前世の記憶さん。こんにちは。

満月

文字の大きさ
44 / 142

フェル(ハイエルフ)の熱弁

しおりを挟む
ゲホッゲホッ喋りたいけどむせて話せない···

するとすぐに戻ってきたハイエルフに水を渡され一気に飲み干した。
「貴方は無理に声を出さないようにしてください。竜人の子は泣き止みなさい。彼女が困惑していますよ?」

「は、ぃ···ヒックッヒックッ」

「貴方は僕たちのこと覚えてますか?従兄弟くんより先に会ってますよ!!」


ポテトの人を忘れるわけない···うんと頷くと
「良かったです。私は貴方の作った食べ物の虜になりました。今では毎日夢にまで出てきますよ···油の香りとサクサクとした芋の食感、それにいい塩梅の塩加減!なんて素晴らしい食べ物だったのでしょう、指先についた塩まで残さず食べました。また食べたいと思ったのですが、君達が急に宿からいなくなり···何度絶望したことか、、、それにお金を渡せていません。」と興奮で危ない目をしたハイエルフが言った。

あまりの熱弁ぶりにシンジュは引き気味に「ッゲホお、かね ??もらッゲホ ッたよ。」と答えた。

「???そうなのですか?それでしたらさらにお金を渡しますね。」と金貨3枚渡された。え?多くない?と思ったのが顔に出てたようで、「それは迷惑料も込みですよ。それとまた作ってもらいたいのですが、、もちろん体調が治ったらお願いします!」とキラキラと目を輝かせながら言い放った。


もちろん断れる雰囲気ではなかったため、
「わ、かりました。ッゲホ」と答えた。
さっきの熱弁ぶりからして今すぐ作れと言われると思ったが、治ってからでよかった···一安心をした。


「お喋りはこのくらいにしましょう。今は夜中ですから、また明日見に来ます。おやすみなさい。」とハイエルフは帰って行った。


バタンッと閉まった扉を暫く眺めていると「シンジュ様、、、ぼくこわ、かった。」また、ポタポタと泣き出した。


「ご、めん、ね。もう、大丈夫ッゲホ。」
シンジュは軽率な行動でエメに心配させてしまったことを悔いた。

「ぼ、くこ、わくて今日は、一緒にね、ていい?グスンッ」


頷くとすかさずエメが布団に入ってきた。まだ私よりチビっ子エメ。心のなかでごめんねと謝ってもう一度寝るのだった。

ーーーーーーー



シンジュが泥に埋められたとき



フェル(ハイエルフ)とライオス(ライオン獣人)の2人は近場で魔力が膨れ上がったのを感じて、急いでその場に駆けつけると必死に泥を掻き出そうとしている例の竜人の子と、従兄弟が唖然として立ち尽くしていた。
泥の山は5mほどあり、私達でもさえ埋もれてしまう高さだった。

従兄弟を何度も揺さぶり「ルネ、おいルネ!!!」と声をかけると、やっと動いた従兄弟が「子供を埋めてしまった」とブルブルと震えながら言ったのだ、、、「はぁ?」と慌てたライオスと一緒に魔法を駆使し泥を掘り進める。
途中途中にある硬い植物が邪魔をしてなかなか掘り起こせない。
人間の少女だと確信していたため、強い魔法を放ったら傷つける恐れがあり、なかなか思うようにできない···気持ちが焦る。するとやっと少女の腕が見え、引っ張り上げた。やはりあの子だ!!!

すかさず回復魔法をかけ、クリーンでキレイにしたが目を覚まさない。
この場は危険と判断し、自分達のテントへ急ぎ連れていき寝かせた。
本当は穴の中の地下住居のほうが安全だが、地下に驚いて息が止まってしまうかもしれない。人間は弱いから何が起きるか分からない。そのため私達のテントを譲って見張りをした。

竜人の子はずっと飲まず食わず側にいた。そういやこの子供は大きくなったか?と思ったが、それよりも起きない彼女に毎日回復魔法をかけて様子を見ることにした。


その後、彼女はまだ目を覚めないが呼吸が正常に戻ったためフェルが従兄弟に詳しく話を聞くと驚いた、馬鹿だと思っていたが、本当に馬鹿だった。「貴方は魔力はあるけど、魔法は未熟ですよね?自分の力の過信と、周りからの劣等感で練習をせず、それなにどういうことですか?」と思わずフェルは怒りに任せて怒鳴ってしまった。



「ご、めん」
従兄弟が慌てて涙を流しながら謝った。

「そのくらいにしとけ。お前が力を放ったらこいつが死ぬぞ?俺がルネの面倒を見てやるよ。どうせ暫くここにいるだろ?」

今ライオスに止めれたくなかったら酷いことをしそうだった···止めてもらえてよかったと安心した。

「よろしくお願いいたしますね。それと彼女が欲しがっていたレンコンですか?彼女が起きたときのために採りに行きましょう!」

「おういいぜ!何人か集めろ!あの泥の中にすげぇ量があったよな?アイテムボックスに入れときゃ腐らねぇからな。」

それから私達はレンコンを数百個収穫したのだった。

「なんじゃこれ?穴がいっぱい開いてるぞ。」

「気持ち悪いぞこれ。」

「重てぇ、1本で何キロあんだんよ。」

「皆さん今寝ている少女は物凄く料理が上手です。今は謎の植物に不安だと思いますが、彼女なら美味しいものを作ってくれます。たくさん採って下さい。」とフェルが皆を鼓舞し、一生懸命泥の中に入って収穫するのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。 この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ 知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

処理中です...