前世の記憶さん。こんにちは。

満月

文字の大きさ
111 / 142

軟体竜?獣化?

しおりを挟む
「いつまで寝ているの?」
お手入れケア中に寝始めたギルドマスターは、これこれ10時間は軽く越えて寝ていた。

シンジュが何度も声をかけたが全く起きず、幸せそうな顔でクガァーーーと盛大なイビキをかいていた。



同様にエメも隣の部屋で幸せそうに眠っていたため、シンジュはスキルをそのまま放置し、朝食を作りに行った。


まさか機械にこんな効果があったとは···
このマッサージ機は封印するほうが安全かな?
死んだように眠る人が続出だよね?
本格的に宿を屋を考えなけばいけない···
昨日は冗談のつもりで宿屋について考えていたが、エメだけでなくギルドマスターまで熟睡させるとは···流石にエステサロン内で宿屋は···やりたくない。
ご飯提供が面倒くさい。


う~ん、それとも宿泊とお手入れをセットにするか···
前世だとホテルでマッサージ受けることができたよな~悩む。

私も体験してから考えようかな?
でもなぁ~エメやギルドマスターように使い物にならなくなったら嫌だな~。うん、今日は体験しない。
色々悩んでもお腹が空いていたら良い考えが浮かばない。
まずは朝食を食べてから考えよう。

パシッと両手で頬を叩いて気合を入れたシンジュはアイテムボックスから小麦粉、砂糖を取り出した。


ほぼ食事をせずに寝た2人のために消化が良いうどんとパンケーキを作ることに決めた。


コネコネ···

グルグル···

パンパン···


エメやギルドマスターと違って寝不足気味のシンジュは、頭で色々考えながら調理をしていたため、気がついた時にはうどんが茹ですぎてボロボロに。さらにパンケーキはシャバシャバの種に···作り直そうにも食材が足りず、クレープに変更するしかなかった。


ハァ~とため息を吐いたシンジュは、失敗した料理を全てアイテムボックスに仕舞うとスキル部屋へ戻ったが、何故だか分からないが絶え間なく流れていた音楽が止まり、部屋の照明が落ちていた。

スキルは消えていないがシンジュが部屋から一定時間いなくなると消灯することが分かった。

ただ『灯して·点いて』と心の中で思うだけで、電気や音楽が流れることも分かり、誰かに監視されているようで『恐怖』を感じた。

さらにシンジュの気持ちに反応するかように「安心してください。監視してません。貴方の心と連動しているだけです。」と毎度おなじみの声が頭の中に聞こえてきた。

受け入れるしかないのかな?と顔を引き攣らせながら思ったが、それよりも今は中々起きないエメとギルドマスターを起こすことにした。流石に寝すぎて心配になった。


まずはエメの部屋へ突撃をした。

「お~い起きて。」
「一緒に遊ぼうよ?」
「起きないと1人でお出かけしちゃうよ?」とエメを揺さぶりながら声を掛けたが全く反応しない···耳元で声をかけてもと起きないことに驚いた。
あまりにも起きないエメに最終手段を出すことにした。

「エメ君!!!起きないとご飯を食べちゃうぞ!!!」
と食いしん坊なエメのために『ご飯』入れて声掛けするしたところ、案の定予想通り簡単に起こすことができた。

「···アハハハ」乾いた笑みを浮かべたシンジュは、簡単に食事で釣られるエメを心配し、今後騙されないように教育しようと誓った。


「シンジュ様おはよ。からだがすごいよ。」


シンジュが誓いを立てている時、エメは呑気に身体をボキボキと音を鳴らしながらマッサージの効果を確かめていた。

ぐぅ~んと腕を伸ばすとありえない方向に自分の腕が曲がり、「へ?」と思わず声が出た。

「どうしたの?」

「う、ううううでがァァァ···」
叫んだエメはしきりに自分の身体を触りだした。


「は?」
身体を確かめるエメを横目に観察してみると、腕や足が非ぬところを向いていた。
骨がない生き物のようにグニャングニャンだった···


「せいちょうき?かな?からだがへん。それに服がキツイ。」

「いやいや、成長期の訳がない。」
思わずシンジュはツッコんだ。成長期でグニャングニャンに身体が柔らかくなるなんてありえなかった。

それに身長がシンジュより大きくなっており、意味が分からなかった。

機械が原因なことは分かるが、果たしてこれが身体に問題があるのか、危険ではないのか、人によって効果が変わるのか···何もわからない。

ひとまずシンジュは背伸びをし、エメと目を合わせて「よ、よ、よかったね。鏡で寝癖を整えて出ておいで」と伝えて現実逃避することにした。

眠気と疲れで頭がパンクしている···きっとそうだ。
これは夢。1日で身長が伸びるはずがない···
もし本当に身長が伸びていたら···うん、怖い。

でも何でだろう?
凝りがほぐれ血行が良くなると身長が伸びるのかな?
それはそれでキモチワルイな。うん、やっぱり良く分からないため現実逃避し、次にギルドマスターを起こしに行った。


ギルドマスターの場合は揺さぶるとすぐ起きた。

「ああ、ん?うわぁぁぁぁぁ、んだこれ?」

エメと違ってスムーズに起きたのはいいが、獣化した自分の姿にショックを受けたようで再度布団を被ってしまった。


シンジュはこの時はまだ獣人の習性を知らなかったため、ギルドマスターのフォローができなかった。
後で知ったことだが、自分の意志関係がなく勝手に獣化するのはまだ安定していない子供や、大人では番を見つけた時や興奮時、さらにリラックスしている時だけだそうだ。
そのためギルドマスターは恥だそうだ。
一流冒険者にもかかわらず、無意識に獣化し、恥ずかしさとショックから立ち直れなかったようだ。



その後何とギルドマスターを起こしたが、エメとギルドマスターはお互いに顔を見せ合わせると固まっていた。


そりゃそうだ。


何故ならエメはどこから見ても軟体竜に、ギルドマスターは人化できず獣化したままだった。そんな2人をフォローするためになんて声をかけて良いのかわからないシンジュ···


なんともいえないカオスな状況だがご飯はしっかり食べた。

その後まるっとエメとギルドマスターの状況を無視したシンジュは、転移魔法で市場に向かったところギルドマスターから説明があったように市場の治安が良くなっていた。


ただやはり以前のような市場に戻すのは難しいようだ。
壊された家や、街から消えた商売人達等、問題はまだまだ山積みだった。
一通り市場を見回ると今度は何でも屋さんに向かった。注文していたケーキ型を購入し、さらにマフィン型とマドレーヌ型を注文し戻ってきた。


食料を調達中は、エメやギルドマスターの状況を忘れることができたが、帰宅後冷静になると今後どうしようかと頭を抱えるのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

処理中です...