追放された幼女(ロリ)賢者は、青年と静かに暮らしたいのに

怪ジーン

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第四章 レイン自治領の危機と聖霊王

八話 グルメール、急襲

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 ナルホにパペットの改修の指示をするべく、怯えるルスカの付き添いでアカツキは、別室へと移った。

「なるほど。では、森エルフの住み処周辺から山脈に登る予定なのか」
「あぁ、だからバッハさんには、なるべくあの辺りで邪魔が入らないように何とかして欲しいってさ」

 主不在の部屋でバッハと、今後どうする予定か聞かされていた流星は話し合っていた。エルヴィス国王は、残った弥生、カホ、ナックを連れて、大広間で開かれているパーティーへと出席するべく着替えに向かう。

 パーティー内では、深刻な表情の者と純粋にパーティーを楽しむ者と二分していた。

「いやぁ、イミル女王とは、まだ十歳くらいだった頃に一度お会いしましてな。今では王族としての威厳すら感じる」
「は、はぁ……」

 赤く頬を染めてほろ酔い気分の男性がイミル女王相手に絡んでいる。邪険にするわけにもいかず、イミル女王は苦笑いを浮かべることしか出来ずにいた。

「イミル女王、失礼します! アデル様がドラクマからお戻りに」

 パーティー会場へ駆け込んできた兵士の一報を聞き、イミル女王の表情は実に晴れやかになる。絡んでいた男は、気づくとイミル女王から離れて、今度はフラフラと千鳥足で弥生達の元へ近づいていく。

 正装をと言うことなので、真紅のドレスに着飾った弥生は、大きく胸元の空いたドレスに落ち着かない。けれども内心では、早くアカツキに見てもらいたいと女心が疼いていた。

「ととっ……」

 そこに先ほどイミル女王に絡んでいた男が近づいて来るが、その足は覚束ない。案の定、弥生の前で足がもつれて倒れてくる。

「えっ」

 故意か不慮か、男の手は弥生の胸へと伸ばされていた。

「“障壁”」

 しかし、その手は届くことなく、男は透明な壁に顔を打ち付けて床に倒れる。
咄嗟にとはいえ、思わず「大丈夫ですか」と声をかけ男に近づこうとする弥生を空色のドレスに身を包んだカホと、不似合いな黒い服の正装に着替えたナックが弥生を止めて、首を横に振る。

 二人は弥生の両脇に腕を絡ませて男から引きずるように引き離していった。

 パーティー会場のど真ん中で誰も触れないように距離を取り、一人床に伏せている男性が残された。

 そんな和やかも盛り上がるパーティー会場に、再び一人の血相を変えた兵士が入ってくる。

「エルヴィス国王!! エルヴィス国王は居りますかっ!! 至急です!」
「どうかしましたか?」
「グルメールが……! 首都グルメールが謎の集団に襲撃に遭ったとのこと!!」

 その衝撃は会場の雰囲気を一変させた。


◇◇◇


 時は遡りエルヴィス国王がグランツ王国を出立して二日目。留守を預かるのはワズ大公と、かつての側近でもあり現在はエルヴィス国王の右腕として、その腕を奮うダラスの二人。

「エルヴィスに知らせは出したか?」
「はっ! しかし、エルヴィス国王が出立して二日。知らせが届くのは国王がグランツリーへ到着した頃かと」

 聞いていた通りアルステル領と同じく、突然と姿を現した襲撃者達。グルメール王国各地を警戒していたのが仇となり、首都に残る兵士の数が普段より少なかった。

「それでも、皆健闘はしてくれているな」
「はい。馬渕、アスモデスの襲撃から一年余り、万一に備えて鍛えていた分、幸いしています」

 それでも襲撃当初の陣形の乱れは立て直せずに苦戦を強いられていた。

「ギルドには?」
「グルメールにあるギルドの者達も力は貸してくれています。ですが、アイシャ殿は恐らく……」
「間に合わぬか。だろうな」

 ワズ大公は、アイシャにリンドウの街の守りを頼んでいた。人手不足なのもあり、何より一度破壊されたリンドウの街を守らねばならなかった。

「ダラス」
「はっ!」
「あと一日あればアイシャも来てくれるだろう……グルメールの復興、お前とアイシャに任せる! ワシは出るぞ!! 準備をしろっ」

 街の様子を城から眺めていると現状が良く見える。今、一番何をするべきなのか、ワズ大公を止めたいダラスもワズ大公本人も理解していた。

 甲冑に身を包み、城から庭へと出るタイミングで十人の兵士が立ち塞がる。

「我らのお供をお許しください」

 それは、グルメールの城を守る兵士とは装備のデザインが異なる兵士達。国を首都を預かる身とし同行させてきたワズ大公の現在の側近達。

「わかった、認めよう。お前とお前、ちょっと耳を貸せ」

 ワズ大公は耳打ちして出陣する目的を告げると、騎乗し側近から長槍を受けとる。右手に槍と手綱、左手で腰の剣を抜くと高らかに掲げる。

「出るぞ!! 門を開けよ!」

 大公自ら出陣とあり、城を守る兵士の士気が大きく上がる。喝采を上げて兵士自ら鼓舞する。そして固く閉ざされた門が開かれていく。

「突撃ぃ!!」

 ワズ大公と十人の騎馬が一斉に城を出るなり、三方に分裂する。ワズ大公は、二騎を引き連れ通りの真ん中を敵を蹴散らしながら走り抜ける。そして街中で戦闘を行っている兵士達へ、指示を出す。

 混乱を収めるために対応の指示を出すことが、ワズ大公の考えた最善策であった。

「落ち着くのだ! 近くの者と二対一で当たれ! 互いに背後を任せるのだ!」

 鍛えられた兵士の方が力は上だと見たワズ大公は、互いに背中合わせで戦うことで、突然現れる襲撃者に対応させる。最も兵士が恐れるのは背後からの奇襲。それの対策であった。

「近くに味方が居ない者は、走れ! 兎に角、走って走って動きを止めるな!! そうすれば前方だけに注意すればいい!」

 声を張り上げ馬を駆る。その姿に兵士達の混乱は止まり、冷静さを取り戻してくる。

「大公!!」

 側近が叫ぶ。ワズ大公に狙いを定めた矢の雨が降り注ぐ。

「舐めるなぁ!」

 ワズ大公は柄の長い槍を振り回しながら、次々と降ってくる矢をはね除けてみせる。

「むっ! 魔法か!?」

 矢に紛れて跳んでくる魔法に対して器用に剣で弾く。両手を使ったために馬の手綱を持てず体勢が大きく崩れる。しかし、ワズ大公は馬をあぶみのみで操り、よろけた馬を立て直した。

「ワシを舐めるなと言っただろうがぁ!」

 屋根から弓矢と共に魔法で攻撃してきた者を見定め、ワズ大公は長槍を放り投げると見事に胸を貫く。

 これが好機だと睨んだ襲撃者達は、長槍がなければ防げないと踏み、弓を構える。しかし、矢は放たれることなく、隙をつき屋根へと飛び移った兵士に、ことごとく斬られる。

 その瞬間であった。

「がああっ!!!!」

 何処からともなく屋根を注視していたワズ大公の反対側から現れた襲撃者が放った魔法が命中する。ワズ大公を乗せていた馬は首をやられたのか絶命し、ワズ大公も血を吹き流しながら地面へと落馬して、動かなくなってしまった。

「大公!! おい、急げ、私の馬に大公を乗せるのだ」

 兵士が悲痛な表情でワズ大公の側近の一人の馬へ乗せるのだが、見た目にも出血が酷い。

「ひ……退くな。この……ま、ま、続ける……のだ」
「大公!!」

 力を振り絞り側近へ指示を出したワズ大公は、その後ピクリとも反応がない。
側近は僅かな時間で悩みに悩み抜き決断を下す。

「このまま兵士を立て直し続けるぞ! 走れぇ!!」

 作戦を続行することに決め、ワズ大公を馬に一緒に乗せながら側近達は、街中を走り抜けるのだった。
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