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最終話
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「今日の華やかな夜会において、更にめでたい発表がある。デビュタント達にも、一緒に祝ってもらいたい。」
国王陛下の言葉と共に、目の前の扉が開き、私は王弟殿下─アシュレイ様のエスコートでホールへと入って行った。
「何故、王弟殿下と“傷物”が?」
「王弟殿下は、あの噂をご存知無いのでは?」
「身の程を知らない“傷物”が─」
入場と共に、先輩達から囁かれる言葉。こうなるとは分かっていた。でも、私をエスコートしているアシュレイ様の表情も態度も変わらない。なら、今の私にできる事は、そんな周りの言葉に惑わされずに、真っ直ぐ前を向くだけだ。
そのまま国王両陛下の居る前迄進み、2人揃って挨拶をしてからホールの方へと振り返る。
「この度、我が弟であるアシュレイと、シルフィー=キリクス伯爵令嬢の婚約が調った。婚姻は、2年後とする。」
ー婚姻が2年後!?え?私、聞いてない…わよね!?ー
ホールが一気にざわつき、私も表情を変えずにアシュレイ様を見上げると
「2年もあれば、落とせるから、安心して準備をしておくと良い。」
と、耳元で囁かれた。
ーな─────っ!!ー
「失礼ながら、申し上げます!」
もう少しで叫びそうになったところで、ホールの人だかりの方から声が掛かった。
「ふむ──発言を許そう──。」
人だかりの中から、デビュタントではない女性が前えと進み出て来た。おそらく、付き添いで来ているデビュタントの姉だろう。
「陛下は、学園内における噂をご存知ありませんでしょうか?そこの─シルフィー=キリクス嬢は、学園をサボリがちで、王城では男漁りをしている“傷物”だと言う事を。その様な者が、王弟殿下の婚約者とは…認める訳には参りませんわ。」
その女性は大声でハッキリと、勝ち誇ったかのような顔で言い切り、今は私を睨みつけるようにして見ている。
ーあ、ひょっとして…この人、過去にアシュレイ様と…ー
横に居るアシュレイ様に視線を向けると、物凄い腹黒な笑顔で微笑んでいた。
「面白い。何故、俺の婚約に関して、公爵令嬢でしかないお前の許可が必要なんだ?」
「え?」
「それと、お前は今言ったな?“噂”だと。ルブルナ公爵家は、噂だけで物事を判断するんだな。その様な家の者が公爵を名乗っているとは…そちらの方が問題ではないのか?」
「そ…その様な事はございません!今の事は、娘が勝手に──」
慌てて出て来たのが、おそらくこの女性の父であるルブルナ公爵だろう。気の毒な位顔が真っ青になっている。
「お前に説明してやろう。シルフィーは学園をサボっていた訳ではない。俺との婚約の為に1年飛び級して卒業する事になったから、毎日学園に来ていたが、別室で授業を受けていたんだ。それは、学園の先生や学園長に訊けばすぐ分かる事だ。」
「飛び級!?」
ー“婚約の為”ではないけどー
「後、王城での男漁りだったか?勿論、漁ってなどいない。シルフィーが、ベルフォーネ嬢の付き添いで登城した時は、俺のとこに来ていたんだ。婚約者の俺に会いにね。これも、魔法棟の者に訊けば良い。シルフィーが俺の執務室に来ていた事は、知っているからな。」
「じゃあ、アレは全部嘘だったの?」
「一体誰がそんな嘘を!?」
ホール全体がざわついたが、アシュレイ様は気にする事なく話を続ける。
「貴族筆頭である公爵の者が、真偽を確かめもせず噂を信じ行動するとは…ルブルナ公爵、これからの事、しっかり考えた方が良いのではないか?今日は、デビュタントの祝いの夜会だ。今の事は不問にするが──二度目はないからな?また、シルフィーを貶める様な事をすれば、次は一切容赦はしない。」
「申し訳ございませんでした!」
と、ルブルナ公爵は頭を下げて謝り、娘を引き摺るようにしてホールから出て行った。
それから、国王陛下が仕切り直し、デビュタント達のダンスを再開させ、毎年通りの流れで執り行われた。
「シルフィー、お疲れさん。」
「アシュレイ様、お疲れ様でした。」
アシュレイ様がソファーに座り、その横をポンポンと叩く。
“ここに座れ”と言う意味だろう。
その為、近すぎるなぁ…と思いながらも腰を掛けようとすると、そのまま腰をひかれてアシュレイ様の足の上に座り、後ろから抱きしめられる格好になってしまった。
「アシュレイ様!下ろして下さい!」
「俺、立て続けに苦手な夜会に参加させられて疲れてるんだ。だから、シルフィーで癒やしてもらう。」
「癒し!?私で癒しって何ですか!?」
「ん?好きな子を抱きしめてると、癒やされるって事だ。」
「─つ!?」
ー好きな子って…癒やされるって!?!?ー
そんな事、こんな格好で耳元で囁かないで欲しい!
「シルフィー?」
「……はい、なんでしょうか?」
「こっちに向こうか?」
と、グイッと顔を向けさせられる。
「…顔が真っ赤だな……。可愛いな。」
「かわっ───」
口を開きかけた瞬間に、アシュレイ様にキスされた。
触れるだけのキスじゃなくて、深いキスだった。
ーなっ…に…これ!?ー
深いキスだっけど、長くしていた訳じゃないのに、体中がドクドクと熱を持つ。それなのに、初めてなのに、全く嫌な感じではなく、寧ろ────
「はぁ──キスだけでコレか──」
頭がふわふわしてポヤッとしていると、アシュレイ様が困った様に呟く。
「キスだけ?コレ?一体…どう言う…」
「前に言っただろう?魔力の相性が良いと、他にもメリットがあると。」
「──────まさ…か…」
「あぁ、そのまさかだ。身体の相性も良いらしい。」
「っっっ!!??」
「あぁ、大丈夫だ。シルフィーはまだ成人していないからな。今はまだこれで我慢しておくから。後1年は逃してやる。その代わり、成人した後は逃さないからな。」
アシュレイ様はニッコリ微笑んで、また私に深いキスをした。
ーコレで我慢って…もう、私にはコレだけでもいっぱいいっぱいです!!ー
それから1年。ベルフォーネ様と共に学園に行き、ベルフォーネ様が授業を受けている間はアシュレイ様のお手伝いをしながら過ごして
ベルフォーネ様が卒業し、私達も無事デビューを果たした。
その、デビューの夜会の後、私はアシュレイ様の宣言通りに……
身体の相性がどれだけ良いのか─たっぷりと思い知らされたのでした。
ー“いばら姫”になんてなれないー
そう思って恋愛も諦めていたけど……私にも私だけの騎士が現れました。
これからは、そのアシュレイと共に歩んで行く。
❋これで、本編は完結となります。後、余話を3話投稿して終わりになります。そちらも、覗いていただければ幸いです。本編最後まで読んでいただき、ありがとうございました❋
*.+゚★☆感d(≧▽≦)b謝☆★゚+.*
国王陛下の言葉と共に、目の前の扉が開き、私は王弟殿下─アシュレイ様のエスコートでホールへと入って行った。
「何故、王弟殿下と“傷物”が?」
「王弟殿下は、あの噂をご存知無いのでは?」
「身の程を知らない“傷物”が─」
入場と共に、先輩達から囁かれる言葉。こうなるとは分かっていた。でも、私をエスコートしているアシュレイ様の表情も態度も変わらない。なら、今の私にできる事は、そんな周りの言葉に惑わされずに、真っ直ぐ前を向くだけだ。
そのまま国王両陛下の居る前迄進み、2人揃って挨拶をしてからホールの方へと振り返る。
「この度、我が弟であるアシュレイと、シルフィー=キリクス伯爵令嬢の婚約が調った。婚姻は、2年後とする。」
ー婚姻が2年後!?え?私、聞いてない…わよね!?ー
ホールが一気にざわつき、私も表情を変えずにアシュレイ様を見上げると
「2年もあれば、落とせるから、安心して準備をしておくと良い。」
と、耳元で囁かれた。
ーな─────っ!!ー
「失礼ながら、申し上げます!」
もう少しで叫びそうになったところで、ホールの人だかりの方から声が掛かった。
「ふむ──発言を許そう──。」
人だかりの中から、デビュタントではない女性が前えと進み出て来た。おそらく、付き添いで来ているデビュタントの姉だろう。
「陛下は、学園内における噂をご存知ありませんでしょうか?そこの─シルフィー=キリクス嬢は、学園をサボリがちで、王城では男漁りをしている“傷物”だと言う事を。その様な者が、王弟殿下の婚約者とは…認める訳には参りませんわ。」
その女性は大声でハッキリと、勝ち誇ったかのような顔で言い切り、今は私を睨みつけるようにして見ている。
ーあ、ひょっとして…この人、過去にアシュレイ様と…ー
横に居るアシュレイ様に視線を向けると、物凄い腹黒な笑顔で微笑んでいた。
「面白い。何故、俺の婚約に関して、公爵令嬢でしかないお前の許可が必要なんだ?」
「え?」
「それと、お前は今言ったな?“噂”だと。ルブルナ公爵家は、噂だけで物事を判断するんだな。その様な家の者が公爵を名乗っているとは…そちらの方が問題ではないのか?」
「そ…その様な事はございません!今の事は、娘が勝手に──」
慌てて出て来たのが、おそらくこの女性の父であるルブルナ公爵だろう。気の毒な位顔が真っ青になっている。
「お前に説明してやろう。シルフィーは学園をサボっていた訳ではない。俺との婚約の為に1年飛び級して卒業する事になったから、毎日学園に来ていたが、別室で授業を受けていたんだ。それは、学園の先生や学園長に訊けばすぐ分かる事だ。」
「飛び級!?」
ー“婚約の為”ではないけどー
「後、王城での男漁りだったか?勿論、漁ってなどいない。シルフィーが、ベルフォーネ嬢の付き添いで登城した時は、俺のとこに来ていたんだ。婚約者の俺に会いにね。これも、魔法棟の者に訊けば良い。シルフィーが俺の執務室に来ていた事は、知っているからな。」
「じゃあ、アレは全部嘘だったの?」
「一体誰がそんな嘘を!?」
ホール全体がざわついたが、アシュレイ様は気にする事なく話を続ける。
「貴族筆頭である公爵の者が、真偽を確かめもせず噂を信じ行動するとは…ルブルナ公爵、これからの事、しっかり考えた方が良いのではないか?今日は、デビュタントの祝いの夜会だ。今の事は不問にするが──二度目はないからな?また、シルフィーを貶める様な事をすれば、次は一切容赦はしない。」
「申し訳ございませんでした!」
と、ルブルナ公爵は頭を下げて謝り、娘を引き摺るようにしてホールから出て行った。
それから、国王陛下が仕切り直し、デビュタント達のダンスを再開させ、毎年通りの流れで執り行われた。
「シルフィー、お疲れさん。」
「アシュレイ様、お疲れ様でした。」
アシュレイ様がソファーに座り、その横をポンポンと叩く。
“ここに座れ”と言う意味だろう。
その為、近すぎるなぁ…と思いながらも腰を掛けようとすると、そのまま腰をひかれてアシュレイ様の足の上に座り、後ろから抱きしめられる格好になってしまった。
「アシュレイ様!下ろして下さい!」
「俺、立て続けに苦手な夜会に参加させられて疲れてるんだ。だから、シルフィーで癒やしてもらう。」
「癒し!?私で癒しって何ですか!?」
「ん?好きな子を抱きしめてると、癒やされるって事だ。」
「─つ!?」
ー好きな子って…癒やされるって!?!?ー
そんな事、こんな格好で耳元で囁かないで欲しい!
「シルフィー?」
「……はい、なんでしょうか?」
「こっちに向こうか?」
と、グイッと顔を向けさせられる。
「…顔が真っ赤だな……。可愛いな。」
「かわっ───」
口を開きかけた瞬間に、アシュレイ様にキスされた。
触れるだけのキスじゃなくて、深いキスだった。
ーなっ…に…これ!?ー
深いキスだっけど、長くしていた訳じゃないのに、体中がドクドクと熱を持つ。それなのに、初めてなのに、全く嫌な感じではなく、寧ろ────
「はぁ──キスだけでコレか──」
頭がふわふわしてポヤッとしていると、アシュレイ様が困った様に呟く。
「キスだけ?コレ?一体…どう言う…」
「前に言っただろう?魔力の相性が良いと、他にもメリットがあると。」
「──────まさ…か…」
「あぁ、そのまさかだ。身体の相性も良いらしい。」
「っっっ!!??」
「あぁ、大丈夫だ。シルフィーはまだ成人していないからな。今はまだこれで我慢しておくから。後1年は逃してやる。その代わり、成人した後は逃さないからな。」
アシュレイ様はニッコリ微笑んで、また私に深いキスをした。
ーコレで我慢って…もう、私にはコレだけでもいっぱいいっぱいです!!ー
それから1年。ベルフォーネ様と共に学園に行き、ベルフォーネ様が授業を受けている間はアシュレイ様のお手伝いをしながら過ごして
ベルフォーネ様が卒業し、私達も無事デビューを果たした。
その、デビューの夜会の後、私はアシュレイ様の宣言通りに……
身体の相性がどれだけ良いのか─たっぷりと思い知らされたのでした。
ー“いばら姫”になんてなれないー
そう思って恋愛も諦めていたけど……私にも私だけの騎士が現れました。
これからは、そのアシュレイと共に歩んで行く。
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