傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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不思議な感情

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*アシュレイ視点*




「現ルーラント公爵は、隣国の王家の血筋を持つマクウェル様を、そのままルーラントに残したかったようですが、祖父であるレオグル様が赦さず、学園を卒業した後、養子縁組を解消して隣国へと連れ帰るそうです。」




学園が春休みに入り少ししてから、マクウェルの処遇についての知らせが入った。

「そうか。緩い処遇だか…王族関係者ならば仕方ないか…。」

個人的には物足りないが、隣国へ帰ってしまえば、シルフィーとはもう二度と会うことは無いだろう。それはそれで、良いのか─と思う事にしておくか。

「それとエレーナですが、2日程前に、予定通りに修道院に到着したそうですが、まぁ何と言うか…相変わらずな態度で反省すらしていないようです。“久し振りに、教育し甲斐のある子が来たわね”と…院長は笑っていたそうですが。」

ーあぁ、あの院長が…。なら、この先だろうー

「報告、ご苦労だった。」

「それでは、失礼致します。」




緩いとは言え、あの3人の処遇は決まった。ならば、後はシルフィーの噂を消すだけだ。

「ま、それも直ぐに…収まるだろう。」

ー次の夜会が楽しみだー

思わず口元が緩む。
まさか、自分がまた、夜会が楽しみだと思う日が来るとは…。
おそらく、婚約発表すれば反発する者が出て来るだろう。

「ま、そんな奴は…潰すだけだがな…」

そう呟いた。


















*夜会当日*




「王弟殿下、この様な素敵なドレスを用意していただいて、ありがとうございます。」

少し早目の時間に王城にやって来たシルフィーが、俺の居る控え室にやって来た。

俺が贈ったドレスを身に纏っている。
淡い紫色のエンパイアタイプで、裾には金糸と銀糸で刺繍がされている。まだまだ稚さの残るシルフィーが、エンパイアタイプのドレスを着ると一気に大人びた雰囲気を醸し出す。
俺の色を纏うシルフィーは、更に綺麗だった。

「似合っている。綺麗だ。」

飾ることなくスルリと口から出た言葉に、自分自身が驚いた。

「ありがとう…ございます…。その…紫色を身に纏うのは…初めてで。えっと…似合ってると言われると…嬉しいです。」

目の前のシルフィーが…いつも無表情なシルフィーが…少しキョドりながら言葉を選びながら“嬉しい”と言う。そして、言った後、よく見てみるとほんの少しだけ顔が赤くなっていた。

ー何だ?この可愛いのはー

そう思ったのは一瞬で、次の瞬間には無意識にシルフィーを抱き寄せていた。

「え?」

俺の腕の中で焦っているシルフィー。いや、俺も内心焦っている。まさか、自分が無意識のうちにこんな行動を取るなんて─。
最初は、王弟だと知っている俺に全く興味を示さなかった令嬢が面白い─と思っただけだったのに。正直、今もどうしてここまでシルフィーに固執するのか解らない。解らないが、俺以外の者にシルフィーをやりたくない─と言う事だけは解る。

「あの…王弟で…」
「アシュレイ─だ。」

「はい?」

俺の腕の中から、キョトンとした顔のままで顔を上げる。

「俺の名前だ。知らなかったか?」

「いえ、知ってますけど…??」

「なら、俺の事は名前で呼べ。良いな?」

「──え?名前…ですか?」

名前呼びを許しても、嬉しそうにするどころか、何故か眉間に皺を寄せるシルフィー。

「アッシュでもレイでも良いが?」

「え!?それ、難易度上がってますから!わっ───分かりました────アシュレイ様!」

ポンッと顔が真っ赤になったシルフィー。

ーソレ、反則じゃないか!?ー

「ゔっ──。あのっ…おう──アシュレイ様、ちょっと苦しいです!」

シルフィーの顔を俺の胸に押し当てて、腰に回した腕に力を入れ更に抱き寄せた。

『アシュレイ様』

シルフィーに、そう名を呼ばれただけなのに、何故か俺も恥ずかしい気持ちになってしまった。そんな俺を見られたくなくて…。もう、自分で自分が分からない─でも、不快ではない。寧ろ──

「王弟殿下、そろそろお時間でございます。」

「分かった。」

扉の向こう側がら声が掛かり、そのまま軽く息を吐いてからシルフィーから少しだけ離れる。

「…すまないな、大丈夫だったか?」

「だい…じょうぶです…」

少し顔が赤いままで、少し困ったような顔するシルフィー。

ー“愛おしい”と言うのは、こう言う事を言うのだろうなー

「残念だが、そろそろ行く時間だ。まぁ…続きは後からでもできるしな?」

「続き!??」

今度はピシリッと固まるシルフィーに、俺はニヤリと笑ってからシルフィーをエスコートしながら2人一緒にその部屋を出た。













今日の夜会は、シルフィーよりも一つ年上の子息、息女達の社交界デビューの為の夜会だ。
シルフィーの正式なデビューは来年だが、飛び級で学園を卒業した事と、王族である俺との婚約を発表するのに、タイミングが丁度良いのではないか─と、兄上に言われたのだ。確かに、シルフィーは、ベルフォーネ嬢の付き添いで学園には行くが、授業を受ける事はない。そうなると、また馬鹿げた噂が広がる。その前に─と言う事だろう。





ホールでは、既に夜会は始まっている。後は、デビュタント達のダンスが終わるのを待つのみ。

ー婚約発表をした後、か…ー

チラリと、横に居るシルフィーに視線だけを向けると、やはり、シルフィーは前を真っ直ぐ向いて凛とした姿で立っている。そんなシルフィーに、ついつい顔が緩んでしまいそうになるのを堪えて、俺は目の前の扉が開かれるのを待った。




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