前世の記憶さん。こんにちは。

満月

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隊長の父親、やっぱり自分勝手

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一度家に帰ると門にドワーフがいるのが見えた。 
ガンガンガンガンと門を叩いている様子だったため、急ぎエメと門に向かうと隊長の父親が待っていた。
「よ!お前らここで30分も待ったぜ。なにしてたんだ?」

「あぁごめんなさい。えーっと支度に戸惑ってました。」

「そりゃあ仕方ねぇな。人間は大変だもんな。話がある。家に入るぞ。」と許可を出してないにも関わらず門を勝手にくぐり抜けると玄関の扉を開けて家の中に入っていった。



何故か何がどこにあるか把握しているようでスムーズに客室にたどり着いた。ドサッとソファーに座ったドワーフは「お前ら、俺はこの城の庭に地下を作りたい。それの許可がほしい。」

は?何言っての?このドワーフさんとシンジュは驚いて、
「えーっと庭に地下か?」と聞き返した。


「あぁそうだ。周辺を調べたがいい場所がなかった。それならここの庭に住処を作ったほうが作業が捗ると思ってな。ハニーも了承してくれたぜ!ニヒヒ」と親指を立てて笑顔で答えた。


いやいや、何を勝手に決めてるのだろう?!
妻の許可よりギルドマスターが先だよ。その親指しまってください。
「ここの家はそもそもギルドマスターの家だから私に許可を出す権限はないですよ。」


「あぁギルドマスターは俺が言いくるめるから安心しろ。そういうことだからよろしくな?今どうすっか悩んだんだよな。鉱山都市を息子に譲るかそれとも2拠点でやるか。どっちが良いと思う?」


何で私が決めなきゃいけないの?意味が分からない。
「それは息子さんに聞いてみたらどうですか?親子で暮らせるのが1番いいと思いますよ?」

「嬢ちゃん良いこと言うな。俺はハニーと2人で過ごしたかったがやっぱり家族で過ごすのは大事だよな。ありがとよ。そんじゃあ明日から準備すっから門を開けとけよ?」
と言うと物凄い速さで帰った。

この前は変な歩き方をしてたのに···


あまりの展開の早さについていけなかったシンジュは今この場所にいないギルドマスター『ごめんなさい』と心のなかで謝ったのだった。


その後とりあえずお昼ご飯を簡単に作って食べてから、もう1度ギルドの裏に転移した。まだ弁当箱が買えていなかったからだ。 

「こんどはどこ?」

「今度は街を歩くよ?何か欲しいものを見つけたら教えてね?」

市場では見つからなかったため街中を歩くことにした。

「わかった。」

2人で酒場の前を通り街の中心部に向かって歩き始めた。
前回フェルやライオスと一緒にいた時のような視線は感じなかった。
何でだろう?確かに服装は隊長の知り合いのお下がりをもらったから見た目は良いけれどそれ以外特に変わったところはない。
少し太ったが相変わらずシンジュもエメも貧相であった。

前回と何が違うのかな?それともこの前は冒険者の質が悪かったのだろうか?散々あの時は罵倒されたな···と嫌な気持ちを思い出したが、気持ちを切り替えてお弁当箱のことだけを考えて歩くと市場とは違ったお店がたくさん並んでいた。

透明なガラス窓ではないため中の様子は覗くことができないが、入口にある看板には文字ではなく絵が書いてあり何屋さんなのか分かりやすかった。


ただお弁当箱を売っているお店はどこを見れば良いのか?
一通り歩いてみたが分からなかった。

「エメ君疲れてない?」

「ぼくはへいきだよ。まだまだ歩けるよ?」

さすが竜だね。私はもう体力がない。
「何か気になるお店はあった?」


「ありぇ」と指さした方向を見つめると何屋さんなのか分からないが不思議な看板のお店があった。


エメが気になったお店に行ってみることにした。お店のお前に着くとますます何屋さんなのか分からなかった。
紐?蜘蛛の巣?ラクガキ?良くわからないマークであった。

とりあえずカランカランと扉を開けてみると、そこら中に物が積み重なっており今にも崩れそうな店内だった。
崩れそうで不安だったため入口から店内の様子をうかがっていると、「お前達何しに来た?」と奥から人間のような男性が出てきた。

「気になったので入ってみました。何屋さんですか?」


「ここは俺の趣味の店だ。俺が作りたいものを作ってそれを販売する店だ。冷やかしなら帰れ!!!」と机をたたきながら怒鳴った。


何だろう?ギルドマスターもそうだがドワーフ共和国は短気が多いのかな?変な流行り病じゃないのかな?と心配になってきた。「冷やかしじゃないですよ。」


「あ??お前らよく見たらドワーフや獣人じゃねぇな?それなら俺のこと知らねぇか。ここは街の皆からはいらない店って呼ばれてるぞ。ガハハ」


自虐···初めて来たジュンジュから見てもいらない店と言われても仕方ないのではないかと思った。ゴミ屋敷にしか見えない。
でもエメが指さしたらもしかしたらが弁当箱を作れるかもしれないから聞いてみよう。
「すみません。何でも屋さんはオーダーで作ることは可能ですか?」


「あぁいいぞ。でもそこら辺に売ってるようなものを注文されても俺は作らないぞ。俺にはな、一応信念がある。絶対に他のお店にあるものは作らねぇっていうやつだ。これは譲らねぇ。」


確かに他と差別化できて良いかもしれないけど、この人の服装とか見た目を見ると好き嫌いで作るものを決めている余裕はないと思うけれど?大丈夫かな。

「分かりました。私が作って欲しいのは四角と長方形の箱です。これはお弁当と言って食べ物を詰めて持ち運びます。そのため食べ物が漏れるのは絶対ダメです。あとホコリが入らないように蓋も必要ですし、パカパカ蓋が取れると中身がこぼれるのでダメです。あとは傷みにくい入れ物が良いですね。どうですか?」と簡単にイラストを書きながら説明すると、ガッと目が開き突然手を握られると「こりゃあすげぇ!!!葉っぱじゃねぇってことだろ?」



葉っぱ?それがなんだか分からないけれどうんと頷いた。

「そうだよな。おれもあの葉っぱ嫌なんだよ。汁が漏れるだろ?かと言って皿を持ち運びなんて一般人には出来ないだろ?あーーーー俺は何で思い浮かばなかったんだ?嬢ちゃんすげぇな。1週間待ってくれねぇか?材料を見つけてくる。素材とか見た目は俺が決めていいか?」

プラスチックなんてこの世界にないから何の材料が良いか分からないから全て任せよう。
「もちろんです。1週間後にまた来ますね。お代はその時でいいですか?」

「あぁその時でいいし、納得するまで作ってやるから安心しろ。んじゃ俺は材料を取りに山に行ってくるわ。」
と言われるとお店を追い出された。


とりあえず作ってもらえるから良かったのかな?

展開の早さについていけなかった。批判的だった店主が突然手のひらを返して、興奮した姿に驚いた。 
口は悪いけど『ものづくり』の情熱だけは感じだった。


「なんかすごいひとだったね。」とエメが言った。
エメも展開が早すぎてついていけなかった。


「そうだね。1週間後にまた来ようね?」

「うん。ぼくのお弁当もちゅくってよ。ギルドマスターだけはダメだからね。」

「分かったよ。エメの分も用意しようね。」

その後裏道に入って転移をして帰るのだった。
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