追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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最終章

十六話 幼女と青年、並び立つ

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「アカツキーーっ!!」

 ルスカは馬渕を無視して、背中を見せながら、ひたすら走る。
戦闘中に見せる動きではなく、その短い手足を懸命に動かして、まるで親を見つけた子供のように。

 そして、ルスカは大好きなアカツキの懐に飛び込んだ。

「良かった……良かったのじゃ……もう大丈夫なのか? 痛く無いのじゃな?」

 アカツキは馬渕を見据えたまま、涙で顔を濡らしたルスカを抱き抱えて頭を撫でて慰める。

「ええ、大丈夫ですよ」

 ルスカを降ろして、戦闘でざんばら髪になった藍白の髪を手櫛で整えてやる。
その間も、アカツキは馬渕から視線を外さない。

 妙に落ち着いたアカツキを馬渕も見据えるが、その落ち着きが余裕の様に見えて苛立ちを募らせる。

「ちっ、呪いで死んでおけばいいものを。よっぽど俺の手で殺されたいらしいな」
「随分と肌が黒くなりましたね」

 馬渕の挑発を無視して、ルスカと会話を続ける。

「う、その……これは……じゃな」
「大丈夫ですよ。言わなくても」

 言い辛そうに口ごもるルスカの頭をポンポンと叩くと、アカツキはポケットから青白い光を放つレプテルの書を取り出して、空間の亀裂に手を突っ込むと中から水筒も取り出す。

 何を思ったのか、アカツキはおもむろにレプテルの書を口に入れると水筒の水で流し込んだ。

「あ、アカツキ!?」

 想定外のアカツキの行動に一番驚いたのはルスカであった。
喉を青白い光が通り抜け、体内へと収められたレプテルの書。

「気が狂った訳ではないですよ。私の中のエイルが、そうしろと言ったからやっただけです」

 今アカツキの中には神獣エイルが滞在している。元々呪いの進行を止めるのに専念していたエイルは、呪いが解けたことによりアカツキの一部となっていたのだ。

「……なるほど、“喰らうもの”ですか」
「アカツキ、お主、レプテルの書を……!」

 アカツキと同化したのか、今アカツキの頭の中には、信じられない程の情報が飛び込んできていた。
その中には、ルスカの中の者の正体とルスカという存在理由、そして馬渕が転移してから行ってきた数々の所業も入ってくる。

 レプテルの書により自分の正体に気づかれたルスカは、項垂れながら「アカツキ……ワシは……」と、言葉を詰まらせる。

「ルスカ。言わなくてもいいと言ったはずです。それより、彼、馬渕を倒す方法はあるのですか?」

 しかし、アカツキはそんな事を気にする様子もなく、今は馬渕を倒すことだけに集中する。

「奴は、ワシが奴を粉々にするより速く再生しよる。手は無くはないが、如何せん時間がの……」
「そうですか、それなら話は早いです。私が食い止めますから、その間に準備を」

 馬渕はカチンと来る。自分を食い止めるなどと軽口を吐いたことを後悔させてやると、初めはゆっくりと近づき段々と足早になっていく。

 ボーッと突っ立っているアカツキの側までやってくると、突然地面からエイルの蔦が四本飛び出して互いに絡み合い壁となる。
馬渕はしゃらくさいと、拳を伸ばして蔦の壁を破壊して突破してくる。

 アカツキへと一気に接近した馬渕は、伸ばした拳を引いて再びアカツキに向かって伸ばす。
その瞬間──アカツキの肩越しから鋭く尖ったエイルの蔦の先が飛び出してきた。

「くっ! 五本目!?」

 カウンター気味に馬渕の顔を目掛けて伸ばした蔦は、寸でのところで躱されてしまい、馬渕はそのままアカツキから離れてしまう。

 アカツキの背中から伸びている蔦はいつの間にか五本に増えていた。

「今まで呪いを抑えていた分の蔦です。とは言え、これだけであなたを舐めたりしてませんよ、馬渕」

 アカツキは少しほくそ笑んで、馬渕を指差すと、話を続けた。

「何故彼の顔を狙わないのですかね? 皆は」

 顔と聞きルスカを始め避難していたナック達も改めて馬渕の顔を見る。
レプテルの書が収まっていた左目は、ポッカリと空洞となったまま。

「そ、そうじゃ! 何故、左目は再生しておらぬ!?」

 ルスカもナック達も漸く気づく。あれほどの再生能力ならば、何故左目は再生していないのか、と。
レプテルの書が無くなり、真っ黒に見える空洞のせいでルスカ達には、ただただ馬渕本人を不気味に写し出していた。

 馬渕自身の不気味さも相まって、ルスカ達の目からその事実を反らしていたのだ。

 今思うと、馬渕は度々自分の顔を守っていた。先ほどのアカツキの攻撃も同じで、タイミング的には相討ちにまで充分持ってこれたはずであったが、馬渕はアカツキの攻撃を避けて、退いたのだ。
アカツキは、静かに拳を握りしめ馬渕へ問いただす。

「馬渕。あなたがクラスメイト達にどれだけ酷いことを行ってきたのか……レプテルの書が教えてくれました。あなたは私を“偽善者”だと言いましたが、それはあなたでしょう? 困ったクラスメイト達に手を差しのべておきながら、突き落とす……まさに“偽善者”じゃないですか!」

 馬渕が同じクラスメイトの転移者達に行った行為を映像としてレプテルの書が、アカツキに教えてくれた。
実験、実験、実験……そのほとんどが麻薬漬けにされて生きたまま行われていた。

「俺が……偽善者? くくっ……笑わせるな! お前こそ、人に関心が無いくせに、いつも、いつも、俺の邪魔をする! なぜ、助ける気が無いくせに、助け舟を出す!」

 馬渕が感情的になる。気にくわないアカツキに“偽善者”呼ばわりされた事が、よっぽど腹に据えかねたのだろう。

「……それは、転移前の話、ですか? それならば、確かに私は助ける気はありませんでしたよ。今思えばクラス内で問題が多々行われたのは、あなたが仕組んだ事だとわかります。ですが残念ですが、私は助けなければならない理由があったのです。それは──」

 アカツキは、大きく息を吸い込み、ハッキリと大きな声で伝えた。

「それは──問題が起こるとホームルームが長くなって帰る時間が遅くなるじゃないですかぁー!」
「はっ?」

 アカツキの言っていることが理解できずに馬渕は珍しく唖然とする。
そして、唖然としているのは馬渕だけでなく、アカツキを除くこの場にいた全員の目が点となっていた。

「だから、帰る時間が遅くなるってことは、特売に間に合わないし、妹のほのかと遊ぶ時間が減るじゃないですか!」
「そんなことで……そんな理由で、邪魔をしていたのかぁ! 田代ぉ!」

 天に向かって大声で怒鳴る馬渕に、アカツキも負けじと大声で宣言する。

「私にとっては最重要なんです! そして、そして今は、ルスカと弥生さんと静かに暮らしたいだけなのに、あなたこそ、私の邪魔をしている。許しませんよ!」
「そうじゃ! アカツキの言う通りじゃ! ワシとアカツキは静かにのんびり暮らしたいのに、色々面倒事を持って来るななのじゃ!」
「ちょっと、ルスカちゃん、私はーー!?」

 アカツキに追随してルスカも揚々と、横に立ち馬渕へと文句を告げる。
そんな二人の後ろで、さらっとルスカに自分を外された弥生は、クレームをつけたのだった。
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