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9 まだ……
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レイさんがやって来てから3ヶ月─
「今週末は空いてる?」
「あ、大丈夫です。今回は何ですか?」
「プリン」
2週間に1、2回のペースでカフェに行っている。カリーヌさんと3人の時もあるし、私と2人の時もある。そう。2人でも……やっぱり特に問題はなかった。
『父娘でデートですか?仲が良いんですね。これ、おまけに付けておきますね』
『ふふっ……ありがとうございます』
『…………』
初めて2人だけてカフェに行った日、仲の良い父娘に見られ、頼んだケーキにおまけのトッピングをしてもらえたのだ。レイさんは何とも言えないような顔をしていたけど、私はラッキーだなぁ─なんて笑っていた。
そんな訳で、2人きりで出掛けても問題無いことが分かった為、子供の居るカリーヌさんには無理しないように、2人だけでカフェに行くようになった。
『問題無い…のか?ある意味問題じゃないのか?』と、レイさんはブツブツ呟いていたけど、そこはスルーしておいた。
そして、今週末も男性1人では入り難いお店に行く約束をしていた───のだけど。
「今日からノルマを増やすから、気付かれないように居残るように。詳しい事はその時に話す」
「分かりました」
会長に呼び出されて執務室に行くと、ノルマを増やすと言われた。態々呼び出して言われると言う事は、通常のノルマではなく、秘密のノルマを増やすと言う事だ。どれだけ増やされるのか……魔力が足りれば良いけど……兎に角、週末のレイさんとの約束はキャンセルしないとね。
「プリン……食べたかったなぁ………」
******
増やされたノルマは1.5倍だった。私の魔力量ではギリギリと言うところだった。
勿論、日中のノルマはそのままで減る事はない。今迄の日中と夜のノルマでもやっとだったのに…。
ーレイさんが来てから…少し浮かれてたかな?ー
カリーヌさんとレイさんから褒められて…お出掛けして楽しくなって………忘れていた。私はカリーヌさんやレイさんとは違って、私はここで“生かされている”だけの存在だと言う事を。
「兎に角、頑張らないとね」
******
それからの日々は本当に大変だった。毎日残業しないと終わらないノルマ。帰った頃にはヘトヘトで、それでも食べないと魔力も回復し難くなるから、無理矢理にでも何かを口にしてから寝て、朝起きて早目に出勤して始業時間前から精製水を作りはじめて──
「ちょっと、ニア、大丈夫?また痩せたんじゃないの?ちゃんと食べてる?」
「うん、ニアさん痩せたと言うより……やつれたんじゃないか?」
「あー……食べてるんですけど……どうも最近疲れやすくて……」
食べても食べても……それ以上に魔力を消費しているから……また少し痩せてしまったと言う自覚はある。
「ノルマは…変わってないわよね?」
「はい、変わってないけど、もともと魔力量は少ないから、体調によって左右されやすいんですよね。相変わらず青色の精製水しか作れないし……」
「──青色?」
色に反応したのはレイさんだった。
「はい、私、どう頑張っても青色の精製水しか作れないんですよね。白は無理でも、せめて水色…スカイブルーぐらいは目指したいところです」
「できた精製水の純度を確認してるのは、エドガーさんだった?」
「エドガーさんか会長だと思います。それで、確認した結果は、毎回記録されてるから、いつでも誰でも結果を見る事ができるようになってます。それをいつ見ても……青色なんですよね」
ー本当に、私は何もかもが成長しないー
せめて、魔力量が増えたら、ここまで苦労しないんだろうけど……。自分の才能の無さが恨めしい。
「んー…ニアさんなら、白に近い水色が作れるようになると思うけど…その前に、しっかり食べて栄養を摂らないとね」
「はい……」
「「と言う事で、コレ──」」
「え?」
カリーヌさんとレイさんが同時に、私の目の前に箱を差し出した。
「私のは昨日作り過ぎたおかずよ。子供の苦手な食材を入れて作ったから、あまり食べてくれなかったのよ。勿体無いから食べてくれる?」
「私からは、昨日発売されたばかりの新作の焼き菓子のアソートだ。お勧めだから、食べて欲しくて買って来たんだ。自分用にも買ってあるから、遠慮はいらないよ─と言うか、貰ってくれないと食べ切れないから困るんだよね」
「……ありがとう…ございます………」
素直にお礼を言って受け取る。本当に、この2人は優しい。
「ふっ……何だか、お父さんとお母さん…みたいですね…」
「あら、ニアみたいな可愛い子なら、いつでも大歓迎よ」
「おとうさん……やっぱり敗北感を感じる……おとうさん………」
ーうん。まだ…頑張れるー
辛いけど、辛い事ばかりじゃない。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(* ´▿`*)*_ _)⁾⁾ペコッ
「今週末は空いてる?」
「あ、大丈夫です。今回は何ですか?」
「プリン」
2週間に1、2回のペースでカフェに行っている。カリーヌさんと3人の時もあるし、私と2人の時もある。そう。2人でも……やっぱり特に問題はなかった。
『父娘でデートですか?仲が良いんですね。これ、おまけに付けておきますね』
『ふふっ……ありがとうございます』
『…………』
初めて2人だけてカフェに行った日、仲の良い父娘に見られ、頼んだケーキにおまけのトッピングをしてもらえたのだ。レイさんは何とも言えないような顔をしていたけど、私はラッキーだなぁ─なんて笑っていた。
そんな訳で、2人きりで出掛けても問題無いことが分かった為、子供の居るカリーヌさんには無理しないように、2人だけでカフェに行くようになった。
『問題無い…のか?ある意味問題じゃないのか?』と、レイさんはブツブツ呟いていたけど、そこはスルーしておいた。
そして、今週末も男性1人では入り難いお店に行く約束をしていた───のだけど。
「今日からノルマを増やすから、気付かれないように居残るように。詳しい事はその時に話す」
「分かりました」
会長に呼び出されて執務室に行くと、ノルマを増やすと言われた。態々呼び出して言われると言う事は、通常のノルマではなく、秘密のノルマを増やすと言う事だ。どれだけ増やされるのか……魔力が足りれば良いけど……兎に角、週末のレイさんとの約束はキャンセルしないとね。
「プリン……食べたかったなぁ………」
******
増やされたノルマは1.5倍だった。私の魔力量ではギリギリと言うところだった。
勿論、日中のノルマはそのままで減る事はない。今迄の日中と夜のノルマでもやっとだったのに…。
ーレイさんが来てから…少し浮かれてたかな?ー
カリーヌさんとレイさんから褒められて…お出掛けして楽しくなって………忘れていた。私はカリーヌさんやレイさんとは違って、私はここで“生かされている”だけの存在だと言う事を。
「兎に角、頑張らないとね」
******
それからの日々は本当に大変だった。毎日残業しないと終わらないノルマ。帰った頃にはヘトヘトで、それでも食べないと魔力も回復し難くなるから、無理矢理にでも何かを口にしてから寝て、朝起きて早目に出勤して始業時間前から精製水を作りはじめて──
「ちょっと、ニア、大丈夫?また痩せたんじゃないの?ちゃんと食べてる?」
「うん、ニアさん痩せたと言うより……やつれたんじゃないか?」
「あー……食べてるんですけど……どうも最近疲れやすくて……」
食べても食べても……それ以上に魔力を消費しているから……また少し痩せてしまったと言う自覚はある。
「ノルマは…変わってないわよね?」
「はい、変わってないけど、もともと魔力量は少ないから、体調によって左右されやすいんですよね。相変わらず青色の精製水しか作れないし……」
「──青色?」
色に反応したのはレイさんだった。
「はい、私、どう頑張っても青色の精製水しか作れないんですよね。白は無理でも、せめて水色…スカイブルーぐらいは目指したいところです」
「できた精製水の純度を確認してるのは、エドガーさんだった?」
「エドガーさんか会長だと思います。それで、確認した結果は、毎回記録されてるから、いつでも誰でも結果を見る事ができるようになってます。それをいつ見ても……青色なんですよね」
ー本当に、私は何もかもが成長しないー
せめて、魔力量が増えたら、ここまで苦労しないんだろうけど……。自分の才能の無さが恨めしい。
「んー…ニアさんなら、白に近い水色が作れるようになると思うけど…その前に、しっかり食べて栄養を摂らないとね」
「はい……」
「「と言う事で、コレ──」」
「え?」
カリーヌさんとレイさんが同時に、私の目の前に箱を差し出した。
「私のは昨日作り過ぎたおかずよ。子供の苦手な食材を入れて作ったから、あまり食べてくれなかったのよ。勿体無いから食べてくれる?」
「私からは、昨日発売されたばかりの新作の焼き菓子のアソートだ。お勧めだから、食べて欲しくて買って来たんだ。自分用にも買ってあるから、遠慮はいらないよ─と言うか、貰ってくれないと食べ切れないから困るんだよね」
「……ありがとう…ございます………」
素直にお礼を言って受け取る。本当に、この2人は優しい。
「ふっ……何だか、お父さんとお母さん…みたいですね…」
「あら、ニアみたいな可愛い子なら、いつでも大歓迎よ」
「おとうさん……やっぱり敗北感を感じる……おとうさん………」
ーうん。まだ…頑張れるー
辛いけど、辛い事ばかりじゃない。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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