傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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エレーナとマクウェル

「シルフィー!会えたわね!」

「……エレーナ。」

笑顔で駆け寄って来るエレーナ。

ー“”とは、どう言う意味だろう?それも、大声でー

「エレーナ…久し振りね。元気だったかしら?」

少し息を切らしたエレーナが目の前迄やって来た為、気になる事は置いておいて、取り敢えず挨拶を口にする。

「えぇ、私は元気よ。それより…シルフィーも元気だった?ずっと忙しそうで、なかなか会えなかったから心配してたのよ?」

「ありがとう。確かに忙しかったけど、私も元気よ。」

さっと周りを見渡すが、どうやらエレーナ以外…誰も居なさそうだ。

「エレーナはどうしてこんな所に?アーロンや…誰かと一緒に来たの?」

「私1人だけよ。シルフィーに会いたくて探してたのよ。」

「私を?何か…用があったの?」

「用は…無いけど、会いたかったから…ひょっとして…平民の私が学園でシルフィーに声を掛けるのは…迷惑だった?」

さっきまで可愛らしい笑顔だったのに、一瞬にして目を潤ませて俯くエレーナ。

「違うわよ。もし、何か用があって、ずっと探してくれていたのなら、手間を掛けさせてしまって悪かったなって思っただけよ?」

「本当に?」

私に会いたいから探していた─と言う割に、平民だからとか言うのは…おかしくない?本当にそう思っているなら、態々私を探してまで会いに来ないと思うけど─いや、考え過ぎかな?

「本当よ。でも、時間が時間だから、校舎迄 一緒に戻りましょうか。」

「…うん。」

下を向いたままのエレーナに声を掛けると、何故かエレーナが少し後退る。

「あ、エレーナ気を付けて、後ろ──」

と、エレーナに向かって手を伸ばした瞬間

「きゃあっ─っ!」

「エレーナ!?」

エレーナの後ろにあった水溜りのような所に足をとられて、そのまま後ろ向きに倒れ込んでしまった。

ーあぁ、“気を付けて”と言おうとして、間に合わなかったー

「エレーナ、大じょ──」

「エレーナ!」

私が“大丈夫?”と手を差し伸べようとした時、私の後ろからエレーナを呼ぶ声がした。

「エレーナ、大丈夫か?」

「え?マクウェル…様?」

「………」

「あぁ、制服が濡れてしまったな。怪我は…していないか?」

「えっと…大丈夫で──痛っ」

立ち上がろうとしたエレーナが、足首を抑えて蹲る。

「足を捻ったのか…エレーナ、少し我慢してくれ。」

そう言うと、マクウェル様がエレーナを横抱きにして立ち上がった。

「このまま医務室に行こう。そこで、制服も貸してもらえるだろうから。」

そのまま歩き出そうとするマクウェル様。こんな状態で2人きりにするのは良くないよね?

「マクウェル様、私も一緒に─」

「シルフィーは来なくて良いよ。」

「はい?」

私の言葉にマクウェル様が被せるように話し出す。

「──誰にも見られてなかったと思ってる?」

そう言いながら、ようやくマクウェル様が私の方へと視線を向けた。その顔は…以前の様な優しい笑顔ではなくて──

「エレーナが、1人でシルフィーに会いに行くと言う事が心配だったから、エレーナには内緒でつけてきたんだよ。だから、私は全部見ていたんだ。シルフィー、君が、エレーナをところをね。」

“押し倒した”?

「何を────」

言い掛けて、ハッとした。

ーやられた!?ー

「何も言い返せないのか?」

ー何を、言い返せと?ー

「……」

暫くの沈黙の後、マクウェル様はギュッと目を瞑って息を吐いた後、エレーナを横抱きにしたまま歩き出した。






『何も言い返せないのか?』



ソレは、言いたい事はないのか?と訊いているようで、訊いていない。“私がエレーナを押し倒した”事は決定事項であり、それに対しての謝罪だけを求めているようなモノだろう。

確かに、遠くから見ただけなら、私がエレーナを押し倒したように見えたのだろう。でも─マクウェル様は、あんな人だっただろうか?一方的に決めつけて、私の話を聞こうともしなかった。

「あぁ、そうか。」

マクウェル様にしたら、エレーナ好きな人を傷付けたやつの話なんて…聞きたくもないって──事なのかもね。もう、あの笑顔を向けられる事は…無いかもしれない。
言い訳─きちんと今の事も説明をすれば良いのかもしれないけど…何となく、火に油を注ぐ事にしかならない様な気がする。

「どうせ……エレーナを選ぶんだから…これで…良いのよ。」

1人呟いて、私は教室へと向かった。













   




*医務室にて*


「貸出用の制服を持って来るから、少し待っててね。」






校医先生が医務室から出て行き、マクウェルわたしとエレーナの2人きりになる。

「エレーナ、大丈夫か?」

「うん、大丈夫よ。ありがとう。」

「まさか…シルフィーがこんな事をするとは…」

「マクウェル様、シルフィーもわざとじゃなかったかもしれないし…ね?」

エレーナは優しい。王都に来てから、何度もシルフィーに約束を破られて。その上──それなのに、シルフィーを庇おうとする。

「エレーナ…」

呼び掛けて、ふとエレーナの左手首に視線が留まる。薄っすらと残る傷痕。

その瞬間、何かが頭の中に流れ込んで来た。

「───っ!?」

頭が何かに殴られたような痛みが襲い

「マクウェル様!?」

エレーナの焦った様な声を最後に、私の意識が途切れた。











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