルク、次なる場所へ
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「えええーっ! こ、こここっ、今度は、オーランド王国のフィン様に魔道具を売りに行くんですかっ!?」
ここはフェロー王国の王都にあるユートピア商会の一室。
そこでは、冒険者ギルドフェロー王国王都支部のギルドマスター、モルトバを騙し二百人を超える冒険者と、その冒険者達の持っていた資産という資産を差し押さえ、漸くゆっくりする事ができると椅子にもたれかかっていたトゥルクが絶叫を上げていた。
「ええ、その通りです。オーランド王国が近隣諸国に宣戦布告をしているのは知っているでしょう?」
「し、しししっ、知っているも何も、何で、オーランド王国に魔道具を……しかも、一本当たり白金貨五十枚もする魔剣やレジェンドシリーズの魔道具を……屋敷神様は戦禍を広げたいのですかっ!?」
「おや、あなたにしては珍しく真っ当な事を言いますね?」
そんな真っ当なセリフを吐くトゥルクを前に、思わず私は笑みを浮かべる。
「疑問は最もです。何故、今、オーランド王国に武器や防具を……それも世間一般的に高価とされる魔道具を売りつけるのかと言われれば、話は簡単。それが必要な事だからですよ。当然、戦渦を広げるつもりもありません」
「いや、全然、説明になっていないのですが……」
「ふむ。こちらと致しましても、はぐらかしている訳ではないのですが……トゥルク。あなたはユートピア商会で販売する魔道具全てに必ず付与されている効果についてご存知ですか?」
「……魔道具全てに付与されている効果ですか?」
屋敷神の問いに、トゥルクは傾げる。
「おや? 説明してませんでしたか……では、教えて差し上げましょう。ユートピア商会で販売されている武器や防具タイプの魔道具全てには、強力な自爆機能が付いております」
「ま、魔道具全てに自爆機能が付いているのですかっ!?」
どうやら、本当に知らなかった様だ。
トゥルクが鳩が豆鉄砲をくらったかの表情を浮かべたまま、動かなくなってしまった。
「その通りです。私も無闇矢鱈に戦禍を拡大させたい訳ではありません。しかし、オーランド王国が近隣諸国に宣戦布告を行なっている今がチャンスなのです」
「し、しかし、その魔道具には自爆機能が付けられているのでしょう? そんな物を人間が使えば……」
「……そう。ひとたまりもないでしょうね。しかし、それも問題はありません」
私がそう言うと、トゥルクはポカーンとした表情を浮かべた。
「……えっと、どういう事でしょうか?」
当然の疑問である。
「……よく考えても見なさい。オーランド王国は愚かにも近隣諸国の全てに宣戦布告を仕掛けたのですよ? 一度に複数の国を相手に宣戦布告をするなんて通常の国家ではあり得ない判断です。当然、複数の国家を相手にしていれば兵士がいくらいても足りません」
「た、確かに……」
「しかし、それを可能にする方法がたった一つだけあります……それは、モンスターを、それも迷宮のボスクラスモンスターを兵士の代わりに使う事です」
「モンスターを兵士の代わりに……そ、そんな事、できる筈が……」
「残念ながらそれを可能とする存在が彼方側についているのです。事実、オーランド王国では主に人型モンスター、ゴブリンやオーク等を主力の戦力として組み込んでいます」
「なるほど……」
そう。近隣諸国に向かわせるのはゴブリンとオークの混合部隊。しかも、モンスターの殆どが疫病に侵されている。当然、そんな部隊に人間の兵士を組み込むなんてあり得ない。
「正直な所、この魔道具をモンスターに奪われたかの様に見せかけてプレゼントするだけでもいいのですが、それだと、十分な数の魔道具をオーランド王国の主力部隊に行き渡らせる事ができないかもしれないでしょう? 元手がタダなので、その方法を取ってもいいのですが、どうせならオーランド王国の財政にもダメージを与えたいではありませんか」
「……いえ、教会による万能薬の無償配布により、既に多大なダメージを与えていると思いますが……オーランド王国はそれが原因で近隣諸国に宣戦布告をしたんじゃありませんか?」
「……まあ、その話は置いておきましょう。今、考えるべきは如何にしてオーランド王国の女王フィンに自爆機能付きの魔道具を売り渡すかという事です」
「……そ、そうですね」
そう。自爆機能付きの魔道具がオーランド王国のモンスター部隊全体に行き渡れば、一瞬にして戦争を終わらせる事ができる。
一番は悠斗様の持つ『王座』の力を使う事。
『王座』の力を使えば、それこそ、こんな策を練らずとも今すぐにでも戦争を終わらせる事ができるが、悠斗様の事だ。レベルアップを嫌がり自分から進んで使う事もないだろう。
「……この任務は重大かつ大変危険なものです。その為、この任務をやり遂げた暁には、あなたの望む報酬を用意させて頂きたいと思っております」
「そ、それは、本当ですかっ!?」
「ええ、勿論、限度はございますが、できる限り叶えて差し上げましょう」
「で、では、私の身体を元の姿に……で、できれば、死んだ事になっている身分も元に戻して頂けるとありがたいのですがっ!?」
「おや、たったそれだけでよろしいのですか? 欲のない方ですね……」
「は、はいっ!」
「よろしい。それでは、この任務をやり遂げた暁には、その願い叶えて差し上げましょう」
ロキ様にかかれば、その位の願い簡単に叶える事ができる。
私がそう言うと、トゥルクは早速、オーランド王国へ旅立つ準備を始めるのであった。
ここはフェロー王国の王都にあるユートピア商会の一室。
そこでは、冒険者ギルドフェロー王国王都支部のギルドマスター、モルトバを騙し二百人を超える冒険者と、その冒険者達の持っていた資産という資産を差し押さえ、漸くゆっくりする事ができると椅子にもたれかかっていたトゥルクが絶叫を上げていた。
「ええ、その通りです。オーランド王国が近隣諸国に宣戦布告をしているのは知っているでしょう?」
「し、しししっ、知っているも何も、何で、オーランド王国に魔道具を……しかも、一本当たり白金貨五十枚もする魔剣やレジェンドシリーズの魔道具を……屋敷神様は戦禍を広げたいのですかっ!?」
「おや、あなたにしては珍しく真っ当な事を言いますね?」
そんな真っ当なセリフを吐くトゥルクを前に、思わず私は笑みを浮かべる。
「疑問は最もです。何故、今、オーランド王国に武器や防具を……それも世間一般的に高価とされる魔道具を売りつけるのかと言われれば、話は簡単。それが必要な事だからですよ。当然、戦渦を広げるつもりもありません」
「いや、全然、説明になっていないのですが……」
「ふむ。こちらと致しましても、はぐらかしている訳ではないのですが……トゥルク。あなたはユートピア商会で販売する魔道具全てに必ず付与されている効果についてご存知ですか?」
「……魔道具全てに付与されている効果ですか?」
屋敷神の問いに、トゥルクは傾げる。
「おや? 説明してませんでしたか……では、教えて差し上げましょう。ユートピア商会で販売されている武器や防具タイプの魔道具全てには、強力な自爆機能が付いております」
「ま、魔道具全てに自爆機能が付いているのですかっ!?」
どうやら、本当に知らなかった様だ。
トゥルクが鳩が豆鉄砲をくらったかの表情を浮かべたまま、動かなくなってしまった。
「その通りです。私も無闇矢鱈に戦禍を拡大させたい訳ではありません。しかし、オーランド王国が近隣諸国に宣戦布告を行なっている今がチャンスなのです」
「し、しかし、その魔道具には自爆機能が付けられているのでしょう? そんな物を人間が使えば……」
「……そう。ひとたまりもないでしょうね。しかし、それも問題はありません」
私がそう言うと、トゥルクはポカーンとした表情を浮かべた。
「……えっと、どういう事でしょうか?」
当然の疑問である。
「……よく考えても見なさい。オーランド王国は愚かにも近隣諸国の全てに宣戦布告を仕掛けたのですよ? 一度に複数の国を相手に宣戦布告をするなんて通常の国家ではあり得ない判断です。当然、複数の国家を相手にしていれば兵士がいくらいても足りません」
「た、確かに……」
「しかし、それを可能にする方法がたった一つだけあります……それは、モンスターを、それも迷宮のボスクラスモンスターを兵士の代わりに使う事です」
「モンスターを兵士の代わりに……そ、そんな事、できる筈が……」
「残念ながらそれを可能とする存在が彼方側についているのです。事実、オーランド王国では主に人型モンスター、ゴブリンやオーク等を主力の戦力として組み込んでいます」
「なるほど……」
そう。近隣諸国に向かわせるのはゴブリンとオークの混合部隊。しかも、モンスターの殆どが疫病に侵されている。当然、そんな部隊に人間の兵士を組み込むなんてあり得ない。
「正直な所、この魔道具をモンスターに奪われたかの様に見せかけてプレゼントするだけでもいいのですが、それだと、十分な数の魔道具をオーランド王国の主力部隊に行き渡らせる事ができないかもしれないでしょう? 元手がタダなので、その方法を取ってもいいのですが、どうせならオーランド王国の財政にもダメージを与えたいではありませんか」
「……いえ、教会による万能薬の無償配布により、既に多大なダメージを与えていると思いますが……オーランド王国はそれが原因で近隣諸国に宣戦布告をしたんじゃありませんか?」
「……まあ、その話は置いておきましょう。今、考えるべきは如何にしてオーランド王国の女王フィンに自爆機能付きの魔道具を売り渡すかという事です」
「……そ、そうですね」
そう。自爆機能付きの魔道具がオーランド王国のモンスター部隊全体に行き渡れば、一瞬にして戦争を終わらせる事ができる。
一番は悠斗様の持つ『王座』の力を使う事。
『王座』の力を使えば、それこそ、こんな策を練らずとも今すぐにでも戦争を終わらせる事ができるが、悠斗様の事だ。レベルアップを嫌がり自分から進んで使う事もないだろう。
「……この任務は重大かつ大変危険なものです。その為、この任務をやり遂げた暁には、あなたの望む報酬を用意させて頂きたいと思っております」
「そ、それは、本当ですかっ!?」
「ええ、勿論、限度はございますが、できる限り叶えて差し上げましょう」
「で、では、私の身体を元の姿に……で、できれば、死んだ事になっている身分も元に戻して頂けるとありがたいのですがっ!?」
「おや、たったそれだけでよろしいのですか? 欲のない方ですね……」
「は、はいっ!」
「よろしい。それでは、この任務をやり遂げた暁には、その願い叶えて差し上げましょう」
ロキ様にかかれば、その位の願い簡単に叶える事ができる。
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