2 / 8
二話
しおりを挟む辺りは真っ暗、歪む空間をぷかぷか漂う。超展開のはずなのに思ったより冷静だった。
「はぁ~。まさか、こんな事で人生が終了するとはな。王国一の戦士と言っても死ぬ時は呆気ないもんだ」
違う、冷静などではない。俺はただ、諦めていただけなのだ。
未練はある。だが、あまりの展開に脳が生きる為の思考を停止させたのだ。
こんな展開経験がない。だから考えたところでわかるわけもない。そう決めつけた。
「せめて、天国へ行けますように」
俺は歪む空間の中、拝んだ。数秒ほど拝んだところだ。目の前に光が見えた。
「おお!あれは天国への道か?拝んでみるもんだな」
どんどん光の方へ身体は進む。
「いざ、天国へ!」
俺は光の中に吸い込まれた。身体がスーッと舞い上がる様な感覚。天国到着。そう思った。
ドサッ!!
「イタっ!」
だが、そこは天国でもなんでもなかった。俺は生臭い臭いを放つゴミの山に埋まっていた。
「クッセ!」
俺は暴れる様にゴミの山から脱出する。
「どう見ても天国じゃねーな」
そこは少し汚い清潔感のない通路。俺は少し周りを見渡すと、通路の先はやたら明るかった。
「はぁ?!今夜だろ?」
召喚の儀式を行ったのは夜のはず、俺は空を見上げた。暗い空に星が輝く、夜である事は間違いない。俺は通路の先へ向かった。
そこは、新世界だった。
通る人達一人一人が俺に痛い視線をおくっているが、そンな事気にならないくらい、驚きの光景だった。
「待て、冷静に考えろ、俺はさっきまで儀式場にいて異世界から勇者を召喚しようとしていた。そこで俺は突如発生した黒い球に吸い込まれた……」
俺は少し固まる。
「うん?これって…俺が異世界に来てしまっているんじゃないのか?」
異世界から勇者を召喚するはずが現場の者を異世界に転移させている。これが現状。笑えない。
もちろん、この考えか正しいなんて保証はない。が、妙な確信があった。俺たちが使ったのは効果にかもしれないなどと記載する様なふざけた魔導書に記された魔法。それを八割しか完成していないのに使用したのだ。召喚ではなく転移させても不思議ではない。
「だから言ったんだよ大丈夫かって」
自分が生きている。それ自体は良かったが、今の現状から考えて、あのまま天国へ召されてしまった方が良かったのではないかと考えてしまう。
「はぁ、仕方ないな」
大きなため息を吐く。
「情報収集でもするかな」
俺はさっきいた路地へ戻り、今所持している者を確認する。
まずは相棒である剣。腰のポーチに入っている回復アイテムに非常食の豆。懐に入っている巾着には自国の金。このぐらいのものだろう。
異世界で遭難している事を考えると、あまりに少ない。さすがに、これだけだと不安でしょうがない。
「さすがに少ないな。それに、恐らくこの金は使えないだろうな」
元の世界にはたくさんの国がある。それと同じ数の金も存在する。元の世界でも、自国の金が使えない国が存在するのに異世界で自国の金が使えるわけがない。
「まぁ、持ち物はもういいか、それよりもだ」
俺はここに来てずっと思っていたことがある。
「この世界、魔力が存在してないんじゃないか?」
俺の世界では生物全てに魔力が備わっている。だが、この世界の生物には魔力が一切感じられない。俺と同種族であろう周りの者たちからも何も感じ取ることができないのだ。
「本当に魔力が存在しないのなら今の俺の手持ち以上にヤバいかもしれないな。魔獣でも出て来たら終わりだな。まぁ幸い、ここは治安も良さそうだし、人間種以外いない様に思う。同種族なら異世界人である俺でも頼めば少しくらい何が教えてくれるかもしれないしな。今すぐ集まる情報はこのくらいか。」
わかった事は、手持ちが少ないという事。魔力が存在しないかもしれないという事。そして、ここに居る人達は同種族だろうという事だ。
「街を少し歩くか」
俺は再び摩天楼の入り口に立つ。俺は息を呑む。ここから先は俺の全く知らない新世界。恐怖はある。だがこの状況、そんな事は言ってられない。
「いざ!」
俺は一歩踏み出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移したので旅してみました
松石 愛弓
ファンタジー
ある日、目覚めたらそこは異世界で。勇者になってと頼まれたり、いろんな森や町を旅してみることにしました。
ゆる~い感じののんびりほんわかなんでやねん路線の地味系主人公です。
気楽に読めるものを目指しています。よろしくお願いします。毎週土曜日更新予定です。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
クラフト生活をしながら同級生にコスプレさせて異世界をスローライフします
春風
ファンタジー
クラスごとの異世界転移をした黒瀬海斗と白石彩音は、スキル測定で戦闘向けではないハズレスキル【クラフト】と【コスプレ】だと判明する。2人は勇者候補として相応しくないと小さな村へ追放されてしまう。
2人はハズレスキルを使って平和で楽しくスローライフ生活を目指すことにしたのである。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる