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第一章 最強の娘? いえいえ、娘が最強です
第二の刺客。それは、亀。
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勇者であるアラキより先に反応したのは、娘のアリステリアと熊五郎であり、俺が止める間もなくスアレスの家から飛び出してしまった。
あっという間にアリステリアを見失い、俺とアラキとサラの三人は手分けして村を探し回る。
途中、逃げ惑う人々を掻き分けて、俺がアリステリアと熊五郎の二人を見つけたのは、アラキとサラの二人とほぼ同時であった。
熊五郎に跨がったアリステリアは村の通り、丁度あのケパプ屋のすぐ側で見つかる。しかし、二人と対峙するように通りを塞ぐ巨大な魔物の姿が、そこにはあった。
せめて斧を持って来るんだったと後悔しても遅く、俺は直ぐに二人の元へと駆け出す。
「ゲハハハハ、見つけた! 見つけたぞ!! その後ろにいるのがタツロウだな。青の魔王様の命により、お前を連れ帰る」
青の魔王という名に第二の刺客だと理解した俺は、まさかたった一晩で、刺客を送って来た周到さに苦虫を噛み潰したような顔をしてしまう。
後ろ足で立ち上がり、その巨躯をまざまざと見せつける。何処から現れたのかも気になるが、何よりその姿の奇妙さに目を奪われる。
一見、亀をそのまま巨大化させたような魔物であるが何故か強羅は背中ではなく腹側に背負っていて妊婦のよう。
「アリス、逃げなさい!」
叫びながらアリステリアの元に駆け寄る俺の隣を人影が通りすぎた。
「ちっ、めんどくせぇ!」
腰から抜いた長剣を両手で持ったアラキであった。
俺を追い抜き、アリステリアと熊五郎より前に出ると亀の魔物へ怯むことなく向かって行く。
ガキンッ! と、金属のぶつかる音がする。アラキの剣が亀の魔物の腹の強羅へとぶつかり合った音であった。
剣にも強羅にもヒビはなく、痺れたのであろう手を振りながらアラキは少し距離を取る。
「くそ硬ぇ!」
「ゲハハハハ! そんな、なまくら、このカメ・レオンに通じるものか!」
下品な笑いのカメ・レオンの声。それに負けじと大きな舌打ちがアラキから聴こえてくる。
その時、カメ・レオンは自らの手足と伸びる長い首を強羅にしまうと、強羅を高速で自転させながらアラキやアリステリア目指して突進して襲いかかる。
その回転は、辺りの建物を風圧で壊していくほどのものだった。
「アリス!」
俺の声が聞こえないのかアリステリアはピクリとも動かない。既に駆け寄っていた俺であったが間に合わない、と思わず閉じそうになってしまう目を何とか堪える。
「ヘキサグラム!!」
カメ・レオンとアリステリアの間に割り込むように六角形の虹色に輝く巨大な壁が立ち塞がった。
初めて見る上級魔法に俺は呆気に取られるが、直ぐに声のした方へ振り返ると、そこには両手の掌をこちらに向けて立つサラの姿が目に飛び込んで来た。
回転しながら突進してきたカメ・レオンと虹色に輝く六角形の壁がドーーンと大きな音を立ててぶつかる。
虹色の欠片を振り撒きながら壁は徐々にカメ・レオンの回転を緩めて行き、やがて突進を止めることに成功した。
悔しかったのだろう。カメ・レオンは再び強羅から手足と首を出すと力づくに虹色の壁を殴り続けた。
「俺も本気でやってやんよ!」
「駄目よ、アラキ! 街に被害が出るわ!!」
剣を握った両手に力を込めたアラキをサラは叫んで止めたのは意外であった。
さっき、強羅に対して傷をつけられなかったアラキの力は、もしかしたらこの程度では無いのかと俺は二人を見比べ、動けずにいた。
背筋に寒気が走る。
二人に気を取られていてアリステリアから目を離してしまっていたのだ。その間にアリステリアと熊五郎はカメ・レオンに立ち向かう。
「やめろ、アリス!!」
熊五郎を駆り、虹色の壁を迂回して行くアリステリアを止める事が出来なかった。
アラキも反応して俺より早く動き出していたが、間に合わない。
以前襲って来たカルヴァンや熊五郎とは比べ物にならないカメ・レオンの巨体。アリステリアなどそのまま押し潰されてしまいそうなほどの体格差。
アリステリアは跨がっていた熊五郎の背に立ち、右手を大きく振りかぶる。
「ゲハハハハ!! そんな小粒の体で何をするつもりだ? このカメ・レオン。タツロウとかいうそこの男は連れ帰るように命じられているが、邪魔をする者は殺せと言われている!! 死ねぇ!!」
カメ・レオンの大きな拳が熊五郎に向かって振り下ろされる。しかし、熊五郎はサッと避け、アリステリアは熊五郎の背からカメ・レオンの懐に向かって飛び込んだ。
まさか小さな少女が建物の二階の屋根付近までジャンプしてくるとは思わなかったのかカメ・レオンは面を食らった顔をしていたが、自分に向けてられる小さな紅葉のような手に思わず鼻息をフンヌと吐き出した。
「あ、あれは!?」
思わず、俺は叫ぶ。
「アリスちゃ~~~んライトニング張り手~~~です!」
アリステリアの右手が剣をも弾く硬さの強羅に触れる。
一見、ただの子供の掌底に過ぎない。
誰もがそう思った瞬間、硬いはずの強羅にアリステリアの右手付近から大きな亀裂が幾つも入る。
当然と思っていたのは俺と熊五郎のみ。
『アリスちゃんライトニング張り手』はアリステリアの得意技。
命名、俺。
因みにライトニングは光とかではなく、右という意味だ。
ガラスが割れるように強羅の破片は辺りに飛び散り、周囲の建物へ被害を拡大させてしまう。
だから、俺は止めたかったのだ。
子供のしたことは親の責任。どうしようと頭を抱える。
しかし、アリステリアの張り手の威力はそれだけに留めず、踏ん張ろうとしたカメ・レオンの脚を浮かして、遥か後方へと吹き飛ばした。
通りに沿って地面を弾かれるように転がっていくカメ・レオンは、サーシャ村の出入口付近の壁にぶつかるまで止まることはなかった。
これで終わるはずはない。
上手く熊五郎の背に落ちてきたアリステリアは「追いかけるです」と指示して、再び走り出す。
アリステリアは青の魔王という言葉を聞いてから、怒り心頭であった。
「ちっ! ぼさっとすんな、行くぞ!」
いつの間にか足を止めていた俺にアラキが声をかける。サラに後ろから肩を叩かれ、ハッと気づいた俺もサラと共に追いかけた。
「アリスちゃ~~~んうっちゃり~~です」
カメ・レオンの強羅の突起に手をかけたアリステリアは、そのまま目を回しているカメ・レオンを小さな体で持ち上げると、そのまま体を捻り壁の外へと放り投げた。
「アラキ! 今なら!!」
「ああ、逃がすかよ!」
サラの掛け声に素早い反応を見せたアラキは、壊れた壁から外に出てカメ・レオンを追いかける。俺はアリステリアを後ろから抱き締めてそのまま壊れた壁から外の様子を伺う。
「圧殺しな! ブラストプレス!!」
その時俺が見たのは、アリステリアに負けない程のジャンプ力を見せたアラキの姿であった。片手で持った剣からは光が伸びたかと思うと光が大きく扇状に広がる。
にたりと白い歯を見せ大きく笑ったアラキの顔は、見知らぬ相手であれば誰もが道を譲りそうなほど怖く、扇状に広がった光をカメ・レオン目掛けて叩きつけた。
地面がカメ・レオンごと大きく凹む。
その被害の広さに街中で使わなかった理由が何となくわかった。
街中で使えば、通りを跨いで店や家屋に被害は出るし、更に壊れた勢いで他の家屋にまで被害が及ぶからサラは止めたのだろう。
剣が元に戻ったあとには、自慢の硬い強羅ごとひしゃげた見るも無惨なカメ・レオンの姿が残っていた。
強羅は割れ、押し潰されたカメ・レオンを遠目に見ながら俺は、一刻も早くこのサーシャ村を出るべきだひしひしと感じていた。
スアレスの家に戻った俺達は、スアレスから特に責められる事は無かったが、気まずさもあり、外に漏れないように洗いざらいアラキ達二人も交えて話を始めた。
昨日突然青の魔王の部下と名乗る魔物から襲われた事。
そしてカメ・レオンも同様で更に次の刺客も来る可能性がある事。
何より狙われる覚えが無い事。
暫く黙って聞いていたアラキが口を開く。
「そこのガキを狙うならわかっけどよぉ……というより、このガキ一体なんなんだぁ?」
サラもスアレスも同意するように頷く。アリステリアの強さがこの世界では普通だと、親父さんから聞かされ思い込んでいた俺には、この時まだ三人が何を言っているか分からず、ただ呆然としていた。
あっという間にアリステリアを見失い、俺とアラキとサラの三人は手分けして村を探し回る。
途中、逃げ惑う人々を掻き分けて、俺がアリステリアと熊五郎の二人を見つけたのは、アラキとサラの二人とほぼ同時であった。
熊五郎に跨がったアリステリアは村の通り、丁度あのケパプ屋のすぐ側で見つかる。しかし、二人と対峙するように通りを塞ぐ巨大な魔物の姿が、そこにはあった。
せめて斧を持って来るんだったと後悔しても遅く、俺は直ぐに二人の元へと駆け出す。
「ゲハハハハ、見つけた! 見つけたぞ!! その後ろにいるのがタツロウだな。青の魔王様の命により、お前を連れ帰る」
青の魔王という名に第二の刺客だと理解した俺は、まさかたった一晩で、刺客を送って来た周到さに苦虫を噛み潰したような顔をしてしまう。
後ろ足で立ち上がり、その巨躯をまざまざと見せつける。何処から現れたのかも気になるが、何よりその姿の奇妙さに目を奪われる。
一見、亀をそのまま巨大化させたような魔物であるが何故か強羅は背中ではなく腹側に背負っていて妊婦のよう。
「アリス、逃げなさい!」
叫びながらアリステリアの元に駆け寄る俺の隣を人影が通りすぎた。
「ちっ、めんどくせぇ!」
腰から抜いた長剣を両手で持ったアラキであった。
俺を追い抜き、アリステリアと熊五郎より前に出ると亀の魔物へ怯むことなく向かって行く。
ガキンッ! と、金属のぶつかる音がする。アラキの剣が亀の魔物の腹の強羅へとぶつかり合った音であった。
剣にも強羅にもヒビはなく、痺れたのであろう手を振りながらアラキは少し距離を取る。
「くそ硬ぇ!」
「ゲハハハハ! そんな、なまくら、このカメ・レオンに通じるものか!」
下品な笑いのカメ・レオンの声。それに負けじと大きな舌打ちがアラキから聴こえてくる。
その時、カメ・レオンは自らの手足と伸びる長い首を強羅にしまうと、強羅を高速で自転させながらアラキやアリステリア目指して突進して襲いかかる。
その回転は、辺りの建物を風圧で壊していくほどのものだった。
「アリス!」
俺の声が聞こえないのかアリステリアはピクリとも動かない。既に駆け寄っていた俺であったが間に合わない、と思わず閉じそうになってしまう目を何とか堪える。
「ヘキサグラム!!」
カメ・レオンとアリステリアの間に割り込むように六角形の虹色に輝く巨大な壁が立ち塞がった。
初めて見る上級魔法に俺は呆気に取られるが、直ぐに声のした方へ振り返ると、そこには両手の掌をこちらに向けて立つサラの姿が目に飛び込んで来た。
回転しながら突進してきたカメ・レオンと虹色に輝く六角形の壁がドーーンと大きな音を立ててぶつかる。
虹色の欠片を振り撒きながら壁は徐々にカメ・レオンの回転を緩めて行き、やがて突進を止めることに成功した。
悔しかったのだろう。カメ・レオンは再び強羅から手足と首を出すと力づくに虹色の壁を殴り続けた。
「俺も本気でやってやんよ!」
「駄目よ、アラキ! 街に被害が出るわ!!」
剣を握った両手に力を込めたアラキをサラは叫んで止めたのは意外であった。
さっき、強羅に対して傷をつけられなかったアラキの力は、もしかしたらこの程度では無いのかと俺は二人を見比べ、動けずにいた。
背筋に寒気が走る。
二人に気を取られていてアリステリアから目を離してしまっていたのだ。その間にアリステリアと熊五郎はカメ・レオンに立ち向かう。
「やめろ、アリス!!」
熊五郎を駆り、虹色の壁を迂回して行くアリステリアを止める事が出来なかった。
アラキも反応して俺より早く動き出していたが、間に合わない。
以前襲って来たカルヴァンや熊五郎とは比べ物にならないカメ・レオンの巨体。アリステリアなどそのまま押し潰されてしまいそうなほどの体格差。
アリステリアは跨がっていた熊五郎の背に立ち、右手を大きく振りかぶる。
「ゲハハハハ!! そんな小粒の体で何をするつもりだ? このカメ・レオン。タツロウとかいうそこの男は連れ帰るように命じられているが、邪魔をする者は殺せと言われている!! 死ねぇ!!」
カメ・レオンの大きな拳が熊五郎に向かって振り下ろされる。しかし、熊五郎はサッと避け、アリステリアは熊五郎の背からカメ・レオンの懐に向かって飛び込んだ。
まさか小さな少女が建物の二階の屋根付近までジャンプしてくるとは思わなかったのかカメ・レオンは面を食らった顔をしていたが、自分に向けてられる小さな紅葉のような手に思わず鼻息をフンヌと吐き出した。
「あ、あれは!?」
思わず、俺は叫ぶ。
「アリスちゃ~~~んライトニング張り手~~~です!」
アリステリアの右手が剣をも弾く硬さの強羅に触れる。
一見、ただの子供の掌底に過ぎない。
誰もがそう思った瞬間、硬いはずの強羅にアリステリアの右手付近から大きな亀裂が幾つも入る。
当然と思っていたのは俺と熊五郎のみ。
『アリスちゃんライトニング張り手』はアリステリアの得意技。
命名、俺。
因みにライトニングは光とかではなく、右という意味だ。
ガラスが割れるように強羅の破片は辺りに飛び散り、周囲の建物へ被害を拡大させてしまう。
だから、俺は止めたかったのだ。
子供のしたことは親の責任。どうしようと頭を抱える。
しかし、アリステリアの張り手の威力はそれだけに留めず、踏ん張ろうとしたカメ・レオンの脚を浮かして、遥か後方へと吹き飛ばした。
通りに沿って地面を弾かれるように転がっていくカメ・レオンは、サーシャ村の出入口付近の壁にぶつかるまで止まることはなかった。
これで終わるはずはない。
上手く熊五郎の背に落ちてきたアリステリアは「追いかけるです」と指示して、再び走り出す。
アリステリアは青の魔王という言葉を聞いてから、怒り心頭であった。
「ちっ! ぼさっとすんな、行くぞ!」
いつの間にか足を止めていた俺にアラキが声をかける。サラに後ろから肩を叩かれ、ハッと気づいた俺もサラと共に追いかけた。
「アリスちゃ~~~んうっちゃり~~です」
カメ・レオンの強羅の突起に手をかけたアリステリアは、そのまま目を回しているカメ・レオンを小さな体で持ち上げると、そのまま体を捻り壁の外へと放り投げた。
「アラキ! 今なら!!」
「ああ、逃がすかよ!」
サラの掛け声に素早い反応を見せたアラキは、壊れた壁から外に出てカメ・レオンを追いかける。俺はアリステリアを後ろから抱き締めてそのまま壊れた壁から外の様子を伺う。
「圧殺しな! ブラストプレス!!」
その時俺が見たのは、アリステリアに負けない程のジャンプ力を見せたアラキの姿であった。片手で持った剣からは光が伸びたかと思うと光が大きく扇状に広がる。
にたりと白い歯を見せ大きく笑ったアラキの顔は、見知らぬ相手であれば誰もが道を譲りそうなほど怖く、扇状に広がった光をカメ・レオン目掛けて叩きつけた。
地面がカメ・レオンごと大きく凹む。
その被害の広さに街中で使わなかった理由が何となくわかった。
街中で使えば、通りを跨いで店や家屋に被害は出るし、更に壊れた勢いで他の家屋にまで被害が及ぶからサラは止めたのだろう。
剣が元に戻ったあとには、自慢の硬い強羅ごとひしゃげた見るも無惨なカメ・レオンの姿が残っていた。
強羅は割れ、押し潰されたカメ・レオンを遠目に見ながら俺は、一刻も早くこのサーシャ村を出るべきだひしひしと感じていた。
スアレスの家に戻った俺達は、スアレスから特に責められる事は無かったが、気まずさもあり、外に漏れないように洗いざらいアラキ達二人も交えて話を始めた。
昨日突然青の魔王の部下と名乗る魔物から襲われた事。
そしてカメ・レオンも同様で更に次の刺客も来る可能性がある事。
何より狙われる覚えが無い事。
暫く黙って聞いていたアラキが口を開く。
「そこのガキを狙うならわかっけどよぉ……というより、このガキ一体なんなんだぁ?」
サラもスアレスも同意するように頷く。アリステリアの強さがこの世界では普通だと、親父さんから聞かされ思い込んでいた俺には、この時まだ三人が何を言っているか分からず、ただ呆然としていた。
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※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
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