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私が住んでいる部屋は、3階建てアパートメントの2階の一番端の部屋205号室。各フロアに五つの部屋がある。
「あ、ニアさん、おかえりなさい」
「ナーシャさん、こんばんは」
ナーシャさんとは、204号室に住んでいる、私より2つ年上のお姉さんだ。
「今日は、出掛けてたのね。お昼過ぎだったかなぁ?ニアさんの部屋の前に、誰か分からないけど2人居てね。声を掛けたらササッとアパートメントから出て行ってしまったんだけど…誰だか心当たりある?」
「いえ…………」
ー誰だろう?ー
「何か用があるなら、また来るでしょうけど」とナーシャさんに言われて「それもそうですね」と答えて、お互い自分の部屋へと入った。
2人──
誰だろう?私の部屋を知ってて訪ねて来るのは、カリーヌさんとレイさんぐらいだ。後は……可能性としてはモニク。でも、カリーヌさんは悪阻で仕事を休んでいるぐらいだから、ここに来る事はない。モニクも、私が今日と明日はレイさんとお出掛けする事を……何故か知っていたから、モニクが今日ここに来る事はない。レイさんは……言わずもがな。
何となく、その2人が気になりつつも、明日は明日でお出掛けする予定だから、いつもより早目にお風呂に入り、早目に寝る事にした。
ベッドに入って目を瞑ると、レイさんがあの女性に向けていた優しい笑顔を思い出した。
レイさんは…優しい。こんな私にも、会った時からいつも笑顔を向けてくれていた。その笑顔に安心感を覚えて“お父さんみたいだな”と思った──思うようにしたのかもしれない。レイさんとカリーヌさんが仲良く笑い合っていても何も思わなかったのは、カリーヌさんには旦那さんと子供が居るから。
今日、あの女性に微笑みを向けたレイさんを見て、初めて……“嫌だ”と思った。
「今頃気付くなんて……馬鹿だなぁ……」
もとより、レイさんは私の事は、捜査対象者とか、それこそ子供だとかしか見ていないだろうけど。
好きと自覚した翌日にサヨナラか……いっその事笑えるかもしれない。
「………」
うん。そうだ。最後なら、笑って…笑顔でお別れをしよう。お別れをする迄は、めいいっぱい楽しもう。そう意気込んでから布団に潜り込み直し、目を瞑って寝ようとして
カタン──
と音がした。
ーえ?何の…音?ー
ゆっくりと、なるべく音を立てないように身を起こす。すると、寝室のドアが開かれた。
「ようやく…見付けた」
「─っ!?」
寝室のドアを開けて入って来たのは、元会長のギリスと、黒いフード付きのローブを着た男だった。
「お前のせいで……私は全てを失ったのに……お前はのうのうと生きているとは……お前は、一体誰のお陰で生きて来られたのか…忘れてしまったようだな…」
「な……で…」
ー何故…ここにギリスが!?ー
ギリスは捕まったのではなかった?それに…フードを被った人は……魔道士だ。しかも、城付きの魔道士だ。ローブの色は様々あるが、黒色は城付きの魔道士が着る色で胸元に国を象徴する花が刺繍されている。
ー何故…城付きの魔道士が…ギリスと?ー
ギリスはゆっくりと私に近付いてくる。逃げたいのに、体が震えて動かない。
「あのお方も魔力を止められた。お前のせいで……お前もアレを作っていた1人だったと言うのに…」
「ちが…う。私は…、製造禁止されている物を…作ってるなんて…知らなかった……」
禁止された媚薬を作っているなんて知ってたら、あんなにも一生懸命に精製水なんて作らなかった。
「知らなかったとしても、お前も同罪だ。だから……お前にプレゼントを持って来たんだよ……ほら……」
ギリスはニヤリと笑って、一つの小瓶を取り出した。
ーまさか!ー
「自分の作った媚薬の効能を、自分自身で確かめさせてやろう」
ヒュッ─と息を呑む。
禁止された媚薬は、少量でも口にすると直ぐに効果が現れる。性欲が抑えられなくなり、相手の言いなりになってしまうのだ。一度に口にする量が多ければ多い程快楽を求める体になってしまうのだ。
「いや…だ……」
「ははっ…誰も助けに来ないからな?この部屋には結界を張ってるから、大声で叫んだところで、誰も助けには……来てくれない。だから……遠慮なく声を出せば良い」
「────っ!?」
ギリスがベッドに乗り上がり、ベッドがギシッと音を立てた。
「相手は選ばせてはやれないが…存分に楽しめば良い」
「いや──────」
「ゔあ゙─っ」
私が叫ぶのと同時に、バキッ─と、寝室の扉が文字通り吹き飛び、その吹き飛んだ扉が魔道士に直撃して、その魔道士はその場に倒れた。「一体何が─」と、ギリスが魔道士の方へと振り返ると
「ニア───!」
と、私の名前を呼ぶ声が響いた。
ーこの声は…レイさんだ!ー
「レイさ────」
「お前はソレを片付けてくれ。私は……アイツを締め上げる!」
「はいはい。あーっと…、程々に生かしてくれると…助かる」
「善処しよう」
倒れている魔道士を拘束している……黒色の髪の魔道士?が1人。
そして、私の名を呼んだであろうレイさんは、ギリスを一瞬のうちに叩き倒してから締め上げて──気を失わせてから拘束した。
「ニア、大丈夫か!?」
「あ……え?」
拘束して放り捨てたギリスを踏み付けて、私の目の前まで来て心配そうな顔をしているのは──ボサッとした茶色の髪と赤色の瞳のレイさんではなく、サラサラと綺麗な金髪の長い髪と赤色の瞳をした──
声だけレイさんだった
「あ、ニアさん、おかえりなさい」
「ナーシャさん、こんばんは」
ナーシャさんとは、204号室に住んでいる、私より2つ年上のお姉さんだ。
「今日は、出掛けてたのね。お昼過ぎだったかなぁ?ニアさんの部屋の前に、誰か分からないけど2人居てね。声を掛けたらササッとアパートメントから出て行ってしまったんだけど…誰だか心当たりある?」
「いえ…………」
ー誰だろう?ー
「何か用があるなら、また来るでしょうけど」とナーシャさんに言われて「それもそうですね」と答えて、お互い自分の部屋へと入った。
2人──
誰だろう?私の部屋を知ってて訪ねて来るのは、カリーヌさんとレイさんぐらいだ。後は……可能性としてはモニク。でも、カリーヌさんは悪阻で仕事を休んでいるぐらいだから、ここに来る事はない。モニクも、私が今日と明日はレイさんとお出掛けする事を……何故か知っていたから、モニクが今日ここに来る事はない。レイさんは……言わずもがな。
何となく、その2人が気になりつつも、明日は明日でお出掛けする予定だから、いつもより早目にお風呂に入り、早目に寝る事にした。
ベッドに入って目を瞑ると、レイさんがあの女性に向けていた優しい笑顔を思い出した。
レイさんは…優しい。こんな私にも、会った時からいつも笑顔を向けてくれていた。その笑顔に安心感を覚えて“お父さんみたいだな”と思った──思うようにしたのかもしれない。レイさんとカリーヌさんが仲良く笑い合っていても何も思わなかったのは、カリーヌさんには旦那さんと子供が居るから。
今日、あの女性に微笑みを向けたレイさんを見て、初めて……“嫌だ”と思った。
「今頃気付くなんて……馬鹿だなぁ……」
もとより、レイさんは私の事は、捜査対象者とか、それこそ子供だとかしか見ていないだろうけど。
好きと自覚した翌日にサヨナラか……いっその事笑えるかもしれない。
「………」
うん。そうだ。最後なら、笑って…笑顔でお別れをしよう。お別れをする迄は、めいいっぱい楽しもう。そう意気込んでから布団に潜り込み直し、目を瞑って寝ようとして
カタン──
と音がした。
ーえ?何の…音?ー
ゆっくりと、なるべく音を立てないように身を起こす。すると、寝室のドアが開かれた。
「ようやく…見付けた」
「─っ!?」
寝室のドアを開けて入って来たのは、元会長のギリスと、黒いフード付きのローブを着た男だった。
「お前のせいで……私は全てを失ったのに……お前はのうのうと生きているとは……お前は、一体誰のお陰で生きて来られたのか…忘れてしまったようだな…」
「な……で…」
ー何故…ここにギリスが!?ー
ギリスは捕まったのではなかった?それに…フードを被った人は……魔道士だ。しかも、城付きの魔道士だ。ローブの色は様々あるが、黒色は城付きの魔道士が着る色で胸元に国を象徴する花が刺繍されている。
ー何故…城付きの魔道士が…ギリスと?ー
ギリスはゆっくりと私に近付いてくる。逃げたいのに、体が震えて動かない。
「あのお方も魔力を止められた。お前のせいで……お前もアレを作っていた1人だったと言うのに…」
「ちが…う。私は…、製造禁止されている物を…作ってるなんて…知らなかった……」
禁止された媚薬を作っているなんて知ってたら、あんなにも一生懸命に精製水なんて作らなかった。
「知らなかったとしても、お前も同罪だ。だから……お前にプレゼントを持って来たんだよ……ほら……」
ギリスはニヤリと笑って、一つの小瓶を取り出した。
ーまさか!ー
「自分の作った媚薬の効能を、自分自身で確かめさせてやろう」
ヒュッ─と息を呑む。
禁止された媚薬は、少量でも口にすると直ぐに効果が現れる。性欲が抑えられなくなり、相手の言いなりになってしまうのだ。一度に口にする量が多ければ多い程快楽を求める体になってしまうのだ。
「いや…だ……」
「ははっ…誰も助けに来ないからな?この部屋には結界を張ってるから、大声で叫んだところで、誰も助けには……来てくれない。だから……遠慮なく声を出せば良い」
「────っ!?」
ギリスがベッドに乗り上がり、ベッドがギシッと音を立てた。
「相手は選ばせてはやれないが…存分に楽しめば良い」
「いや──────」
「ゔあ゙─っ」
私が叫ぶのと同時に、バキッ─と、寝室の扉が文字通り吹き飛び、その吹き飛んだ扉が魔道士に直撃して、その魔道士はその場に倒れた。「一体何が─」と、ギリスが魔道士の方へと振り返ると
「ニア───!」
と、私の名前を呼ぶ声が響いた。
ーこの声は…レイさんだ!ー
「レイさ────」
「お前はソレを片付けてくれ。私は……アイツを締め上げる!」
「はいはい。あーっと…、程々に生かしてくれると…助かる」
「善処しよう」
倒れている魔道士を拘束している……黒色の髪の魔道士?が1人。
そして、私の名を呼んだであろうレイさんは、ギリスを一瞬のうちに叩き倒してから締め上げて──気を失わせてから拘束した。
「ニア、大丈夫か!?」
「あ……え?」
拘束して放り捨てたギリスを踏み付けて、私の目の前まで来て心配そうな顔をしているのは──ボサッとした茶色の髪と赤色の瞳のレイさんではなく、サラサラと綺麗な金髪の長い髪と赤色の瞳をした──
声だけレイさんだった
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