傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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ツンデレは可愛い

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月日が経つのは早いもので、後3ヶ月程すれば、私達より2つ年上の王太子殿下が卒業する。


私達が通っているコンフォール学園は、名の通り王立の学園である。貴族は勿論、平民でも試験を受けて合格すれば入園する事ができる。この学園には学業を基本とし、色んな学びのコースがあり、平民の為の商業コースや執事、侍女になる為の育成コースもある。騎士コースは、身分関係無く男の子には人気である。

私は、ベルフォーネ様が淑女コースを選択している為、同じ淑女コースを学んでいる。クラスに関しても、AクラスからDクラス迄学力順位で振り分けられるのだが、ベルフォーネ様も私も同じAクラスに在籍している為、常に一緒に行動する事ができた。

おまけに、3年生に在籍している王太子殿下が生徒会長を努めていた事もあり、ベルフォーネ様も生徒会の書紀を努めていた。



王太子殿下が、ベルフォーネ様との時間を確保したかったら…だそうです。



ー本当に、殿下はベル様の事が…大好きだよねー




今も、本来なら生徒会長の任は、次代の会長に引き継いでいる為、殿下が生徒会室に来る必要はないのだけど、ベルフォーネ様が作業をしている横の椅子に座っている。

「私も後少しで卒業か…。もう生徒会室ここに来る事も無くなるのか…と思うと、少し寂しいな。私は卒業すれば、公務が増えるだろうし、は、王妃教育もあるし…。」

“ベーネ”とは、殿下だけのベルフォーネ様の呼び名である。

「レオも、ようやく生徒会室ここに来なくて良くなりますわね。嬉しい限りですわ。」

ニッコリ微笑むベルフォーネ様。

「「………」」

勿論、殿下はショックを受けている。

殿下としては、ベルフォーネ様と会える時間が少なくなる事を悲しんでいるのに、ベルフォーネ様は嬉しいと言う。

ー殿下、違うんです。ベルフォーネ様は、ツンデレですからね?そのままの意味で受け取らないで下さいー

と心の中で囁いてから、私が言葉を挟む。

「そうですね。殿下が生徒会室ここに来なくて良いとなれば、公務に集中できますし、生徒会長としての仕事が減る分、体を休める時間も増えますから、ベル様が、殿下のお身体の心配をする事も…少しは減りそうですね?」

「え?」

「それに、ベル様の王妃教育の時間が増えると、王城に行く日も増えますから、時間が合えばお会いできますしね?」

「なっ─!シル!?」

と、私がフォローすると、ポンッと顔を赤くしてそっぽを向くベル様と、ショック顔から満面の笑みへと変化させる殿下。
殿下は、そっぽを向いているベル様の頬に手を当てて、自身の方へと顔を引き寄せる。

「ベーネ?今、シルフィー嬢が言った事は…当たってる?」

「なっなっ──────っ!!」

ベル様が、恥ずかしさのあまりプルプルと震えて涙目になっている。

ーツンがデレると、本当に可愛いしかないらしいー

私は2人の邪魔にならない様に、ソッと隣の部屋へと移動した。

ー空気を読むのも…侍女の仕事ですー











「本当に、シルフィー嬢はベルフォーネ様の第一の理解者─ですね。」

隣の部屋に移動すると、クスクスと笑う、生徒会の役員をしているマーカス=リンデル様が居た。

「リンデル様、こちらにいらしていたのですね?気付きませんでした。」

「来る予定ではなかったんだけど、少し確認しておきたい事があってね。」

「何か、お手伝い致しましょうか?殿下達は…もう少し時間が必要でしょうから…。」

「確かにね。」

と、リンデル様が少し笑った後、借りて来て欲しい本があると言う事で、図書室に行く事になった。














ーあった!けど、微妙な位置にあるなぁー

「梯子は何処に…」

目的の本に手を伸ばしても届かなかった為、キョロキョロと梯子を探していると

「欲しいのはコレか?」

背後からスッと手が伸びて来て、目的の本を取ってくれた。

「あ、ありがとうごさい───」

お礼を言おうと、その手の主である人の方へと振り向くと、この学園の生徒ではない…大人な男性が立っていた。
一瞬のうちに警戒したが、その瞳を見てハッとする。

王族を意味する紫色の瞳──

直ぐに王族の顔ぶれを思い浮かべる。そうして、その中で目の前に居る男性と一致する様な人は…

「王弟殿下…でしょうか?」

そう尋ねると、その男性は軽く目を瞠る。

「そうだが…俺と会った事…あったか?」

「いえ、初めてでございます。」

「よく分かったな?俺、あんまり公の場には顔を出していなのだが…瞳の色か?まぁ…兎に角、この本で良かったのか?」

「はい、コレで合っています。取っていただき、ありがとうございます。」

お礼を言ってから、本を受け取る。

「それでは、これで失礼致します。」

そう言って一礼してから、私は生徒会室へと足を向けた。





挨拶どころか、名前を告げる事すら忘れていた─事には、暫くの間、全く気が付かなかった。













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