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「ごめんね、デートってどこ行けば分かんなくて…結局僕の趣味で選んじゃった」
「い、いえっ、とっても、雰囲気も良くて…」
とある休日。男女比3:7の喫茶店で俺は初めてのデートをしている。

 今まで中学、高校、大学とサッカーに明け暮れて過ごしていた俺は、好きな人はおろか、性のことにも全く興味がなく、何度も夢精し続けていた。
 しかし、社会人になって電車で通勤するようになった頃、毎日同じ車両に座っている人が気になり始めた。それが今デートしている森下さんである。こんな歳になるまで誰かに想いを伝えたことなんて無かったものだから、どうすればいいのか分からなくて。
「好きです、」
 自分の降車駅ではないのに一緒に降りて、ただ一言そう伝えた。そしたらOKを貰えた。男同士なのに、だ。俺はとんでもなく運が良い。一生分の運を使い果たしてしまった。



「俺紅茶飲んだことないです」
メニュー表いっぱいのカタカナ。どれがどれだか分かんない。
「じゃああまり癖のないものが良いよね。これかー…これとかどう?」
「あっ、んじゃあそれで」

 オシャレなポットとティーカップ。ツヤツヤとしたいちごのタルトに思わず喉が鳴る。
「っうまっ、」
茶葉のいい匂い。これはアールグレイというらしい。お茶をこんなに丁寧に味わったことはなかったけれど、美味しいということだけは分かる。
「これもうまっ、」
「ふふっ」
「あ、すんません、」
こんなにオシャレな店に来ているというのに、うまいうまいばかり。語彙力のなさに恥ずかしくなってしまう。
「大河くんってすぐ顔に出るよね。可愛い」
「ぁ、う、」
「紅茶飲んだことないってことはコーヒー派?」
「っいえっ、コーヒーは苦くて無理っす」
「じゃあ朝の眠気覚ましにカフェイン入れないんだ」
「そうっ、すね、基本腹減って起きるんで」
「いーなー、僕朝弱いからさ。紅茶必須」
「俺も紅茶ハマりそうっす。やっぱり味って違うもんなんですか?」
「あ、じゃあ僕の飲んでみなよ」
 話楽しい。紅茶もケーキも美味しい。サッカーばっかりしてた時は安くて量の多いところにしか行かなかったから新鮮。
「あ、なくなった、」
丁度カップ3杯分。お腹チャポチャポする。
「そろそろ混んできたし出ようか」
「っはい、」
 トイレ…は人が1人並んでいる。少し行きたいなってくらいだし、俺トイレ遠いし大丈夫か。


 
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