8 / 123
第一章ー婚約ー
勝てないのはどっち?
しおりを挟む*エディオル視点*
「ハル─今日のお出掛けがデートになる事…今朝気付いたみたいよ?エディオルさんからも…言ってなかったの?」
ハル殿を玄関ホールで待っていると、ミヤ様に声を掛けられた。
「そうですね。“デート”とは、言ってませんね。意識させ過ぎても…可哀想かなと…」
「……成る程。でも、デートって気付いた時のハルも可愛かったわよ?」
ーうん。それは想像できるし…可愛かっただろうなー
「ひょっとして…ゼンさんから何か言われてる?」
「……」
ミヤ様は、本当に色々と鋭いなと思う。
「ふふっ─やっぱりね。まぁ…仕方無いけど。私は、ハルが嫌がらない限りは、エディオルさんの味方だからね?今日も、ハルをよろしくね。」
ミヤ様がその場を去ると、入れ替わるようにハル殿がやって来た。
「エディオル様、すみません。お待たせしましたか?」
今日のハル殿も、以前出掛けた時のように、普段のハル殿とは違う装いをしている。いつものように後ろで一つにキュッと髪を括っていると、しっかりした印象になるが、今のようにハーフアップにしていると、少し幼く見えて“守らなければ”と思ってしまう。
ーどっちのハル殿でも、可愛い事に変わりはないがー
髪を下ろしてよくは見えないが、ハル殿は今日も、俺の瞳の色のピアスを着けてくれているようだ。
「いや─全然待ってない。それじゃあ…行こうか?」
「はい!」
と、ハル殿は嬉しそうに笑った。
髪留めを見たいと言うハル殿を、義姉上お勧めの店に連れて行った。
「わー…可愛い。それに、本当に安いんですね。平民な私にでも優しいお値段です!」
と、ハル殿が嬉しそうに笑う。本当は、一緒に見て回りたかったが、そうすると、ハル殿が俺を気にしてゆっくり見る事ができないだろう─と思って、俺は少し離れた場所にある椅子に座って待つ事にした。
離れていても、ついつい目がハル殿を追ってしまう。
そう言えば、ハル殿はどうやってこの世界に戻って来たんだろうか。もう─会えないのかと…思っていたけど。
ーあそこに居るのは…本当にハル殿なんだよな?ー
気が緩むと、ついついハル殿に触れて確めたくなってしまう。ハル殿には、いちいち触らないで下さい!と怒られてしまうが、触れていると、ここに居るんだと分かって安心するのだ。
ー怒ったハル殿も可愛いから、それはそれで問題は無いしー
と、少し─本当に気が緩んでいた。いつもなら、気配を感じて避けられたのに─。
そろそろハル殿の所に行こうと、椅子から腰を上げた時だった
「エディお義兄様!」
そう呼びながら、俺に抱き付いて来る女─は、1人しかいない。
ーエレノア=オルソレンー
兄嫁ーレイラ=カルザインーの義理の妹だ。
レイラ義姉上は、しっかりとした貴族令嬢であるのに対し、このエレノアは何もかもがレイラ義姉上とは正反対だ。礼儀もへったくれも無い。このような場所で異性に抱き付くなど、どこで習ったのか教えて欲しい位だ。
付き添いのカミラ殿も、苦労が絶えないだろうな─と、同情すらしてしまう。案の定、カミラ殿がエレノアに注意をするが、本人は反省する気配すらない。エレノアに対し、苛立たしい気持ちはあるが、これ以上エレノアに時間を取られたくなくて、カミラ殿に一言掛けてからハル殿の所に向かった。
ハル殿に、義妹は大丈夫なのか?と訊かれたが
「良いも何も、今日の俺は、ハル殿とお出掛けに来てるんだ。彼女に付き合う義理は無い。」
何故、ハル殿との時間を潰して、あの女の相手をしなければいけないのか──しなくて良いだろう。
ーそんな必要は全く無いだろうー
と思いを込めながら微笑む。
何故か、こう言う時のハル殿は、しっかりきっちり正確に空気を読む。それを、どうして恋愛の方では発揮されないのか─本当に不思議で仕方無い。
ーそれも、ハル殿の可愛い処の一つだがー
一緒に店内を回ると言い、ハル殿の腰に手を添えると、ギョッとした顔で俺を見上げて来る。何かを言われる前に、ハル殿を見ながらニッコリと微笑む。
すると、ハル殿は、「意地悪だ」と言って、ジトリとした視線を向けて来る。その顔も、可愛いだけだからな?と思いながら、手加減せずに攻めると
「勝てる気がしない」
と言うハル殿。
ーいやいや。ある意味俺はハル殿には勝てないがー
そんな風に思っている事は秘密だ。
「それは…良かった。」
と言えば、ハル殿は少し拗ねた様にプイッと俺から視線を外した。
ー本当に“プイッ”と言う効果音が聞こえそうだったなぁー
そこでハル殿の目に留まった髪留め。それに付いている飾りの花が、彼女の世界にあった花に似ているようで、懐かしいなぁ─と言う顔をするハル殿。
一度は、ハル殿への想いに蓋をして、彼女の世界へと還した。二度目は、彼女自身の意志で俺の手からスルリとすり抜けてしまった。
ー三度目なんてー
彼女の背中をポンポンと叩くと、ハル殿は俺に向かって微笑んだ。
ーあぁ…やっぱり…好きだな…愛おしいなー
ハル殿は、自分の意志でこの世界に戻って来たと言った。ならば、もう元の世界へは…還さない。この世界に戻って来て良かったと─元の世界に還りたいと思わない様に、俺がハル殿を幸せに、大切にしていこうと思う。その為には、先ずは俺の気持ちをハル殿にしっかり伝えようと思い、父と母に頼み、青の庭園にハル殿を連れて来たのに──。
「……ここは、許可制で…今日は貸し切りだった筈だろう?」
何となく…騒ぎの原因が予想できて、より一層怒りがこみ上げる。
ー仕方無い。少しでも早く虫を排除しに行くかー
と思い、俺は静かに席を立った。
やっぱり、この時のハル殿は、しっかりきっちり正確に空気を読んで───気配を消していた。
142
あなたにおすすめの小説
氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!
屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。
どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。
そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。
そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。
望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。
心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが!
※あらすじは時々書き直します!
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる