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第四章 レイン自治領の危機と聖霊王
五話 ローレライ会議、開催
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イミル女王の命により、各国へ早馬が飛ばされた。アカツキ達も、カホを経由して、ワズ大公、そしてグルメール王エルヴィスへと話が伝わる。
各国の代表はすぐに出発と相成った。
グルメール王国からは、エルヴィス自らが、弥生、カホ、ナックを同行させ、出立する。ワズ大公は首都を預り、アイシャはギルドのトップとして独自に各国への手筈を整えるのに忙しく、留守番となる。
ドゥワフ国からは代表として、元勇者のロックが──嫌々ながら、足取り重く出発していた。
もちろん、英雄として、元々グランツ王国出身というのもあり、選ばれたのだが、ロックはルスカに会いたくない。
しかし、彼は少し前向きな性格に変わっていた。こうなれば、ローレライ全土に立てられた自分の石像の件を抗議するいい機会だと。当然、言える筈もないのだが……。
一方、グランツ王国も大変であった。多くの避難民は、旧貴族街に余っていた屋敷に詰め込むように住まわせ、職を失い金もないともなれば炊き出しをする必要もある。
しかし、圧倒的に人手が足りない。兵士の殆んどはグランツリーを囲むように配置されている。何せ、ローレライ全土の大物が一同に、ここグランツリーに集うのである。襲撃者達にとって格好の獲物が。
故に炊き出しに兵士は割けず、困ったイミル女王であったが、ヴァレッタと子供達、そしてタツロウの商会からの支援で賄うことが出来た。
◇◇◇
アカツキ達も炊き出しを手伝いつつ、ローレライ会議の開催が決まってから十日が経とうとしていた。
続々と、各国の要人が集まる中、残すは一番遠いドゥワフ国とザンバラ砂漠を越えなければならないグルメールのみ。
アスモデスに対抗するために手を組んだドゥワフ国と旧レイン帝国。互いに痛みを伴ったこともあり、自治領となったあとも関係は良好であったが、帝国時代に傘下に入っていた小国は、自治領となったあと独立し、横柄な態度を取るようになっていた。当然、それは送られてきた各国要人の態度、そのままである。
「何故、グランツ王国が仕切る!? 公平に期すべきではないかっ!?」
「誰、この男は? 何故あなたが代表なのよ!?」
会議も始まっていない中、既に到着していた要人達はアカツキやイミル女王をこれが好機と言わんばかりに責め立てる。そればかりではなく、これとばかりにレベッカまで帝国時代の話を持ち上げ責め始めた。
キレそうになるルスカを腕に抱きアカツキは、要人達の罵詈雑言に耐えていた。これでは会議どころではないとイミル女王が一歩前に出るも、アカツキがそれを制する。
「言いたいことは、それだけですか?」
アカツキの言葉に静まり返る部屋の中、ゆっくりと立ち上がりルスカを椅子に座らせる。睨んでいるわけではないが、その眼力に一瞬要人達はたじろぐ。
「わ、若造が! 偉そうに。我らは、お主などが気安く話せる相手などではないのだぞ!」
ぷくっと肥えた頬を更に膨らませた男が先陣を切って罵倒を再開し出すと、あとに続けとばかりにアカツキへの批難が飛ぶ。
「随分と勇ましいですが、良いのですか? もうすぐ、以前手を出した使用人の女性、子供が産まれるのでしょう?」
ポツリと呟いたアカツキの言葉に、部屋の中に静寂が戻る。全くもって関係のない話題。それでもアカツキへの批難を最初に再開した男は額からの脂汗が止まらない。この会議には当然話し合いだけでなく、その後にコミュニケーションの一環としてちょっとしたパーティーが開かれる予定で、そこでは伴侶の才覚が試される場でもある。
男の隣にいた女性は顔を真っ赤にしている。もちろん、怒りのあまりに。
その後、アカツキは次々と要人達の秘密事を、淀みなくつらつらと話し始める。くだらないことから、聞くに堪えないものまで。
別に、調べた訳ではない。ただ、アカツキには名前さえ聞いておけば、その人の何から何までが分かる。
同化したレプテルの書のお陰で。
こうなると内輪揉めが始まりアカツキへの批難どころではない。それどころか、下手に批難でもしようものなら、何を言われるかわかったものじゃない。
「はは……なんだこりゃ。偉そうにしていたのはうわべばかりかよ」
呆れる流星と同意らしく、イミル女王は大きく溜め息を吐くと兵士に命じて要人達を用意した部屋へと戻させる。
先が思いやられると、残った誰もが思い、イミル女王に続いて大きな溜め息を吐いたのであった。
◇◇◇
それから三日が経過し、まずロック達ドゥワフ国代表が到着する。到着するなり、ロックはルスカの元へと駆け寄り、大衆の面前にも関わらず土下座する。
「お願いします!! どうか、俺の石像の建設中止を!!」
「いやじゃ」
そう言うとルスカは目の前にあるホットケーキを頬張る。ロックもタイミングが悪かった。よりによってルスカにとって大事なオヤツの時間に押し掛けたのだから。
一緒に旅をしてきた頃から何も変わっていなかった。
続いて最後に到着したのは、グルメール王国代表エルヴィス国王ことパクである。エルヴィスは到着するなり、イミル女王を差し置いて、初めにルスカとアカツキへ挨拶をするという国王らしからぬ振る舞いを見せる。
ここで、各国のアカツキへの見方は二通りへと別れた。
グルメールの国王と知り合いを傘に偉そうな奴という評価と、エルヴィス国王に最初に挨拶させるほどの奴という評価に。
「思っていたより長く、留守にしてしまいましたね。すいません、弥生さん」
「ううん。私こそ、フウカを危ない目に遭わせてしまって……会わせる顔がないわ」
弥生は胸に抱いたフウカをアカツキへ渡すと、顔を覗き込み、その顔は父親の顔をする。
愛おしい娘を抱いているアカツキに、ルスカも思わず微笑むのであった。
各国の代表はすぐに出発と相成った。
グルメール王国からは、エルヴィス自らが、弥生、カホ、ナックを同行させ、出立する。ワズ大公は首都を預り、アイシャはギルドのトップとして独自に各国への手筈を整えるのに忙しく、留守番となる。
ドゥワフ国からは代表として、元勇者のロックが──嫌々ながら、足取り重く出発していた。
もちろん、英雄として、元々グランツ王国出身というのもあり、選ばれたのだが、ロックはルスカに会いたくない。
しかし、彼は少し前向きな性格に変わっていた。こうなれば、ローレライ全土に立てられた自分の石像の件を抗議するいい機会だと。当然、言える筈もないのだが……。
一方、グランツ王国も大変であった。多くの避難民は、旧貴族街に余っていた屋敷に詰め込むように住まわせ、職を失い金もないともなれば炊き出しをする必要もある。
しかし、圧倒的に人手が足りない。兵士の殆んどはグランツリーを囲むように配置されている。何せ、ローレライ全土の大物が一同に、ここグランツリーに集うのである。襲撃者達にとって格好の獲物が。
故に炊き出しに兵士は割けず、困ったイミル女王であったが、ヴァレッタと子供達、そしてタツロウの商会からの支援で賄うことが出来た。
◇◇◇
アカツキ達も炊き出しを手伝いつつ、ローレライ会議の開催が決まってから十日が経とうとしていた。
続々と、各国の要人が集まる中、残すは一番遠いドゥワフ国とザンバラ砂漠を越えなければならないグルメールのみ。
アスモデスに対抗するために手を組んだドゥワフ国と旧レイン帝国。互いに痛みを伴ったこともあり、自治領となったあとも関係は良好であったが、帝国時代に傘下に入っていた小国は、自治領となったあと独立し、横柄な態度を取るようになっていた。当然、それは送られてきた各国要人の態度、そのままである。
「何故、グランツ王国が仕切る!? 公平に期すべきではないかっ!?」
「誰、この男は? 何故あなたが代表なのよ!?」
会議も始まっていない中、既に到着していた要人達はアカツキやイミル女王をこれが好機と言わんばかりに責め立てる。そればかりではなく、これとばかりにレベッカまで帝国時代の話を持ち上げ責め始めた。
キレそうになるルスカを腕に抱きアカツキは、要人達の罵詈雑言に耐えていた。これでは会議どころではないとイミル女王が一歩前に出るも、アカツキがそれを制する。
「言いたいことは、それだけですか?」
アカツキの言葉に静まり返る部屋の中、ゆっくりと立ち上がりルスカを椅子に座らせる。睨んでいるわけではないが、その眼力に一瞬要人達はたじろぐ。
「わ、若造が! 偉そうに。我らは、お主などが気安く話せる相手などではないのだぞ!」
ぷくっと肥えた頬を更に膨らませた男が先陣を切って罵倒を再開し出すと、あとに続けとばかりにアカツキへの批難が飛ぶ。
「随分と勇ましいですが、良いのですか? もうすぐ、以前手を出した使用人の女性、子供が産まれるのでしょう?」
ポツリと呟いたアカツキの言葉に、部屋の中に静寂が戻る。全くもって関係のない話題。それでもアカツキへの批難を最初に再開した男は額からの脂汗が止まらない。この会議には当然話し合いだけでなく、その後にコミュニケーションの一環としてちょっとしたパーティーが開かれる予定で、そこでは伴侶の才覚が試される場でもある。
男の隣にいた女性は顔を真っ赤にしている。もちろん、怒りのあまりに。
その後、アカツキは次々と要人達の秘密事を、淀みなくつらつらと話し始める。くだらないことから、聞くに堪えないものまで。
別に、調べた訳ではない。ただ、アカツキには名前さえ聞いておけば、その人の何から何までが分かる。
同化したレプテルの書のお陰で。
こうなると内輪揉めが始まりアカツキへの批難どころではない。それどころか、下手に批難でもしようものなら、何を言われるかわかったものじゃない。
「はは……なんだこりゃ。偉そうにしていたのはうわべばかりかよ」
呆れる流星と同意らしく、イミル女王は大きく溜め息を吐くと兵士に命じて要人達を用意した部屋へと戻させる。
先が思いやられると、残った誰もが思い、イミル女王に続いて大きな溜め息を吐いたのであった。
◇◇◇
それから三日が経過し、まずロック達ドゥワフ国代表が到着する。到着するなり、ロックはルスカの元へと駆け寄り、大衆の面前にも関わらず土下座する。
「お願いします!! どうか、俺の石像の建設中止を!!」
「いやじゃ」
そう言うとルスカは目の前にあるホットケーキを頬張る。ロックもタイミングが悪かった。よりによってルスカにとって大事なオヤツの時間に押し掛けたのだから。
一緒に旅をしてきた頃から何も変わっていなかった。
続いて最後に到着したのは、グルメール王国代表エルヴィス国王ことパクである。エルヴィスは到着するなり、イミル女王を差し置いて、初めにルスカとアカツキへ挨拶をするという国王らしからぬ振る舞いを見せる。
ここで、各国のアカツキへの見方は二通りへと別れた。
グルメールの国王と知り合いを傘に偉そうな奴という評価と、エルヴィス国王に最初に挨拶させるほどの奴という評価に。
「思っていたより長く、留守にしてしまいましたね。すいません、弥生さん」
「ううん。私こそ、フウカを危ない目に遭わせてしまって……会わせる顔がないわ」
弥生は胸に抱いたフウカをアカツキへ渡すと、顔を覗き込み、その顔は父親の顔をする。
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