この世界の幼女は最強ですか?~いいえ、それはあなたの娘だけです~

怪ジーン

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第一章 最強の娘? いえいえ、娘が最強です

アリステリア、ご入学

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 一足先に戻った俺達は、日常へと戻る。

 テレーヌ市に戻って来た際に、アラキと会うがサラの両親については然程興味が無さそうであった。

「へっ! お貴族様なんてあんなもんだろうよ。サラがおかしいのさ!」

 と鼻で笑っていた。

 やり残しているのは、俺の仕事とアリステリアの入学。ということで、その足で俺はマリアナ学園に寄ることにした。

「貧困層側の学校と聞いていたからもっと建物もボロで校庭も狭いと思っていたが、これは……」

 他の貧困地区と同様、木造の建物だが外観はむしろ趣深いものがある。年代と共に黒ずみ始めた建物は、幾度となく補修がなされており、かなり綺麗に扱われている事が外からでもハッキリと見えた。

 校庭も六年制で人数が多いからか、かなりの広さを誇っている。

「手続きは……と」

 校舎は三階建てだが、かなり横長に作られており、出入口も複数ある。困っていると恐らく教師かと思われる女性を見つけ、俺は声をかけた。

「はい? もしかして父兄の方ですか?」

 くるりと振り返った女性は腰まで伸びたサラサラの紫髪を靡かせる。薄いピンク色のブラウスに黒のタイトスカートと、堅苦しくもなくかといってラフ過ぎない格好をしており、此方を見てニッコリと微笑んだ。

「はい。あ、いえ。正確にはまだなのですが、この子の入学の手続きを……」
「それなら此方です。ご案内しますわ」

 教科書らしき本を胸元で大事そうに抱えた女性は、先導して俺を校舎内に招き入れると、かなり長い廊下が奥まで伸びており、左側にはいくつもの教室の扉が並んでいた。

 女性が「おいくつですか?」と尋ねて来たので、「あー、多分、二十七歳くらいだと」と答えると女性は口元に手をあててクスクスと笑い出す。
ちょっとタレ目がちで輝くライトグリーンの瞳を、少し細め「お子様のご年齢です」と言われてしまった。

 恥ずかしさと戸惑いが同居する。

「すいませんっ、七歳です!」

 慌てて訂正したが今俺の顔は真っ赤になっているに違いない。女性は最後に一度だけクスッと笑うと「大丈夫ですよ」と、軽く頭を傾けた。

「七歳だと、途中入学ですね。お子様、読み書きの方は?」
「ええと……実は自分、『迷い子』でして。アリスに殆んど教えることが出来なくて。名前くらいなら」
「そうですか。でも放課後、少し残ってお勉強すれば追い付けますから。あなた、お名前は?」
「アリスちゃんです!」

 アリステリアは女性に向かってハッキリと受け答えをする。「良くできました」とアリステリアの頭を撫でながら女性は柔らかな笑顔を見せた。

「あ、ここです。中に入って少しお待ちください」

 応接室と書かれた扉を開き、中に入ると足の低いテーブルを挟んで黒いソファーが置かれていた。
下座のソファーに自然と座り、隣にアリステリアを座らせる。
決して高いソファーというわけではないのだろうが、座り心地は悪くない。

「待たせたね」

 入って来たのは先ほどの女性と、その女性より背の低い丸顔の男性。丸いのは顔だけでなく、体格そのものも丸い。

 男性は少し不気味なほど常にニコニコと笑みを崩さない。俺が立ち上がろうとするのを制して、対面のソファーに女性と並んで座った。

「初めまして、学園長のマルイです。隣の人は一年の担任であるルナ先生です」
「先ほどはどうも。恐らく私が担任になると思いますので。宜しくお願いします」

 学園長と名乗る男性と、ルナと名乗った先ほどの女性が頭を下げると、俺もつられて頭を下げた。

「アリスちゃんの先生です?」
「そうよ。よろしくね」

 アリステリアの表情が明るくなったのが横目でも分かった。多少緊張でもしていたのかもしれない。

「それでは入学手続きは以上になります。他に聞きたい事はありますか?」

 書類を書き終えた俺は、学園長と担任であるルナ先生にアリステリアの役割について話をした。

「“最強娘”……ですか? 変わった役割ですね」
「はい。それ故、アリステリアに特別扱いではないですが、出来れば目を向けておいて欲しいのです。他のお子さんを怪我させる訳にはいきませんし」

 当初はアリステリアの同年代のお子様でも同等の力を持っていると思っていたが、ここ数日の間にそれは否定されてしまった。
只の喧嘩でも相手に重傷を負わしかねな。

「それでは万一我々の手に負えない時はお父様にご連絡するしかないのですね」

 少し不安そうな顔をしてルナ先生は悩み始めた。ただ、手がかかるというだけなら問題無かったようだが。

「アリスには言い聞かせますし、感情が昂らない限りは大丈夫です。一応、予防策のようなものは無くはないのですが……」

 俺以外にアリステリアを落ち着かせる事が出来る人物のことを伝えたーー正確には動物なのだが。

「熊ですか!? 熊、くま……う~ん……」

 細い眉をひそめ、ルナ先生は益々深く悩み始める。そうなると今度はアリステリアが「アリスちゃん、学校行けないですか?」と暗く落ち込んでしまう。

 重苦しい空気の中、今まで黙っていた学園長が口を開いた。

「ルナ先生、他の子供達にも協力してもらいましょう。なぁに、良い子ばかりです。きっと大丈夫。何とかなるなる」
「学園長が仰るなら……お父様! 安心してください。私も全面的に協力しますから! アリスちゃんに快適な学園生活を送って貰うために!」

 テーブルに体を乗り出して俺の手を力強く握ってくるルナ先生の手は柔らかく温かい、というのは余談である。

 学園長の判断とルナ先生の芽生えた熱意のお陰でアリステリアはマナリア学園に入学することに相成った。





 その日は、リリカの店で入学祝と銘打つて食事をすることに。リリカもアリステリアの入学を聞いて二人で喜んでいた。
そして教科書などは配布されるものの筆記用具だけは必要だと、リリカからお古で悪いけどと羽ペンとインクをアリステリアはプレゼントされた。

 帰宅した後は、それはもうアリステリアは興奮しており、新たに出来るだろう友達に思いを馳せる。

「パパ、お友達たくさんできるです?」
「ああ、アリスならたくさん出来るさ」

 その夜はそんな会話をしながら眠りについた。

 翌朝、入学初日。

「どうして熊五郎はつれてけないですか!?」

 アリステリアを説得する為に、余裕を持っていた時間を失い、初日から遅刻ギリギリと大変だった。
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