とある配信者が先輩の家でお漏らししたエピソードを公開したので

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「そーいえばね、昔とある先輩の家で漏らしたことがあったんですよー」
　とある夜更けのとあるゲーム実況者の配信中、オレンジのブレザーを身に纏いながらお菓子の袋を抱えている金髪青年の立ち絵の彼がとんでもない発言をした。
:は？
:詳しく
:草
:ぷれい？
:草なんだが
:誰？
日付がちょうど変わった夜更け。穏やかだったコメントの流れが一気に早くなる。
「プレイって…そこまで性癖歪んでねーよ」
笑いを交えた視聴者のコメントにツッコミが走る。
「まー1周年迎えたし？話のネタにしていこーかな。そうそう、あれは丁度これくらいの季節で…」
甘夏レン、通称アマレンはマイクに向かって語り出すと共に、あの日の情景を思い出して頬を赤く染めた。


(うそだろ…)
　指定された住所に到着した時、うるさい心拍音を上げていた俺の心臓が、またうるさくなる。
(エントランスでけえ…)
　その日は、半年後に開催予定のイベントの打ち合わせのために、企画者の元に集まろうとしていた。人数は俺を含めて3人。全員どこの事務所にも属していないため、会場の相談、価格設定、その他諸々の事務作業も全て自分達で行わなければならない。通話での会議だけでなく一度会っておきたいという流れになり、俺ははるばる日本の中心地である東京にきたのである。
(しっかしでっけぇな…)
俺以外の2人は社会人。普段はサラリーマンとして働いているという。大学生である俺よりも、5つ6つ年上で、チャンネル登録者もはるかに上。配信一本で食っていけるくらいには稼いでいるだろう。

　エレベーターを降りて、指定された部屋番号のインターホンを鳴らすと、聞き覚えのある声と共に、ドアが開いた。
「遠くからお疲れ様。甘夏レン、さんだよね？ささ、入って」
「お、お邪魔します…」
ブワリと汗が滲む。さっきの緊張が可愛すぎると感じるくらいには、テンパっていた。
(めっちゃイケメンじゃん…)
紺屋こんや葵あおい。この家の住人。紺色の髪で、切長の目と大きな口。華奢な首元に、白のTシャツ。これが俺の見たことのあるイラスト上の彼の姿。失礼な話かもしれないが、二次元はあくまでも理想体。実写と遜色のないだなんて、まずありえない。イケメンに描かれれば描かれるほど、それは顕著なものとなる。しかし、目の前の彼はあのフィクションである立ち絵通りの姿をしていて。
「現実は金髪じゃないんだ」
そう言ってするりと俺の髪を触る手は白くて、細くて。爪は短いが、整っている。全身がとにかく人形みたいにすべすべで、で血が通っているのか疑うレベル。
「お、レンくん来たん？初めまして…はおかしいか。東っすー。よろしくー」
(い、イカつい…)
もう1人、東あずまという活動名の人が部屋の奥から顔を出す。この人こそが今回の企画の立案者だ。東さんは、顔を出して活動しているため、何となく顔は知っていたが、デカい。それも、思っていたよりずっと。黒地の毛が少し生えかけた金髪、白いタンクトップに小麦肌。首からはチェーンかと勘違いしそうなほどの重厚なネックレスに鼻のピアス。目つきは鋭く、合わせられない。
「よ、よろしくおねがいしゃす…」
「はははっ、レンくぅーん、緊張してるぅ？」
「っ、っひぃっ、」
ガシリと肩を組まれて変な声が出てしまう。
「お前はイカつすぎるんだよ。一昔前のヤンキーか」
「んだよお前だってほっそい女みたいな体しやがって。引きこもり君にこの良さは分からないかー」
　あれ、俺これ、邪魔じゃね？
　2人とも都内に住んでるらしいし、しょっちゅう一緒に飲みに行ってるって聞いたし。俺だけ大学生だし、場所も遠いし。泊まっていきなよと言われたため、着替えも持ってきたし、泊まる場所も予約していない。明日の夕方までここにいることになる。
　やばい、めちゃくちゃ緊張する。