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「ねー、ちょーだいよー」
「無理。俺のだから」
「えぇー…一口、一口だけ!!」
あの日から1ヶ月が経った。安倍さん作のお弁当は、難なく食べられるようになり、上野に食べてもらう必要は無くなった。最初は調理過程をずっと見て、変なものが入っていないかを目で確認すると、安心して食べられた。夜ご飯もしかり。メインは大皿に一つに盛って、ご飯や味噌汁、サラダはいつも早くに帰宅する俺が準備する。そんで、なるべく一緒に食べる。でも最近は、そんな事をしなくても食べられるようになった。作ってるところを確認しなくても、吐かずに食べられる。安倍さんの料理だけは食べられる、そう言うと、嬉しそうな顔で頭を撫でられた。
(なんか…おかしい…)
いつものように弁当を食べようとした時だった。最近は無かった、あの感覚。
「上野、あげる」
以前安倍さんに食べたいと言っていたタコさんウインナーに、卵焼き。昨日の残りのミニハンバーグ。気持ち悪い。食べ物を見るのも匂いも辛い。息が詰まりそう。
「はぁー?お前、最近全然くれなかったじゃんかよ」
「…」
「んまぁ俺は良いけどさ。ほらメロンパンとホットドッグ」
「…いらねえ、」
「お前…ほんとに大丈夫かぁ?」
昨日の夜珍しく、昔の夢を見た。この違和感の原因はこれだろう。そのせいで目が覚めた後も動けなくて、遅刻ギリギリに用意を済ませた。朝ごはんのおにぎりもハムエッグも食べる時間が無くて冷蔵庫に入れたまま。
何も食べれそうにない。お腹は空いているのにずっと気持ち悪くて、頭が痛い。授業中もあの夢がフラッシュバックして気分のいいものではない。
「よし行くぞ」
「…ぇ?どこに」
「決まってるだろ」
半ば無理やり手を引かれるようにして連れて行かれたのは保健室。あれよあれよと事が進んで体温計を挟まれる。でも、俺のは風邪とかじゃないから、無慈悲に36.7℃と平常値を叩き出す。
「まあ、熱がなくてもしんどい時はしんどいでしょう。貧血とか、寝不足とか」
休んで授業に戻るか、今日は帰るか。その2択を提示されて、帰る方を選んだ。何となく気分が落ちていて、休みたいのは事実だったから。
「…弁当…ほんとにいいのかよ…」
「どーせ食えねえから。明日箱返して」
「マジで無理すんなよ。ほら栄養ゼリー。これだけはちゃんと飲んどけよ」
自販機から出したての冷たい感触が首に当たる。熱も何もないのに、仮病じゃん。安倍さんには黙っておこう。そう思い、いつものようにスーパーに寄った。
上野に貰ったゼリーを飲み干して、ソファに横になる。ご飯は予約炊きした。そんで、サラダも準備して、味噌汁も作った。全部済ませたのにまだ3時前。テレビの音もうるさくて消した。今日のおかずは何だったっけ。生姜焼きだった気がする。特製のタレで昨日から漬けているって言っていた。
あ、そうだ。今朝のハムエッグとおにぎり。食べないと。お腹がぐぅ…と鳴った。健康な体は栄養を欲している。そうだよな。朝から固形物、食べてないもんな。
「っ、ぅ゛、」
大丈夫。あるわけない。ここは安倍さんの家で、あいつは居ない。夢に出てきたようなことは起こるはずない。頭では分かってる。なのに。おにぎりを持つ手は震えて、変に心臓がバクバクして。頭の中が真っ白になって、どうしようもなく不安になって冷蔵庫に押し込んだ。でもお腹は空いている。リビングの机に常備してあるクッキーの箱に、ポテトチップス。
甘い、しょっぱい、甘い、しょっぱい。こんなに濃い味のものは今求めてないのに。食べたくないのに。止められなくて、一枚、また一枚と食べ続ける。口の中が乾いて痛くなってようやく、我に帰った。空になった油ぎった袋に、一枚も残っていないお徳用のクッキーの箱。
慌ててビニール袋にゴミと、冷蔵庫のおにぎりとハムエッグを入れる。何でこんな事してるのか分からない。絶対やらないって誓ったのに。自分がどうしようもなく嫌になって、部屋のクローゼットに投げ入れる。腹の中がぐちゃぐちゃして、ベッドに顔を突っ伏した。
「無理。俺のだから」
「えぇー…一口、一口だけ!!」
あの日から1ヶ月が経った。安倍さん作のお弁当は、難なく食べられるようになり、上野に食べてもらう必要は無くなった。最初は調理過程をずっと見て、変なものが入っていないかを目で確認すると、安心して食べられた。夜ご飯もしかり。メインは大皿に一つに盛って、ご飯や味噌汁、サラダはいつも早くに帰宅する俺が準備する。そんで、なるべく一緒に食べる。でも最近は、そんな事をしなくても食べられるようになった。作ってるところを確認しなくても、吐かずに食べられる。安倍さんの料理だけは食べられる、そう言うと、嬉しそうな顔で頭を撫でられた。
(なんか…おかしい…)
いつものように弁当を食べようとした時だった。最近は無かった、あの感覚。
「上野、あげる」
以前安倍さんに食べたいと言っていたタコさんウインナーに、卵焼き。昨日の残りのミニハンバーグ。気持ち悪い。食べ物を見るのも匂いも辛い。息が詰まりそう。
「はぁー?お前、最近全然くれなかったじゃんかよ」
「…」
「んまぁ俺は良いけどさ。ほらメロンパンとホットドッグ」
「…いらねえ、」
「お前…ほんとに大丈夫かぁ?」
昨日の夜珍しく、昔の夢を見た。この違和感の原因はこれだろう。そのせいで目が覚めた後も動けなくて、遅刻ギリギリに用意を済ませた。朝ごはんのおにぎりもハムエッグも食べる時間が無くて冷蔵庫に入れたまま。
何も食べれそうにない。お腹は空いているのにずっと気持ち悪くて、頭が痛い。授業中もあの夢がフラッシュバックして気分のいいものではない。
「よし行くぞ」
「…ぇ?どこに」
「決まってるだろ」
半ば無理やり手を引かれるようにして連れて行かれたのは保健室。あれよあれよと事が進んで体温計を挟まれる。でも、俺のは風邪とかじゃないから、無慈悲に36.7℃と平常値を叩き出す。
「まあ、熱がなくてもしんどい時はしんどいでしょう。貧血とか、寝不足とか」
休んで授業に戻るか、今日は帰るか。その2択を提示されて、帰る方を選んだ。何となく気分が落ちていて、休みたいのは事実だったから。
「…弁当…ほんとにいいのかよ…」
「どーせ食えねえから。明日箱返して」
「マジで無理すんなよ。ほら栄養ゼリー。これだけはちゃんと飲んどけよ」
自販機から出したての冷たい感触が首に当たる。熱も何もないのに、仮病じゃん。安倍さんには黙っておこう。そう思い、いつものようにスーパーに寄った。
上野に貰ったゼリーを飲み干して、ソファに横になる。ご飯は予約炊きした。そんで、サラダも準備して、味噌汁も作った。全部済ませたのにまだ3時前。テレビの音もうるさくて消した。今日のおかずは何だったっけ。生姜焼きだった気がする。特製のタレで昨日から漬けているって言っていた。
あ、そうだ。今朝のハムエッグとおにぎり。食べないと。お腹がぐぅ…と鳴った。健康な体は栄養を欲している。そうだよな。朝から固形物、食べてないもんな。
「っ、ぅ゛、」
大丈夫。あるわけない。ここは安倍さんの家で、あいつは居ない。夢に出てきたようなことは起こるはずない。頭では分かってる。なのに。おにぎりを持つ手は震えて、変に心臓がバクバクして。頭の中が真っ白になって、どうしようもなく不安になって冷蔵庫に押し込んだ。でもお腹は空いている。リビングの机に常備してあるクッキーの箱に、ポテトチップス。
甘い、しょっぱい、甘い、しょっぱい。こんなに濃い味のものは今求めてないのに。食べたくないのに。止められなくて、一枚、また一枚と食べ続ける。口の中が乾いて痛くなってようやく、我に帰った。空になった油ぎった袋に、一枚も残っていないお徳用のクッキーの箱。
慌ててビニール袋にゴミと、冷蔵庫のおにぎりとハムエッグを入れる。何でこんな事してるのか分からない。絶対やらないって誓ったのに。自分がどうしようもなく嫌になって、部屋のクローゼットに投げ入れる。腹の中がぐちゃぐちゃして、ベッドに顔を突っ伏した。
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