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王国崩落編
14話
しおりを挟むカーナ王の死は原因不明の病としてフォルニアの民には連絡された。
カーナ王の葬儀には影丸も含めて多くの武人も参加し、多くの人が涙お流した。その殆どがフォルニアの人間だった。
葬儀終了後、シャルロットは葬儀に参列していた影丸に声をかける。
「影!…何も言ってくれないの?」
去り際に引き止められた影丸は振り返ることはしなかった。
「ご愁傷様です」
「…それだけ?」
涙を流し、悲しく見つめるシャルロットを見る事はない。
カーナ王が死後、問題になったのは後継だ。
本来ならロニエ王子が後を継ぐが、ロニエはまだ国を背負うには幼すぎる。
「私が王座につきます」
「王妃様!」
「ロニエはまだ子供です。あの子が国を任せられるくらいに成長するまで、私が代役を務めます。異論は認めません!わかりましたか!」
重臣達を強引に納得させ王妃は王座に就いた。
王座に就いた王妃はその日から変わってしまった。
優しかった王妃はもういない。シャルロットやロニエ、サーシャにも厳しく当たった。
特にロニエには他の人以上に厳しくなった。
それはもう可愛そうと思うほどに
「なんでこんなこともできないのですか!」
この言葉を毎日聞く。その度に泣きながら何度も謝る。
勉強の時間は増え、遊ぶ時間は無くなった。
叱るだけで褒める事はない。
出来なければシャルロットを引き合いに出し比べる。
ロニエは涙を流し、黙々と勉強をする。その後ろ姿は余りに可愛そうだった。
「お母様。少し厳しく過ぎるのではないですか?」
「貴方が口を出すことではありません」
「ですが、あれでは余りに可愛そうではないですか」
「いいえ。あれくらいの事が出来なければ王は務まりません。ロニエは次期王なるのです。しっかりしてもらわないと」
そして、少しの月日が流れ、王妃のやり方に周りも慣れてきた頃、シャルロットも側近が影丸で無い事にようやく慣れてきた。
「最近、影丸の事を話さなくなりましたね」
「いつまで、言ってられないですから」
そういう事を笑いながら言えるくらい落ち着いて来た。だが、シャルロットにとって特別な人という事は変わらない。ふとした時に「今、何してるんだろう」そんな事は今でも思う。
彼女らの溝は深まるばかりだが、
いつか、再び側近に戻ってくる事を信じ、彼女は彼を思う。
「そう言えば、もうすぐフォルニア建国祭じゃないですか?」
「そう言えば、そろそろですね」
フォルニア建国祭。
フォルニア国の誕生した日、それを祝う祭だ。
フォルニア国の一大イベントと一つと言っていい大きな祭だ。
大和の祭は大体演武を披露し、盛り上げる祭が多いのに対し、フォルニアの祭は魔法による美しい舞、パフォーマンスを披露して盛り上げる。
建国祭は王族自ら演舞に参加し盛り上げる。昨年も、シャルロットが演舞を披露し物凄い盛り上がりを見せた。
今年はロニエは恐らく参加しないだろうが、サーシャは参加するだろう。シャルロットとサーシャの演舞という事になる。
「いやぁ、楽しみですね。昨年の姫様の演舞はあまりの美しさに見惚れてしまいました」
「そんな事はないですよ」
「姫様、私あなたのその謙虚な所は好きですが、あなたは王族です。もう少し傲慢になってもいいと思いますが」
「そうですか?」
少し考えるそぶりを見せるシャルロット。
「いえ。やっぱり、これが私ですから。無理に傲慢になるつもりはありません」
冬瓜に微笑みかけるシャルロット。冬瓜は思わず目をそらす。
ヤッベェェ、どうしよう、可愛い!
頬を赤らめ照れる顔を腕で隠す。
冬瓜は建国祭の準備と言う事で一度大和へ戻る事になった。
大和へ戻った冬瓜が真っ先に向かったのは真田家だった。
「影丸。お前に話がある」
「なんだ。かしこまって」
いつも、おちゃらけたとまでは言わないが陽気な感じの冬瓜が珍しく真剣な表情をしていた。
「お前、シャルロット王女の事どう思ってんだ?」
「なんだよその質問」
「いいから答えろ」
「クソガキ」
即答
「……それでいいんだな」
「なんだよお前、らしく無い雰囲気出しやがって」
「俺は、彼女が好きだ」
冬瓜は本番の告白の様に影丸に言う。
「彼女の側で彼女を一生守っていきたいと思ってる」
「いいんじゃねぇの。今はお前が側近だ。お前がそんな決意しなくてもそうなるだろ」
「俺は彼女と結婚したいと思っている」
結婚と言うワードに一瞬空気が硬直する。
「結婚って、また気の早い」
「そんな事ないだろ。彼女はもう結婚できる年齢にある。そして俺は彼女と結婚出来る地位にある。俺はもう、そこまで考えてる」
王族の結婚相手は最高位の貴族と言うのが定評だ。冬瓜は将軍家の次男。フォルニアで言う最高位の貴族の次男と同義だ。資格は十分にある。
「俺はお前が少なからず姫様の事を思っていると考えている。だから今日、お前にこの話をしに来た」
「それはまた無駄な事を。しなくていいぞそんなの。仮に俺が姫様に思いを寄せていたとしたら、俺の告白の許可か必要なのか?そんなものはいらんだろ」
「そうだな。俺はただ、お前の気持ちが知りたかった。側近じゃ無くなってからは彼女を避けている様だが、側近の頃は確かに、二人の間に深い絆が見て取れた。だから、今のお前の気持ちを知っておきたかったんだ」
「それで、お前の求める答えは知れたのか?」
「ああ」
冬瓜はそのまま去っていた。
冬瓜は心を決めた様だ。
そして影丸も心を決める。かつて、誓った忠誠を胸に大きな敵に立ち向かう決意をする。
フォルニア建国祭当日。
フォルニアの都市は人で溢れかえる。「フォルニア万歳!」そんな声がチラホラ聞こえる。
「今年も凄い盛り上がってますね」
「ええ、でもあまり天気良くないわねぇ」
空は雲に覆われ今にも雨が降り出しそうな雰囲気だ。
シャルロットの自室。
今日、冬瓜は側にいない。
「みんな、シャルロット様とサーシャ様の演舞を楽しみにしています」
「あんまり期待しないでよ。緊張するじゃない」
「シャルロット様も緊張なさるのですね」
「するに決まってるでしょ」
去年は、影が側にいたっけ
シャルロットはふと去年の事を思い出す。
去年も緊張していた私に「失敗したら笑ってやる」なんて毒舌を吐いていた。
「懐かしい」
シャルロットは少し笑みをこぼす。
「どうかなさいましたか?」
「いいえ。少し思い出し笑いをしただけ」
今日の護衛役のフレアと共に会場へ向かう。
フォルニア建国祭は王様の演説合図に開催する。
「雨、降らないといいのにね」
「そうですね」
何気ないやり取り。
何気ない日常。
何気ない日々。
ドカーーーーーーーンッ!!!!
その何気ない。当たり前の日々の壊れる音が爆音となって響き渡る。
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