トラウマを抱えたDKがトイレに入れない話

こじらせた処女

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第五章

9

「じゃあお母さん、夜勤だから。ちゃんと寝てるのよー」

母親が家を出て行ってから20分、俺の体からするのはアンモニア臭ではなく、石鹸の匂い。

 あの後あいつは担任の皮を被り俺を家に送り届けた。居ないと思っていた母親が帰ってきていて、見られてしまった。しかし、下半身がぐしょぐしょに濡れたことについて、深くは追及せず、風呂に押し込まれた。
俺のズボンが洗濯物の一部として干してあったのを見ると、なんだか居た堪れなくなる。余計な手間をかけさせてしまった。
 鍋のお粥も食べる気になれなくて、暗がりのリビングの中、膝を抱えて座る。
 今日起こったこと全部、夢みたいだ。でも耳の奥に残っているあいつの声が、嘘じゃないと囁いている。
 時田もこんな気持ちだったのだろうか。いや、でもあいつは誰か分からない相手に犯されたのだ。俺よりもっと深い傷を負っているだろう。排尿障害が起こるくらいに。
「ぅ゛…っく…ヒグッ」
悔しい、恥ずかしい、怖い。切れた尻の鈍痛がその感情を助長して、涙があふれる。体全身がまだ、汚い。

 まだ俺は、汚れている。
 
 身につけていたトレーナーを剥ぎ取る。さっき使ったから浴槽はまだむわりとした湿気を帯びている。

 ボディソープを3プッシュ。体に塗り付け健康タオルで擦る。足、手首、挿れられたところ。何回も、何回も。
「クソ…」
擦って、擦って、擦って…

 排水溝に流れ切れない泡が溜まっている。でも、まだ俺は汚い。流して、またボディソープを出して、けがれた泡を流して、また出して。
「落ちろ、落ちろ、落ちろ、落ちろよっ!!」
 自分でも何をしているのかよく分からなかった。腕の皮膚は赤く腫れ上がって痛くて、それでもやめられなくて。
「あ…」
カシュっ…
いつのまにか、半分くらいあったボディソープが、なくなっていた。


「篠田!!お前、寝てなくて良いのかよ!」
なくなったボディソープを買いに、ドラッグストアに行った帰り。
「三宅、なんで…」
「渡しそびれてたプリント、持ってきた。あと部員のみんなからのお見舞い預かってきたぞ。お前スマホ全然見てねえだろ」
三宅の手には小さなビニール袋。某パッケージのスポーツドリンクと、ゼリー飲料が入っている。
「で、何してんだよ」
「ボディソープ…」
「は?」
「ボディソープ、なかったから。買いに来た、だけ」
「ふーん。てか、髪濡れてんじゃん!ちゃんと乾かせ。湯冷めすんだろ」
「…ごめん」
「まーいいわ。送ってく」
「…いい…これサンキューな。一人で帰れるから」
「いやいや駄目だって。また途中で倒れたらどうすんだよ」
優しい言葉に声が詰まる。だめだ、これ以上喋ったら…
「もう治ったから。じゃあ」
「待てって!」
「い゛っ!!」
長袖の裾と擦れた腕が痛んで、振り払う。
「おい、」
「いや、何でもない。あっ、ちょ、」
そう繕うけれど、時すでに遅し。手首を掴まれ、袖を捲られてしまった。
「お前、これ…」

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