223 / 249
第四章 レイン自治領の危機と聖霊王
六話 青年、ほくそ笑む
しおりを挟む
ローレライ会議は、懐かしい面々と語り合う時間すら惜しむように開催される。
テーブルの上座へ座るアカツキを中心に各要人が左右へと座る。奇しくもアカツキに対して一目を置いた者と批難し続ける者と綺麗に別れた。
「まずは、私の話を聞いてもらいます」
アカツキが話を切り出す。自分の住むリンドウの街からそれは始まった。捕らえた空き巣がルメール教の証であるメダルを持っていたことから。只の空き巣は牢から忽然と姿をくらまし、同じことがほぼ同時期に、ここグランツ王国でも起こったことから。
「ルメール教? 確か、グルメール王国における邪教じゃなかったか?」
「違います!! 我がグルメール王国は、ルスカ・シャウザードのお力を借りてルメール教を追い出してから建国された国! 勘違いしないでいただきたい!!」
エルヴィスは、顔を真っ赤にして、すぐさま反論する。隣に座っていたルスカはウンウンと頷くのであった。
アカツキの話はグルメール王国アルステル領、森エルフの住み処、そしてレイン自治領へと及ぶ。
「これらを襲った者は忽然と姿を現しては消えます。離れた場所にも関わらず、それも短期間で襲われた。これは他人事ではなく、貴方達の住む場所もいきなり襲われる可能性もあるということです。そして、これらを襲った者達の正体は恐らく……」
アカツキが明かしたのは、このローレライに住む者達の先祖が残した負の遺産とも言える消え去った歴史の一ページ。
そして、レイン自治領を襲撃した者の正体が皆に伝えられた。
一同は驚愕する。誰もが黙りこみ自分の先祖が起こした行いを恥じるが、意外に最初に口を開いたのは、アカツキを批難する側の要人の男性であった。
「な、何故そんな昔のことを、お前が知っている!? どうせ口から出任せだろ!」
「レプテルの書……って知っていますか?」
「レプ……なんだ、それは?」
「神獣の一つです。そこには、このローレライの歴史のあらゆる事柄が収められています。例えば、貴方の不正……とかもね」
アカツキを批難した男は、うぐっ……と言葉を詰ませる。それでもアカツキ批難は止まらず、堰を切ったかのように再び罵倒し始める。
我慢の限界に来ていたのはルスカであった。テーブルをバンッと叩き皆を黙らせる。
「今は、そんな話をしている暇はないのじゃ! いかに対策を取るのかが先じゃろ!!」
「そうですわ。そんな非建設的な話をしている場合じゃないです。いつ、他の国や街にやって来るのかかわわからないのですから。今、こうしている間にも!」
イミル女王もルスカに同調して声を荒げるが、アカツキは落ち着くように促す。
「別に協力しろとは言いませんよ。ただ、同じローレライに住む人間として警告をするだけです。貴方達は、通達で送ったところで聞く耳を持ったかどうか……だから、こうして集まってもらったのですよ」
「それで……奴らはどうするのだ。放っておくのか?」
アカツキから見て一番奥の席に座っていた男が口を開く。ルスカ達アカツキ側の人達が一斉に怪訝な表情を浮かべたのは、その男がアカツキに対して批難側に座っていたからだ。
「どうにもこうにも争うのか話し合うのか……彼らの住む地へは普通には中々行けない。けれども、まずは会ってみないことには。そこで今行ける手段を作っているのですが、貴方達の中に魔石を知っている者はいませんか?」
「魔石?」
アカツキはサンプルとしてアイテムボックスから取り出すと、テーブルの上に置く。各国の要人達は、その赤く輝く石を見て色めき立つが、特にこれと言って情報は出て来なかった。
「知っている人は、いない……ですか。それならば私から貴方達に協力してもらうことは一つ。近隣諸国との連携です。私達は、このグランツ王国中心に動くつもりでいますから、正直貴方達の国が襲われたとしてもグランツ王国からは間に合わないのです。ですから互いに連絡を密に取り合ってください。しょうもない争いなどせずにね」
アカツキは、まるで子供をあやすように諭し、対応には自分達だけで当たると公言したようなものである。
「グルメール王国は、今やギルドの中心地ですからギルドと連携を。ドゥワフ国は、ドワーフ達は屈強ですし、まぁ、元勇者もいますから」
「待てぇーーっ!! 何か俺の……いや、ドゥワフ国だけ扱いがぞんざいじゃないか!」
「ロックさん……冗談ですよ。レイン自治領が失くなった今、どの国よりも遠いそちらにはモルクさん始め一部魔族が行ってくれるように頼んでいます。少し時間かかりますが」
魔王を倒すべく偽者とはいえ選ばれた元勇者の元に魔王の配下の魔族が行く。ロックはその現実に思わず頬がひきつる。
「警告はしました。貴方達がこの後どうするかは、貴方達次第です」
「アカツキ様、それで良いのですか? もっと他に何か……」
レイン自治領を滅ぼされたレベッカにとっては、アカツキの提案に不満を露にするのは当然であった。しかし、アカツキは彼らにこれ以上期待するのは無駄だと一蹴するのであった。
「馬鹿にするなよ、若僧!!」
立ち上がったのは先ほどアカツキに対して質問をした男であった。中々凛々しい髭を蓄え、眼光も鋭い。体格よく、ワズ大公より少し若いが威厳も持ち合わせている。
「確か貴方は……」
「我輩は、最後まで帝国に抗ったザングル国大将、バッハだっ!!」
「なんじゃ……結局敗戦国の将ではないか」
「ええい、黙れ小娘っ!!」
「こ、こむっ……!!」
ルスカに対して小娘扱いする者など、初めて出会った頃のワズ大公くらいである。どうやらバッハはルスカの事を知らないようで知っている者からしたら、なんと命知らずの事を言うのだと戦々恐々であったが、当のルスカは満更でもない。
「わかりました。それでは貴方が中心となって纏めてください。他に協力して欲しい事があれば、そのときは宜しくお願いします」
「任せよっ!!」
こうしてローレライ会議は、なんてはた迷惑なとバッハを見る小国の要人達と、胸を張り大きな口を開いて笑うバッハと、ルスカに殺されないかバッハを心配するイミル女王達と、なんやかんや然り気無く協力を取り付け、ほくそ笑むアカツキとで、終了したのだった。
テーブルの上座へ座るアカツキを中心に各要人が左右へと座る。奇しくもアカツキに対して一目を置いた者と批難し続ける者と綺麗に別れた。
「まずは、私の話を聞いてもらいます」
アカツキが話を切り出す。自分の住むリンドウの街からそれは始まった。捕らえた空き巣がルメール教の証であるメダルを持っていたことから。只の空き巣は牢から忽然と姿をくらまし、同じことがほぼ同時期に、ここグランツ王国でも起こったことから。
「ルメール教? 確か、グルメール王国における邪教じゃなかったか?」
「違います!! 我がグルメール王国は、ルスカ・シャウザードのお力を借りてルメール教を追い出してから建国された国! 勘違いしないでいただきたい!!」
エルヴィスは、顔を真っ赤にして、すぐさま反論する。隣に座っていたルスカはウンウンと頷くのであった。
アカツキの話はグルメール王国アルステル領、森エルフの住み処、そしてレイン自治領へと及ぶ。
「これらを襲った者は忽然と姿を現しては消えます。離れた場所にも関わらず、それも短期間で襲われた。これは他人事ではなく、貴方達の住む場所もいきなり襲われる可能性もあるということです。そして、これらを襲った者達の正体は恐らく……」
アカツキが明かしたのは、このローレライに住む者達の先祖が残した負の遺産とも言える消え去った歴史の一ページ。
そして、レイン自治領を襲撃した者の正体が皆に伝えられた。
一同は驚愕する。誰もが黙りこみ自分の先祖が起こした行いを恥じるが、意外に最初に口を開いたのは、アカツキを批難する側の要人の男性であった。
「な、何故そんな昔のことを、お前が知っている!? どうせ口から出任せだろ!」
「レプテルの書……って知っていますか?」
「レプ……なんだ、それは?」
「神獣の一つです。そこには、このローレライの歴史のあらゆる事柄が収められています。例えば、貴方の不正……とかもね」
アカツキを批難した男は、うぐっ……と言葉を詰ませる。それでもアカツキ批難は止まらず、堰を切ったかのように再び罵倒し始める。
我慢の限界に来ていたのはルスカであった。テーブルをバンッと叩き皆を黙らせる。
「今は、そんな話をしている暇はないのじゃ! いかに対策を取るのかが先じゃろ!!」
「そうですわ。そんな非建設的な話をしている場合じゃないです。いつ、他の国や街にやって来るのかかわわからないのですから。今、こうしている間にも!」
イミル女王もルスカに同調して声を荒げるが、アカツキは落ち着くように促す。
「別に協力しろとは言いませんよ。ただ、同じローレライに住む人間として警告をするだけです。貴方達は、通達で送ったところで聞く耳を持ったかどうか……だから、こうして集まってもらったのですよ」
「それで……奴らはどうするのだ。放っておくのか?」
アカツキから見て一番奥の席に座っていた男が口を開く。ルスカ達アカツキ側の人達が一斉に怪訝な表情を浮かべたのは、その男がアカツキに対して批難側に座っていたからだ。
「どうにもこうにも争うのか話し合うのか……彼らの住む地へは普通には中々行けない。けれども、まずは会ってみないことには。そこで今行ける手段を作っているのですが、貴方達の中に魔石を知っている者はいませんか?」
「魔石?」
アカツキはサンプルとしてアイテムボックスから取り出すと、テーブルの上に置く。各国の要人達は、その赤く輝く石を見て色めき立つが、特にこれと言って情報は出て来なかった。
「知っている人は、いない……ですか。それならば私から貴方達に協力してもらうことは一つ。近隣諸国との連携です。私達は、このグランツ王国中心に動くつもりでいますから、正直貴方達の国が襲われたとしてもグランツ王国からは間に合わないのです。ですから互いに連絡を密に取り合ってください。しょうもない争いなどせずにね」
アカツキは、まるで子供をあやすように諭し、対応には自分達だけで当たると公言したようなものである。
「グルメール王国は、今やギルドの中心地ですからギルドと連携を。ドゥワフ国は、ドワーフ達は屈強ですし、まぁ、元勇者もいますから」
「待てぇーーっ!! 何か俺の……いや、ドゥワフ国だけ扱いがぞんざいじゃないか!」
「ロックさん……冗談ですよ。レイン自治領が失くなった今、どの国よりも遠いそちらにはモルクさん始め一部魔族が行ってくれるように頼んでいます。少し時間かかりますが」
魔王を倒すべく偽者とはいえ選ばれた元勇者の元に魔王の配下の魔族が行く。ロックはその現実に思わず頬がひきつる。
「警告はしました。貴方達がこの後どうするかは、貴方達次第です」
「アカツキ様、それで良いのですか? もっと他に何か……」
レイン自治領を滅ぼされたレベッカにとっては、アカツキの提案に不満を露にするのは当然であった。しかし、アカツキは彼らにこれ以上期待するのは無駄だと一蹴するのであった。
「馬鹿にするなよ、若僧!!」
立ち上がったのは先ほどアカツキに対して質問をした男であった。中々凛々しい髭を蓄え、眼光も鋭い。体格よく、ワズ大公より少し若いが威厳も持ち合わせている。
「確か貴方は……」
「我輩は、最後まで帝国に抗ったザングル国大将、バッハだっ!!」
「なんじゃ……結局敗戦国の将ではないか」
「ええい、黙れ小娘っ!!」
「こ、こむっ……!!」
ルスカに対して小娘扱いする者など、初めて出会った頃のワズ大公くらいである。どうやらバッハはルスカの事を知らないようで知っている者からしたら、なんと命知らずの事を言うのだと戦々恐々であったが、当のルスカは満更でもない。
「わかりました。それでは貴方が中心となって纏めてください。他に協力して欲しい事があれば、そのときは宜しくお願いします」
「任せよっ!!」
こうしてローレライ会議は、なんてはた迷惑なとバッハを見る小国の要人達と、胸を張り大きな口を開いて笑うバッハと、ルスカに殺されないかバッハを心配するイミル女王達と、なんやかんや然り気無く協力を取り付け、ほくそ笑むアカツキとで、終了したのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。
そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。
しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。
そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。
ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。
森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。
一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。
これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる