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2章 臨時冒険者登録試験
第47話 秘蔵の品
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遂に、試験開始から15日目の朝を迎えた。
本来なら魔石売りの定期報告の時間に間に合うように、行動するならダンジョンから帰らなければいけない時間だ。
だが、構わない。
今日ここで試験を終わらせて、晴れて退職決定となれば、試験中の他言無用も関係ないのだ。
他の冒険者同様、夕方に凱旋し、その時に魔石やら、討伐証明やらを終わらせてやる。
岩石地帯のリザード達をやり過ごし、門の前に立つ。中に入る前にやっておかなければいけないことがある。
魔道具袋から一本のポーションを取り出した。
前回のダンジョンの秘密兵器は装備のリボルバーだったが、今回はまずこいつだ。
話は五日前に遡る。
―
Eランクダンジョンの攻略し、戻った後にアイテム補充のためユーリーのアイテム屋を訪れた。
今回も店番はユーリーだったので、前回同様お互い余計なことは言い合いはなしかな。
黙々とポーションの補充に、マナポーションを多め、それと火傷直しポーションを購入しようと持っていくと、そこで
「火傷直しねえ…… 。リザードのダンジョンにでも行くつもりなのかい?」
と、声を掛けてきた。
試験については他言無用だが、攻略にアイテム屋の協力は必要不可欠だし、前の森のときも場所は話していた。そうだと告げると
「事情は聞けないようだね。あのハナタレのブライアンが私に凄まれても口を割らなかったし…… 。前のアンタの契約書かい?」
やっぱり、バレテーら。
つか、この情報だけで「測量」のスキルブックを売った方だけでなく、試験の方にまで気がつくの、普通に怖いんですけど。
勘のいい婆さんは…… まあ、嫌いじゃないけどさ。
「はあ、婆さんには隠し事はできねーな。
そうだよ。但し、悪さはしてない。『書記』のレベル9のスキルでな、契約を守らせるってだけ。
『書記』らしいだろ? レベル9なんて誰も信じちゃくれないから黙ってただけだよ。その、、黙ってて悪かったな」
と、白状した。
「つーことで、その契約は俺にも効いていて、今は何も話せない。終わったら全部話すよ」
俺がそう告げると
「ふん、どうだかねー? 私に隠し事ができないって言いながら、まだ他にも隠してることありそうだがね。あのスキルブックの出処とかさ」
いや、もうホントどこまで気づいてるのよ。
こっちが疑心暗鬼になるわ。流石に、俺が作ったとは疑ってないだろうけど。
「まあ、いいさ。問題はアンタ、いつからそんなに無謀になったんだい? つい先日、森に入ったと思ったら今度はリザードのダンジョンだって?
あそこはDランクと謳いながら、実際は一つ上のランクから見れば経験値稼ぎにちょうどいいくらい場所だよ。
……強すぎるボスを除いてね。アンタは自棄は起こしても、無謀はしないやつだと思ってたけどね」
あっ、自棄はおこしそうと思われてたのね。
それ、正解。
まあ今の俺が自棄に見えてないというのなら、それでいいや。
実際「スキルブック作成」を知らなきゃ、無謀に思えて当然だし。
「別に、自棄でも無謀でもないさ。ちょっとアテがあってね。まあ、準備をしとくに越したことはないから、ここに来てるんだけど」
と長話を区切ろうとすると、ユーリーは立ち上がり奥から、
「準備だけ、持っとくだけだっていうんなら渡しとく。取引先のギルドと揉めてる内に、勝手に無謀でいなくなられても迷惑なんだよ。
言っとくけど、使ったり割ったりしたら当然弁償だからね!」
そう言い訳しながら一本のポーションを取り出し、渡してくれた。
―
それが今、俺の手元にある「ソーマのポーション」だ。
一部のAランクダンジョンでしか取れない霊薬をポーションにしたもので、一時間ほどだが、瞬間ステータスupとHP、MP共に秒単位で回復していく超劇薬。
これがあるからこそ、翌日のギルドでの強気な発言に繋がるほどの一級品だ。
一日、二本も飲んだら3日は寝れなくなり、幻覚を見るというほどの興奮作用がある。
末端価格金貨30枚というユーリー秘蔵の品だが、弁償で良いというのであれば使わせて貰おう。
退職金も入るしね。
マイヤーもその分、試験を引き伸ばしせずに、ここで決着をつけて、ギルドに補填金払わなくてすむのならチャラってもんよ。
だが、別にこれを使うことで無理矢理勝ち目を作っているわけではない。
せっかく色々と試すのなら自身のステータスを上げてやってみたい、くらいのワクワク感がある。
それほどこの数日に自信があるからこそ、挑むのだ。ソーマのポーションを飲み、血流が早まるのを感じながら、門に手を掛け、開く。
中の広さは前回と同じく、100m四方で、作りはリザード達がいた岩石地帯と同じだ。
違うのはそれなりに広いこの空間が狭く感じさせるほどの中央に鎮座する全長8Mはあろうかという、赤黒い巨大な存在。
この空間には一人のおっさんと一体の怪物のみ。
門が閉じ、こちらに気がつくと、まるで群れる必要などないと誇示するかのように、巨体に不釣り合いな小さな翼を羽ばたかせ、風圧を出しながら飛行しようと動き出す。
―先手はどちらか、
本来なら魔石売りの定期報告の時間に間に合うように、行動するならダンジョンから帰らなければいけない時間だ。
だが、構わない。
今日ここで試験を終わらせて、晴れて退職決定となれば、試験中の他言無用も関係ないのだ。
他の冒険者同様、夕方に凱旋し、その時に魔石やら、討伐証明やらを終わらせてやる。
岩石地帯のリザード達をやり過ごし、門の前に立つ。中に入る前にやっておかなければいけないことがある。
魔道具袋から一本のポーションを取り出した。
前回のダンジョンの秘密兵器は装備のリボルバーだったが、今回はまずこいつだ。
話は五日前に遡る。
―
Eランクダンジョンの攻略し、戻った後にアイテム補充のためユーリーのアイテム屋を訪れた。
今回も店番はユーリーだったので、前回同様お互い余計なことは言い合いはなしかな。
黙々とポーションの補充に、マナポーションを多め、それと火傷直しポーションを購入しようと持っていくと、そこで
「火傷直しねえ…… 。リザードのダンジョンにでも行くつもりなのかい?」
と、声を掛けてきた。
試験については他言無用だが、攻略にアイテム屋の協力は必要不可欠だし、前の森のときも場所は話していた。そうだと告げると
「事情は聞けないようだね。あのハナタレのブライアンが私に凄まれても口を割らなかったし…… 。前のアンタの契約書かい?」
やっぱり、バレテーら。
つか、この情報だけで「測量」のスキルブックを売った方だけでなく、試験の方にまで気がつくの、普通に怖いんですけど。
勘のいい婆さんは…… まあ、嫌いじゃないけどさ。
「はあ、婆さんには隠し事はできねーな。
そうだよ。但し、悪さはしてない。『書記』のレベル9のスキルでな、契約を守らせるってだけ。
『書記』らしいだろ? レベル9なんて誰も信じちゃくれないから黙ってただけだよ。その、、黙ってて悪かったな」
と、白状した。
「つーことで、その契約は俺にも効いていて、今は何も話せない。終わったら全部話すよ」
俺がそう告げると
「ふん、どうだかねー? 私に隠し事ができないって言いながら、まだ他にも隠してることありそうだがね。あのスキルブックの出処とかさ」
いや、もうホントどこまで気づいてるのよ。
こっちが疑心暗鬼になるわ。流石に、俺が作ったとは疑ってないだろうけど。
「まあ、いいさ。問題はアンタ、いつからそんなに無謀になったんだい? つい先日、森に入ったと思ったら今度はリザードのダンジョンだって?
あそこはDランクと謳いながら、実際は一つ上のランクから見れば経験値稼ぎにちょうどいいくらい場所だよ。
……強すぎるボスを除いてね。アンタは自棄は起こしても、無謀はしないやつだと思ってたけどね」
あっ、自棄はおこしそうと思われてたのね。
それ、正解。
まあ今の俺が自棄に見えてないというのなら、それでいいや。
実際「スキルブック作成」を知らなきゃ、無謀に思えて当然だし。
「別に、自棄でも無謀でもないさ。ちょっとアテがあってね。まあ、準備をしとくに越したことはないから、ここに来てるんだけど」
と長話を区切ろうとすると、ユーリーは立ち上がり奥から、
「準備だけ、持っとくだけだっていうんなら渡しとく。取引先のギルドと揉めてる内に、勝手に無謀でいなくなられても迷惑なんだよ。
言っとくけど、使ったり割ったりしたら当然弁償だからね!」
そう言い訳しながら一本のポーションを取り出し、渡してくれた。
―
それが今、俺の手元にある「ソーマのポーション」だ。
一部のAランクダンジョンでしか取れない霊薬をポーションにしたもので、一時間ほどだが、瞬間ステータスupとHP、MP共に秒単位で回復していく超劇薬。
これがあるからこそ、翌日のギルドでの強気な発言に繋がるほどの一級品だ。
一日、二本も飲んだら3日は寝れなくなり、幻覚を見るというほどの興奮作用がある。
末端価格金貨30枚というユーリー秘蔵の品だが、弁償で良いというのであれば使わせて貰おう。
退職金も入るしね。
マイヤーもその分、試験を引き伸ばしせずに、ここで決着をつけて、ギルドに補填金払わなくてすむのならチャラってもんよ。
だが、別にこれを使うことで無理矢理勝ち目を作っているわけではない。
せっかく色々と試すのなら自身のステータスを上げてやってみたい、くらいのワクワク感がある。
それほどこの数日に自信があるからこそ、挑むのだ。ソーマのポーションを飲み、血流が早まるのを感じながら、門に手を掛け、開く。
中の広さは前回と同じく、100m四方で、作りはリザード達がいた岩石地帯と同じだ。
違うのはそれなりに広いこの空間が狭く感じさせるほどの中央に鎮座する全長8Mはあろうかという、赤黒い巨大な存在。
この空間には一人のおっさんと一体の怪物のみ。
門が閉じ、こちらに気がつくと、まるで群れる必要などないと誇示するかのように、巨体に不釣り合いな小さな翼を羽ばたかせ、風圧を出しながら飛行しようと動き出す。
―先手はどちらか、
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