超能力者、異世界にて

甘木人

文字の大きさ
21 / 58
4章 挙り芽吹く

4-5

しおりを挟む
「……い、っててて」

 左肩から走る鈍痛に耐えながら、起き上がる。
 視界は完全なる闇。足を動かすと、鉱物の感触や土の感触が返ってくる。目を凝らしていると、ようやく慣れてくる。周囲は土砂の山になっているが、壁面だけは舗装されている。どうやらここは途中まで掘り進んだ隧道トンネルの果てと崩れた土砂の間であるようだ。

「おおーい、誰か聞こえるー?」

 大きく声を上げるが、むなしく反響するだけだった。どうにかして登れないかと試すも、壁面はぼろぼろと崩れてしまう。

「う」

 どこかで小さなうめき声が聞こえた。報告にあった謎の呻き声かと身構えるが、聞き覚えのあるものである。

「……けほ、うう、口に泥が入りましたわ……」

 綴歌である。どうやら一緒に落ちてしまったようだ。

「綴歌ちゃん、聞こえる?」

「その声は、稲峰さんですか。ええ、聞こえましてよ」

 返事はくるが、どこにいるのか分からない。綴歌もそれを感じたのだろう。しばし待つように告げると、ぱっと明かりが灯る。
 綴歌は六之介の後方にいたようである。

「それは?」

「魔術具の一つですわ。常に持ち歩いていたのですが……役に立つとは」

 自分でも驚いたような口調である。光っているのは、手のひら大ほどの金属片であった。その表面には赤色で円と曲線を複雑に組み合わせた模様が描かれている。これは防災用魔術具『ともし』。
 ぺたんと座り込んでいる綴歌に合流する。

「地割れ……というか、崩落かな?」

 直前に感じた大地の揺れによって、脆くなっていた多々羅山の斜面が崩れたのだろう。
 そのようですわね、とため息をつく。
 周囲を照らしながら、きょろきょろとする。

「出口は……見当たりませんわね」

「そうだね。でも……」

 天井に穴がない。崩れると同時に塞がったのだろう。
 奥、否、入口があった方を指さす。そこには果てが見えない暗闇が広がっていた。

「ここから歩いていけば、非常口みたいなものがあるかもしれない。行ってみよう」

「……そうですわね、今は行動しなくては」

 一歩踏み出す。はずが、綴歌の足が止まり、小さく声を漏らす。
 左脚を押さえている。

「怪我してるのか?」

「少しひねっただけですわ。この程度なら」

 青い光。回復魔導によって、回復を促進させる。しかし、全回復には至らない。腫れは多少引いたが、体重をかけると鈍痛が走るようだ。この不安定な足場を歩くのは難しいだろう。

「……しょうがない」

 綴歌に背を向け、跪く。

「乗りなよ、おぶってあげる」

「なっ! ひ、必要ありませんわ! このぐらい……」

 しかし、やはり立ち上がれずにしゃがみ込んでしまう。

「ほら、無理じゃない」

「うう……」

 悔しそうに唸る。
 しばしの沈黙の後、諦めた様に六之介の背中に柔らかなものが触れる。立ち上がると、想像以上に軽く、身体に絡みつく手足は柔らかかった。朱い髪からふわりと甘い香りがする。

「変なとこ触ったら頭吹き飛ばしますわよ」

 ぺちぺちと後頭部をたたく。以前、戦闘したときに後頭部を旋棍で叩かれたのを思い出し、六之介は苦笑する。

「はいはい。じゃあ、いくよ、お姫様」

 姫ではありませんわと、頭突きされるも六之介は入口の方へ歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...