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*オードリナ視点*
『オードリナ…私の子達を……見守ってくれるかしら?』
それが、私の親友であり、私の命の恩人とも言えるエリアーヌの最後の言葉となった。
私が魔女として傲慢になり、血の制約に縛られ命を失いかけた時、看病してくれた上、魔女である私に臆する事なく苦言を呈して私をマトモにしてくれたエリアーヌ。そんな彼女が、双子を生んで間もなく、その言葉を残して死んでしまった。
私は、エリアーヌのお陰で大魔女となった今がある。ならば、そのエリアーヌの子を見守るのは当然の事だった。
『安心してちょうだい。大魔女の名において、大親友であるエリアーヌの子の双子を見守るわ』
そんな私の言葉を聞いて、エリアーヌは安心したように微笑んで───
「私は……一体何を…見ていたの?一体いつから……」
今の国王の子は3人。双子の王子と第一王女も、異母妹の第二王女も父親と同じ金髪だったのに。
今、私の目の前で眠っているカミリアの髪は、エリアーヌと同じアクアブルーの色をしている。この色は珍しい色だから、見間違える事はない。
「この色からして……このカミリア様が、エリアーヌ元王妃様の子だろうね」
「なら…オーウェンとヘレンティナは……」
エリアーヌが双子を生んだのは確かだ。“私の子達”と言ったのだから。ただ、私はあの時、エリアーヌにしか意識が行っていなかったから、双子を見てはいなかった。
髪の色は?瞳の色は?
今の双子の姿しか分からない。
「おそらく、オーウェン様がエリアーヌ様の双子の子だろうね。そして、ヘレンティナ様は……」
「レオノールが言っていた違和感の正体が…これなの?ヘレンティナは、知っているの?カティエは………まさか……ヘレンティナが、カティエの………」
「確証はないけど、ヘレンティナ様自身は、本当に自分の母親はエリアーヌ様だと思っていると思うよ。オーウェン様も、双子の妹はヘレンティナ様だと思っているだろうし、国王陛下も──」
エイダンが知っていたなら、カミリアを“汚点”扱いになどしなかっただろう。エイダンは、エリアーヌを本当に愛していたから。エリアーヌからも、子達を大切にして欲しいと頼まれていたから。
「何故……こんな事を………」
“誰が?”─とは訊く迄もない。
カティエ王妃だ
おそらく、ヘレンティナがカティエの本当の子なんだろう。それなら、カティエのヘレンティナへの待遇にも納得できる。実の子なのだから、あそこまで愛情を注げるのだ。オーウェンはエリアーヌの子だけれど、唯一の王太子であり自分に懐いてくれているのなら、多少の我慢さえすれば、見返りは大きいからだろう。
「アマデュー、これ程まで完璧に色を変えるなんて、簡単にできる事なの?魔女である私にも、完璧に変える事は難しいと思うのだけど」
そもそも、魔女であっても色が視えるワケでもないし、ただの人間相手にそんな事をすれば血の制約に縛られる可能性だってある。
「簡単にはできないと思うよ。色を変えるなんて、禁忌以外の何物でもないからね。ただ、不可能ではないと言う事だけだよ」
そこに、フルトゥーレがヒラヒラと私の元へと飛んで来た。私の魔力で創り出した蝶で、カミリアを見てもらっていた。
「やっぱり、その蝶はオードリナ様の蝶でしたか」
「レオノールには、フルトゥーレ─この蝶が見えているの?」
「はい」
この蝶には認識阻害の魔法を掛けているから、余程の魔力持ちでしか目にする事はできない。
「光属性は、魔力や色に対しての反応が敏感だから、魔力で創られた蝶は簡単に見る事ができるんだ」
「なるほどね」
そのフルトゥーレが、ヒラヒラと寝室の奥にあるクローゼットへと飛んで行くと、そこでクルクルと円を描くように動き出した。
“ここにある”
そこに、何かがある─と言う事だ。
「アマデュー、私と一緒にクローゼットの中を見に行ってくれるかしら?」
「分かりました。レオノールは、このままカミリア様を見ていてくれるかな?」
「はい。分かりました」
クローゼットを開けると──
王女ともなれば、部屋にあるクローゼットには、所狭しとばかりに服が掛けられている筈なのに、ここには数枚の服しかない。それも、暗い色の物ばかりだ。勿論、アクセサリーや宝石が収納されているような引き出しは無いのに、三段の棚がクローゼットの奥にあり、フルトゥーレがそこに止まった。
「成人していないと言っても、レディーの部屋の棚だから、オードリナ様が開けて見て下さい」
「そうね」
そうして、一番上の棚の引き出しを開けると青色と赤色の液体が入った小瓶が数本ずつ並んでいた。
「何かのポーションかしら?それとも……」
ハッキリとは分からないけど、何となく嫌な感じのする物だ。青色の小瓶には日付けが書かれてあるから、定期的に飲んでいる薬なのかもしれない。
“体が弱いから飲んでいる薬”なのか、“飲んでいるから弱っている”のか──
「これは、調べる必要があるわね」
薬やポーションの調製や分析は、魔女の得意分野の一つだ。魔女にしか作れない薬も沢山ある。
「その間、カミリアの事、頼むわね」
「分かりました」
ニコニコと笑うアマデューにカミリアを頼んだ後、私は小瓶を持って自分の家へと転移した。
『オードリナ…私の子達を……見守ってくれるかしら?』
それが、私の親友であり、私の命の恩人とも言えるエリアーヌの最後の言葉となった。
私が魔女として傲慢になり、血の制約に縛られ命を失いかけた時、看病してくれた上、魔女である私に臆する事なく苦言を呈して私をマトモにしてくれたエリアーヌ。そんな彼女が、双子を生んで間もなく、その言葉を残して死んでしまった。
私は、エリアーヌのお陰で大魔女となった今がある。ならば、そのエリアーヌの子を見守るのは当然の事だった。
『安心してちょうだい。大魔女の名において、大親友であるエリアーヌの子の双子を見守るわ』
そんな私の言葉を聞いて、エリアーヌは安心したように微笑んで───
「私は……一体何を…見ていたの?一体いつから……」
今の国王の子は3人。双子の王子と第一王女も、異母妹の第二王女も父親と同じ金髪だったのに。
今、私の目の前で眠っているカミリアの髪は、エリアーヌと同じアクアブルーの色をしている。この色は珍しい色だから、見間違える事はない。
「この色からして……このカミリア様が、エリアーヌ元王妃様の子だろうね」
「なら…オーウェンとヘレンティナは……」
エリアーヌが双子を生んだのは確かだ。“私の子達”と言ったのだから。ただ、私はあの時、エリアーヌにしか意識が行っていなかったから、双子を見てはいなかった。
髪の色は?瞳の色は?
今の双子の姿しか分からない。
「おそらく、オーウェン様がエリアーヌ様の双子の子だろうね。そして、ヘレンティナ様は……」
「レオノールが言っていた違和感の正体が…これなの?ヘレンティナは、知っているの?カティエは………まさか……ヘレンティナが、カティエの………」
「確証はないけど、ヘレンティナ様自身は、本当に自分の母親はエリアーヌ様だと思っていると思うよ。オーウェン様も、双子の妹はヘレンティナ様だと思っているだろうし、国王陛下も──」
エイダンが知っていたなら、カミリアを“汚点”扱いになどしなかっただろう。エイダンは、エリアーヌを本当に愛していたから。エリアーヌからも、子達を大切にして欲しいと頼まれていたから。
「何故……こんな事を………」
“誰が?”─とは訊く迄もない。
カティエ王妃だ
おそらく、ヘレンティナがカティエの本当の子なんだろう。それなら、カティエのヘレンティナへの待遇にも納得できる。実の子なのだから、あそこまで愛情を注げるのだ。オーウェンはエリアーヌの子だけれど、唯一の王太子であり自分に懐いてくれているのなら、多少の我慢さえすれば、見返りは大きいからだろう。
「アマデュー、これ程まで完璧に色を変えるなんて、簡単にできる事なの?魔女である私にも、完璧に変える事は難しいと思うのだけど」
そもそも、魔女であっても色が視えるワケでもないし、ただの人間相手にそんな事をすれば血の制約に縛られる可能性だってある。
「簡単にはできないと思うよ。色を変えるなんて、禁忌以外の何物でもないからね。ただ、不可能ではないと言う事だけだよ」
そこに、フルトゥーレがヒラヒラと私の元へと飛んで来た。私の魔力で創り出した蝶で、カミリアを見てもらっていた。
「やっぱり、その蝶はオードリナ様の蝶でしたか」
「レオノールには、フルトゥーレ─この蝶が見えているの?」
「はい」
この蝶には認識阻害の魔法を掛けているから、余程の魔力持ちでしか目にする事はできない。
「光属性は、魔力や色に対しての反応が敏感だから、魔力で創られた蝶は簡単に見る事ができるんだ」
「なるほどね」
そのフルトゥーレが、ヒラヒラと寝室の奥にあるクローゼットへと飛んで行くと、そこでクルクルと円を描くように動き出した。
“ここにある”
そこに、何かがある─と言う事だ。
「アマデュー、私と一緒にクローゼットの中を見に行ってくれるかしら?」
「分かりました。レオノールは、このままカミリア様を見ていてくれるかな?」
「はい。分かりました」
クローゼットを開けると──
王女ともなれば、部屋にあるクローゼットには、所狭しとばかりに服が掛けられている筈なのに、ここには数枚の服しかない。それも、暗い色の物ばかりだ。勿論、アクセサリーや宝石が収納されているような引き出しは無いのに、三段の棚がクローゼットの奥にあり、フルトゥーレがそこに止まった。
「成人していないと言っても、レディーの部屋の棚だから、オードリナ様が開けて見て下さい」
「そうね」
そうして、一番上の棚の引き出しを開けると青色と赤色の液体が入った小瓶が数本ずつ並んでいた。
「何かのポーションかしら?それとも……」
ハッキリとは分からないけど、何となく嫌な感じのする物だ。青色の小瓶には日付けが書かれてあるから、定期的に飲んでいる薬なのかもしれない。
“体が弱いから飲んでいる薬”なのか、“飲んでいるから弱っている”のか──
「これは、調べる必要があるわね」
薬やポーションの調製や分析は、魔女の得意分野の一つだ。魔女にしか作れない薬も沢山ある。
「その間、カミリアの事、頼むわね」
「分かりました」
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