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第一章 最強の娘? いえいえ、娘が最強です
アリステリアの初めて友達
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食事処に入ると四人掛けのテーブルに子供用の椅子を用意してもらって席に着くと、厨房らしき所から愛想の良くない男性が注文を取りに来た。
「忙しい昼時も終わったってのに……」
愚痴を吐き散らす男性にちょっと不快感を覚える。しかし、それを遮ったのは男性を「おとさん」と呼ぶ女の子だった。
年齢はアリステリアとそう変わらないくらい。子供用のエプロンを片手に男性を厨房の方に戻すと、てくてくとエプロンをつけながら此方に戻って来た。
「いらっしゃいませ、ご注文お伺いします」
実にハキハキと話す子だった。エプロンにワンポイントで描かれた黄色のヒヨコと同じ髪留めをしたツインテールの薄桃色の髪をした女の子が、にこりと笑うと八重歯が見えた。
「じゃあ、このワニザウルスの肉盛り丼を四つ。それと、小分けに出来る器も一つくれないか」
メニューの一番上に書かれた本日のサービスにあった料理を注文すると、女の子はペコリと頭を下げて厨房へ向かった。
「アリスと同じ年くらいかな。もしかしたら友達になれるかもな」
「お友達、です?」
同年代の子と遊ぶという感覚のなかったアリステリアは少しだけ不思議そうに此方を見ると、すぐに表情がパーっと晴れていった。
俺達が少し談笑していると、あの女の子が料理を運んで来たのだが、いっぺんに持ちすぎたようで、今にも器ごと、ひっくり返しそうで危なっかしい。
何せ四人分のお皿はトレイからはみ出しているにも関わらず片手で持ち、残った片手で肉丸々が載った重そうな大皿を持っているのだ。
それを見たアリステリアは子供用の椅子から降りると女の子の方へ一目散に向かい「手伝うです」と、女の子から大皿を奪うと、女の子は一瞬「えっ? えっ?」と困惑するが、アリステリアは軽々持ち上げ俺達のテーブルに戻って来た。
「あ、あの……ありがとう」
「全然いいです! それよりアリスちゃんとお友達になってください」
アリステリアはこれでもかというくらいの笑顔を見せ、女の子に向かって手を差し出す。
「え、えっと……」
女の子は突然の事で困惑していて、俺が助け船を出してやることに。
「この子は俺の娘でアリステリアと言うんだ。近々この街の学校に通わせるつもりなんだけど、良かったら友達になってあげて欲しい」
女の子はこれだけ言うと流石に理解したらしく、一度自分のエプロンで手を拭き、アリステリアと握手する。
「わ、わたしリリカ。アリスちゃん、よろしく。アリスちゃんもマリアナ学園に通うの?」
アリステリアが俺を見て首を傾げると、思わず俺もサラを見て首を傾げた。
「多分、そうなるわね。もう一つ学校はあるけど、そちらは富裕層地区だからね。ねぇ、リリカちゃんはマリアナ学園の何年生?」
「二年生です」
「じゃあ、アリスちゃんより一つお姉さんね」
サラとリリカの会話に入れなかった俺が後でサラに聞くとマリアナ学園は六年制であり、七歳のアリステリアは一年生の中途入学になるとの事だった。
「アリスちゃん、わたしね、大きくなったら調理師になるのが夢なの。ほら、見て」
リリカは屈託の無い笑顔で見せてきたのはギフトカードである。
「見ていいの?」
俺が尋ねるとコクりと小さく頷くので、ギフトカードの黒い部分に指をなぞる。
“調理師・中”
それがリリカに与えられた役割であった。俺は「ああ、調理師の役割だから調理師になりたいのだろうな」程度にしか思っておらず、顔を上げるとサラやアラキは言葉を失っていた。
「どうした?」
「“調理師・中”ってすごく稀よ。流石に“調理師・上”とは比べ物にならないけど、これなら王室御用達の店や上手くコネがあれば王室の厨房でも働けるわよ」
それほどのものかと感心していると、厨房から先ほどの男性とは別の「リリカ~」と呼ぶ声がして、若い男が現れた。
「っと、失礼。お客さんがいたのか? って、ちょっと待て! その料理、まさか親父が作ったのか!?」
慌てて男性がリリカに詰め寄るも、リリカは至って冷静で首を横に振る。
「大丈夫。味付けはリリカがしたよ」
それを聞いて若い男はホッと胸を撫で下ろしたようだった。
「失礼しました。俺はリリカの兄でサンクと言います。少し昼休憩をして抜けていまして。もしかして親父が何か粗相をしませんでしたか?」
俺達は顔を見合せ、言うかどうか悩んだが、少し愛想が無かったとだけ伝えた。
「すいません。親父も昔はああじゃなかったのですが……。妹が自分より上の“調理師・中”だと知ってから、真面目に働かなくなりまして……」
サンクは俺達に向かって何度も謝罪を述べた。
親としての威厳を保てなくなり不貞腐れたのだろうが、同じ親として情けない奴だと思いつつも、少しだけ理解は出来る。
何せ、俺はアリステリアに強さも可愛さも勝てないのだから。
「っと、いけない。料理が冷めてしまいます。どうぞお召し上がりを」
サンクに促され俺達は出された料理を頂くことにした。
ワニザウルスの肉盛り丼は、皿に入った一口大の団子の上に大皿に盛られたワニザウルスの肉を取り分けていただくらしく、一度四人分に切り分けた後、俺の皿からアリステリアの分を分けた。
「んー! パパ、すごく美味しいです!」
少し筋張った所のある肉ではあるが、そこはトロットロに煮込まれており、甘辛いタレがまた食欲をそそる。
しばらく俺達は無言のまま食事に集中する羽目になっていた。
「そう言えばお兄さんは、彼女に嫉妬しないのですか?」
サラが稀だと言っていたので俺はサンクも恐らく“調理師・下”なのだろうと思い聞いてみると、彼は笑いながら「うちの妹は料理の天才で可愛いですから」と兄バカ全開だった。
最強可愛いのはうちのアリステリアですからと内心俺も親バカ全開だったのは内緒だ。
一方、ネネカの事だが今後のことを話し合う。
熊五郎のこともあって、旦那がネネカに近づく事はないだろうが、仕事もなく、ギフトカードも無いため、中々雇ってくれる所もないだろうとアラキは話す。
「まぁ、ギフトカードはバンクランク聖堂に行きゃあ再発行は出来るけどよぉ。恐らく数ヶ月はかかんぜ」
この後、俺とアリステリアの開能の儀のためバンクランク聖堂に向かうのだが、手続きはその際行ったとしても、再発行には長時間かかるらしい。
「あの、少し良いですか」
話に割って入って来たのはサンクだった。
「うちで給仕として働くのはどうでしょう? たいした給料は払えませんが……」
「お、それいいわね。私達も暫くはこの上の宿にいるし、万一旦那と鉢合わせても大丈夫よ」
話はトントン拍子に決まり、ネネカはサンクのお世話になることになる。
家にいる場合は、俺がいるし、これから決まる仕事で出かけても熊五郎を預かってもらえば護衛にもなる。
問題はネネカが熊五郎を見て気を失わないかくらい。
「それじゃ今からバンクランク聖堂に向かうか。早く役割がわかって俺も仕事を探さないと」
俺達は支払いを済ませ、店から出ようとするとサンクに呼び止められた。
「これ、妹が入学するときに貰ったマリアナ学園の案内のパンフレットです。良かったらどうぞ」
ありがたく受け取り早速パンフレットを開き、ある箇所を見て俺は石になってしまった。
「入学に四十ピール? 授業料に五十ピール?」
それは俺が長年貯めに貯めたお金を殆んどつぎ込む必要があった。
「忙しい昼時も終わったってのに……」
愚痴を吐き散らす男性にちょっと不快感を覚える。しかし、それを遮ったのは男性を「おとさん」と呼ぶ女の子だった。
年齢はアリステリアとそう変わらないくらい。子供用のエプロンを片手に男性を厨房の方に戻すと、てくてくとエプロンをつけながら此方に戻って来た。
「いらっしゃいませ、ご注文お伺いします」
実にハキハキと話す子だった。エプロンにワンポイントで描かれた黄色のヒヨコと同じ髪留めをしたツインテールの薄桃色の髪をした女の子が、にこりと笑うと八重歯が見えた。
「じゃあ、このワニザウルスの肉盛り丼を四つ。それと、小分けに出来る器も一つくれないか」
メニューの一番上に書かれた本日のサービスにあった料理を注文すると、女の子はペコリと頭を下げて厨房へ向かった。
「アリスと同じ年くらいかな。もしかしたら友達になれるかもな」
「お友達、です?」
同年代の子と遊ぶという感覚のなかったアリステリアは少しだけ不思議そうに此方を見ると、すぐに表情がパーっと晴れていった。
俺達が少し談笑していると、あの女の子が料理を運んで来たのだが、いっぺんに持ちすぎたようで、今にも器ごと、ひっくり返しそうで危なっかしい。
何せ四人分のお皿はトレイからはみ出しているにも関わらず片手で持ち、残った片手で肉丸々が載った重そうな大皿を持っているのだ。
それを見たアリステリアは子供用の椅子から降りると女の子の方へ一目散に向かい「手伝うです」と、女の子から大皿を奪うと、女の子は一瞬「えっ? えっ?」と困惑するが、アリステリアは軽々持ち上げ俺達のテーブルに戻って来た。
「あ、あの……ありがとう」
「全然いいです! それよりアリスちゃんとお友達になってください」
アリステリアはこれでもかというくらいの笑顔を見せ、女の子に向かって手を差し出す。
「え、えっと……」
女の子は突然の事で困惑していて、俺が助け船を出してやることに。
「この子は俺の娘でアリステリアと言うんだ。近々この街の学校に通わせるつもりなんだけど、良かったら友達になってあげて欲しい」
女の子はこれだけ言うと流石に理解したらしく、一度自分のエプロンで手を拭き、アリステリアと握手する。
「わ、わたしリリカ。アリスちゃん、よろしく。アリスちゃんもマリアナ学園に通うの?」
アリステリアが俺を見て首を傾げると、思わず俺もサラを見て首を傾げた。
「多分、そうなるわね。もう一つ学校はあるけど、そちらは富裕層地区だからね。ねぇ、リリカちゃんはマリアナ学園の何年生?」
「二年生です」
「じゃあ、アリスちゃんより一つお姉さんね」
サラとリリカの会話に入れなかった俺が後でサラに聞くとマリアナ学園は六年制であり、七歳のアリステリアは一年生の中途入学になるとの事だった。
「アリスちゃん、わたしね、大きくなったら調理師になるのが夢なの。ほら、見て」
リリカは屈託の無い笑顔で見せてきたのはギフトカードである。
「見ていいの?」
俺が尋ねるとコクりと小さく頷くので、ギフトカードの黒い部分に指をなぞる。
“調理師・中”
それがリリカに与えられた役割であった。俺は「ああ、調理師の役割だから調理師になりたいのだろうな」程度にしか思っておらず、顔を上げるとサラやアラキは言葉を失っていた。
「どうした?」
「“調理師・中”ってすごく稀よ。流石に“調理師・上”とは比べ物にならないけど、これなら王室御用達の店や上手くコネがあれば王室の厨房でも働けるわよ」
それほどのものかと感心していると、厨房から先ほどの男性とは別の「リリカ~」と呼ぶ声がして、若い男が現れた。
「っと、失礼。お客さんがいたのか? って、ちょっと待て! その料理、まさか親父が作ったのか!?」
慌てて男性がリリカに詰め寄るも、リリカは至って冷静で首を横に振る。
「大丈夫。味付けはリリカがしたよ」
それを聞いて若い男はホッと胸を撫で下ろしたようだった。
「失礼しました。俺はリリカの兄でサンクと言います。少し昼休憩をして抜けていまして。もしかして親父が何か粗相をしませんでしたか?」
俺達は顔を見合せ、言うかどうか悩んだが、少し愛想が無かったとだけ伝えた。
「すいません。親父も昔はああじゃなかったのですが……。妹が自分より上の“調理師・中”だと知ってから、真面目に働かなくなりまして……」
サンクは俺達に向かって何度も謝罪を述べた。
親としての威厳を保てなくなり不貞腐れたのだろうが、同じ親として情けない奴だと思いつつも、少しだけ理解は出来る。
何せ、俺はアリステリアに強さも可愛さも勝てないのだから。
「っと、いけない。料理が冷めてしまいます。どうぞお召し上がりを」
サンクに促され俺達は出された料理を頂くことにした。
ワニザウルスの肉盛り丼は、皿に入った一口大の団子の上に大皿に盛られたワニザウルスの肉を取り分けていただくらしく、一度四人分に切り分けた後、俺の皿からアリステリアの分を分けた。
「んー! パパ、すごく美味しいです!」
少し筋張った所のある肉ではあるが、そこはトロットロに煮込まれており、甘辛いタレがまた食欲をそそる。
しばらく俺達は無言のまま食事に集中する羽目になっていた。
「そう言えばお兄さんは、彼女に嫉妬しないのですか?」
サラが稀だと言っていたので俺はサンクも恐らく“調理師・下”なのだろうと思い聞いてみると、彼は笑いながら「うちの妹は料理の天才で可愛いですから」と兄バカ全開だった。
最強可愛いのはうちのアリステリアですからと内心俺も親バカ全開だったのは内緒だ。
一方、ネネカの事だが今後のことを話し合う。
熊五郎のこともあって、旦那がネネカに近づく事はないだろうが、仕事もなく、ギフトカードも無いため、中々雇ってくれる所もないだろうとアラキは話す。
「まぁ、ギフトカードはバンクランク聖堂に行きゃあ再発行は出来るけどよぉ。恐らく数ヶ月はかかんぜ」
この後、俺とアリステリアの開能の儀のためバンクランク聖堂に向かうのだが、手続きはその際行ったとしても、再発行には長時間かかるらしい。
「あの、少し良いですか」
話に割って入って来たのはサンクだった。
「うちで給仕として働くのはどうでしょう? たいした給料は払えませんが……」
「お、それいいわね。私達も暫くはこの上の宿にいるし、万一旦那と鉢合わせても大丈夫よ」
話はトントン拍子に決まり、ネネカはサンクのお世話になることになる。
家にいる場合は、俺がいるし、これから決まる仕事で出かけても熊五郎を預かってもらえば護衛にもなる。
問題はネネカが熊五郎を見て気を失わないかくらい。
「それじゃ今からバンクランク聖堂に向かうか。早く役割がわかって俺も仕事を探さないと」
俺達は支払いを済ませ、店から出ようとするとサンクに呼び止められた。
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