モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語

みん

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第一章ー婚約ー

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*宮下香を返還する当日の朝*


「ハル、すまないが…ネージュにお願いがあるんだけど…。」

と、リュウが申し訳なさそうにやって来た。

「えっと…」

チラリとネージュを見ると─私の横にチョコンと座っているけど、尻尾がピクリとも動いていない。

「お願いって…どんな?」

「宮下香に、攻略対象者である“レフコース”が、実は女だって事を見せるんだ。それで、この世界があんたの知ってる世界じゃない─って、現実を見せつけようかと思って。あいつに─止を刺す感じ?」

『止を刺す?』

ネージュの耳がピクリと反応する。

「そう。あいつは、全く反省していないから。あっちに還す前に、なんとかあいつの気持ちを…へし折ってやろうかと思って…。」

『ふむ。我はお前は嫌いだが、あの女をへし折って止を刺せるなら…やってやろう。』

「えっと…ネージュ。分かってると思うけど、、文字通りの意味じゃないからね?」

『────分かっている。』

ーネージュ!その間は何!?ー

ネージュに視線を合わせるようにしゃがみこんで、両手でネージュの顔を挟む。

「ネージュの気持ちは…分かってる。でもね、だからって、ネージュが彼女を傷付けたりする事は別の話だからね?それに、ネージュは人を傷付けて…平気でいられる子じゃないよね?」

『主…』

ネージュが頭をグリグリと、私の顔に優しく擦り付ける。

「────っ!ネージュ!可愛い!!」

はい!我慢できずに、私もネージュにグリグリしました!ワシャワシャと撫で回しもしました!やっぱりモフモフは最高です!ありがとうございます!!



「えっと?俺、存在忘れられてないか?まぁ…いいか。可愛いから──許せるな…。」


そうして、相変わらず尻尾は垂れ下がったままだったけど、ネージュはリュウと共に、邸の地下へと向かった。



ーよし。私も…しようかなー















“気配を消し”、その上から“認識阻害”の魔法を自身に掛ける。

以来の魔法だ。

ーうん。やっぱりチートだよねー

とは違って、悪戯?をしに行くみたいに、少し楽しい気持ちで歩みを進めた。















その部屋に入ると、丁度、リュウが魔法陣を展開させるところだった。

ーん?ー

何故か視線を感じて、そちらを見れば─

エディオルさんとゼンさんが…私の方を…何となく?な感じで見ていた。

ーあれ?気配消して認識阻害掛けてても…バレてるの!?ー

それでも、動かないし、何も言わないと言う事は─私のやりたいようにやって良い─って事だよね?

ーありがとうございますー



彼女の足下で、魔法陣が展開され、淡い光が光り出す。

初めて見た時は、恐怖でしかなかった光。

2度目は還れる喜びと、還れなかった絶望を知った光。

3度目は悲しみと共にあった光。

4度目は─喜びの光だった。

5度目の今は─ただただ綺麗だなと思う。


「─っ!?」

目の前のリュウの魔力が乱れ始めた。
魔力がゴッソリ抜けて行っている感じだ。

ー絶対に…死なせないー

離れているから、うまくいくかは分からない─いや、私ならできるよね。

リュウに集中して、私の魔力をリュウに流していく。ゆっくり、且つ、正確に。足元からリュウの身体全身に行き渡るように。

そして、暫く流し続けていると

魔法陣から一気に光が溢れ出し、最後に光が弾けて消え──

そこには、もう彼女の姿はなかった。リュウも、自分の足でしっかりと立っている。

ー良かった。ちゃんと…送り還せたー

と、私はその場から転移魔法を展開させて、自分の部屋へと戻った。










*****


「ハル、体は大丈夫?」

と、エディオルさんが苦笑しながら私の部屋にやって来た。

「やっぱり、ディは気付いてたんですね。」

「ん?ハッキリと─ではないけど、何となく違和感があって。それで、ハルかな?と思って。」

エディオルさんは、そのまま私が座っている横に腰を下ろした。

ーそ…そっか…婚約者…だからアリなのかー

「それに、ゼン殿も気付いていたな。」

「ですよね。もう、私がどんな凄い魔法使いだったとしても、ゼンさんには敵わない様な気がします。」

「お互い様─ってところだと思うが…。」

ー“お互い様”?いやいや、私がゼンさんに勝てる事って……うん。無いよねー

「えっと…リュウは…あれからも大丈夫でした?」

「あぁ。魔力も安定していたし、本人も元気だった。一応、今日はこのままパルヴァン邸ここに泊まって、明日隣国に帰るそうだ。」

「そうなんですね。これで、リュウも、少しは落ち着けますね。」

「そうだな─。ハル…」

「はい?──!?」

優しく名前を呼ばれたかと思ったら、そのまま優しく抱き締められた。

「心配はしていなかったが…ハルに何も無くて良かった。」

「ふふっ。あれ位なら…全然問題無しですよ?」

笑いながら、エディオルさんを見上げる。

「流石、規格外の魔法使い様─だな?」

エディオルさんも、優しく笑ってくれる。

ーあぁ、本当に、幸せだなぁー

そう思いながら、暫くの間、エディオルさんに身を預けた。





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