追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

文字の大きさ
86 / 249
第四章 戦争と勇者編

六話 幼女と青年は、笑いが止まらない

しおりを挟む
「そう言えば、クリストファーさんって、お歳は幾つなんでしょう?」

 アイルを出発したアカツキは、一緒に向かう事になったカホに気を使ってなのか他愛もない話題を振る。

「百歳っては言っていたけど」
「以前ワシに会いに来た時から見た目は変わってないのじゃ」
「何時くらいの話です? ルスカ」
「むう、確か……十年、くらいじゃ。あの頃からジジイなのじゃ」

 クリストファーもルスカには言われたくないだろう。

「それほどの年齢なら、もう弟子にしてあげても良かったのでは?」
「弟子の件か? あれは必要ないと思ったから取らなかっただけじゃ」
「必要ない?」
「うむ。クリストファーは強いぞ。あと少し早く生まれておれば、前の勇者パーティーとして一緒に戦ったかもしれぬほどにな」

 クリストファーの弟子のカホですら、その事実に驚きを隠せなかった。

 リンドウへの帰路だが、グルメールに一旦立ち寄るつもりでいた、アカツキ達。
その理由は、ナックの叙勲式である。
今回のラーズの変で、騎士爵と名ばかりではあるが、準貴族となる。

「あのナックが貴族って、まだ信じられない」

 回復した弥生も、貴族になったナックの姿を思い浮かべようとするが、想像つかず、どう対応したらいいのか困っている様子だった。

「きっと、変わってしまうのじゃ……“我は貴族だぞ、庶民が気安く話しかけるな、帰れ、帰れ”とか言うのじゃ」

 それは、流石に無いでしょと弥生が笑い飛ばすのを見て、元気になったとカホもアカツキも胸を撫で下ろす。
そして、ルスカの言うナックを想像すると、弥生と同じように笑い飛ばして見せるのだった。

 二日かけての旅路は、終始専らナックと流星の話題で盛り上がる。
誰もが麗華の事を口にせず、意識的なのか無意識なのかは誰もわからないが避けていた。

 ようやくグルメールの西門が前方に見えて、終始笑いの絶えない旅路は終わりを告げるのだった。


◇◇◇


「帰れ」

 ナックが、グルメールに着いて会いに来たアカツキ達に放った第一声がこれだった。

「お前ら、笑いすぎなんだよ! 帰れ!!」

 貴族服に身を包み髪も整えられたナックは、顔と服装が合っておらず、ただでさえ悪い目付きが余計に目立つ。

「おいおい。アカツキ、お前までひでぇよ」

 アカツキは必死に耐えた。吹き出しそうになるが、必死に堪えた。
しかし、弥生の一言で決壊したのだ。

“まるでタカラヅカにヤンキーをコラージュしたみたい”と。

 ルスカやアイシャなどはコラージュの意味が分からないものの、ただナックの姿の違和感を感じて笑い転げていた。

「もう、本当に何しに来たんだよ! お前ら!」

 ナックの怒鳴り声が城内の一階の大広間に響き渡り、式典に参加する他の貴族達から白い目で見られる。

「騒がしいですよ、皆さん」

 正面の大階段を降りてきたリュミエールは、アカツキ達を見つけると胸元の大きく空いた薄いグリーンのドレスのスカートの裾を持ち上げ、階段をヒールで急ぎ降りてきた。

 その場にいた貴族達は、ナックを含めて一斉に跪く。しかし、一向に跪こうとしないアカツキ達を見て、舌打ちするものや冷ややかな視線を浴びせる者もいる。

 この手の礼儀に不慣れなアカツキ達は慌てて跪こうとするが、それを止めたのはナックだ。

「ナック、ありがとうございます。さ、アカツキ様お立ちになってください」

 リュミエールに腕を引っぱられ立ち上がると、今度はリュミエールがスカートの裾を持ち頭を下げて礼を示す。
それを見た貴族達は、一斉にざわつき始める。

「報せは届いております。再び、この国の混乱をお救い頂き感謝しております。叔父様からも感謝するように言われておりますわ」

 ワズ大公からの報せで、アカツキ達の功績を聞いていたリュミエール。
王族として、アカツキ達に頭を下げさせる事は、只の驕りだと理解していた。

 故に自分から礼を示さねばならないと、ナックにも事前に話をしていたのだ。
ナックもアカツキ達と同じなのだが、元々仕える立場であった為、他の貴族同様に跪いていた。

 王族のリュミエールに頭を下げられ、どうしたものかと困惑していると、リュミエールの頭に白樺の杖が振り下ろされる。

「いたっ」

 貴族達は一斉に立ち上がりリュミエールの元に駆け寄り、アカツキ達を睨み付けてくる。

「相変わらずアホなのかお主は。王族に頭を下げられても困るだけなのじゃ」

 多くの貴族に睨まれながらも、毅然とした態度のルスカはリュミエールに叱りつける。
ルスカ自身、王族に頭を下げられる事など、昔から経験している事で、何ら嬉しくもなんともない。
寧ろ迷惑だとすら感じており、不愉快な表情を貴族達に見せていた。
これは、貴族達の怒りを買う。ただでさえ、今回のナックの叙勲にも不快に感じていた貴族達は、罵声を浴びせようと一歩前にでる。

「あはは、ルスカちゃんらしいね」
「パク! 姉の躾くらいちゃんとするのじゃ」

 パクことエルヴィス国王が、準備を終え正装して一階へと降りて来たのだ。
貴族達は、再び一斉に跪くのだが、そんな貴族達の合間を縫ってルスカはパクの元に向かう。

「マントが長すぎなのじゃ」

 パクは国王としての正装に身を包み真っ赤な金の糸で刺繍が施されているマントを羽織っているのだが、後ろからついてくるメイドにマントの裾を床に着かない様に持たせる程に長い。

「あはは、何かこういう物なんだって」

 あどけない笑顔を見せるパクは、やはり年相応で、まだ幼いパクにとってアカツキやルスカは、唯一友と言っても過言ではない。

「皆のもの。この方々は、我が国を二度、そして私自身の命の恩人達なのだ。無礼は許されないものと知れ!」

 国王としての威厳のある言葉遣いで、貴族達を一斉に諌める。堂々としたその姿は、幼いながらも立派な国王としての振る舞いだ。
セリーが見れば、見惚れるだろう。何となくセリーの気持ちを知っているルスカは、そんな事を考えていた。

「さぁ、皆のもの。式典の会場へ。アカツキ様達もお疲れでしょうが参加してください」

 リュミエールとパクを先頭に一階の左脇に設置されている式典会場に向かう。

「パク、何か嬉しそうなのじゃ」
「そうですね。叙勲式なんて、日常でしょうに」

 アカツキとルスカが、こそこそと話をしていると、背後にいた小太り──など、かわいいものと言い放てるほど太った中年の男性が、咳払いをわざとらしくして見せる。

「プレデリス伯爵ですね──ひゃっ!」

 コッソリと教えてくれたアイシャが突然大きな悲鳴を上げる。何事と、全員の視線が注がれるその瞬間、アカツキが振り向く事なく裏拳を伯爵の顔面に叩きつけた。

 「ぎゃっ!!」と悲鳴と鼻血を出して、伯爵は揉んどり打って倒れ込む。アカツキの行動に弥生もルスカもカホも驚く。
あまりにもらしくない行動をしたアカツキだったが、アカツキはアイシャが悲鳴を上げた時、顔を赤くしてお尻をガードするように押さえた事ですぐに何があったか見抜いたのだ。

「き、貴様! わしにこんな事を──ぷぎゃっ!」

 今度はアイシャの蹴りが、伯爵の顎を捉えた。顎と鼻を押さえ、ごろごろと丸い体を転がす。

「おい! アカツキ、落ち着け」

 ナックが追撃しようとしたアカツキを羽交い締めにする。アイシャも弥生とカホが伯爵から引き離す。

「あの人がアイシャさんのお尻を触ったのですよ。私はこの手の行動が一番許せないのです」
「伯爵、本当ですか?」

 アカツキから事情を聞いたパクは、伯爵にも真偽を問う。いくらアカツキだからといって、鵜呑みにすれば不平が生じる。
なので、伯爵にも聞くのだが、案の定伯爵は首を横に振る。

「他に触っていたのを見ていた者は?」

 アカツキ達、そしてプレデリス伯爵の後ろには、他にも貴族達がいた。目撃していてもおかしくない。
ざわつきが収まらないまま、一人の貴族が首を振る。それに追従するように他の者も首を横に振った。

「ふぅぅ」
「エル、大丈夫?」
「はい。ちょっと呆れてしまって……さて、皆の者にもう一度言うが、この方々はこの国の恩人で私の恩人だ。私の決断次第では、皆にも影響を与えるが、それを踏まえて再度聞く。本当に見ていないし、伯爵は触っていないのだな?」

 日和見の貴族が多いのだろう。このまま伯爵を庇ってもいいことなどないと判断したのか、見ていた者達が手を挙げる。

「貴族って、バカばっかりなのじゃ」

 ルスカの言葉は正しかった。パクは警備兵を呼ぶと、伯爵を捕らえさせ、そして二度目の問いで見ていたと言った貴族達も捕らえさせた。

「国王! なぜ、我らが!」
「私に一度嘘を吐いておいて、なぜとはおかしな事を」

 一度否定しておいて、後から見ましたと言うのは、一度目の否定が嘘だと言っていると同意であった。
だから、ルスカはバカだと言ったのだ。

「さて、ゴタゴタがありましたが行きますか?」
「私に罰を与えないと不公平になりますが?」

 パクが式典会場に向かおうとするのをアカツキが呼び止めると、振り向いてにこりと笑う。

「それでは、アカツキ様には罰として姉を貰ってください」

 パクの言葉にその場にいた全員が絶句し、弥生なんかは完全に固まっていた。

「丁重にお断り致します」

 あっさりと罰をお返しされる。

「あはは、それは残念です。それでは代わりに後で私に協力してください。それが罰です」
「協力?」

 高笑いをしながら先に会場へと入ったパクとリュミエール。

「すいません。あんな言い方しか出来なくて」
「エル。いいのです。あれで吹っ切れましたわ。未練はありません」

 リュミエールは、パクが国王としてではなく弟として自分を思ってくれたのを嬉しく、優しく頭を撫でてあげたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。 そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。 しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。 そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。

ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。 森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。 一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。 これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。

処理中です...