モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語

みん

文字の大きさ
42 / 123
第一章ー婚約ー

宮下香

しおりを挟む
『これで…分かった?この世界は、あなたが思っている─知っている世界では無いことを。この世界が、あなたを必要としていない事を。あなたには……日本であなたを待っている人達が居るから…安心して日本に還ってちょうだい。』



ー嫌だ!嫌だ!怖い!怖い!ー



に婚約者が居たなんて知らなかった。彼女はいるかな─とは思っていたけど。あいつはお金持ちで、何でも買ってくれたから…何度か関係を持っただけだった。

学校での苛めは…やられたからやり返しただけ。相手が…二度と私に手を出さない─出せないように。
気に入らない子の男に手を出した─事もあったけど、それは全部あいつらの自業自得じゃない!私が悪いわけじゃない!

異世界に召喚されて、この世界で私はイケメン達に囲まれて、幸せになる筈だったのに。なのに!

聖女としての力は使えないし、攻略対象者は私のモノにならないどころか近寄っても来ない。おまけに薬師とか言う女が、エディオルとレフコースを縛り付けていた。モブですらない女。

ー許せないー

あのモブが居なくなった─と聞いた時は胸がすく思いだった。

なのに─

皆があのモブを必死に探し、あのモブの為に動いた。エディオルもレフコースも、更に私を見なくなった。そして、私をこの世界に召喚して、唯一の私の味方だった筈の魔法使い─リュウまでもが…私を裏切り、今、私を日本へ還そうとしている。

ー止めて!嫌だ!日本になんて還りたくない!ー

叫びたいのに声が出せない。逃げたいのに体が動かない。

魔法陣の展開が乱れたような気がしてホッとしたが─そこから一気に光が溢れ出して、眩しくてギュッと目を瞑った─その瞬間、久し振りの浮遊感に襲われた。

ーっ!!ー

この感覚を覚えている。召喚された時に感じたものだ。

ーあぁ…………ー

浮遊感がなくなり、目を開けると──

「………ここ……何処?」

人の姿どころか住宅も見当たらない。木々が生い茂っているだけ。遠くに、電気の明かりがポツポツと見える。

「え?日本…なんだよね?」

体が動きそうだったから、立ち上がろうとした時

「──っ!?」

身体中が千切られるかの様な痛みに襲われた。

ー痛い!痛い!助けて!誰かー

助けてと叫びたいのに、痛みが酷くて声が出ない。息をするだけで精一杯な程の痛み。

ー誰か……助け………て………ー

そこで、私の意識は途切れた。














*****


次に目を覚ました時は、ベッドの上だった。



「あなたは、宮下香さん─ですね?」

目を覚ましてから3日程経った日。私の元に警察の人が来た。私が行方不明になってから半年以上過ぎていたのだ。今迄何処に居たのか等訊かれたが“異世界に行っていた”なんて言える筈もなく──

「記憶が無くて…」

としか言えなかった。

の時に言うのもなんだが…君にはいくつかの訴訟が起こされている。」



あの、引き千切られる様な痛みで気を失った後、発見される迄数日掛かったそうだ。あの場所は、普段から人が通るような場所ではなかったらしい。

目が覚めてからも痛みは続いていたが、検査をして調べても原因は判らず。2日程して治まって来たのだが、両足に麻痺が残り歩けない状態になってしまったのだ。

あいつの婚約者は死に、あいつ本人も精神的に病んでしまい、自力で立つことすらできないらしい。

ー因果応報、自業自得ー

とは…こう言う事を言うのだろう。

ゲーム通り、ただひたすら苛めに耐えていたら?
聖女としてもっと頑張っていたら?
リュウのくれたラストチャンスを頑張っていたら?

「──ふっ…今更遅いよね。」

もう、悲しみの感情すら─沸かなかった。











❋話が短目なので、今日はもう1話投稿します❋










しおりを挟む
感想 134

あなたにおすすめの小説

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

【完結】秀才の男装治療師が女性恐怖症のわんこ弟子に溺愛されるまで

恋愛
「神に祈るだけで曖昧にしか治らない。そんなものは治療とは言わない」  男尊女卑が強い国で、女であることを隠し、独自の魔法を使いトップクラスの治療師となり治療をしていたクリス。  ある日、新人のルドがやってきて教育係を押し付けられる。ルドは魔法騎士団のエースだが治療魔法が一切使えない。しかも、女性恐怖症。  それでも治療魔法が使えるようになりたいと懇願するルドに根負けしたクリスは特別な治療魔法を教える。  クリスを男だと思い込み、純粋に師匠として慕ってくるルド。  そんなルドに振り回されるクリス。  こんな二人が無自覚両片思いになり、両思いになるまでの話。 ※最初の頃はガチ医療系、徐々に恋愛成分多めになっていきます ※主人公は現代に近い医学知識を使いますが、転生者ではありません ※一部変更&数話追加してます(11/24現在) ※※小説家になろうで完結まで掲載 改稿して投稿していきます

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

処理中です...