49 / 57
反撃④
しおりを挟む
「キリクスは代々王城勤めであり、有り難くも国王陛下に仕えている為、手紙一つにまで細心の注意を払って扱っています。何事もない手紙一つでも、ソレを悪用してキリクスを蹴落とそうする者が居るからです。確かに、この手紙─便箋にはキリクスの家紋が入ってあり、封蝋もシルフィー=キリクスの物に間違いはありません。」
「では──」
と、口を開き掛けたマクウェル様を、私は視線を向けて止める。
「ですが、コレだけでは簡単に悪用されますから、本当に私が使う便箋には、更に印となるモノをつけてあります。それと、使用するインクにも工夫を施しています。」
「印?工夫?」
ここで、ようやく、少しだけエレーナの表情が翳る。
アーロンから手渡された5通のうちの1通が、私がアヤメさんに宛てた手紙だった。
ーアーロンとアヤメさんの準備は完璧ですー
「この手紙は、本当に私が叔母様に宛てた手紙です。その便箋の右下を見てもらえますか?」
先ずは王弟殿下に渡し、それから部屋に居る人達に順番に見てもらう。その後に、他の4通の手紙も見てもらう。
「透かし…か?」
「そうです。右下に、透かしで家紋を入れています。それも、その手紙を書く時によって、透かしの位置を変えています。」
勿論、4通の手紙の便箋に透かしは無い。
「それと、使用しているインクですが、特殊なインクで、その時時で変えていますが、熱を当てると色が変化するようになっています。」
火の魔力を持つユシール王子が、手の平にほんのりと火を灯し、便箋に軽くその熱を当てると、黒色だったインクが黄色に変化した。
もう一人、火の魔力を持つベルフォーネ様も同じように持っている便箋に熱を当てる─が、その便箋のインクの色は変化しなかった。
「これでお分かりだと思いますが、その4通の手紙は私が書いたモノではありません。」
「そんなの!それを逆手に取って、わざとやったのかも知れないじゃない!」
「どうしてそんな事をする必要が?それこそ、何故、私がキリクスに付け入る隙を与えるような事をしなければならないの?」
エレーナは、これでもまだ……
「それは…シルフィーがマクウェル様の事が好きなのに、マクウェル様が選んだのが平民の私で…嫉妬したからじゃないの!?」
これには、マクウェル様と王弟殿下が微かに反応した。
私は軽く息を吐き、王弟殿下へと視線を向けてニコリと微笑んだ。そして、それからマクウェル様へと視線を向けた。
「確かに…幼い頃は、マクウェル様に恋心を抱いていました。」
マクウェル様から視線を逸らす事なく、私はそのまま言葉を続ける。
「ですが、それも幼かった頃の話です。私にとっては、もう既に過去の事です。キリクスの祖父母、父や兄に訊いてもらっても構いませんが、もともと、私はマクウェル様の婚約者候補から外して欲しいと─ずっとお願いしていました。それを、学園を卒業する迄は─と、祖父とレオグル様にお願いをされたから外れる事ができなかっただけです。ですから、私がエレーナに嫉妬するなんて事は…有り得ないんです。」
ハッキリと言い切ると、マクウェル様は私から視線を逸し、手で顔を覆って俯いた。
「でもっ──」
それでもまだ言い募ろうとするエレーナ。
「“影”が付いている─と言ったでしょう?“影”は、ユシール王子、王弟殿下は勿論の事…王太子殿下の婚約者でもあるベルフォーネ様にも付いているわ。その意味…エレーナには分かるかしら?」
「“影”?意味?」
「王族には、その身を守る為に“影”を付けられるの。常に監視されている─ようなモノなのよ。だから…その“影”達は、全てを見ているの。そして、私は常にベルフォーネ様と行動を共にしているのよ。」
「あ……」
そこで、エレーナもようやく理解をしたのだろう。一気に顔色を無くし、カタカタと震え出した。
「ようやく、分かってくれたようで…安心したわ。念の為に言っておくけど、その“影”達は、決して雇い主に嘘を吐く事も裏切る事も無いわ。」
「もし、その“影”が…雇い主に命令されて…エレーナに手を出したとか…シルフィーが…“影”の目を盗んでやった…とか…」
「マクウェル様……」
自分でも、おかしい事を言っている自覚はあるのだろう。今にも泣きそうな─苦しそうな顔をしている。
ならば───私が止を刺すだけだ。
「先ず、王族に付く“影”の雇い主は国王陛下です。国王陛下がそのような下らない命令を下す意味は…ありません。次に、私が─と言う事ですが…私も“影”の一人なんです。なので、私も、私の雇い主には嘘を吐く事はできません。私の無実が信じられないなら、私の雇い主に誓う事で信じてもらうしかありません。」
敢えて、私が“影の盾”だと言う事と、雇い主が国王陛下だと言う事を伏せておく。
表立っては、私が普通の“影”で、雇い主がベルフォーネ様の父である宰相となっている為だ。おそらく、王弟殿下以外の皆も、そう思っているだろう。
「そうか…。すまなかった…シルフィー。」
ここでようやく、マクウェル様が私に謝罪を口にした。
❋【モブ】の続編も、今日から始めました。お時間ある時にでも覗いていただければ幸いです❋
「では──」
と、口を開き掛けたマクウェル様を、私は視線を向けて止める。
「ですが、コレだけでは簡単に悪用されますから、本当に私が使う便箋には、更に印となるモノをつけてあります。それと、使用するインクにも工夫を施しています。」
「印?工夫?」
ここで、ようやく、少しだけエレーナの表情が翳る。
アーロンから手渡された5通のうちの1通が、私がアヤメさんに宛てた手紙だった。
ーアーロンとアヤメさんの準備は完璧ですー
「この手紙は、本当に私が叔母様に宛てた手紙です。その便箋の右下を見てもらえますか?」
先ずは王弟殿下に渡し、それから部屋に居る人達に順番に見てもらう。その後に、他の4通の手紙も見てもらう。
「透かし…か?」
「そうです。右下に、透かしで家紋を入れています。それも、その手紙を書く時によって、透かしの位置を変えています。」
勿論、4通の手紙の便箋に透かしは無い。
「それと、使用しているインクですが、特殊なインクで、その時時で変えていますが、熱を当てると色が変化するようになっています。」
火の魔力を持つユシール王子が、手の平にほんのりと火を灯し、便箋に軽くその熱を当てると、黒色だったインクが黄色に変化した。
もう一人、火の魔力を持つベルフォーネ様も同じように持っている便箋に熱を当てる─が、その便箋のインクの色は変化しなかった。
「これでお分かりだと思いますが、その4通の手紙は私が書いたモノではありません。」
「そんなの!それを逆手に取って、わざとやったのかも知れないじゃない!」
「どうしてそんな事をする必要が?それこそ、何故、私がキリクスに付け入る隙を与えるような事をしなければならないの?」
エレーナは、これでもまだ……
「それは…シルフィーがマクウェル様の事が好きなのに、マクウェル様が選んだのが平民の私で…嫉妬したからじゃないの!?」
これには、マクウェル様と王弟殿下が微かに反応した。
私は軽く息を吐き、王弟殿下へと視線を向けてニコリと微笑んだ。そして、それからマクウェル様へと視線を向けた。
「確かに…幼い頃は、マクウェル様に恋心を抱いていました。」
マクウェル様から視線を逸らす事なく、私はそのまま言葉を続ける。
「ですが、それも幼かった頃の話です。私にとっては、もう既に過去の事です。キリクスの祖父母、父や兄に訊いてもらっても構いませんが、もともと、私はマクウェル様の婚約者候補から外して欲しいと─ずっとお願いしていました。それを、学園を卒業する迄は─と、祖父とレオグル様にお願いをされたから外れる事ができなかっただけです。ですから、私がエレーナに嫉妬するなんて事は…有り得ないんです。」
ハッキリと言い切ると、マクウェル様は私から視線を逸し、手で顔を覆って俯いた。
「でもっ──」
それでもまだ言い募ろうとするエレーナ。
「“影”が付いている─と言ったでしょう?“影”は、ユシール王子、王弟殿下は勿論の事…王太子殿下の婚約者でもあるベルフォーネ様にも付いているわ。その意味…エレーナには分かるかしら?」
「“影”?意味?」
「王族には、その身を守る為に“影”を付けられるの。常に監視されている─ようなモノなのよ。だから…その“影”達は、全てを見ているの。そして、私は常にベルフォーネ様と行動を共にしているのよ。」
「あ……」
そこで、エレーナもようやく理解をしたのだろう。一気に顔色を無くし、カタカタと震え出した。
「ようやく、分かってくれたようで…安心したわ。念の為に言っておくけど、その“影”達は、決して雇い主に嘘を吐く事も裏切る事も無いわ。」
「もし、その“影”が…雇い主に命令されて…エレーナに手を出したとか…シルフィーが…“影”の目を盗んでやった…とか…」
「マクウェル様……」
自分でも、おかしい事を言っている自覚はあるのだろう。今にも泣きそうな─苦しそうな顔をしている。
ならば───私が止を刺すだけだ。
「先ず、王族に付く“影”の雇い主は国王陛下です。国王陛下がそのような下らない命令を下す意味は…ありません。次に、私が─と言う事ですが…私も“影”の一人なんです。なので、私も、私の雇い主には嘘を吐く事はできません。私の無実が信じられないなら、私の雇い主に誓う事で信じてもらうしかありません。」
敢えて、私が“影の盾”だと言う事と、雇い主が国王陛下だと言う事を伏せておく。
表立っては、私が普通の“影”で、雇い主がベルフォーネ様の父である宰相となっている為だ。おそらく、王弟殿下以外の皆も、そう思っているだろう。
「そうか…。すまなかった…シルフィー。」
ここでようやく、マクウェル様が私に謝罪を口にした。
❋【モブ】の続編も、今日から始めました。お時間ある時にでも覗いていただければ幸いです❋
143
あなたにおすすめの小説
若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
長岡更紗
恋愛
侯爵令嬢だったユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
仲睦まじく過ごしていたある日、父親の死をきっかけにどん底まで落ちたユリアーナは婚約破棄されてしまう。
愛し合う二人は、離れ離れとなってしまったのだった。
ディートフリートを待ち続けるユリアーナ。
ユリアーナを迎えに行こうと奮闘するディートフリート。
二人に巻き込まれてしまった、男装の王弟。
時に笑い、時に泣き、諦めそうになり、奮闘し……
全ては、愛する人と幸せになるために。
他サイトと重複投稿しています。
全面改稿して投稿中です。
私を嫌っていた冷徹魔導士が魅了の魔法にかかった結果、なぜか私にだけ愛を囁く
魚谷
恋愛
「好きだ、愛している」
帝国の英雄である将軍ジュリアは、幼馴染で、眉目秀麗な冷血魔導ギルフォードに抱きしめられ、愛を囁かれる。
混乱しながらも、ジュリアは長らく疎遠だった美形魔導師に胸をときめかせてしまう。
ギルフォードにもジュリアと長らく疎遠だったのには理由があって……。
これは不器用な魔導師と、そんな彼との関係を修復したいと願う主人公が、お互いに失ったものを取り戻し、恋する物語
【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
堅物騎士団長から妻に娶りたいと迫られた変装令嬢は今日もその役を演じます
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
第零騎士団諜報部潜入班のエレオノーラは男装して酒場に潜入していた。そこで第一騎士団団長のジルベルトとぶつかってしまい、胸を触られてしまうという事故によって女性とバレてしまう。
ジルベルトは責任をとると言ってエレオノーラに求婚し、エレオノーラも責任をとって婚約者を演じると言う。
エレオノーラはジルベルト好みの婚約者を演じようとするが、彼の前ではうまく演じることができない。またジルベルトもいろんな顔を持つ彼女が気になり始め、他の男が彼女に触れようとすると牽制し始める。
そんなちょっとズレてる二人が今日も任務を遂行します!!
―――
完結しました。
※他サイトでも公開しております。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!
病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜
白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。
たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。
そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…?
傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる