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閑話
ルスカside 幼女、学校にいく その肆
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窓の外は静寂と暗闇に包まれて、部屋の中には、ぼんやりとベッドに眠る人影がわかる程度をランプが照らす。
一つの人影がベッドの上で身体を起こし、眠い目を擦りながら正座を崩したような態勢で座っている。
「トイレ……」
辺りをキョロキョロと伺う人影は、自分が見覚えのない場所で眠っている事に気づく。
自分の隣には、すやすやと眠るセリーが。
「セリー、起きて欲しいのじゃ」
「う……ん、どうしたのぉ? ルスカちゃん」
「トイレ……」
ルスカは隣で眠るセリーを揺り起こすと、股の辺りをモジモジと動かしている。
「トイレはぁ、部屋出て右に二つ目の扉……だよぉ」
トイレの場所を教えると、セリーは再び眠りにつく。
万が一の大惨事に備えてついてきて欲しかったが、また起こしている余裕はルスカには無い。
ベッドから這い降りると、股の辺りを押さえながら部屋を出ていった。
廊下は、窓の外とは違い各部屋の前に飾られたランプの灯りで扉を照らしている。
「急ぐのじゃ、急ぐのじゃ」
セリーに教えられた通りに、右に進み二つ目の扉を開き駆け込む。
「ま、間に合ったのじゃ」
間一髪間に合い、トイレから出て来たルスカは、すっきりした顔をしていた。
「ふん! 見たか、アカツキめ! ワシはおねしょなどせんのじゃ!」
誰も居ない廊下の真ん中で胸を張るルスカ。もちろん返事があるわけでもなく、すぐに静寂に包まれ空しくなる。
「はぁ……アカツキ、何してるのじゃ……」
廊下の窓から外を眺めると、首都とは思えぬ静けさに、しんみりとした表情を、闇に覆われた空に向ける。
少し風に当たりたくなり窓の鍵に手を伸ばすが、ルスカの背丈では全く届かない。
転落防止の為にかなり高く取り付けられていた。
「ぬうう……と、届かぬのじゃ」
窓を開けるのを諦めたルスカは、所々に見える家の灯りを眺めていると「アカツキ……」と一言呟き、鼻をすする。
しばらく眺めていたが、ルスカは腕で目を擦ると部屋へと戻って行った。
◇◇◇
野鳥の囀りと共に、部屋の中を照らす柔らかな朝日。
ハリーは一つ大きく体を伸ばして体を起こす。
「おい、起きろ。ユーリ、ユーキ」
ハリーが隣のベッドで仲良く寝ているユーキ達を起こすと、丁度セリーも目を覚ます。
ハリーがセリーと挨拶を交わし、セリーの隣で寝ているルスカを起こそうと布団を捲ると、お尻を突き出した状態で仰向けに寝ている。
ネグリジェの型の寝間着は、はだけパンツの熊ちゃん印が丸見えになっていた。
「お、お、起きろよ、ルスカ!」
「ん……ワズ大公……食べるのじゃ……むにゃ」
一瞬固まった自分をセリーやユーキがジト目で見てくるものだから顔を赤くしたハリーは、慌てて布団を掛けて、そっぽを向く。
代わりにセリーがルスカを起こそうと体を揺する。
「ルスカちゃん、ルスカちゃん。朝だよぉ。ワズ大公は美味しくないよぉ」
「う……ん、ワズ大公……不味いのじゃ……むにゃ」
果たしてルスカはどんな夢を見ているのか? 起きたルスカに聞いても覚えておらず、謎のままだった。
◇◇◇
顔を洗い、初日と違い青い短パンに白いシャツとアグレッシブな服装に着替え、長い藍白の髪もセリーとユーキに編み込みしてもらい、アップにする。
本日は社会見学として、城に行く。校庭に全生徒が集められ、クラス毎に出発し始める。
「よーし、ワズ大公を倒しに行くのじゃー!」
「「「「おー!」」」」
ルスカの掛け声に何故かノリノリのハリーやセリー達。
リロ先生だけは困った顔をしている。
「あややや、た、た、倒しちゃだめですよ~。先生、クビになっちゃいます」
リロ先生の話を聞いていないルスカを先頭にリンドウの街のクラスは、城に向かって出発した。
◇◇◇
意気揚々と大幅で先頭を歩くルスカに、城壁の大きさに興味深く見つめるハリー達。
セリーも一度来ているが、城に入るのに胸が高鳴っていた。
もしかしたら、パクに逢えるかもと。
一番最後についていくリロ先生は、落ち着きなくキョロキョロしながら、その長身を折り畳み足は震えていた。
「ちょっと、待て! 何をそんなにキョロキョロしている! 怪しいな!」
「あややややや、せ、せ、先生は先生です。あ、あ、怪しくなんかないですよ」
案の定、リロ先生は城の入口で兵士の止められ、半泣きになる。先に入っていたセリーが慌てて戻り、説明をして解放されると、セリーの両肩に掴まりながらルスカ達の元に連れていかれた。
◇◇◇
「ルスカ……ちゃん?」
城の中庭を見て回っている時に、声を掛けられ振り返ると、そこに居たのは弥生だった。
ルスカは、皆をその場に置き弥生の元へと駆け寄っていく。
「おお! ヤヨイーなのじゃ。どうじゃ? 体調は?」
「今は大丈夫……」
「うむ、あと少しの辛抱じゃ。精神があと少し回復すれば、ワシの魔法で一気に回復出来るのじゃ。そうすれば幻覚や依存に負けぬ」
弥生の表情が、ルスカの言葉で少し明るくなる。
それは以前の太陽の様に明るい表情を取り戻しつつあった。
「それじゃ、また様子見にくるのじゃ」
「あ……あのアカツキくんは?」
皆のところに戻ろうとするルスカは、呼び止められると物凄く顔を歪ませ嫌そうな顔を、弥生に向ける。
「アカツキだ~? アカツキをアカツキと呼んで良いのはワシだけじゃ!!」
そう言い残し、ルスカは皆の所へと戻っていった。
「えー? ナックも呼んでるけど……それはいいの……?」
一人残された弥生は腑に落ちない顔で呟いた。
◇◇◇
「お待たせなのじゃ」
セリー達の元へと戻ってきたルスカは、どこか満足そうな表情をしていた。
「あや、ルスカちゃん。勝手にうろちょろしたら駄目です。せ、せ、先生クビになっちゃいます」
「はい! わかったのじゃ!」
珍しく元気よく返事をしたルスカに、リロ先生はホッとする。
ルスカが張り切っている事に気づかずに。
「ルスカちゃん、嬉しそうだねぇ」
「うむ。楽しみなのじゃ、これからが!」
「俺、城に入るの初めてだ!」
「私も」
「僕も」
「よーし、突入じゃー!」
ルスカを先頭に皆走り出して、城に入っていく。
「あややや、せ、せ、先生を置いていかないでくださーい!」
城に出入りするメイドや兵士にペコペコ頭を下げながら、リロ先生も城に入っていった。
◇◇◇
ルスカ達を掴まえなくてはとリロ先生は心配するが、ルスカ達は城の入口の大広間に突っ立っていた。
「あや、皆駄目ですよ。け、け、見学は一階だけです」
セリー達はリロ先生に向かって返事をするが、ルスカはある一点を見つめて動かない。
「リロ先生、あれルスカちゃんに似てるねぇ」
「あや、そうですね。似てますね」
セリーがルスカの見ている先を再び見ると、そこには大広間の真ん中にある大階段の上がった先、一階の大広間のあらゆる場所から見えるように掛けられた──馬鹿デカい、ルスカの肖像画。
「綺麗だ……」
ハリーが肖像画を見て思わず呟く。
「おお、少年。わかるか!」
立派な顎髭を触りながら中年の男性がハリーに声をかける。
身なりから相当身分の高い人だとわかり、リロ先生は失礼が無いようにと慌てふためく。
「どうだ、素晴らしい絵だろ! 少年、絵本はもう貰ったか? 両方とも我の自慢なのだ! ワハハハ!」
男性は、よっぽど嬉しいのか胸を張り高笑いする。
「ほう……ワシの許可を得ずにか?」
男性は高笑いを止めると、顔が蒼白になっていく。
今では、立派な顎髭がみすぼらしく垂れ下がっている様にも見えるくらいに。
「ワ~ズ~大公~~」
一歩前に出ると、ワズ大公は一歩退く。顔色が蒼白になっていくワズ大公に対して、ルスカの顔は赤く染まり、その形相は鬼の様にも見える。
「ワズ大公!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
ルスカよりいち早く逃げ出したワズ大公は、大階段を二段飛ばしで駆け上がっていく。
ルスカもそのままワズ大公を追い、二階へと上がって行った。
「あややや、ど、ど、どうしましょう。二階には上がれないし、ルスカちゃんは止めないといけないし」
リロ先生は、二階へ上がろうか止めようかとその場をうろちょろするばかりだ。
セリー達は、そんなリロ先生を不安げに見ている。クビかなぁと。
◇◇◇
ワズ大公は侮っていた。自分とルスカでは、体格も身体能力も違うと。
それは間違いではないのだが、ルスカには魔法がある。
既に三階へと上がっていたワズ大公に対して、二階と三階の間の踊り場までルスカは来ていた。
“フィジカルブースト”
“キュアファイン”
一瞬だけ身体能力を上げる“フィジカルブースト”と、その負担を回復する“キュアファイン”の二段構えである。
「うわあぁぁぁぁぁ!」
三階の廊下を必死に走るワズ大公。そのワズ大公の先の扉から出てきたのはリュミエール。
「叔父上、一体何ごと……」
リュミエールは、ワズ大公の後ろから鬼が追ってくるのを見つけるや否や、扉を閉め部屋に籠る。
「リュミエール! 開けてくれ! 我を入れるのだ!!」
「何言っているんですか!? だからあれほど止めるように言ったじゃないですか! 自業自得です! ほら、あなた達も扉を押さえなさい!」
リュミエールの部屋にいた使用人達も一緒になって扉を押さえる。
「わあぁぁ! き、来たぁぁ!!」
ワズ大公がリュミエールの部屋に入るのを諦め、再び逃げ出した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
リュミエールは扉の向こうで、ワズ大公の断末魔が聞こえ、これからのグルメールをどうするべきかと悩んでいた。
一つの人影がベッドの上で身体を起こし、眠い目を擦りながら正座を崩したような態勢で座っている。
「トイレ……」
辺りをキョロキョロと伺う人影は、自分が見覚えのない場所で眠っている事に気づく。
自分の隣には、すやすやと眠るセリーが。
「セリー、起きて欲しいのじゃ」
「う……ん、どうしたのぉ? ルスカちゃん」
「トイレ……」
ルスカは隣で眠るセリーを揺り起こすと、股の辺りをモジモジと動かしている。
「トイレはぁ、部屋出て右に二つ目の扉……だよぉ」
トイレの場所を教えると、セリーは再び眠りにつく。
万が一の大惨事に備えてついてきて欲しかったが、また起こしている余裕はルスカには無い。
ベッドから這い降りると、股の辺りを押さえながら部屋を出ていった。
廊下は、窓の外とは違い各部屋の前に飾られたランプの灯りで扉を照らしている。
「急ぐのじゃ、急ぐのじゃ」
セリーに教えられた通りに、右に進み二つ目の扉を開き駆け込む。
「ま、間に合ったのじゃ」
間一髪間に合い、トイレから出て来たルスカは、すっきりした顔をしていた。
「ふん! 見たか、アカツキめ! ワシはおねしょなどせんのじゃ!」
誰も居ない廊下の真ん中で胸を張るルスカ。もちろん返事があるわけでもなく、すぐに静寂に包まれ空しくなる。
「はぁ……アカツキ、何してるのじゃ……」
廊下の窓から外を眺めると、首都とは思えぬ静けさに、しんみりとした表情を、闇に覆われた空に向ける。
少し風に当たりたくなり窓の鍵に手を伸ばすが、ルスカの背丈では全く届かない。
転落防止の為にかなり高く取り付けられていた。
「ぬうう……と、届かぬのじゃ」
窓を開けるのを諦めたルスカは、所々に見える家の灯りを眺めていると「アカツキ……」と一言呟き、鼻をすする。
しばらく眺めていたが、ルスカは腕で目を擦ると部屋へと戻って行った。
◇◇◇
野鳥の囀りと共に、部屋の中を照らす柔らかな朝日。
ハリーは一つ大きく体を伸ばして体を起こす。
「おい、起きろ。ユーリ、ユーキ」
ハリーが隣のベッドで仲良く寝ているユーキ達を起こすと、丁度セリーも目を覚ます。
ハリーがセリーと挨拶を交わし、セリーの隣で寝ているルスカを起こそうと布団を捲ると、お尻を突き出した状態で仰向けに寝ている。
ネグリジェの型の寝間着は、はだけパンツの熊ちゃん印が丸見えになっていた。
「お、お、起きろよ、ルスカ!」
「ん……ワズ大公……食べるのじゃ……むにゃ」
一瞬固まった自分をセリーやユーキがジト目で見てくるものだから顔を赤くしたハリーは、慌てて布団を掛けて、そっぽを向く。
代わりにセリーがルスカを起こそうと体を揺する。
「ルスカちゃん、ルスカちゃん。朝だよぉ。ワズ大公は美味しくないよぉ」
「う……ん、ワズ大公……不味いのじゃ……むにゃ」
果たしてルスカはどんな夢を見ているのか? 起きたルスカに聞いても覚えておらず、謎のままだった。
◇◇◇
顔を洗い、初日と違い青い短パンに白いシャツとアグレッシブな服装に着替え、長い藍白の髪もセリーとユーキに編み込みしてもらい、アップにする。
本日は社会見学として、城に行く。校庭に全生徒が集められ、クラス毎に出発し始める。
「よーし、ワズ大公を倒しに行くのじゃー!」
「「「「おー!」」」」
ルスカの掛け声に何故かノリノリのハリーやセリー達。
リロ先生だけは困った顔をしている。
「あややや、た、た、倒しちゃだめですよ~。先生、クビになっちゃいます」
リロ先生の話を聞いていないルスカを先頭にリンドウの街のクラスは、城に向かって出発した。
◇◇◇
意気揚々と大幅で先頭を歩くルスカに、城壁の大きさに興味深く見つめるハリー達。
セリーも一度来ているが、城に入るのに胸が高鳴っていた。
もしかしたら、パクに逢えるかもと。
一番最後についていくリロ先生は、落ち着きなくキョロキョロしながら、その長身を折り畳み足は震えていた。
「ちょっと、待て! 何をそんなにキョロキョロしている! 怪しいな!」
「あややややや、せ、せ、先生は先生です。あ、あ、怪しくなんかないですよ」
案の定、リロ先生は城の入口で兵士の止められ、半泣きになる。先に入っていたセリーが慌てて戻り、説明をして解放されると、セリーの両肩に掴まりながらルスカ達の元に連れていかれた。
◇◇◇
「ルスカ……ちゃん?」
城の中庭を見て回っている時に、声を掛けられ振り返ると、そこに居たのは弥生だった。
ルスカは、皆をその場に置き弥生の元へと駆け寄っていく。
「おお! ヤヨイーなのじゃ。どうじゃ? 体調は?」
「今は大丈夫……」
「うむ、あと少しの辛抱じゃ。精神があと少し回復すれば、ワシの魔法で一気に回復出来るのじゃ。そうすれば幻覚や依存に負けぬ」
弥生の表情が、ルスカの言葉で少し明るくなる。
それは以前の太陽の様に明るい表情を取り戻しつつあった。
「それじゃ、また様子見にくるのじゃ」
「あ……あのアカツキくんは?」
皆のところに戻ろうとするルスカは、呼び止められると物凄く顔を歪ませ嫌そうな顔を、弥生に向ける。
「アカツキだ~? アカツキをアカツキと呼んで良いのはワシだけじゃ!!」
そう言い残し、ルスカは皆の所へと戻っていった。
「えー? ナックも呼んでるけど……それはいいの……?」
一人残された弥生は腑に落ちない顔で呟いた。
◇◇◇
「お待たせなのじゃ」
セリー達の元へと戻ってきたルスカは、どこか満足そうな表情をしていた。
「あや、ルスカちゃん。勝手にうろちょろしたら駄目です。せ、せ、先生クビになっちゃいます」
「はい! わかったのじゃ!」
珍しく元気よく返事をしたルスカに、リロ先生はホッとする。
ルスカが張り切っている事に気づかずに。
「ルスカちゃん、嬉しそうだねぇ」
「うむ。楽しみなのじゃ、これからが!」
「俺、城に入るの初めてだ!」
「私も」
「僕も」
「よーし、突入じゃー!」
ルスカを先頭に皆走り出して、城に入っていく。
「あややや、せ、せ、先生を置いていかないでくださーい!」
城に出入りするメイドや兵士にペコペコ頭を下げながら、リロ先生も城に入っていった。
◇◇◇
ルスカ達を掴まえなくてはとリロ先生は心配するが、ルスカ達は城の入口の大広間に突っ立っていた。
「あや、皆駄目ですよ。け、け、見学は一階だけです」
セリー達はリロ先生に向かって返事をするが、ルスカはある一点を見つめて動かない。
「リロ先生、あれルスカちゃんに似てるねぇ」
「あや、そうですね。似てますね」
セリーがルスカの見ている先を再び見ると、そこには大広間の真ん中にある大階段の上がった先、一階の大広間のあらゆる場所から見えるように掛けられた──馬鹿デカい、ルスカの肖像画。
「綺麗だ……」
ハリーが肖像画を見て思わず呟く。
「おお、少年。わかるか!」
立派な顎髭を触りながら中年の男性がハリーに声をかける。
身なりから相当身分の高い人だとわかり、リロ先生は失礼が無いようにと慌てふためく。
「どうだ、素晴らしい絵だろ! 少年、絵本はもう貰ったか? 両方とも我の自慢なのだ! ワハハハ!」
男性は、よっぽど嬉しいのか胸を張り高笑いする。
「ほう……ワシの許可を得ずにか?」
男性は高笑いを止めると、顔が蒼白になっていく。
今では、立派な顎髭がみすぼらしく垂れ下がっている様にも見えるくらいに。
「ワ~ズ~大公~~」
一歩前に出ると、ワズ大公は一歩退く。顔色が蒼白になっていくワズ大公に対して、ルスカの顔は赤く染まり、その形相は鬼の様にも見える。
「ワズ大公!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
ルスカよりいち早く逃げ出したワズ大公は、大階段を二段飛ばしで駆け上がっていく。
ルスカもそのままワズ大公を追い、二階へと上がって行った。
「あややや、ど、ど、どうしましょう。二階には上がれないし、ルスカちゃんは止めないといけないし」
リロ先生は、二階へ上がろうか止めようかとその場をうろちょろするばかりだ。
セリー達は、そんなリロ先生を不安げに見ている。クビかなぁと。
◇◇◇
ワズ大公は侮っていた。自分とルスカでは、体格も身体能力も違うと。
それは間違いではないのだが、ルスカには魔法がある。
既に三階へと上がっていたワズ大公に対して、二階と三階の間の踊り場までルスカは来ていた。
“フィジカルブースト”
“キュアファイン”
一瞬だけ身体能力を上げる“フィジカルブースト”と、その負担を回復する“キュアファイン”の二段構えである。
「うわあぁぁぁぁぁ!」
三階の廊下を必死に走るワズ大公。そのワズ大公の先の扉から出てきたのはリュミエール。
「叔父上、一体何ごと……」
リュミエールは、ワズ大公の後ろから鬼が追ってくるのを見つけるや否や、扉を閉め部屋に籠る。
「リュミエール! 開けてくれ! 我を入れるのだ!!」
「何言っているんですか!? だからあれほど止めるように言ったじゃないですか! 自業自得です! ほら、あなた達も扉を押さえなさい!」
リュミエールの部屋にいた使用人達も一緒になって扉を押さえる。
「わあぁぁ! き、来たぁぁ!!」
ワズ大公がリュミエールの部屋に入るのを諦め、再び逃げ出した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
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