傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん

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余話ーアシュレイー

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「ベルフォーネ嬢が授業を受けている間は、先生オレの手伝いをしてもらう。」






婚約発表をしてから、シルフィーの噂が嘘だったと知れ渡り、それとは反対に、ユシールとエレーナが学園に来なくなった事で、その二人がその嘘の噂に関わっていたのでは?と囁かれるようになった。そのエレーナと仲が良かったマクウェルは、周りの者達に遠巻きにされ、孤立しているようだ。

「自業自得だな。」

「はい?何か言いましたか?」

ついつい口に出してしまったらしい俺の言葉を、キョトンとした顔で俺を見上げているシルフィー。

最近のシルフィーは、俺に対して少しずつではあるが、気を許しているかのように、表情を表すようになって来た。

それが、面白いやら嬉しいやら…そんな気持ちと同時に困った事も増えた。
無表情だった─いや、今でもそうだが─シルフィーが、俺に向かって微笑む事が増えた。その顔といったら───

シルフィーは学園を卒業したとは言え、まだ成人していない。しかも、俺よりも12歳も年下の女の子だ。一線を超えるような行いは絶対にしてはいけない。なのに、あの笑顔を目にすると、どうしても…我慢ができなくなってしまうのだ。

微笑まれたら、無意識のうちにシルフィーを捕まえてキスをしてしまう。しかも、魔力の相性が良過ぎるせいもあって、シルフィーは直ぐにグッタリとしてしまう。

その姿がまた可愛いから困ってしまう。
この俺が、12も年下の女の子に……。

「いや、何でもない。3ヶ月程経ったが、特に問題は無いか?マクウェルからも、何もされていないか?」

「特に問題はありません。時々、態々私のところに謝りに来る人もいますけど。」

そう言いながら、目元を柔らかく細めて微笑むシルフィー。

「マクウェル様とは、あれ以来まともに会話もしていません。避けている訳ではありませんが、学園内では常にベルフォーネ様かアシュレイ様と一緒に居ますからね。そこに態々マクウェル様が近付いて来るなんて事は…ないでしょう?」

「確かに─な。俺は、マクウェルがシルフィーにした事を赦すつもりは一切無いが…もう、恋心は無いと言っても、マクウェルは…シルフィーにとっては幼馴染みのようなものだろう?大丈夫なのか?」

ーこんな事を訊いておきながら、「大丈夫じゃない」とか言われたら、それはそれで腹立たしいがー

そんな風に思っている俺をよそに、シルフィーは少し思案した後

「私は、薄情…なのかもしれませんね。確かに、マクウェル様は幼馴染みで……初恋?の人でした。でも、そのマクウェル様が私よりエレーナを選んだ時から、そんな淡い恋心も少しずつなくなっていったように思います。それに…今では…何と言うか……クズにしか見えないんですよ……。」

「クズ………」

まさか、シルフィーの口からそんな言葉が出て来るとは思わなかった。

「あんなに簡単に、コロコロと自分の都合の良いように自分を変えるんですよ?そんな姿を目の当たりにすれば、100年の恋だって冷めますよ。それに───」

「?」

言葉を一旦区切り、そのまま黙り込むシルフィー。
どうした?と思いシルフィーの顔を覗き込もうとすると、俺の方へと顔を上げて来たシルフィーと視線がぶつかった。

「私には…アシュレイ様が居ますから。」

ふにゃっ──と、音が聞こえるように笑う。

ー可愛いな!ー

と同時に、ぐぅ──っと唸りながら片手で顔を覆う。

「え?アシュレイ様?大丈夫ですか??」

先生オレの手伝いをしろ”

と言ったのは、間違いだったかもしれない。
シルフィーの成人迄、これから後9ヶ月程ある。
ある意味拷問だな──と、一人苦笑した。




















自分の気持ちを自覚してから2年。直近の半年は我慢の毎日だった。この半年の間に、シルフィーはどんどん綺麗になっていくし、俺に色んな顔を見せてくれるようになった。
ベルフォーネ嬢に『シルが王弟殿下に向ける笑顔は、私に向ける笑顔より可愛らしくて…親友として嫉妬してしまいますわ』と言われる程に。

ようやく迎えた、シルフィーの社交界デビューの夜会。オフホワイトのドレスを着たシルフィーは、本当に綺麗だった。

夜会が終わると、そのまま王城内にある俺の部屋へと連れ帰って来た。勿論、前もってオーティス(シルフィーの父)から許可を取っていたし、兄上にも伝えてあった。


“3日は邪魔をするな”──と。








「シルフィー。逃げて良いと言った1年は…今日で終わりだ。」

俺の腕の中に閉じ込めて、頬に手をあてて上を向かせる。
すると、少し目をキョロキョロとさせた後、軽く瞬きをして、ゆっくりと俺と視線を合わせた。

「はい…。逃げません。私は…アシュレイ様を……愛しています。」

「シルフィー……」

“愛しています”

たったその一言だけで、最後の理性が吹っ飛んだ。



















魔力の相性が良いと言うのは…想像以上だった。いや、相性が…良過ぎた………。

俺の腕の中で、気を失う様に寝ているシルフィーがいる。何度も何度も追い立ててしまった。そのせいか…シルフィーの魔力が回復していた。

「どんだけ────」

自分で自分に突っ込みを入れた。
抱きしめているだけで、触れているところが温かくて気持ちが良い。それだけで幸せだな─と思える。寝ているシルフィーの額にソッとキスをして、俺も目を閉じた。



















❋これにて、【傷物】も完結となりました。最後迄読んでいただき、本当にありがとうございました❋
╰(*´︶`*)╯♡









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