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4章 挙り芽吹く
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「……い、っててて」
左肩から走る鈍痛に耐えながら、起き上がる。
視界は完全なる闇。足を動かすと、鉱物の感触や土の感触が返ってくる。目を凝らしていると、ようやく慣れてくる。周囲は土砂の山になっているが、壁面だけは舗装されている。どうやらここは途中まで掘り進んだ隧道の果てと崩れた土砂の間であるようだ。
「おおーい、誰か聞こえるー?」
大きく声を上げるが、むなしく反響するだけだった。どうにかして登れないかと試すも、壁面はぼろぼろと崩れてしまう。
「う」
どこかで小さなうめき声が聞こえた。報告にあった謎の呻き声かと身構えるが、聞き覚えのあるものである。
「……けほ、うう、口に泥が入りましたわ……」
綴歌である。どうやら一緒に落ちてしまったようだ。
「綴歌ちゃん、聞こえる?」
「その声は、稲峰さんですか。ええ、聞こえましてよ」
返事はくるが、どこにいるのか分からない。綴歌もそれを感じたのだろう。しばし待つように告げると、ぱっと明かりが灯る。
綴歌は六之介の後方にいたようである。
「それは?」
「魔術具の一つですわ。常に持ち歩いていたのですが……役に立つとは」
自分でも驚いたような口調である。光っているのは、手のひら大ほどの金属片であった。その表面には赤色で円と曲線を複雑に組み合わせた模様が描かれている。これは防災用魔術具『燈』。
ぺたんと座り込んでいる綴歌に合流する。
「地割れ……というか、崩落かな?」
直前に感じた大地の揺れによって、脆くなっていた多々羅山の斜面が崩れたのだろう。
そのようですわね、とため息をつく。
周囲を照らしながら、きょろきょろとする。
「出口は……見当たりませんわね」
「そうだね。でも……」
天井に穴がない。崩れると同時に塞がったのだろう。
奥、否、入口があった方を指さす。そこには果てが見えない暗闇が広がっていた。
「ここから歩いていけば、非常口みたいなものがあるかもしれない。行ってみよう」
「……そうですわね、今は行動しなくては」
一歩踏み出す。はずが、綴歌の足が止まり、小さく声を漏らす。
左脚を押さえている。
「怪我してるのか?」
「少しひねっただけですわ。この程度なら」
青い光。回復魔導によって、回復を促進させる。しかし、全回復には至らない。腫れは多少引いたが、体重をかけると鈍痛が走るようだ。この不安定な足場を歩くのは難しいだろう。
「……しょうがない」
綴歌に背を向け、跪く。
「乗りなよ、おぶってあげる」
「なっ! ひ、必要ありませんわ! このぐらい……」
しかし、やはり立ち上がれずにしゃがみ込んでしまう。
「ほら、無理じゃない」
「うう……」
悔しそうに唸る。
しばしの沈黙の後、諦めた様に六之介の背中に柔らかなものが触れる。立ち上がると、想像以上に軽く、身体に絡みつく手足は柔らかかった。朱い髪からふわりと甘い香りがする。
「変なとこ触ったら頭吹き飛ばしますわよ」
ぺちぺちと後頭部をたたく。以前、戦闘したときに後頭部を旋棍で叩かれたのを思い出し、六之介は苦笑する。
「はいはい。じゃあ、いくよ、お姫様」
姫ではありませんわと、頭突きされるも六之介は入口の方へ歩き出した。
左肩から走る鈍痛に耐えながら、起き上がる。
視界は完全なる闇。足を動かすと、鉱物の感触や土の感触が返ってくる。目を凝らしていると、ようやく慣れてくる。周囲は土砂の山になっているが、壁面だけは舗装されている。どうやらここは途中まで掘り進んだ隧道の果てと崩れた土砂の間であるようだ。
「おおーい、誰か聞こえるー?」
大きく声を上げるが、むなしく反響するだけだった。どうにかして登れないかと試すも、壁面はぼろぼろと崩れてしまう。
「う」
どこかで小さなうめき声が聞こえた。報告にあった謎の呻き声かと身構えるが、聞き覚えのあるものである。
「……けほ、うう、口に泥が入りましたわ……」
綴歌である。どうやら一緒に落ちてしまったようだ。
「綴歌ちゃん、聞こえる?」
「その声は、稲峰さんですか。ええ、聞こえましてよ」
返事はくるが、どこにいるのか分からない。綴歌もそれを感じたのだろう。しばし待つように告げると、ぱっと明かりが灯る。
綴歌は六之介の後方にいたようである。
「それは?」
「魔術具の一つですわ。常に持ち歩いていたのですが……役に立つとは」
自分でも驚いたような口調である。光っているのは、手のひら大ほどの金属片であった。その表面には赤色で円と曲線を複雑に組み合わせた模様が描かれている。これは防災用魔術具『燈』。
ぺたんと座り込んでいる綴歌に合流する。
「地割れ……というか、崩落かな?」
直前に感じた大地の揺れによって、脆くなっていた多々羅山の斜面が崩れたのだろう。
そのようですわね、とため息をつく。
周囲を照らしながら、きょろきょろとする。
「出口は……見当たりませんわね」
「そうだね。でも……」
天井に穴がない。崩れると同時に塞がったのだろう。
奥、否、入口があった方を指さす。そこには果てが見えない暗闇が広がっていた。
「ここから歩いていけば、非常口みたいなものがあるかもしれない。行ってみよう」
「……そうですわね、今は行動しなくては」
一歩踏み出す。はずが、綴歌の足が止まり、小さく声を漏らす。
左脚を押さえている。
「怪我してるのか?」
「少しひねっただけですわ。この程度なら」
青い光。回復魔導によって、回復を促進させる。しかし、全回復には至らない。腫れは多少引いたが、体重をかけると鈍痛が走るようだ。この不安定な足場を歩くのは難しいだろう。
「……しょうがない」
綴歌に背を向け、跪く。
「乗りなよ、おぶってあげる」
「なっ! ひ、必要ありませんわ! このぐらい……」
しかし、やはり立ち上がれずにしゃがみ込んでしまう。
「ほら、無理じゃない」
「うう……」
悔しそうに唸る。
しばしの沈黙の後、諦めた様に六之介の背中に柔らかなものが触れる。立ち上がると、想像以上に軽く、身体に絡みつく手足は柔らかかった。朱い髪からふわりと甘い香りがする。
「変なとこ触ったら頭吹き飛ばしますわよ」
ぺちぺちと後頭部をたたく。以前、戦闘したときに後頭部を旋棍で叩かれたのを思い出し、六之介は苦笑する。
「はいはい。じゃあ、いくよ、お姫様」
姫ではありませんわと、頭突きされるも六之介は入口の方へ歩き出した。
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