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第十一章 オーランド王国動乱編

第460話 復活のオーディン①

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「ふ、ふふふっ……! 手にした! ワシは手にしたぞ……天界最強の力を!」

 神器『ヴァルハラ』の力で、オーランド王国に転移したワシは高笑いする。
 取り戻した。ようやく取り戻した!
 グングニルと王座。この二つの力があれば、勝ったも同然。更にワシにはルーン文字もある。

 フギンとムニン、そしてスレイプニルを失ったのは残念だが仕方がない。
 しかし、王座の力さえあれば、十分カバー可能だ。

「どれ……」

 ワシは早速、王座に座るとマリエハムン迷宮の一階層に住まう世界魚バハムートに視線をむける。

 うん?
 なんだか視界が遠いな……迷宮内だからか?
 そういえば、王座の力を迷宮の内部を見る事に使ったのはこれが初めてだ。
 王座の力をもってしても、迷宮ではこの程度が限界なのだろう。

「まあよい。ここからが本番だ。世界魚バハムートよ。潰れろ!」

 そう呟くとワシは湖の中を回遊する世界魚バハムートに向かって手を向け、握り潰す動作を行う。
 すると、マリエハムン迷宮内部の空間が歪み、世界魚バハムートが握り潰される。

「ふふふっ、あははははっ! 王座の力があれば、世界魚バハムートなど文字通り一捻りだ! しかし……」

 やはり、何かがおかしい。
 迷宮内だからか?
 王座の効果が発現するまで数秒の誤差がある様に感じる。

「……いや、気のせいだな」

 実際に王座の効果が発現している以上、疑う余地はない。
 そんな事を呟きながら王座から立ち上がると、突然、身体に膨大な信仰心が降りてくるのを感じる。

「な、何だ。一体、何が起こっている!?」

 これ程膨大な信仰心が降りてきたのは、このワシが世界の主神であった頃以来だ。

「そうか……ワシの放ったモンスター共が……ようやくこの時がきたか……」

 これだけの信仰心があれば、天界から援軍を呼び寄せる事ができる。
 ようやく……ようやくだ!
 ようやくロキに引導を渡す事ができる!

「神器『ヴァルハラ』よゲートを開け……」

 神器『ヴァルハラ』の力を解放すると、目の前に天界とこの世界を繋ぐ扉が現れる。
 そして、扉が開かれると数柱の北欧の神、そして、一対の神狼『ゲリとフレキ』が降り立った。

「よく来てくれた……お前達がいれば、ロキを主神の座から引き摺り下ろす事ができる」

 ワシはゲリとフレキの頭を撫でると、ロキのいるであろうサンミニアート・アルモンテ聖国の方向に視線を向ける。

「待っておれ、お前が座す主神の座、すぐに奪い返してくれる……」

 ワシはこちらの世界に呼び寄せた数柱の神と共に、王城へと転移した。

 王城に転移すると、オーランド王国の女王フィンが、驚愕といった視線を向けてくる。

「オ、オーディン様。お帰りなさい。そちらの方々は?」
「うむ。この者達は、ワシが天界から呼び寄せた北欧の神々だ」
「か、神々ですって!?」
「何を驚く事がある。天界の元主神であるこのワシの力を持ってすれば、この位の事……」
「ああ、なんて頼もしいの……オーディン様。あなたの事を信じ、着いてきて正解でしたわ」
「そうか……そうか、そうか!?」
「ええ、オーディン様に着いてきて、本当に正解でした。一緒に世界を手にしましょう」

 急に潮らしくなって現金な奴め。
 とはいえ、気分が頗る良いのも確かだ。

 グングニルに王座、突然、湧いてきた信仰心。そして、その信仰心を元に呼び寄せる事に成功した北欧の神々。

 佐藤悠斗という青年に会ってから、ワシの運命の歯車が潤滑に回り始めた。
 まるで運命の神ノルンがワシに微笑みかけている様だ。

 ワシが良い気分に浸っていると、何やらフィンがボソボソと呟いた。

「なによ。使えない碧眼糞爺かと思えば、ちゃんとした仲間がいるじゃない。元主神、元主神と過去の栄光に縋る可哀想な爺じゃなかったのね! 漸く、私にも運が回してきたわ!」

 うん?
 何を言っておるのだ?
 声が小さ過ぎて聞こえぬ……。

「おい。何をブツブツと話しておる」
「いえ、なんでもありませんわ。そんな事よりも、すぐに上等な部屋を用意致しましょう。それで、あなた方の事はなんとお呼びすればよろしいのでしょうか?」
「ふふふっ、そういえば、紹介がまだだったな」

 ワシは神々に向かって視線を向け、フィンに紹介しようとすると、突然、部屋の扉が開かれた。

「た、大変です。女王陛下!」
「騒がしいわね。一体何なの? ノックもなく扉を開けるだなんて、オーディン様が連れてきて下さった北欧の神々に対して失礼じゃない」

 フィンがそう言うと、扉を開け入ってきた兵士が平伏する。

「も、申し訳ございません。至急、お伝えしなければならない事が……」
「もういいわ。それで?」
「は、はい。件の武器商人より、大量の武具を……それも魔剣等を始めとした魔道具を全兵士分用意する準備ができたと連絡が入りました。既に一部が納品されております」
「眉唾だったけど、本当の事だったのね。まさかあんな値段で魔道具を売ってくれるなんて……品質に問題ないの?」
「はい。問題ありません」
「そう。報告ありがとう。もう下がっていいわ」
「いえ、まだもう一つ重大な報告がございます」
「重大な報告?」
「はい。兵士の一部が反旗を翻し、暴動を起こしました」
「な、なんですって!」

 兵士の言葉にフィンは驚愕の表情を浮かべた。
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